親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

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第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~

45時間目 正義

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「敦志、大丈夫なのかな?」
 俺は、今、路地裏に隠れている。
 そこは、公園まで一直線の道のりの場所で、よく公園の状況が見れる。
 敦志の左腕が切られた。
 その瞬間を目にした俺は、自分でも分かるほど大量に汗をかき、顔を真っ青にしている。
 頭のなかを過るのは、中学の頃の記憶。
 リーダーのようにもてはやされなければ気が済まない男の狂ったような哄笑に、まるで奇妙なものをみるような目でみてくる多くの取り巻き達の気味の悪い顔。
 その男の手には、カッターナイフがあった。

 もう、二年以上も前の事だ。
 それなのに、俺の頭からは消し飛んでくれない。


「もう、やめろ! 僕らに関わるな!!」


 その声に俺の意識は、現実に戻される。
 山内が、あんなにも、本気で怒鳴っているなんて。
 あの誰に対しても優しい山内が。
 本気で怒っている。
 宮浦は、その言葉にハッとしたのだろう。
 ようやく、自身のやっていた事が、理解したのだろう。
 後悔に押し潰されそうな顔をしていた。
 敦志は、自身の腕を抑えて、止血をし、痛みに耐えているようだった。
 俺は、はじめからこれをやればよかったのだ。
 だが、もし、来るまでに山内になにかあったら……。
 山内を信じるしかない。
 俺は、以前白膠さんから貰った名刺をポケットから取り出す。
 そして、名刺の裏面に手書きの文字で書いてあるプライベート用の電話番号をスマホに打ち、そして、電話ボタンをタップする。
 何回かのコール音を聞き、『はい』といつしか行ったMISHIHANAでの時と、同じくふんわりと温かい声が聞こえた。
『やぁ、三石君。どうしたんだい?』
「あっ、あの! 白膠さん! 山内が……! 特に、敦志が大変なんです! 宮浦に腕を切られて!」
 俺はつい、焦って言ってしまったが、白膠さんは丁寧に聞いてくれた。
『宮浦……? あの、中学の頃の? その宮浦という子は女の子かい?』
 俺は、疑問符を浮かべて質問している白膠さんに、
「はっ、はい! そうです。白膠さん知っているんですか?」
『あぁ、なんせ、彼女は山内君の中学の頃に起きた事件の加害者だからね。公には公開されてないが、彼女は3人の男子に実害を加えている』
 俺は今までの事が全て一致したような気がした。

「あ、の、来てくれませんか?! もちろん、パトカーで!」
『あぁ、言われなくても分かっているよ。睡蓮達にも電話して、こちらに来るように言っておく。三石君、山内君は強い。だけど、気を付けるんだ。彼女は簡単に人を傷付けるから』
 と白膠さんは言い、電話は切れた。
 警察が来るまで、最低でも10分はかかる。
 山内がそれまでに、死んでいたら……。
 俺はどんな顔をして敦志に会えばいいのだろう。
 そんな事は考えるな!
 ブンブンと首を振り、嫌な考えをやめる。
 山内、頑張ってくれ。
 警察が来るまで。


         __________



 いてぇ。
 宮浦に切られた左腕が痛い。
 制服は買い替えないとな……。
 手にビチャリと付いた血が、やけに生臭い臭いを放つ。
 裕太に貰ったハンカチも、元が無地の白い物なので、血で染まる。
 裕太は、無事だが、俺は肩を切られた。
 三石は分からない。
 くそっ!
 周りに人は居らず、警察を呼ぼうにもコソコソしていたら宮浦にバレる。
 そうしたら、最後、裕太や俺は。
 いやいやいや。
 絶対そんな事になってたまるか。
 俺はふと、森山の事を思い出す。
 物は違えど、アイツはカッターナイフで服を切られていた。
 肌は大丈夫なのだろうか。
 とあの時は、すごく心配していた。
 宮浦、お前、どんな過去を歩いてきたのか知らねぇけど、本当にクソ野郎だな。



         __________ 




 クロスカウンター!
 僕は、カナの頭身に向けて、右腕を振るう。
 直撃したカナは、持っていたナイフを落とし、体制を崩して、頭部から強く頭を打った。

 ハァハァと酷い息切れ。
 そして、シンとする公園内。
 やって、しまった。
 他人ひとを傷付けた。
 僕が。
「ぁ……あ。うぅ……」
 泣きたい。
 だけど、泣かない。
 きっと、カナは気絶した。
 僕は、敦志の怪我も気にして救急車を呼ぼうとスマホを持った。
 すると、
「オイ、お前らァ! 大丈夫なンだろうな!? 敦志、おまッ! 大丈夫か?」
 黒沢さん達が、僕らに寄ってきた。
 神谷さんまでいる。
「どうして来たのですか?」
「ア? 白膠から電話来てよォ、お前らがヤベェって聞いたからよ。走ってきたンだ」
「そっちにねっころがってンのは……アァ、宮浦」
「うん、気絶しているだけなのー! 宮浦ちゃんは命に別状はないからあんしんしてほしいのー!」
 白咲さんが、カナの近くに寄って、脈拍数の確認した。
 神谷さんが、敦志を介抱している。
「ダとよ。山内、とりあえず、お前は俺達の側に居ろ。敦志、お前も今日は泊まっていけ」
「いいんすか? ちょっと待っていてください。遼太郎がまだ!」

「敦志ぃぃぃ! 山内ぃぃぃ!」

「遼太郎?!」「三石?!」
 僕と敦志の声が重なった。
「大丈夫なの?! 敦志?」
「あぁ、大丈夫だ。パトカーが来た! もしかして遼太郎、呼んでくれたのか?」
「うん。敦志が、ヤバかったからね」
「マジでありがとうな」
「敦志、本当にごめん。油断していた」
 僕は、3人こうして集まれたことに初めてホッとした。
 パトカーから出てきたのは、白膠さんだった。
「彼女が、かい?」
「はい。その、お願いします」
 白膠さんは任せろと言わんばかりに頷く。
 一度、全員で話を聞こうということで、僕らは黒沢さんの家に行くことになった。

 振り向くと、カナが白膠さんに介抱されていた。
 だけど、その手首には手錠がかけられていた。
 もう二度と、会えることはないだろう。
 もう二度と、会うことはないだろう。
 僕は、君に救われた。
 君が居たから、楽しい人生になったよ。
 だけど、君が僕に恋していても、僕は君に愛を与えられないんだ。
 ごめんね。
 さようなら、幼馴染み。
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