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第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~
44・5時間目 信念
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「いっっってぇぇぇぇ!!」
「あ、敦志?! な、なんで? って、その腕!」
僕は、突然現れた敦志に戸惑っていた。
だけど、敦志が押さえている左腕を見て、彼が身を徹して僕を守ってくれた事に気付く。
制服の二の腕部分が切られ、そこから血が流れていた。
敦志の手にベトリと血が付いている。
「敦志! 大丈夫?!」
「いてぇけど大丈夫だ。それよりっ!」
敦志はカナの方を見る。
なにやら、カナはブツブツとなにか呟いていた。
こちらからは聞こえない。
「ちょっ、と、とりあえず止血して! こ、これっ!」
そう言って、僕は、カナから昔貰って大切に使っていた白いハンカチを敦志に渡した。
敦志は、ハンカチを受けとると、傷口を押さえて止血をしようとしていた。
ひとまず、敦志は安全だということに気付く。
だけど、僕は、再び膨れ上がってくる強大な怒りに理性を奪われようとしていた。
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
必死に、怒りを抑えようとするも、かなり限界が来ていた。
本当に、ふざけるな。
親友も、彼女も、僕自身も傷つけやがって。
「な、ん、で」
カナが、目を見開き、驚いた顔をしていた。
「高橋が、裕太君を」
「守ったの?」
悪寒が走った。
ゾクゾクゾクとオノマトペが聴こえるほど。
「は?」
少し、冷静になった。
いや、もう、これが怒りは一周すると呆れに変わるという事かもしれない。
なにを言ってるんだ?
本当に僕は分からない。
幼馴染みがクソ野郎で困っています。モテまくりの僕には彼女の気持ちが分からない。
「なんでなんでなんでなんで」
カナは、頭を抱え、ブツブツと呟いている。
敦志はポカンと見ているだけだ。
「おかしいよ。本当に普通なら友達より好きな人優先するでしょおかしいよ。おかしい、おかしい」
宮浦加奈という人間は、本当に可哀想な人間だ。
幼い頃から親からの愛情なんてものは知らず、恋人よりも近すぎた僕を自身の家族のように思い、自由を奪ったり。
そして、それが嫌がっている事に気付かずに、元の関係に戻そうとする。
例え戻れないと思っていても、戻そうとする。
本当に、最低だ。
怒りが、恐怖を支配する。
怒りは、感情を支配する。
怒りは、山内裕太という人間を、悪魔にする。
何があっても、相手に怒ることはなかった。
いつも、平和的に解決しようとした。
多少無茶なお願いも笑顔で応じた。
だけど、今回は、もう、我慢できなかった。
僕には信念がある。
【ありのままの自分で活きる】という信念が。
カナ、宮浦加奈は、それを壊す。
敦志、高橋敦志は、それを認める。
僕が僕であることを否定しない。
「カナ、話がある」
僕は今、どんな顔をしているのだろうか。
分からない。
だけども、凄く怖い顔をしていると思う。
背後から、敦志がビクリと肩を震わせた気配がした。
そして、カナは、何もなかったかのように、片手で果物ナイフを持ちながら、
「なぁに? 裕太君?」
と、不気味すぎる笑みを浮かべた。
もう、それに怯まない。
僕は、出来る限り、声色をいつも通りに装って、
「今さら遅いかもしれない。ちゃんと言えなくてごめん」
とあえて、期待させるような事を言った。
しかし、今から言うのは煽り、カナがまた刺そうとしてくるのには、充分納得の出来る言葉だ。
息を大きく吸う。
そして、その吸った息に、すべての怒りをぶつけた。
「もうやめろ! 僕らに関わるな!!」
「あ、敦志?! な、なんで? って、その腕!」
僕は、突然現れた敦志に戸惑っていた。
だけど、敦志が押さえている左腕を見て、彼が身を徹して僕を守ってくれた事に気付く。
制服の二の腕部分が切られ、そこから血が流れていた。
敦志の手にベトリと血が付いている。
「敦志! 大丈夫?!」
「いてぇけど大丈夫だ。それよりっ!」
敦志はカナの方を見る。
なにやら、カナはブツブツとなにか呟いていた。
こちらからは聞こえない。
「ちょっ、と、とりあえず止血して! こ、これっ!」
そう言って、僕は、カナから昔貰って大切に使っていた白いハンカチを敦志に渡した。
敦志は、ハンカチを受けとると、傷口を押さえて止血をしようとしていた。
ひとまず、敦志は安全だということに気付く。
だけど、僕は、再び膨れ上がってくる強大な怒りに理性を奪われようとしていた。
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
必死に、怒りを抑えようとするも、かなり限界が来ていた。
本当に、ふざけるな。
親友も、彼女も、僕自身も傷つけやがって。
「な、ん、で」
カナが、目を見開き、驚いた顔をしていた。
「高橋が、裕太君を」
「守ったの?」
悪寒が走った。
ゾクゾクゾクとオノマトペが聴こえるほど。
「は?」
少し、冷静になった。
いや、もう、これが怒りは一周すると呆れに変わるという事かもしれない。
なにを言ってるんだ?
本当に僕は分からない。
幼馴染みがクソ野郎で困っています。モテまくりの僕には彼女の気持ちが分からない。
「なんでなんでなんでなんで」
カナは、頭を抱え、ブツブツと呟いている。
敦志はポカンと見ているだけだ。
「おかしいよ。本当に普通なら友達より好きな人優先するでしょおかしいよ。おかしい、おかしい」
宮浦加奈という人間は、本当に可哀想な人間だ。
幼い頃から親からの愛情なんてものは知らず、恋人よりも近すぎた僕を自身の家族のように思い、自由を奪ったり。
そして、それが嫌がっている事に気付かずに、元の関係に戻そうとする。
例え戻れないと思っていても、戻そうとする。
本当に、最低だ。
怒りが、恐怖を支配する。
怒りは、感情を支配する。
怒りは、山内裕太という人間を、悪魔にする。
何があっても、相手に怒ることはなかった。
いつも、平和的に解決しようとした。
多少無茶なお願いも笑顔で応じた。
だけど、今回は、もう、我慢できなかった。
僕には信念がある。
【ありのままの自分で活きる】という信念が。
カナ、宮浦加奈は、それを壊す。
敦志、高橋敦志は、それを認める。
僕が僕であることを否定しない。
「カナ、話がある」
僕は今、どんな顔をしているのだろうか。
分からない。
だけども、凄く怖い顔をしていると思う。
背後から、敦志がビクリと肩を震わせた気配がした。
そして、カナは、何もなかったかのように、片手で果物ナイフを持ちながら、
「なぁに? 裕太君?」
と、不気味すぎる笑みを浮かべた。
もう、それに怯まない。
僕は、出来る限り、声色をいつも通りに装って、
「今さら遅いかもしれない。ちゃんと言えなくてごめん」
とあえて、期待させるような事を言った。
しかし、今から言うのは煽り、カナがまた刺そうとしてくるのには、充分納得の出来る言葉だ。
息を大きく吸う。
そして、その吸った息に、すべての怒りをぶつけた。
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