135 / 244
第6章 二人の愛と少年の嘆き
77時間目 君との日常
しおりを挟む
杏が急に起きてきたから、正直ビックリした。
慌てて、スマホを机に置いたけれど、杏はあくびをしていて、こちらに気がついていなかった。
だから、平然とした態度で、杏に挨拶をした。
「あれ……。なんでもうコーヒー淹れてるの?」
杏は、カフェ中に広がるコーヒーの香りを不思議そうに嗅いでいた。
普段なら、今くらいにコーヒー豆を挽くから杏が不思議そうにするのは、おかしくない。
「なんか、目が覚めちゃって。それで作っちゃおうかなって思ってさ。ごめん、匂い上まできてた?」
「ううん。匂いとかは大丈夫なんだけど、珍しいなって思っただけだよ」
「そっか……。まだ時間あるし、ゆっくりしていてよ」
「ありがとう。楓」
そう言って、杏は再び階段をのぼる。
暇になった俺は、テレビをつけてチャンネルを変えていくと、ジューンブライドの特集に目が止まった。
今は、6月の中旬。
あと1週間ほどで梅雨の時期だとお天気キャスターが言っていた。
ジューンブライド。
6月に結婚式を挙げると、生涯にわたり、幸せな結婚生活を送ることができるといわれているため、多くの女性が結婚式をあげることを望んでいる。
例えば、ゼク○ィとかウェディング○ビなどの結婚情報誌なんかにも、ジューンブライドはとりあげられることが多い。
テレビのMCのお姉さんが茶化されながら、進行していくその番組を気がつけば、熱心に見ていた。
どのように、プロポーズを進めたらよいのか。
式場探しの注意点等など。
せめて、プロポーズくらいは、この季節にしたいんだよ。
だって、君への恋心を自覚した季節だから。
中学の頃の修学旅行の帰り。
俺は、確かに、恋に落ちた。
そんなことを思い出していると、杏が降りてきた。
顔が濡れて艶かしさがでている。
「あっ、ジューンブライド!」
杏はテレビに興奮した様子で食いつく。
「……いいなぁ」
テレビに映し出されているのは、『理想の結婚を6月で』と銘打たれた言葉だった。
理想の結婚か。
俺は、どうすれば、理想の結婚することが出来るのだろう。
そもそも、杏と同じ気持ちなのか分からない。
想いが伝わり、こうして側にいれる時間が増えたとはいえ、人の思いは簡単に変わる。
それに、俺たちは同じ場所で働いている。
当然、接する時間は増える。
それは、パーソナルスペースを縮めてしまう可能性だってある。
社会人の恋愛は簡単じゃないと親友の山崎だったか常連のオッサンだったか誰が言っていたか忘れたが、確かに結婚をするとなれば、誰かとの距離も縮まる。
俺の思い上がりにならないだろうか。
舞い上がるようなことはしたくはないんだが……。
俺は大人だが、恋愛経験に関してはまだ幼稚園児くらいだ。
だから、性に関心を持ちはじめた中学生のような煩悩が頭の中を回ったりするし、最近は忙しくて行けていないけど、デートをする時は結構緊張する。
つまり、まだまだ俺は子供だった。
30歳があと3年でくる俺たちは、そろそろ結婚を意識しだす年頃だ。
俺と杏は誰よりも近いが、気持ちはどうか分からない。
だけど、これだけは言える。
俺は、この先、なにがあっても杏と共に居たい。
「……ちょっと、買い物してくるよ」
俺は、そういって、近所のスーパーに向かうことにした。
羽織った上着が少し温かかった。
慌てて、スマホを机に置いたけれど、杏はあくびをしていて、こちらに気がついていなかった。
だから、平然とした態度で、杏に挨拶をした。
「あれ……。なんでもうコーヒー淹れてるの?」
杏は、カフェ中に広がるコーヒーの香りを不思議そうに嗅いでいた。
普段なら、今くらいにコーヒー豆を挽くから杏が不思議そうにするのは、おかしくない。
「なんか、目が覚めちゃって。それで作っちゃおうかなって思ってさ。ごめん、匂い上まできてた?」
「ううん。匂いとかは大丈夫なんだけど、珍しいなって思っただけだよ」
「そっか……。まだ時間あるし、ゆっくりしていてよ」
「ありがとう。楓」
そう言って、杏は再び階段をのぼる。
暇になった俺は、テレビをつけてチャンネルを変えていくと、ジューンブライドの特集に目が止まった。
今は、6月の中旬。
あと1週間ほどで梅雨の時期だとお天気キャスターが言っていた。
ジューンブライド。
6月に結婚式を挙げると、生涯にわたり、幸せな結婚生活を送ることができるといわれているため、多くの女性が結婚式をあげることを望んでいる。
例えば、ゼク○ィとかウェディング○ビなどの結婚情報誌なんかにも、ジューンブライドはとりあげられることが多い。
テレビのMCのお姉さんが茶化されながら、進行していくその番組を気がつけば、熱心に見ていた。
どのように、プロポーズを進めたらよいのか。
式場探しの注意点等など。
せめて、プロポーズくらいは、この季節にしたいんだよ。
だって、君への恋心を自覚した季節だから。
中学の頃の修学旅行の帰り。
俺は、確かに、恋に落ちた。
そんなことを思い出していると、杏が降りてきた。
顔が濡れて艶かしさがでている。
「あっ、ジューンブライド!」
杏はテレビに興奮した様子で食いつく。
「……いいなぁ」
テレビに映し出されているのは、『理想の結婚を6月で』と銘打たれた言葉だった。
理想の結婚か。
俺は、どうすれば、理想の結婚することが出来るのだろう。
そもそも、杏と同じ気持ちなのか分からない。
想いが伝わり、こうして側にいれる時間が増えたとはいえ、人の思いは簡単に変わる。
それに、俺たちは同じ場所で働いている。
当然、接する時間は増える。
それは、パーソナルスペースを縮めてしまう可能性だってある。
社会人の恋愛は簡単じゃないと親友の山崎だったか常連のオッサンだったか誰が言っていたか忘れたが、確かに結婚をするとなれば、誰かとの距離も縮まる。
俺の思い上がりにならないだろうか。
舞い上がるようなことはしたくはないんだが……。
俺は大人だが、恋愛経験に関してはまだ幼稚園児くらいだ。
だから、性に関心を持ちはじめた中学生のような煩悩が頭の中を回ったりするし、最近は忙しくて行けていないけど、デートをする時は結構緊張する。
つまり、まだまだ俺は子供だった。
30歳があと3年でくる俺たちは、そろそろ結婚を意識しだす年頃だ。
俺と杏は誰よりも近いが、気持ちはどうか分からない。
だけど、これだけは言える。
俺は、この先、なにがあっても杏と共に居たい。
「……ちょっと、買い物してくるよ」
俺は、そういって、近所のスーパーに向かうことにした。
羽織った上着が少し温かかった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
姉らぶるっ!!
藍染惣右介兵衛
青春
俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる