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第5章 桜と君と青春と ~再会の友、再開の時~
63時間目 春霞(しゅんか)
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鷹乃とメシを食い終えて、2時間の授業を終え、俺は裕太達といつもの帰路を辿る。
「2年目ってすっごく面白いねー! 今年もきっと楽しくなるだろうなー!」
遼太郎の目にはこれから起こる楽しいイベントの数々が写っているのだろう。
キラキラと目を輝かせながら、俺達に微笑みかけている。
いつもの光景だ。
「いよいよお花見明日だねー! あー! 楽しみ楽しみ」
「そうだな。11時に黒沢センパイん家に集合だよな? どんな服着ていこう……。裕太、また選んでくれるか?」
「おおっ‼ いいの? またかっこいいの選ぶよ! さぁ、敦志! モテまくりでリア充になるんだー!」
裕太のテンションがなんかおかしい。
とうとう頭のネジが外れたか……?
「山内、俺も服選んでもらっていい?」
「うんうん。選ぶよ。二人ともとりあえず今日は一旦家に帰って、それから僕の家に来てよ。フフフ……どんな格好になるのか楽しみだ。ルフフフフフ……。フヒヒッ!」
ヤバい、とうとう裕太が壊れた。
というか最後の「フヒヒッ!」は止めてくれ。
ホラーゲームを想起させるだろうが。
俺はホラーゲームが苦手である。
それはなぜかはまた後々説明しよう。
壊れた裕太を引っ張りながら、俺達は一度帰宅し、裕太の家に集合した。
──
「ん~、やっぱり春だし温かみがあるけれど、暑すぎないコーデがいいんだよね~」
俺には何を言っているのかサッパリだが、裕太は服を手にとってブツクサと呪文を唱えている。
オシャレの「オ」の文字も分からない俺は遼太郎と雑談していた。
「敦志敦志、最近のゲームなんだけど、『魔槍伝説』っていうオンラインゲームがあってさ。武器集めとか楽しいんだよねー!」
「へぇ。でも、MMORPGってマゾゲーとかクソゲーとか多いんじゃないか? 黒沢センパイが『これ無課金者にやらせる気ねェだろ』ってキレてた」
今のゲームは画質は綺麗だけれど昔のゲームのようなやりごたえが感じない。
もっとも、探せばあるだろうが、SS5(スターステーションファイブ)やパソコンのゲームは容量が無いとほぼ無理なので俺達はやらない。
やっぱりひとむかし前の親父世代に流行った「ドラゴンなクエスト」や「スーパーモリオブラザース」の方が楽しいし、やりごたえを感じる。
……俺ってなんかオッサンくせぇな。
「あ、そういえば」
「なになにー?」
「鷹乃が小説がどうとか言ってたな」
「鷹乃って、あの森山さん家にいるギター少年の事だよね? あの子、小説好きなんだ……」
遼太郎が久しぶりに驚嘆した声をだした。
いや、俺もビックリだわ。
アイツ何にも興味なさそうだったから、趣味あるのかって思ってたもん。
「らしいぞ。遼太郎お前も小説読むのか?」
「うん。たまたま観て感動した映画の原作が小説だったから読んでみたら面白くてねー。それで最近ハマっているんだ」
確かに最近原作が小説の映画が増えてきている。
俺はあんまり映画も観ないけれど。
「敦志ー! この服とかどうかな?」
裕太から声がかかる。
裕太が選んだのはオレンジ色のパーカーに黒ジーンズというシンプルながらもカッコよさが引き立つファッションだった。
「おー……。いい感じじゃない? 僕はこれが一番いいと思うけど?」
「んじゃ、これにするわ。明日、この服借りるな」
「はーい! 三石ー! これとかどうー?」
俺の服が決まって次は遼太郎の服を決めるのだが、案外早くに決まってしまった。
前身頃が赤で袖が黒色のロングTシャツとデニムのジーンズを選んだ。
「うんっ。二人ともカッコいいよ。明日は楽しもうね。んじゃ、二人ともじゃあねー!」
裕太は明日が早いらしいのでここでお開き解散となった。
空が少し暗くなった頃、俺と遼太郎で帰る。
「はぁー! 明日楽しみー! 敦志森山さんとの仲を更に発展出来たらいいねっ!」
「ふっ……。おまっ、そうだな。出来たらいいけどな」
「いいなぁ……。彼女」
「お前も作りゃいいのに。まぁ、簡単じゃねぇけどさ」
「非リアな俺には彼女の作り方なんて分かりませ~ん」
かつての自分が言っていたセリフを親友が言っている事に笑みがこぼれる。
「大丈夫。きっとお前にも出来るよ」
「そっかなぁ」
冬の冷たい風が暖かくなり、夜の長さも少しずつ短くなってきた。
春霞。
霞んで見えていた青春の意味が少しずつ春の温かさによって霧が晴れてきた。
あぁ、毎日が楽しいな。
「2年目ってすっごく面白いねー! 今年もきっと楽しくなるだろうなー!」
遼太郎の目にはこれから起こる楽しいイベントの数々が写っているのだろう。
キラキラと目を輝かせながら、俺達に微笑みかけている。
いつもの光景だ。
「いよいよお花見明日だねー! あー! 楽しみ楽しみ」
「そうだな。11時に黒沢センパイん家に集合だよな? どんな服着ていこう……。裕太、また選んでくれるか?」
「おおっ‼ いいの? またかっこいいの選ぶよ! さぁ、敦志! モテまくりでリア充になるんだー!」
裕太のテンションがなんかおかしい。
とうとう頭のネジが外れたか……?
「山内、俺も服選んでもらっていい?」
「うんうん。選ぶよ。二人ともとりあえず今日は一旦家に帰って、それから僕の家に来てよ。フフフ……どんな格好になるのか楽しみだ。ルフフフフフ……。フヒヒッ!」
ヤバい、とうとう裕太が壊れた。
というか最後の「フヒヒッ!」は止めてくれ。
ホラーゲームを想起させるだろうが。
俺はホラーゲームが苦手である。
それはなぜかはまた後々説明しよう。
壊れた裕太を引っ張りながら、俺達は一度帰宅し、裕太の家に集合した。
──
「ん~、やっぱり春だし温かみがあるけれど、暑すぎないコーデがいいんだよね~」
俺には何を言っているのかサッパリだが、裕太は服を手にとってブツクサと呪文を唱えている。
オシャレの「オ」の文字も分からない俺は遼太郎と雑談していた。
「敦志敦志、最近のゲームなんだけど、『魔槍伝説』っていうオンラインゲームがあってさ。武器集めとか楽しいんだよねー!」
「へぇ。でも、MMORPGってマゾゲーとかクソゲーとか多いんじゃないか? 黒沢センパイが『これ無課金者にやらせる気ねェだろ』ってキレてた」
今のゲームは画質は綺麗だけれど昔のゲームのようなやりごたえが感じない。
もっとも、探せばあるだろうが、SS5(スターステーションファイブ)やパソコンのゲームは容量が無いとほぼ無理なので俺達はやらない。
やっぱりひとむかし前の親父世代に流行った「ドラゴンなクエスト」や「スーパーモリオブラザース」の方が楽しいし、やりごたえを感じる。
……俺ってなんかオッサンくせぇな。
「あ、そういえば」
「なになにー?」
「鷹乃が小説がどうとか言ってたな」
「鷹乃って、あの森山さん家にいるギター少年の事だよね? あの子、小説好きなんだ……」
遼太郎が久しぶりに驚嘆した声をだした。
いや、俺もビックリだわ。
アイツ何にも興味なさそうだったから、趣味あるのかって思ってたもん。
「らしいぞ。遼太郎お前も小説読むのか?」
「うん。たまたま観て感動した映画の原作が小説だったから読んでみたら面白くてねー。それで最近ハマっているんだ」
確かに最近原作が小説の映画が増えてきている。
俺はあんまり映画も観ないけれど。
「敦志ー! この服とかどうかな?」
裕太から声がかかる。
裕太が選んだのはオレンジ色のパーカーに黒ジーンズというシンプルながらもカッコよさが引き立つファッションだった。
「おー……。いい感じじゃない? 僕はこれが一番いいと思うけど?」
「んじゃ、これにするわ。明日、この服借りるな」
「はーい! 三石ー! これとかどうー?」
俺の服が決まって次は遼太郎の服を決めるのだが、案外早くに決まってしまった。
前身頃が赤で袖が黒色のロングTシャツとデニムのジーンズを選んだ。
「うんっ。二人ともカッコいいよ。明日は楽しもうね。んじゃ、二人ともじゃあねー!」
裕太は明日が早いらしいのでここでお開き解散となった。
空が少し暗くなった頃、俺と遼太郎で帰る。
「はぁー! 明日楽しみー! 敦志森山さんとの仲を更に発展出来たらいいねっ!」
「ふっ……。おまっ、そうだな。出来たらいいけどな」
「いいなぁ……。彼女」
「お前も作りゃいいのに。まぁ、簡単じゃねぇけどさ」
「非リアな俺には彼女の作り方なんて分かりませ~ん」
かつての自分が言っていたセリフを親友が言っている事に笑みがこぼれる。
「大丈夫。きっとお前にも出来るよ」
「そっかなぁ」
冬の冷たい風が暖かくなり、夜の長さも少しずつ短くなってきた。
春霞。
霞んで見えていた青春の意味が少しずつ春の温かさによって霧が晴れてきた。
あぁ、毎日が楽しいな。
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