175 / 244
第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─
97時間目 決定と準備
しおりを挟む
担任である藤木は、絶望的な点数を取った者をなだめるかのように、学級委員長である裕太に会話のバトンを渡した。
教卓の前に立った裕太は、ニッコリと笑顔で言った。
「さて、みんな、もうすぐ文化祭だね! 今年の催し物を決めたいと思います!」
とうとう文化祭か。
「うおおおお!」
クラスではしゃぎがちな男子グループが、一斉に拳をあげて喜びのおたけびをあげた。
まぁ、彼らはきっと、かな──りマズイ点数を取っていて、それで落ち込んでいたところを、文化祭というご褒美を授かったんだ。
そりゃ、喜ぶのも分かる。
俺たちにとって、二年目の文化祭。
いったいどうなるんだろうか。
大体どんなことをするか想像は出来ている。
以前にも、お伝えしたが、俺たちの高校の文化祭は一年目はライブ、二年目はクラスでの出し物、三年目は露店と決まっている。
よくあるのは、夏休み明けに鷹乃が言っていた演劇だ。
だから、二年生の出し物は基本的に演劇である。
しかし、内容や劇のクオリティーはその年によって違い、俺たちはより一層クオリティーを高めたいと思っているのだが。
「ハイハイハイ! 『美女と野獣』やりたい!」
「はい! 『ペンギンのような君に恋をしてしまった僕』やりたいです!」
「いやいや、ハイハイ! 『ソウルエクスキューター』だろ! 異能力だぞ!? 男のロマンじゃねぇか!」
うん、今のところでてる題材はすべてジャンルが違うな。
「んー、他にあるかな?」
裕太もあまり、この題材はよくないらしく、俺はソロリと手をあげた。
「おっ、敦志。なんだい?」
鷹乃に教えてもらった小説が題材の映画。
それを俺たちの手で演劇化してみるのはどうだろうか。
「『オオカミ少年と魔法少女の日常』っていう実写化された小説があるんだけど、それはどうだ?」
クラスの反応はふたつに別れていた。
なんだそれとハテナを浮かべる者と、それ知ってると興奮ぎみな者。
しかし、前者の方が多かった。
「へぇ、いいかもね。それじゃあ、このよっつで決めていくから、自分がやりたい作品に手をあげて!」
それじゃあやるよと裕太の声を合図に俺たちは一斉に机に伏せた。
「ではまず、『美女と野獣』をやりたい人!」
沈黙が教室を色づける。
緊張するなぁ。
「じゃあ、『ペンギンのような君に恋をしてしまった僕』をやりたい人!」
誰が手をあげるか分からないから、次の言葉までがすごく長く感じる。
「みっつ目、『ソウルエクスキューター』をやりたい人!」
「最後、『オオカミ少年と魔法少女の日常』をやりたい人!」
これに俺は挙手をした。
さぁ、結果はどうだ──?
「では、結果を発表していきます」
裕太が再び笑顔でそう言う。
「このクラスの舞台発表の題材は──」
裕太の勝ち誇った顔。
なんだよ、知ってたのかよ。
最初から、これをするって分かってたんだな。
流石だ。
「『オオカミ少年と魔法少女の日常』をすることになりました!」
──
突然だが、この世界には主人公と呼ばれる立ち位置が存在する。
例えば、主人公であることによってピンチの際はなにかと切り抜けられるし、思い通りに動くことが出来る。
俺は、別に主人公ではないため、何かしらの役につけたらいいな位の程度だったのだが──。
「舞台発表の役者はこのあと残れー!」
放課後、まさか、俺があんな役になるとは誰も思いやしなかった。
教卓の前に立った裕太は、ニッコリと笑顔で言った。
「さて、みんな、もうすぐ文化祭だね! 今年の催し物を決めたいと思います!」
とうとう文化祭か。
「うおおおお!」
クラスではしゃぎがちな男子グループが、一斉に拳をあげて喜びのおたけびをあげた。
まぁ、彼らはきっと、かな──りマズイ点数を取っていて、それで落ち込んでいたところを、文化祭というご褒美を授かったんだ。
そりゃ、喜ぶのも分かる。
俺たちにとって、二年目の文化祭。
いったいどうなるんだろうか。
大体どんなことをするか想像は出来ている。
以前にも、お伝えしたが、俺たちの高校の文化祭は一年目はライブ、二年目はクラスでの出し物、三年目は露店と決まっている。
よくあるのは、夏休み明けに鷹乃が言っていた演劇だ。
だから、二年生の出し物は基本的に演劇である。
しかし、内容や劇のクオリティーはその年によって違い、俺たちはより一層クオリティーを高めたいと思っているのだが。
「ハイハイハイ! 『美女と野獣』やりたい!」
「はい! 『ペンギンのような君に恋をしてしまった僕』やりたいです!」
「いやいや、ハイハイ! 『ソウルエクスキューター』だろ! 異能力だぞ!? 男のロマンじゃねぇか!」
うん、今のところでてる題材はすべてジャンルが違うな。
「んー、他にあるかな?」
裕太もあまり、この題材はよくないらしく、俺はソロリと手をあげた。
「おっ、敦志。なんだい?」
鷹乃に教えてもらった小説が題材の映画。
それを俺たちの手で演劇化してみるのはどうだろうか。
「『オオカミ少年と魔法少女の日常』っていう実写化された小説があるんだけど、それはどうだ?」
クラスの反応はふたつに別れていた。
なんだそれとハテナを浮かべる者と、それ知ってると興奮ぎみな者。
しかし、前者の方が多かった。
「へぇ、いいかもね。それじゃあ、このよっつで決めていくから、自分がやりたい作品に手をあげて!」
それじゃあやるよと裕太の声を合図に俺たちは一斉に机に伏せた。
「ではまず、『美女と野獣』をやりたい人!」
沈黙が教室を色づける。
緊張するなぁ。
「じゃあ、『ペンギンのような君に恋をしてしまった僕』をやりたい人!」
誰が手をあげるか分からないから、次の言葉までがすごく長く感じる。
「みっつ目、『ソウルエクスキューター』をやりたい人!」
「最後、『オオカミ少年と魔法少女の日常』をやりたい人!」
これに俺は挙手をした。
さぁ、結果はどうだ──?
「では、結果を発表していきます」
裕太が再び笑顔でそう言う。
「このクラスの舞台発表の題材は──」
裕太の勝ち誇った顔。
なんだよ、知ってたのかよ。
最初から、これをするって分かってたんだな。
流石だ。
「『オオカミ少年と魔法少女の日常』をすることになりました!」
──
突然だが、この世界には主人公と呼ばれる立ち位置が存在する。
例えば、主人公であることによってピンチの際はなにかと切り抜けられるし、思い通りに動くことが出来る。
俺は、別に主人公ではないため、何かしらの役につけたらいいな位の程度だったのだが──。
「舞台発表の役者はこのあと残れー!」
放課後、まさか、俺があんな役になるとは誰も思いやしなかった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜
八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」
「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」
「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」
「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」
「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」
「だって、貴方を愛しているのですから」
四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。
華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。
一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。
彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。
しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。
だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。
「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」
「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」
一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。
彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
タカラジェンヌへの軌跡
赤井ちひろ
青春
私立桜城下高校に通う高校一年生、南條さくら
夢はでっかく宝塚!
中学時代は演劇コンクールで助演女優賞もとるほどの力を持っている。
でも彼女には決定的な欠陥が
受験期間高校三年までの残ります三年。必死にレッスンに励むさくらに運命の女神は微笑むのか。
限られた時間の中で夢を追う少女たちを書いた青春小説。
脇を囲む教師たちと高校生の物語。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる