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第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─
97時間目 決定と準備
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担任である藤木は、絶望的な点数を取った者をなだめるかのように、学級委員長である裕太に会話のバトンを渡した。
教卓の前に立った裕太は、ニッコリと笑顔で言った。
「さて、みんな、もうすぐ文化祭だね! 今年の催し物を決めたいと思います!」
とうとう文化祭か。
「うおおおお!」
クラスではしゃぎがちな男子グループが、一斉に拳をあげて喜びのおたけびをあげた。
まぁ、彼らはきっと、かな──りマズイ点数を取っていて、それで落ち込んでいたところを、文化祭というご褒美を授かったんだ。
そりゃ、喜ぶのも分かる。
俺たちにとって、二年目の文化祭。
いったいどうなるんだろうか。
大体どんなことをするか想像は出来ている。
以前にも、お伝えしたが、俺たちの高校の文化祭は一年目はライブ、二年目はクラスでの出し物、三年目は露店と決まっている。
よくあるのは、夏休み明けに鷹乃が言っていた演劇だ。
だから、二年生の出し物は基本的に演劇である。
しかし、内容や劇のクオリティーはその年によって違い、俺たちはより一層クオリティーを高めたいと思っているのだが。
「ハイハイハイ! 『美女と野獣』やりたい!」
「はい! 『ペンギンのような君に恋をしてしまった僕』やりたいです!」
「いやいや、ハイハイ! 『ソウルエクスキューター』だろ! 異能力だぞ!? 男のロマンじゃねぇか!」
うん、今のところでてる題材はすべてジャンルが違うな。
「んー、他にあるかな?」
裕太もあまり、この題材はよくないらしく、俺はソロリと手をあげた。
「おっ、敦志。なんだい?」
鷹乃に教えてもらった小説が題材の映画。
それを俺たちの手で演劇化してみるのはどうだろうか。
「『オオカミ少年と魔法少女の日常』っていう実写化された小説があるんだけど、それはどうだ?」
クラスの反応はふたつに別れていた。
なんだそれとハテナを浮かべる者と、それ知ってると興奮ぎみな者。
しかし、前者の方が多かった。
「へぇ、いいかもね。それじゃあ、このよっつで決めていくから、自分がやりたい作品に手をあげて!」
それじゃあやるよと裕太の声を合図に俺たちは一斉に机に伏せた。
「ではまず、『美女と野獣』をやりたい人!」
沈黙が教室を色づける。
緊張するなぁ。
「じゃあ、『ペンギンのような君に恋をしてしまった僕』をやりたい人!」
誰が手をあげるか分からないから、次の言葉までがすごく長く感じる。
「みっつ目、『ソウルエクスキューター』をやりたい人!」
「最後、『オオカミ少年と魔法少女の日常』をやりたい人!」
これに俺は挙手をした。
さぁ、結果はどうだ──?
「では、結果を発表していきます」
裕太が再び笑顔でそう言う。
「このクラスの舞台発表の題材は──」
裕太の勝ち誇った顔。
なんだよ、知ってたのかよ。
最初から、これをするって分かってたんだな。
流石だ。
「『オオカミ少年と魔法少女の日常』をすることになりました!」
──
突然だが、この世界には主人公と呼ばれる立ち位置が存在する。
例えば、主人公であることによってピンチの際はなにかと切り抜けられるし、思い通りに動くことが出来る。
俺は、別に主人公ではないため、何かしらの役につけたらいいな位の程度だったのだが──。
「舞台発表の役者はこのあと残れー!」
放課後、まさか、俺があんな役になるとは誰も思いやしなかった。
教卓の前に立った裕太は、ニッコリと笑顔で言った。
「さて、みんな、もうすぐ文化祭だね! 今年の催し物を決めたいと思います!」
とうとう文化祭か。
「うおおおお!」
クラスではしゃぎがちな男子グループが、一斉に拳をあげて喜びのおたけびをあげた。
まぁ、彼らはきっと、かな──りマズイ点数を取っていて、それで落ち込んでいたところを、文化祭というご褒美を授かったんだ。
そりゃ、喜ぶのも分かる。
俺たちにとって、二年目の文化祭。
いったいどうなるんだろうか。
大体どんなことをするか想像は出来ている。
以前にも、お伝えしたが、俺たちの高校の文化祭は一年目はライブ、二年目はクラスでの出し物、三年目は露店と決まっている。
よくあるのは、夏休み明けに鷹乃が言っていた演劇だ。
だから、二年生の出し物は基本的に演劇である。
しかし、内容や劇のクオリティーはその年によって違い、俺たちはより一層クオリティーを高めたいと思っているのだが。
「ハイハイハイ! 『美女と野獣』やりたい!」
「はい! 『ペンギンのような君に恋をしてしまった僕』やりたいです!」
「いやいや、ハイハイ! 『ソウルエクスキューター』だろ! 異能力だぞ!? 男のロマンじゃねぇか!」
うん、今のところでてる題材はすべてジャンルが違うな。
「んー、他にあるかな?」
裕太もあまり、この題材はよくないらしく、俺はソロリと手をあげた。
「おっ、敦志。なんだい?」
鷹乃に教えてもらった小説が題材の映画。
それを俺たちの手で演劇化してみるのはどうだろうか。
「『オオカミ少年と魔法少女の日常』っていう実写化された小説があるんだけど、それはどうだ?」
クラスの反応はふたつに別れていた。
なんだそれとハテナを浮かべる者と、それ知ってると興奮ぎみな者。
しかし、前者の方が多かった。
「へぇ、いいかもね。それじゃあ、このよっつで決めていくから、自分がやりたい作品に手をあげて!」
それじゃあやるよと裕太の声を合図に俺たちは一斉に机に伏せた。
「ではまず、『美女と野獣』をやりたい人!」
沈黙が教室を色づける。
緊張するなぁ。
「じゃあ、『ペンギンのような君に恋をしてしまった僕』をやりたい人!」
誰が手をあげるか分からないから、次の言葉までがすごく長く感じる。
「みっつ目、『ソウルエクスキューター』をやりたい人!」
「最後、『オオカミ少年と魔法少女の日常』をやりたい人!」
これに俺は挙手をした。
さぁ、結果はどうだ──?
「では、結果を発表していきます」
裕太が再び笑顔でそう言う。
「このクラスの舞台発表の題材は──」
裕太の勝ち誇った顔。
なんだよ、知ってたのかよ。
最初から、これをするって分かってたんだな。
流石だ。
「『オオカミ少年と魔法少女の日常』をすることになりました!」
──
突然だが、この世界には主人公と呼ばれる立ち位置が存在する。
例えば、主人公であることによってピンチの際はなにかと切り抜けられるし、思い通りに動くことが出来る。
俺は、別に主人公ではないため、何かしらの役につけたらいいな位の程度だったのだが──。
「舞台発表の役者はこのあと残れー!」
放課後、まさか、俺があんな役になるとは誰も思いやしなかった。
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