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第4章 1年の締めくくりと次のステップ ~青い1日と温かな雪~
52・5時間目 愛の歌
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ねぇ今なにしてる? ねぇ今なにを考えている?
心を溶かしてくれたあの笑顔をもう一度見れるなら
私は冬を越せるのに
会えない 会いたい いますぐあなたの側で笑いたい
「楽しみ……」
私は好きなアーティストの曲を聴きながら、朝の時間を堪能していた。
「あっ、お父さん、おはよう。パンジャム塗って置いてるからね」
お父さんが起きて、リビングに入ってきた。
流していた音楽を止める。
「おはよう。小春、ありがとう。今日は何の日か知ってるか?」
「今日はクリスマスじゃない?」
「そうだ。それもある。敦志君と出掛けるのだろう? 楽しんできなさい。今日は母さんの誕生日だ。だから仏壇を拝んであげて」
その言葉に少し泣きそうになる。
顔と名前しか分からない自分の母親は、仏壇で笑顔を見せている。
それは私に幸せになって良いんだよと言っているようだと私は思う。
だって、自分の子供に幸せになってほしいと思わない親は居ないはずだから。
私は、仏壇の前に行き、正座して手を合わせる。
いつも家を出る前にやっている事だ。
普段なら、家族皆が健康で事故無く今日も生きれますようにとお願いするけど、今日はそれに加えて少しわがままを初めてお母さんに伝える。
息をいつもより吸って、短く吐く。
―私と高橋君が結ばれますように―
仏壇前でそれを口にせず伝える。
お母さんはちゃんと私のわがままを聞いてくれるだろうか。
耳障りな娘と思われないだろうか。
少し不安を持ちながら、私は仏壇を離れた。
チラリと見たお母さんの顔はいつもより優しい笑顔だった。
_______
そうして、食器を洗ったり、洗濯物を早い時間に畳んでいる間に約束の時間1時間前となった。
そろそろ着替えないといけない。
予報では今日は1日晴れる。
しかし、寒さは厳しく、着込んだほうがいい。
と天気予報士が言っていたのでそれに従う。
私が着るのは、白シャツにお気に入りのピンクのカーディガン。
最近、良く着ている服のベースだ。
そして、その上に茶色のロングコートを羽織る。
舞花ちゃんと初めて会った時に着ていたコートと同じブランドもの。
少し透ける素材のスカートに寒さ対策のタイツ。
そして、昔お母さんがお父さんに貰い、大切にしていた赤いマフラー。
これはお父さんに貰った。
『母さんも小春に使って貰った方が嬉しいだろうから』
と昔を思い出してか、少しはにかんで言っていた。
全身鏡の前でおかしくないか確認する。
あ、れ……?
私って。
結構、可愛いんだ。
おかしいと思われるだろう。
自分の事を可愛いと思う女の子なんて。
だけど、なんだか自分の容姿に少し自信をもった気がした。
_______
「お父さん」
私はお父さんを家に出る前に呼んだ。
「どうした?」
お父さんはバタバタと忙しそうにネクタイを締めながら、スーツ姿で来てくれる。
お父さんは30歳。
楽器屋をやっているが、趣味の程度でやっているだけで、それだけで私を養えていない。
私を普通の女の子として高校生にしてあげたいから、こうして何個もバイトを掛け持ちしている。
今日はきっと面接だろう。
「いってきまぁす」
「いってらっしゃい。一度しかない青春を楽しんでおいで」
一度しかない青春を味わい本気で愛した女性がいたから言えるきっと、お父さんだけが言える格言だと私は思う。
心から、お父さんを尊敬して11時。
私は家を出て、高橋君達が住む地域の駅へと歩く。
お日さまが私のこれからを明るく照らしていた。
心を溶かしてくれたあの笑顔をもう一度見れるなら
私は冬を越せるのに
会えない 会いたい いますぐあなたの側で笑いたい
「楽しみ……」
私は好きなアーティストの曲を聴きながら、朝の時間を堪能していた。
「あっ、お父さん、おはよう。パンジャム塗って置いてるからね」
お父さんが起きて、リビングに入ってきた。
流していた音楽を止める。
「おはよう。小春、ありがとう。今日は何の日か知ってるか?」
「今日はクリスマスじゃない?」
「そうだ。それもある。敦志君と出掛けるのだろう? 楽しんできなさい。今日は母さんの誕生日だ。だから仏壇を拝んであげて」
その言葉に少し泣きそうになる。
顔と名前しか分からない自分の母親は、仏壇で笑顔を見せている。
それは私に幸せになって良いんだよと言っているようだと私は思う。
だって、自分の子供に幸せになってほしいと思わない親は居ないはずだから。
私は、仏壇の前に行き、正座して手を合わせる。
いつも家を出る前にやっている事だ。
普段なら、家族皆が健康で事故無く今日も生きれますようにとお願いするけど、今日はそれに加えて少しわがままを初めてお母さんに伝える。
息をいつもより吸って、短く吐く。
―私と高橋君が結ばれますように―
仏壇前でそれを口にせず伝える。
お母さんはちゃんと私のわがままを聞いてくれるだろうか。
耳障りな娘と思われないだろうか。
少し不安を持ちながら、私は仏壇を離れた。
チラリと見たお母さんの顔はいつもより優しい笑顔だった。
_______
そうして、食器を洗ったり、洗濯物を早い時間に畳んでいる間に約束の時間1時間前となった。
そろそろ着替えないといけない。
予報では今日は1日晴れる。
しかし、寒さは厳しく、着込んだほうがいい。
と天気予報士が言っていたのでそれに従う。
私が着るのは、白シャツにお気に入りのピンクのカーディガン。
最近、良く着ている服のベースだ。
そして、その上に茶色のロングコートを羽織る。
舞花ちゃんと初めて会った時に着ていたコートと同じブランドもの。
少し透ける素材のスカートに寒さ対策のタイツ。
そして、昔お母さんがお父さんに貰い、大切にしていた赤いマフラー。
これはお父さんに貰った。
『母さんも小春に使って貰った方が嬉しいだろうから』
と昔を思い出してか、少しはにかんで言っていた。
全身鏡の前でおかしくないか確認する。
あ、れ……?
私って。
結構、可愛いんだ。
おかしいと思われるだろう。
自分の事を可愛いと思う女の子なんて。
だけど、なんだか自分の容姿に少し自信をもった気がした。
_______
「お父さん」
私はお父さんを家に出る前に呼んだ。
「どうした?」
お父さんはバタバタと忙しそうにネクタイを締めながら、スーツ姿で来てくれる。
お父さんは30歳。
楽器屋をやっているが、趣味の程度でやっているだけで、それだけで私を養えていない。
私を普通の女の子として高校生にしてあげたいから、こうして何個もバイトを掛け持ちしている。
今日はきっと面接だろう。
「いってきまぁす」
「いってらっしゃい。一度しかない青春を楽しんでおいで」
一度しかない青春を味わい本気で愛した女性がいたから言えるきっと、お父さんだけが言える格言だと私は思う。
心から、お父さんを尊敬して11時。
私は家を出て、高橋君達が住む地域の駅へと歩く。
お日さまが私のこれからを明るく照らしていた。
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