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第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─
95・5時間目 先輩とセンパイ
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カウンター席の一番端っこには紺色のシャツに青色のパーカーを着た男性が、一人、コーヒーを嗜んでいた。
体つきは細めで肌は白く、髪が長いため、一瞬だけボーイッシュ系の服を着た女性に見えてしまった。
しかし、威圧感がある赤い目や角ばった手から、男性だと僕は判断した。
その男性は、ちらりと僕を見ると、
「そこの小せェガキ。座れ」
と言われ、僕はおとなしく従った。
いやいや怖い怖い。
もしかして、ヤバイ系の人だったのかもしれない。
「睡蓮言い方がキツいのー! もっと優しく言ってあげての!」
先ほど僕を接客してくれた銀髪のショートカットの女性が睡蓮と呼ばれた男性を宥めた。
年上かも知れないので、心のなかで「さん」付けで呼ぶとしよう。
睡蓮さんは、その言葉にズズッとコーヒーを飲んでから、僕の方を見て、
「その、さっきは悪ィな」
そう言った。
僕は突然の謝罪に驚きながらも、
「いえいえ、大丈夫です。その、睡蓮、さん……は、今日はお仕事の帰りですか?」
僕が問うと彼は、ダルそうな声色で、
「いや、今日はずっとここにいた。暇だったンだよ」
えっ、それってニー……。
「俺は決してニートな訳じゃねェぞ。お前、顔に出すぎだろ……」
どうやら、考えていたことがバレていたらしい。
「お前、名前は?」
「僕ですか」
「お前以外に誰が居るンだ」
分かっていたことだが、呆れられたように鼻で笑われた。
シャレにならない。
「僕の名前は、鷹乃祐麻と言います」
「ふーん、祐麻か。いい名前じゃねェか」
名前は、誉められたことがないので少し照れた。
「ありがとうございます」
「祐麻、お前は見たところ敦志と同じ高校のヤツだよなァ。奢ってやるよ」
睡蓮さんの言葉に僕は固まった。
敦志。
高橋先輩の名前。
「なんで高橋先輩の名前が──」
カランカラン!
僕が言い切る前に鳴った鐘の音。
そこには、高橋先輩、山内先輩、そして三石先輩もいた。
「いらっしゃーいませーなのー! あっ、三石君なのー! 皆久しぶりなのー!」
銀髪のショートカットの女性がテンションを先程より高めで接客した。
「黒沢センパイ、こんにちはっす……ってあれ、鷹乃じゃねぇか!」
「た、高橋先輩、こんにちは。えっと、これは……」
困惑する僕をよそに高橋先輩は睡蓮さんと僕を連れて、六人がけのテーブル席に移動した。
「とりあえず、鷹乃、なにか飲むか? ジュース奢ってもらったし、そのお返しだ」
僕は、中学の頃、一年だけ野球をやっていたのだけど、そこでは先輩とのトラブルがあったので極力先輩との関わりを避け、借りなど作らないようにしていた。
だから、こんな時、どうすればいいか分からなかった。
だけど、今はもう、違うのだ。
「ありがとうございます。では、ありがたく受け取っておきます」
僕は、カフェオレを注文し、数分後、それが到着した。
高橋先輩が、「それじゃあ」というかけ声と共にアイスコーヒーの入ったグラスをかかげ、三石先輩、山内先輩がカップをかがげると共に、僕も慌ててそうした。
睡蓮さんは、ズズズとコーヒーを飲んでいる。
「テストお疲れー!」
「「お疲れさまー!」」
「お、お疲れさまですー!」
三人のテンションの高さに少し驚くが、このとき、僕はやっぱりと思うのだ。
かつて自分を諦め、吐き捨てしまった、青春なんていらない、そんな言葉は撤回させてほしいな、と。
体つきは細めで肌は白く、髪が長いため、一瞬だけボーイッシュ系の服を着た女性に見えてしまった。
しかし、威圧感がある赤い目や角ばった手から、男性だと僕は判断した。
その男性は、ちらりと僕を見ると、
「そこの小せェガキ。座れ」
と言われ、僕はおとなしく従った。
いやいや怖い怖い。
もしかして、ヤバイ系の人だったのかもしれない。
「睡蓮言い方がキツいのー! もっと優しく言ってあげての!」
先ほど僕を接客してくれた銀髪のショートカットの女性が睡蓮と呼ばれた男性を宥めた。
年上かも知れないので、心のなかで「さん」付けで呼ぶとしよう。
睡蓮さんは、その言葉にズズッとコーヒーを飲んでから、僕の方を見て、
「その、さっきは悪ィな」
そう言った。
僕は突然の謝罪に驚きながらも、
「いえいえ、大丈夫です。その、睡蓮、さん……は、今日はお仕事の帰りですか?」
僕が問うと彼は、ダルそうな声色で、
「いや、今日はずっとここにいた。暇だったンだよ」
えっ、それってニー……。
「俺は決してニートな訳じゃねェぞ。お前、顔に出すぎだろ……」
どうやら、考えていたことがバレていたらしい。
「お前、名前は?」
「僕ですか」
「お前以外に誰が居るンだ」
分かっていたことだが、呆れられたように鼻で笑われた。
シャレにならない。
「僕の名前は、鷹乃祐麻と言います」
「ふーん、祐麻か。いい名前じゃねェか」
名前は、誉められたことがないので少し照れた。
「ありがとうございます」
「祐麻、お前は見たところ敦志と同じ高校のヤツだよなァ。奢ってやるよ」
睡蓮さんの言葉に僕は固まった。
敦志。
高橋先輩の名前。
「なんで高橋先輩の名前が──」
カランカラン!
僕が言い切る前に鳴った鐘の音。
そこには、高橋先輩、山内先輩、そして三石先輩もいた。
「いらっしゃーいませーなのー! あっ、三石君なのー! 皆久しぶりなのー!」
銀髪のショートカットの女性がテンションを先程より高めで接客した。
「黒沢センパイ、こんにちはっす……ってあれ、鷹乃じゃねぇか!」
「た、高橋先輩、こんにちは。えっと、これは……」
困惑する僕をよそに高橋先輩は睡蓮さんと僕を連れて、六人がけのテーブル席に移動した。
「とりあえず、鷹乃、なにか飲むか? ジュース奢ってもらったし、そのお返しだ」
僕は、中学の頃、一年だけ野球をやっていたのだけど、そこでは先輩とのトラブルがあったので極力先輩との関わりを避け、借りなど作らないようにしていた。
だから、こんな時、どうすればいいか分からなかった。
だけど、今はもう、違うのだ。
「ありがとうございます。では、ありがたく受け取っておきます」
僕は、カフェオレを注文し、数分後、それが到着した。
高橋先輩が、「それじゃあ」というかけ声と共にアイスコーヒーの入ったグラスをかかげ、三石先輩、山内先輩がカップをかがげると共に、僕も慌ててそうした。
睡蓮さんは、ズズズとコーヒーを飲んでいる。
「テストお疲れー!」
「「お疲れさまー!」」
「お、お疲れさまですー!」
三人のテンションの高さに少し驚くが、このとき、僕はやっぱりと思うのだ。
かつて自分を諦め、吐き捨てしまった、青春なんていらない、そんな言葉は撤回させてほしいな、と。
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