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第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~

41・8時間目 疑問だらけの文化祭

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「おかー、あつにいー! ってあれ? ねぇねぇ、森山さん。あつにい知らん?」
トコトコと南ちゃんがトイレから帰ってくると、一番に高橋君の事を聞いた。
やめてぇ・・・。名前聞くだけでも恥ずかしくなっちゃうよぉ・・・。
「おぅ、・・・おかえり、高橋君なら、もう体育館に行ったよ。私達も行こうか」
私は咄嗟に平然を装った。
「うん、全然ええねんけど、森山さんどうしたん? なんか変やで。あっ! まさか、あつにいがいらんことやったん?!」
私は平然を装おうとした。
「や・・・。別に。何も高橋君はしてないよ」
「ホンマ?」
机から身を乗り出して、ジィーと見てくる南ちゃん。
この時、目線を反らしたのが間違いだった。
「んー。そうかそうか。ウチわかったわ。 森山さんあつにいの事好きなんやろ?」
だってあつにいって言う度に頬っぺた赤なってんもんと付け足して、
「・・・どうなん?」
これまた、好奇心旺盛の目で見てくる南ちゃん。
「・・・・」
沈黙が流れる。
「・・・黙ってるって事は好きなんやな」
私が何も言えないでいると、南ちゃんは肯定と捉えたのか、こんな事を言った。
「ええやん。ウチも嬉しいわ。森山さんみたいなめっちゃ可愛い子があつにいの事好きになってくれるの。ホンマありがとうな」
「・・・あのね」
私がこんな話の切り出し方をしたので驚いたのだろうか。
「ん?」
「南ちゃんの言う通り、私、高橋君の事好きなの・・・。でも、信じているけど、言わないで欲しい」
「当たり前やろ。ウチはどないあっても言わんわ。それが友達とか仲間やないん?」
まぁ友達とか出来たことないから知らんけどと笑って茶化す南ちゃん。
椅子から飛ぶように立ち上がると、
「じゃ、そろそろ行こか」
「そうだね。ありがとう」
突然、脳裏に母親の記憶のような物がでてきたような気がした。
         _________
『小春。幸せになるんやで』
『あなたの名前は小春、小さいに春って漢字やで。小さくて可愛い春のような子だから小春。ええ名前やろ?』
『おやすみ。小春』
『あ・・・な、た。小春を幸せにしてや、っ、て』
         _________
最後にでてきたのは病院だった。
病気で亡くなったのだろうか。
小さい頃だから、覚えていない。
お母・・・さん。
私、幸せになるからね。
「もっ、森山さんホンマどうしたんや? なんで泣いとんのや?!」
「あ、あれぇ・・・。ど、どうして、かなぁ?」
なぜか泣いていた。
今は居ない母親の事を思い出したから?
どうしてかな?
「ふ、み、南ちゃん。ごめんね」
南ちゃんは、アタフタとでも、私の言葉の意味が分かっているようで、コクリと頷いてくれた。
「うわぁぁぁぁん!わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
私が泣き止むまで、南ちゃんはずっとずっと、頭を撫でて待っててくれた。
         __________
「ンァ・・・! おっせェ・・・!!」
なンでだ。
本当になンでだ。
神谷さん、あの人、遅すぎだろ。
チラリと時計を見てみると、時間が11時を回っていた。
家から出る前に来たLINEじゃ、11時以内には来るって言ってたのになァ・・・。
「神谷さん遅いの~」
菫も心配そうに呟く。
「ひ、人がいっぱい・・・。す、睡蓮、僕帰っていい?」
桃花は、もうかなりアウトの所まで来ているらしい。
「桃花、少し我慢しろ。これが普通なンだ」
「ご~めん!」
と、何度も聞いた事がある声の方に首を傾けたのと、桃花がそんなぁと言ったのは同時だった。
「ごめんごめんね。待たしちゃった?」
俺はぶっきらぼうに、
「待ちましたよ」
と答えたが、菫達は、
「待ってないの~、初めましてなのー!」、「や、待って、ません」
と答えた。
「あら、あなた達が黒沢君の・・・。よろしくね。私は神谷(かみや)って呼んでね!」
「よろしくなのー!」
「よ、よろしく」
菫と桃花がそれぞれ、挨拶をほどほどに終えると、神谷さんはさてと、俺の方向を振り向いて、
「で、高橋君達は?」
「? 学校の中っスけど?」
「それじゃあ、行こう!」
「あっ、ちょ、引っ張るとか何考えてンすか?」
「あっ! 待ってなのー!」
「睡蓮、僕どうしたらいいのー!」
菫は、ワハハーと楽しそうに、桃花はこれから地獄に行くかのように少し涙目になっている。
俺は神谷さんの強引っぷりに従うしたなかった。
本当になンでだ。
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