165 / 244
第6章EX 常夏と蒼い海 ─少年のリスタート─
90・9.5時間目 少年のリスタート
しおりを挟む
いつも俺の側には、女が居た。
いつもメンバーでつるみ、比較的仲のいい女。
グループにはいって間もない女。
いつもグループの輪にいるだけいる女。
そして、関わる気のない女。
そいつらは、皆、俺に好意を抱いていると思っていた。
三石のように皆が皆、俺に好意を向けてくれていると思っていた。
だが、それが一番の間違いだった。
中学の頃から、続いた沙希との関係は、ここで終えた。
どうしようもなく、心が冷たい。
沙希は、以前から、俺が他の女と仲がいいことを知っていて、それにアンテナを張っていた。
けど、俺は、他の女──明菜と一緒にいる方が楽しいと思ってしまった。
そして、俺から明菜に告白した。
沙希に対しての最低な裏切り行為だ。
それから、俺と明菜は秘密の関係となった。
しかし、それは、噂をされる。
俺と明菜の仲がどの女ともよいため、付き合っているのではないか、二股をしているのではないかと噂をされ始めた。
沙希は、もちろん、一度目もそれに反応し、俺に訪ねた。
もちろん、俺は、違うと言い、彼女に嘘をついた。
その結果が、これだ。
この様だ。
俺が、三石に憧れたから。
アイツが女子の眼中から消えたあと、俺は、アイツより下に堕ちた。
「ははっ……。どうして、俺が好きになったヤツは、みーんな、不幸になってしまうんだろうな……」
こんなことを海にでも、呟いて、流してもらわなければ、罪悪感を突きつけられた心を保てなかった。
敦志が聞いてようがどうでもよかった。
金に染めた髪を俺は、右手でくしゃりとかき上げた。
沙希も、明菜も、前に付き合った女どもも。
そして、俺も。
どうして、皆、不幸になってしまうんだ。
「……それは、お前が根本的に腐っていたからだろ」
敦志の声かと思って、振り向くと、そこには、敦志とまるで入れ替わったかのように、三石がいた。
三石の目は、以前、ファミレスで見たような俺に怯えた様子の目ではなく、中学の頃の女子に話しかけていた優しい目でもなく、俺を殴ったときの恐怖と怒りをもった殺人鬼のような目でもなく、俺を叱るような慰めるようなひとことで言うなら、母親のような温かいまなざしだった。
「根本的に腐ってる、か……。たしかにそうかもしれねぇな……」
反論する気力すらなくて、俺は認めた。
自分の根本を。
俺は、腐ってるんだ。
「俺は、お前のことが嫌いだし、今でもあのことは許さない。許すわけがない。ていうか、なんだ。あれ。二股なんかして彼女泣かせて。バカか」
三石は、俺をバカにした様子で言う。
だが、本当に俺はバカなんだよ。
お前らより、学力も低いし、運動は知らんが、女運も悪い。
いや、俺は引き付ける運が無いんだ。
きっと、だから、よい人を引き付けるお前を嫌った。
「俺は、お前のことが大嫌いだよ。でも、その全てを諦めた顔は、殺したくなるくらい嫌いだ。不愉快だから、普段通り、輪のなかでゲラゲラ笑ってる顔になってくれよ」
言い方は心にふつふつと怒りを灯す言い方だが、俺を嫌っているからだろう。
俺は、そんな顔をしてるのか。
笑いたくても、笑えねぇんだ。
「遼太郎、その辺にしとけよ」
敦志だろう。
三石のことを遼太郎と呼ぶのは、敦志しかいない。
「葉瀬、お前がやったことは人として一番やってはいけないことだ。だけどな、俺は、お前と話してて楽しかった。遼太郎や明菜……さんや沙希……さんは、許してくれないかもしれない。けど、彼女らには、きっとお前に尊敬や好意は抱いていたんだ」
尊敬。好意。
そのふたつの言葉に、俺は三石を見た。
俺が、コイツに持っていたのも、それだったからだ。
「三石……」
許してもらわなくていい。
俺は、一からやり直そう。
まだ、間に合うといいけど。
「俺と友達になってくれよ」
俺は、三石を見上げて、言う。
「お前な、本当にバカだよ──」
三石は、そう言って、俺に背を向けて、砂浜を歩き出す。
──俺が許すまでは友達になってやる、その言葉が、さざ波が作った幻聴じゃあありませんように。
いつもメンバーでつるみ、比較的仲のいい女。
グループにはいって間もない女。
いつもグループの輪にいるだけいる女。
そして、関わる気のない女。
そいつらは、皆、俺に好意を抱いていると思っていた。
三石のように皆が皆、俺に好意を向けてくれていると思っていた。
だが、それが一番の間違いだった。
中学の頃から、続いた沙希との関係は、ここで終えた。
どうしようもなく、心が冷たい。
沙希は、以前から、俺が他の女と仲がいいことを知っていて、それにアンテナを張っていた。
けど、俺は、他の女──明菜と一緒にいる方が楽しいと思ってしまった。
そして、俺から明菜に告白した。
沙希に対しての最低な裏切り行為だ。
それから、俺と明菜は秘密の関係となった。
しかし、それは、噂をされる。
俺と明菜の仲がどの女ともよいため、付き合っているのではないか、二股をしているのではないかと噂をされ始めた。
沙希は、もちろん、一度目もそれに反応し、俺に訪ねた。
もちろん、俺は、違うと言い、彼女に嘘をついた。
その結果が、これだ。
この様だ。
俺が、三石に憧れたから。
アイツが女子の眼中から消えたあと、俺は、アイツより下に堕ちた。
「ははっ……。どうして、俺が好きになったヤツは、みーんな、不幸になってしまうんだろうな……」
こんなことを海にでも、呟いて、流してもらわなければ、罪悪感を突きつけられた心を保てなかった。
敦志が聞いてようがどうでもよかった。
金に染めた髪を俺は、右手でくしゃりとかき上げた。
沙希も、明菜も、前に付き合った女どもも。
そして、俺も。
どうして、皆、不幸になってしまうんだ。
「……それは、お前が根本的に腐っていたからだろ」
敦志の声かと思って、振り向くと、そこには、敦志とまるで入れ替わったかのように、三石がいた。
三石の目は、以前、ファミレスで見たような俺に怯えた様子の目ではなく、中学の頃の女子に話しかけていた優しい目でもなく、俺を殴ったときの恐怖と怒りをもった殺人鬼のような目でもなく、俺を叱るような慰めるようなひとことで言うなら、母親のような温かいまなざしだった。
「根本的に腐ってる、か……。たしかにそうかもしれねぇな……」
反論する気力すらなくて、俺は認めた。
自分の根本を。
俺は、腐ってるんだ。
「俺は、お前のことが嫌いだし、今でもあのことは許さない。許すわけがない。ていうか、なんだ。あれ。二股なんかして彼女泣かせて。バカか」
三石は、俺をバカにした様子で言う。
だが、本当に俺はバカなんだよ。
お前らより、学力も低いし、運動は知らんが、女運も悪い。
いや、俺は引き付ける運が無いんだ。
きっと、だから、よい人を引き付けるお前を嫌った。
「俺は、お前のことが大嫌いだよ。でも、その全てを諦めた顔は、殺したくなるくらい嫌いだ。不愉快だから、普段通り、輪のなかでゲラゲラ笑ってる顔になってくれよ」
言い方は心にふつふつと怒りを灯す言い方だが、俺を嫌っているからだろう。
俺は、そんな顔をしてるのか。
笑いたくても、笑えねぇんだ。
「遼太郎、その辺にしとけよ」
敦志だろう。
三石のことを遼太郎と呼ぶのは、敦志しかいない。
「葉瀬、お前がやったことは人として一番やってはいけないことだ。だけどな、俺は、お前と話してて楽しかった。遼太郎や明菜……さんや沙希……さんは、許してくれないかもしれない。けど、彼女らには、きっとお前に尊敬や好意は抱いていたんだ」
尊敬。好意。
そのふたつの言葉に、俺は三石を見た。
俺が、コイツに持っていたのも、それだったからだ。
「三石……」
許してもらわなくていい。
俺は、一からやり直そう。
まだ、間に合うといいけど。
「俺と友達になってくれよ」
俺は、三石を見上げて、言う。
「お前な、本当にバカだよ──」
三石は、そう言って、俺に背を向けて、砂浜を歩き出す。
──俺が許すまでは友達になってやる、その言葉が、さざ波が作った幻聴じゃあありませんように。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
想妖匣-ソウヨウハコ-
桜桃-サクランボ-
キャラ文芸
深い闇が広がる林の奥には、"ハコ"を持った者しか辿り着けない、古びた小屋がある。
そこには、紳士的な男性、筺鍵明人《きょうがいあきと》が依頼人として来る人を待ち続けていた。
「貴方の匣、開けてみませんか?」
匣とは何か、開けた先に何が待ち受けているのか。
「俺に記憶の為に、お前の"ハコ"を頂くぞ」
※小説家になろう・エブリスタ・カクヨムでも連載しております
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

瞬間、青く燃ゆ
葛城騰成
ライト文芸
ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。
時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。
どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?
狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。
春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。
やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。
第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる