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第4章 1年の締めくくりと次のステップ ~青い1日と温かな雪~
48時間目 似た者どうし~Her story~
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「ンア、そろそろか……」
俺は、置時計を見て呟く。
もうすぐ、孝木との約束の時間が迫っている。
神谷さんを起こすため、ソファに近寄る。
「神谷さん~、起きろォー! オーイ」
「んっ、んんっ。やめっ……。んふふ。と、う……たぁ……」
とうたという言葉を聞いて心臓が跳ねあがる。
とうた……。
橙太?!
かつての親友の顔を思い浮かぶ。
とうた……。
百合橙太……。
アイツは、もう、死んだけど。
どんな最期なのか分からない。
だけど、死んだということだけは俺は知っている。
別人の可能性もあるので無視をした。
「ンで、舞花ァ。早速でワリィが今から俺達は用事で出掛ける。その間、留守番してくれねェか?」
「うん。分かったよ。何をしておければいいかな?」
「洗い物が溜まってるから、洗っといてくれねェか?」
舞花から了承の答えが帰ってきたので、もう一度神谷さんを起こす。
次は、ソファを揺らす。
「神谷さん、起きろー! オーイ! オイ、オイコラッ! 早く起きろ!」
全然起きねェじゃねェか!
神谷さんの目が唐突に開き、数回まばたきをする。
「はあぁぁぁぁぁ?!」
声を荒げ、そして起きた衝撃で頭同士をぶつける。
視界が揺れる。
「いってェ! 『はあぁぁぁぁぁ?!』じゃねェ! 時間だ! 行くぞ!」
「ちょっ、もうこんな時間?! 菫ちゃん、行くわよ!」
イソイソと身なりを整える神谷さん。
「はいなのー! 桃花ちゃんはもう下で待っているから大丈夫なのー!」
ドタドタと階段を駆け降り出ていく二人。
「ハァ……。目ェ覚めた時から元気な人だな。ンじゃ、行ってくる。舞花、後は頼んだ」
俺は彼女らに続くように階段を駆け降りる。
そして、孝木が乗っているパトカーの助手席に乗り込んだ。
__________
黒沢さん達が出掛けて静かになったリビング。
そこで、私は泣きやむのを待っている。
「舞花ちゃん、どうしたの?」
舞花ちゃんが泣いている。
「ごめんね……」
「私、すっごく不安だったの」
「誰にも頼れなくて。手を伸ばしてくれる人は対価に身体を求めてくる。仕方ない事だと思っていたけど……それでも怖かった」
「だから、救ってくれてありがとう」
実質的に彼女を救ったのは黒沢さん達で私はそのキッカケを与えただけ。
だけど、キッカケを与えてくれる人がいたから今がある。
キッカケを与えてくれる人を好きになったから。
「私達、似ているんだと思う」
私は過去の事を思い出し、舞花ちゃんに語る。
聞いて意味はないだろうけどそれでも言いたかった。
※※※※※
『やめてっ!』
男子の力は圧倒的だった。
3人の野球部の男子に手を押さえつけられ、抵抗しようもするもその抵抗も虚しかった。
『くはぁ……! マジこうゆうの興奮するわー!』
男子達の、哄笑。
私はこれからどうなるの。
なにをされるの。
怖い。
誰か助けて。
そう言葉にしようとするも、何をされるか分からないので言葉にできず。
『んじゃ、小春ちゃんには』
『こ・れ』
そういって、彼が取り出したのはカッターナイフ。
椅子に縛り付けられ、抵抗が出来ない。
『抵抗するナヨー』
3人のうちの一人の男子生徒が、スカートが少しずつ、磨り減らせていく。
ブラウスが肌を少しずつ見せていく。
下着が少しずつ形を、色を見せていく。
『おっほっ! デカっ!』
『それにしても、高橋マジうぜーわ。あのクソリア充』
もう一人の男子は黙々と笑顔で制服を切り刻んでいく。
もう、どうにでもなればいいと思った。
仕方ない事だと思いながら涙を流す。
だけど。
ガラガラガラ……。
私は扉の方向に目を向けた。
三日月をバックに立ち尽くすのは、好きな人。
『『あ?』』
なんで、こんな姿を見られるのか。
高橋君はこの時なにを思っていたのだろうか。
『なにやってんだお前らァァァ!!』
そういって、怒りと後悔を剥き出しで彼らに向かっていったのだろう。
その後の彼の様子を保健室の先生に聞いたとき、安堵した。
『私は彼がそんな事をしたとは思えないけどね』
この時、私は高橋君に、男の人に会いたくなかった。
お父さんはまだ大丈夫だった。
だけど他の人、特に男子生徒には会えなかった。
そして、私は高橋君にお礼を言えずにいた。
『小春、引っ越そうか』
お父さんからそんな話がでたとき、思いっきり泣いた。
もう、高橋君とは会えない。
この時、持っていた感情が恋煩いだと気づくのはもっと後だけど。
そして、私は少しずつ男性の恐怖は無くなっていった。
出席日数もギリギリだけど、普通科の高校に通えるようになった。
それから、私は毎日の中で森山小春として過ごしていった。
だけど、胸にまだ刺さっている恐怖と優しい痛みは取れていない。
そして、夏休み最後のあの日、ネタ集めをするためにたまたまあった帽子屋さんに行こうとしたとき、
『確かになぁ……。なんか見たことあるよ……なぁ?!』
会いたいと願っていた人が山内君と三石君と歩いている。
私は、自分の目を疑い、こんな言葉を彼にかけてしまった。
『あれ……? もしかして、中学の時に一緒だった高橋君?』
と。
この時、凄く恥ずかしかった。
これが私の恋。
もうすぐ、クリスマス。
この再会に感謝しよう。
俺は、置時計を見て呟く。
もうすぐ、孝木との約束の時間が迫っている。
神谷さんを起こすため、ソファに近寄る。
「神谷さん~、起きろォー! オーイ」
「んっ、んんっ。やめっ……。んふふ。と、う……たぁ……」
とうたという言葉を聞いて心臓が跳ねあがる。
とうた……。
橙太?!
かつての親友の顔を思い浮かぶ。
とうた……。
百合橙太……。
アイツは、もう、死んだけど。
どんな最期なのか分からない。
だけど、死んだということだけは俺は知っている。
別人の可能性もあるので無視をした。
「ンで、舞花ァ。早速でワリィが今から俺達は用事で出掛ける。その間、留守番してくれねェか?」
「うん。分かったよ。何をしておければいいかな?」
「洗い物が溜まってるから、洗っといてくれねェか?」
舞花から了承の答えが帰ってきたので、もう一度神谷さんを起こす。
次は、ソファを揺らす。
「神谷さん、起きろー! オーイ! オイ、オイコラッ! 早く起きろ!」
全然起きねェじゃねェか!
神谷さんの目が唐突に開き、数回まばたきをする。
「はあぁぁぁぁぁ?!」
声を荒げ、そして起きた衝撃で頭同士をぶつける。
視界が揺れる。
「いってェ! 『はあぁぁぁぁぁ?!』じゃねェ! 時間だ! 行くぞ!」
「ちょっ、もうこんな時間?! 菫ちゃん、行くわよ!」
イソイソと身なりを整える神谷さん。
「はいなのー! 桃花ちゃんはもう下で待っているから大丈夫なのー!」
ドタドタと階段を駆け降り出ていく二人。
「ハァ……。目ェ覚めた時から元気な人だな。ンじゃ、行ってくる。舞花、後は頼んだ」
俺は彼女らに続くように階段を駆け降りる。
そして、孝木が乗っているパトカーの助手席に乗り込んだ。
__________
黒沢さん達が出掛けて静かになったリビング。
そこで、私は泣きやむのを待っている。
「舞花ちゃん、どうしたの?」
舞花ちゃんが泣いている。
「ごめんね……」
「私、すっごく不安だったの」
「誰にも頼れなくて。手を伸ばしてくれる人は対価に身体を求めてくる。仕方ない事だと思っていたけど……それでも怖かった」
「だから、救ってくれてありがとう」
実質的に彼女を救ったのは黒沢さん達で私はそのキッカケを与えただけ。
だけど、キッカケを与えてくれる人がいたから今がある。
キッカケを与えてくれる人を好きになったから。
「私達、似ているんだと思う」
私は過去の事を思い出し、舞花ちゃんに語る。
聞いて意味はないだろうけどそれでも言いたかった。
※※※※※
『やめてっ!』
男子の力は圧倒的だった。
3人の野球部の男子に手を押さえつけられ、抵抗しようもするもその抵抗も虚しかった。
『くはぁ……! マジこうゆうの興奮するわー!』
男子達の、哄笑。
私はこれからどうなるの。
なにをされるの。
怖い。
誰か助けて。
そう言葉にしようとするも、何をされるか分からないので言葉にできず。
『んじゃ、小春ちゃんには』
『こ・れ』
そういって、彼が取り出したのはカッターナイフ。
椅子に縛り付けられ、抵抗が出来ない。
『抵抗するナヨー』
3人のうちの一人の男子生徒が、スカートが少しずつ、磨り減らせていく。
ブラウスが肌を少しずつ見せていく。
下着が少しずつ形を、色を見せていく。
『おっほっ! デカっ!』
『それにしても、高橋マジうぜーわ。あのクソリア充』
もう一人の男子は黙々と笑顔で制服を切り刻んでいく。
もう、どうにでもなればいいと思った。
仕方ない事だと思いながら涙を流す。
だけど。
ガラガラガラ……。
私は扉の方向に目を向けた。
三日月をバックに立ち尽くすのは、好きな人。
『『あ?』』
なんで、こんな姿を見られるのか。
高橋君はこの時なにを思っていたのだろうか。
『なにやってんだお前らァァァ!!』
そういって、怒りと後悔を剥き出しで彼らに向かっていったのだろう。
その後の彼の様子を保健室の先生に聞いたとき、安堵した。
『私は彼がそんな事をしたとは思えないけどね』
この時、私は高橋君に、男の人に会いたくなかった。
お父さんはまだ大丈夫だった。
だけど他の人、特に男子生徒には会えなかった。
そして、私は高橋君にお礼を言えずにいた。
『小春、引っ越そうか』
お父さんからそんな話がでたとき、思いっきり泣いた。
もう、高橋君とは会えない。
この時、持っていた感情が恋煩いだと気づくのはもっと後だけど。
そして、私は少しずつ男性の恐怖は無くなっていった。
出席日数もギリギリだけど、普通科の高校に通えるようになった。
それから、私は毎日の中で森山小春として過ごしていった。
だけど、胸にまだ刺さっている恐怖と優しい痛みは取れていない。
そして、夏休み最後のあの日、ネタ集めをするためにたまたまあった帽子屋さんに行こうとしたとき、
『確かになぁ……。なんか見たことあるよ……なぁ?!』
会いたいと願っていた人が山内君と三石君と歩いている。
私は、自分の目を疑い、こんな言葉を彼にかけてしまった。
『あれ……? もしかして、中学の時に一緒だった高橋君?』
と。
この時、凄く恥ずかしかった。
これが私の恋。
もうすぐ、クリスマス。
この再会に感謝しよう。
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