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第6章 二人の愛と少年の嘆き

84・8時間目 いつまでも変わらないやり取り

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正午から少し時間が経った頃、俺たちは普段よく行くショッピングセンターに向かった。
基本的に、裕太や遼太郎、小春と行くときはチャリで行くが、南がいたので今日は電車で向かった。
駅地下のオシャレな店を見ることも出来たため、収穫もあった。
「南ちゃん、気になるものあったら言ってね?」
小春が優しく笑いかける。天使かよ。
「森山さんは、マジで天使やわぁ。ガサツで面倒くさがりなあつにいとは大違いやな」
「なぁ、ケンカ売ってる?」
「貰えるだけありがたいけど、欲をいうともっとオシャレなもの買ってぇや」
コイツ、遠回しにセンス無いって言ってるようなもんだろ!
「悪かったな。センス無くて」
「開き直りなや。幻滅するわ……」
「フフッ」
俺たちはかすかな笑い声に同時に振り向く。
「あ、その……。やっぱり、南ちゃんと敦志君は似てるなぁって思ってね。私もこんな従兄妹いとこが欲しかったよ」
クスクスと楽しそうに笑う小春に俺たちも頬が緩んでしまう。
「ありがとよ。俺も小春みたいな従妹が欲しかった」
「のろけならいらんで?」
顔を赤らめる小春とジト目で俺を見る南という構図が完成した。
小春だけでいいわ、これは。
「とりあえず、普段使い出来るものやったらなんでもええで? そんなに高いものじゃなくても。貰えるだけありがたいからなぁ」
「南ちゃん」
「森山さん、なんや?」
「オシャレ、しよっか?」
ニッコリと笑顔で南を見る小春だが、その目の奥にはしっかりと小悪魔がいた気がした。
まぁ、そんな茶番はさておき、小春が南を連れてやってきたのは、女性に人気のブランド物の店だった。
店内が女性向けのキラキラとした装飾で施されており、俺はこの上入りにくいし、目がチカチカしそう。
「森山さん! ウチ、こんなオシャレな服似合わへんって!」
さすがにここに来た時は、南も抗議の声をあげていたが、小春のニッコリとした笑顔の中の小悪魔に怖じけついたからか、借りてきた猫状態で、試着室に連行された。
ちなみに、俺も店内の奥にある試着室に連行された。
女性客の哀れな物を見るような目が痛かった。
俺は彼女と来てますのでそんな目しないで頼むから。
「じゃっじゃーん! 夏らしく、イメチェンしてみたよ! 南ちゃん、でておいで!」
小春は子供をあやすような言葉遣いで言うが、当の南はでてこない。
「……あつにい、絶対笑ったあかんで……」
試着室からそんな声が聞こえた。
これは、フリとみよう。
試着室から、姿を現した南に俺は驚きの表情を隠せなかった。
いつも、クマのTシャツに短パンというダs……ボーイッシュな雰囲気がどちらかといえば漂う格好なのに、夏らしく、それでもオシャレな可愛い系の女子になっていた。
ロングスカートに透ける素材の白シャツ。
女子ってすげぇな。
着るものだけでこんなに印象が変わるのかよ。
「……すげぇな」
いや、本当にすげぇよ。小春には及ばないけど。
すげぇな。小春には負けるけど。
「敦志君、驚いてるね。よかったぁ」
小春はホッと息をついたと思えば、イタズラが成功したような子供の顔を見せていた。
やっぱり、どれだけ南がオシャレになっても小春には叶わんわ。
当の本人は、似合っていたことに安心して、ウチこれ買うわと言っていた。
しかし、小春がそれを阻止して、小春が購入した。
ほくほく顔で店をでた俺たちは、次の場所へ向かう。
まって、次買うの俺ってこと?
ハードルたけぇな!
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