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第6章 二人の愛と少年の嘆き

85時間目 血の繋がった二人

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小春が購入した服を提げながら、南は満足そうな顔でショッピングセンターの廊下を歩いていた。
あの可愛らしい格好をしていた女子がクマのTシャツを着ているやつと同一人物とは思えないほどあの服装は似合っていた。
女子すげぇ。
小春すげぇ。
次は、俺が誕生日プレゼントを選ぶのだが、俺はセンスがないので似合うものを選ぶ自信がない。
小春に相談すると、
「敦志君がいつも通り渡していた物でいいと思うよ。相手を思って一生懸命選んだものなら喜ぶだろうから」
と言われ、具体的な例が欲しかったけど、まぁ、小春だからその答えでいい。
今、小春と南は女子同士の買い物で二人でどこかへ行ってしまった。
え……? 俺、ボッチじゃん。
南が似合うものかぁ。
あいつ、たしか今年受験生だしなぁ。
……あ。
そっか。
受験だ。
受験に関する物を渡せばいいんだ。
というわけで俺は、受験に関する物を探す。お守りとか、合格祈願鉛筆とかあるがそれなら、例年とあまり変わらない。
受験生の役に立って普段と変わらないもの。
俺が、目に入ったのは、多機能シャープペンシルというもの。
よく多色のボールペンがセットになっているやつを連想するが、これはペンの原型を留めていなかった。
見た目は、爪切り。
だが、それ以外にも使い道があるらしく、多色ボールペンの機能はもちろんのこと、シャープペンシルの機能に鉛筆削りの機能と色々とあるらしい。
これ、どこで芯出すんだよ……。
色々とツッコミたいところがあるが、それらを無視して、それをレジカゴにいれた。
お値段も、3000円と、中々良心的だ。
これだけじゃ、味気ないので、もうひとつ買うことにした。
ぐるぐると雑貨屋を回ること三回。
先程の多機能シャープペンシルを購入してから、俺は、自身のセンスのなさに絶望してベンチに座っていた。
だめだ。
何を買えばいいのか分からない。
くそぉ、非リアめ……。
ふらふらと俺は、歩き出すとゲームセンターに着いた。
クレーンゲームが目にはいり、挑戦してみようと思った。
ちょうど、南のTシャツにプリントされていたクマのぬいぐるみが景品としてあったのだ。
仕方がない。
これをプレゼントにしてやるか。
1000円札を両替してから、お金をいれる。
さぁ、華麗にとってやるぜ!
まず、右に進むボタンをタップ。
手前のぬいぐるみの頭をアームで掴んで、そのまま取り出し口にいれる。
そんな想像をしていたのだが、俺の予想とは違い、前に進むボタンをちょうどらしいところで押すのをやめると、アームは空を切った。
くそ、だめか。
でも、まだ、チャンスはある。
二回目。
頭を掴むどころか、かすりもしなかった。
三回目。
頭を掴むことを諦めた俺は、体部分を掴もうとしたが、そこすら掴めず。
四回目も、五回目も、中々とれない。
六回目、次はタグの隙間を狙おうとして、慎重に動かしていた時、
「あっ、敦志君!」
俺を呼ぶ声が聞こえて、離してしまった。
「「あっ……」」
南と小春の声が同時に聞こえる。
だが、アームは、タグを掴んだ。
「おっし!」
宙を浮くぬいぐるみ。
だが、揺れで不安定になっており、いつ落ちてもおかしくない。
取り出し口に進む瞬間、ポトリとぬいぐるみが落ちてしまった。
足が取り出し口に引っ掛かり、取る難易度が上がってしまったかもしれない。
「惜しいわ~‼」
「惜しいね!」
小春と南は、興奮した様子でこちらに駆け寄ってきた。
チャンスはあと四回、手数が少なくなってきた。
引っ掛かった足を掬い上げるように移動させてみる。
そのまま、アームはぬいぐるみを持ち上げて、取り出し口に落とした。
「おっしゃあ!」
「あつにい、すごいやん!」
「すごいね! 敦志君!」
口々に褒めてくれる二人だが、俺は南にこれらをプレゼントする。
「南、いつもありがとうな。こんな従兄ですが、これからもよろしく」
ぬいぐるみを受け取った南は可愛らしい笑顔で、
「ウチもありがとう。あつにいには感謝してるで」
照れくさそうにそう言った。
南の誕生日プレゼントを買いに行ったその日。
血の繋がった二人の仲は一層によくなった。
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