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第6章 二人の愛と少年の嘆き
77時間目 君との日常
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杏が急に起きてきたから、正直ビックリした。
慌てて、スマホを机に置いたけれど、杏はあくびをしていて、こちらに気がついていなかった。
だから、平然とした態度で、杏に挨拶をした。
「あれ……。なんでもうコーヒー淹れてるの?」
杏は、カフェ中に広がるコーヒーの香りを不思議そうに嗅いでいた。
普段なら、今くらいにコーヒー豆を挽くから杏が不思議そうにするのは、おかしくない。
「なんか、目が覚めちゃって。それで作っちゃおうかなって思ってさ。ごめん、匂い上まできてた?」
「ううん。匂いとかは大丈夫なんだけど、珍しいなって思っただけだよ」
「そっか……。まだ時間あるし、ゆっくりしていてよ」
「ありがとう。楓」
そう言って、杏は再び階段をのぼる。
暇になった俺は、テレビをつけてチャンネルを変えていくと、ジューンブライドの特集に目が止まった。
今は、6月の中旬。
あと1週間ほどで梅雨の時期だとお天気キャスターが言っていた。
ジューンブライド。
6月に結婚式を挙げると、生涯にわたり、幸せな結婚生活を送ることができるといわれているため、多くの女性が結婚式をあげることを望んでいる。
例えば、ゼク○ィとかウェディング○ビなどの結婚情報誌なんかにも、ジューンブライドはとりあげられることが多い。
テレビのMCのお姉さんが茶化されながら、進行していくその番組を気がつけば、熱心に見ていた。
どのように、プロポーズを進めたらよいのか。
式場探しの注意点等など。
せめて、プロポーズくらいは、この季節にしたいんだよ。
だって、君への恋心を自覚した季節だから。
中学の頃の修学旅行の帰り。
俺は、確かに、恋に落ちた。
そんなことを思い出していると、杏が降りてきた。
顔が濡れて艶かしさがでている。
「あっ、ジューンブライド!」
杏はテレビに興奮した様子で食いつく。
「……いいなぁ」
テレビに映し出されているのは、『理想の結婚を6月で』と銘打たれた言葉だった。
理想の結婚か。
俺は、どうすれば、理想の結婚することが出来るのだろう。
そもそも、杏と同じ気持ちなのか分からない。
想いが伝わり、こうして側にいれる時間が増えたとはいえ、人の思いは簡単に変わる。
それに、俺たちは同じ場所で働いている。
当然、接する時間は増える。
それは、パーソナルスペースを縮めてしまう可能性だってある。
社会人の恋愛は簡単じゃないと親友の山崎だったか常連のオッサンだったか誰が言っていたか忘れたが、確かに結婚をするとなれば、誰かとの距離も縮まる。
俺の思い上がりにならないだろうか。
舞い上がるようなことはしたくはないんだが……。
俺は大人だが、恋愛経験に関してはまだ幼稚園児くらいだ。
だから、性に関心を持ちはじめた中学生のような煩悩が頭の中を回ったりするし、最近は忙しくて行けていないけど、デートをする時は結構緊張する。
つまり、まだまだ俺は子供だった。
30歳があと3年でくる俺たちは、そろそろ結婚を意識しだす年頃だ。
俺と杏は誰よりも近いが、気持ちはどうか分からない。
だけど、これだけは言える。
俺は、この先、なにがあっても杏と共に居たい。
「……ちょっと、買い物してくるよ」
俺は、そういって、近所のスーパーに向かうことにした。
羽織った上着が少し温かかった。
慌てて、スマホを机に置いたけれど、杏はあくびをしていて、こちらに気がついていなかった。
だから、平然とした態度で、杏に挨拶をした。
「あれ……。なんでもうコーヒー淹れてるの?」
杏は、カフェ中に広がるコーヒーの香りを不思議そうに嗅いでいた。
普段なら、今くらいにコーヒー豆を挽くから杏が不思議そうにするのは、おかしくない。
「なんか、目が覚めちゃって。それで作っちゃおうかなって思ってさ。ごめん、匂い上まできてた?」
「ううん。匂いとかは大丈夫なんだけど、珍しいなって思っただけだよ」
「そっか……。まだ時間あるし、ゆっくりしていてよ」
「ありがとう。楓」
そう言って、杏は再び階段をのぼる。
暇になった俺は、テレビをつけてチャンネルを変えていくと、ジューンブライドの特集に目が止まった。
今は、6月の中旬。
あと1週間ほどで梅雨の時期だとお天気キャスターが言っていた。
ジューンブライド。
6月に結婚式を挙げると、生涯にわたり、幸せな結婚生活を送ることができるといわれているため、多くの女性が結婚式をあげることを望んでいる。
例えば、ゼク○ィとかウェディング○ビなどの結婚情報誌なんかにも、ジューンブライドはとりあげられることが多い。
テレビのMCのお姉さんが茶化されながら、進行していくその番組を気がつけば、熱心に見ていた。
どのように、プロポーズを進めたらよいのか。
式場探しの注意点等など。
せめて、プロポーズくらいは、この季節にしたいんだよ。
だって、君への恋心を自覚した季節だから。
中学の頃の修学旅行の帰り。
俺は、確かに、恋に落ちた。
そんなことを思い出していると、杏が降りてきた。
顔が濡れて艶かしさがでている。
「あっ、ジューンブライド!」
杏はテレビに興奮した様子で食いつく。
「……いいなぁ」
テレビに映し出されているのは、『理想の結婚を6月で』と銘打たれた言葉だった。
理想の結婚か。
俺は、どうすれば、理想の結婚することが出来るのだろう。
そもそも、杏と同じ気持ちなのか分からない。
想いが伝わり、こうして側にいれる時間が増えたとはいえ、人の思いは簡単に変わる。
それに、俺たちは同じ場所で働いている。
当然、接する時間は増える。
それは、パーソナルスペースを縮めてしまう可能性だってある。
社会人の恋愛は簡単じゃないと親友の山崎だったか常連のオッサンだったか誰が言っていたか忘れたが、確かに結婚をするとなれば、誰かとの距離も縮まる。
俺の思い上がりにならないだろうか。
舞い上がるようなことはしたくはないんだが……。
俺は大人だが、恋愛経験に関してはまだ幼稚園児くらいだ。
だから、性に関心を持ちはじめた中学生のような煩悩が頭の中を回ったりするし、最近は忙しくて行けていないけど、デートをする時は結構緊張する。
つまり、まだまだ俺は子供だった。
30歳があと3年でくる俺たちは、そろそろ結婚を意識しだす年頃だ。
俺と杏は誰よりも近いが、気持ちはどうか分からない。
だけど、これだけは言える。
俺は、この先、なにがあっても杏と共に居たい。
「……ちょっと、買い物してくるよ」
俺は、そういって、近所のスーパーに向かうことにした。
羽織った上着が少し温かかった。
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