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第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~

41・3時間目 偶然と確信で咲いた笑顔

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 ー南と小春が敦志達に会う1時間ほど前ー

その前日はとにかく暇やった。
たしかその日、ウチは、夜遅くまで最近のお気に入りであるサバイバルオンラインゲームをプレイしていたはず・・・。
まぁ、覚えてなくて知らんけど。

        ※※※

家庭の事情で学校に行くことが少ないウチはあつにいが憧れやった。

        ※※※

「ここが、高校・・・」
ホエ~と、中学校とは月とスッポンくらい違う高校の大きさに圧倒されながらも、ウチは休日の朝に着慣れない制服を来て、高校の正門をくぐった。
デカい所やなぁ・・・。
大広間にでると、人が徐々に増えてきている。
ウチは、少し俯きながら、あつにい達を探す。
いま思えば、我ながら無謀でアホな考えやけど、この時のウチにはそうするしかなかったからしゃーない。
他の高校生が皆巨人のように大きく見える。
なんやったか、マミーが「あんたは未熟児で産まれたから~なんたらかんたら」って言ってた気がするな。
ウチの身長は多分140くらい。
二次成長期に入っているけど、伸びない身長のわりには、小学校6年生くらいから急に成長した小振りながらもウチの小さい手くらいは余裕で収まる胸が小さな身長のせいで強調して見える。
アニメでも、ゲームでも「ロリッ子」系のキャラってみんな巨乳やない?
正直言って、肩こって痛いし、足元が見えへんから、ウチにとっては邪魔な贅肉でしかない。
これなら、身長の方にいって欲しかったわ。
そして、もうひとつ。
ウチは目が悪い。
これは天性かそれともゲームのし過ぎか、まぁ、前者を望むけど。
自慢できるのは、あつにいよりは目付きはいい。
だから、眼鏡をかけている。
そんなパッと見、【地味眼鏡巨乳ロリ】のウチは、これに【美人】や【可愛い】が入っていれば、モテまくりだったかもしらんけど、都合良く人生は進まん。
廊下の踊り場で、食堂に続く道の階段を登ろうとした時、フニュンと変なオノマトペがした。
ウチの目の前は真っ暗で手の感触が柔らかな物を触っているといっている。
「キャッ! ふっ、だ、大丈夫?!」
聞こえてきたのはいつかの入学式で咲いていた桜の花びらのような優しいソプラノ。
肩を優しく掴まれて、視界が元に戻ったときには衝撃で思わず半泣きになりながら、顔を赤くやった。

が、ガッツリ触ってもうたぁ・・・。
ウチのなんてより比べ物にならんほどの大きな二つの山を変形するくらいガッツリと触れてもうた。
「あ、ぅ・・・。 ごめんなさい・・・」
やってもうたとしょんぼりしていると、その女子高校生のお姉さんは、ウチとおんなじ目線になった。
オレンジ色のリボンがフワリと揺れて、めっちゃ良い匂いがする。
「べ、別に大丈夫だよ。それより、迷子かな? 小学生だよね?」
唐突に小学生と間違えられる。
まぁ、無理もないわな。
「あ、や、ちゃいます。中学生です。人を探してて、その、あ、お、お姉さん、な、名前なゆです? ウチは坂井南でふ」
途切れ途切れでオマケに噛んでしまったウチの言葉を女子高校生のお姉さんは、しっかりと聞いてくれてた。
「えっ、中学生なんだ? 私はねぇ、森山小春。友達がライブをするから応援してきたんだ! 南ちゃん。いい名前だねっ!」
そういって、ニコリと微笑む森山さん。
ヤバッ。めっちゃ可愛い。ウチ男子やったら惚れてしもうてる。
それより、ウチに引っ掛かったのは、ライブという一言。
あつにいもたしかライブするとか言ってたしな。
「それで、その探している人の名前って?」
森山さんは、親切にもウチと一緒に探してくれるらしい。
「あ、の、あつにい・・・あっ、ちゃう! あのっ! 高橋敦志っていう髪ボサボサの人なんですけど、その人分かりますか?」
森山さんの表情が、驚きに変わった。
そして、ぼそりと一言。
「えっ・・・? 高橋君?」
そういって、驚いた顔が元に戻ったときには、ウチらは食堂に向かっていた。

          ー

『あ、の、あつにい・・・あっ、ちゃう! あのっ! 高橋敦志っていう髪ボサボサの人なんですけど、その人分かりますか?』

南ちゃんが放った言葉には、私が1ヶ月近く会いたいと思っていた人の、そしてこれからもうすぐ
会う予定の人の名前だった。
思わず反応してしまった。
高橋君の名前に。
「えっと、南ちゃんは高橋君とどういう関係なの?」
なぜか混乱から私は高橋君と南ちゃんの関係性を聞いていた。
「えっと、従兄です」
高橋君に従妹が居たんだと新たな発見に胸が高まった。
「そ、そうなんだ。ごめんね。変なこと聞いちゃって。それじゃあ、行こっか」
南ちゃんは、ニカッと八重歯を見せてから、初めて笑って、
「はい! お願いします」
と言った。

          ー

移動中の会話は、なんて事のない普通の会話だった。
あんまり話すことが得意ではない南ちゃんは、私からの質問に答えてばかりだった。
でも、たまに高橋君の事を語ってくれる事が結構嬉しかった。
そして、食堂の入り口に着く頃には、私達は仲が良くなっていた。
「お帰りなさいませ! ご主人様! お嬢様!」
それはメイドカフェだった。
メイドカフェ特有の挨拶で迎えてくれた『宮浦』という人の背中に私と南ちゃんは着いていき、カウンターが並ぶ、席へと来た。
さっきから南ちゃんは私の腰にくっつくように抱き付いている。

       「「え?」」

黒いエプロンを来た山内君となぜかメイド姿の三石君が同時に驚きの声をあげた。
すると厨房から誰かが覗いていたのが目に入った。
私は、今までの「会いたい」と思っていた気持ちをもう一度考えた。
これが恋じゃなかったら、なんだというのだろう。
私は言葉を発することが出来なかった。
ただ、高橋君と目があったとき、困ったように微笑んだ。
笑みが出た。
南ちゃんが何か言っていたけど、私には聞こえなかった。
可笑しいくらい、心の中で笑っている。
きっと、この感情が、心の中で記憶だったり悲しみだったり、嬉しさだったり色々あるけれど渦を巻いているような感情が、
「恋」だというものなんだろうね。
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