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第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~

37時間目 憂鬱と過去

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「おー・・・。 結構合わさってきたじゃねェか。 特に高原! ギターよかったぞ!」
「マジでわざとですよね? 名前間違えるの・・・。 昨日高橋って言ってましたよね?」
黒沢センパイは、そうだっけと遼太郎に問い、スイカをムシャムシャ食べていた遼太郎は、言ってましたと言う。
黒沢センパイは、それを聞くと舌打ちした。
人の名前間違えているし、それはないっすよ。
「でも、黒沢センパイが敦志の名前間違えるのは、敦志の存在感が薄いからじゃない?」
「いやいや、そんなわけないだろ。 俺別に存在感薄い訳じゃないしさ」
「えー? そうかな? たまに忽然と居なくなるよね?」
「んなわけあるか?!」
「たまにアイスが2つから3つに増えてるよね?」
「それ、お前が俺の存在忘れているだけだろ・・・って! んな事があってたまるか?!」
「・・・なんてね、冗談だよ」
「むしろ本気だったらそっちに驚く・・・」
「まぁまぁ、いいじゃん。 さ、練習再会!」
「お前ら、手ェ拭けよ」
「拭きますよ。 楽器汚れちゃうので」
「いや、まァ、それもあるけど特に高橋と山内、弦が錆びるし、アンプに繋がってるのに音が鳴らないよ現象が起きるし、最悪弦が切れる原因にもなるからギターやベースに触るときはちゃんと手を洗ってから触ろうな。 ついでに理想は消毒もだな」
「なんで消毒もなんです? 手を石鹸で洗えばいいのでは?」
「なんでも念入りにやった方がいいだろ? それに冬場だと風邪の防止とかノタやインフルエンザの防止にもなる」
「じゃ、アルコール消毒もやった方がいいな」
「そうだね。 楽器は常に無菌の方がいいもんね」
俺達は黒沢センパイの家の洗面台を借り、手を洗い、アルコール消毒をした。
「それにしてもさ」
遼太郎が呟く。
「本当にこの調子で間に合うのかな? メイドカフェもやらなきゃいけないじゃん?」
「遼太郎、とうとうメイドカフェっていうのに抵抗なくなったのな。 それもそうだけど、ほとんど女子がやってくれんじゃねぇの?」
「だってどうせやらなきゃいけないからね。 そうなったら腹を括るしかないなーって思って」
「そうか。 俺も腹を括るか・・・」
「何をする事に腹を括るの?」
「裕太、お前最近腹黒くなってきてないか? なにって、言いたくねぇけどマスター役だよ。 お前はいいよな。 慣れないキャラじゃねぇから。 イケメン店員は楽だよなぁー? 裕太ー?」
「敦志は威圧感がマシマシになってきてるね。 まぁいいや。 僕は普通に選んだだけだよ」
「そうな。 とりあえず遼太郎、明日の6時間目にあるだろ? 文化祭活動。 その時にコッチ演奏の進歩も言って、聞いたらどうだ? たしか宮浦・・・だっけ?」
裕太の顔が一瞬歪んだ気がする。
わりぃな、話の過程で言わなきゃいけなかったんだ。
「たしかそうだった気がする。 それにしてもこの前宮浦さんが、山内がかっこいいだのなんだのしつこかったよ。 うるさいから逃げてきた」
「それはごめんね。 本当に」
突然しゅんとテンションが下がった裕太。
「それで、思ったんだけども。 宮浦さんって何者なの?」
「あれ? 話してなかったっけ?」
「うーん。 聞いていないね」
「あぁ、コンビニ行ったときに成り行きで敦志には話したんだ」
「あ、アイス買いにいってた時? 会ったの?」
裕太は気まずそうにコクりと頷く。
俺は裕太が一言言った後のあの恨むような顔が忘れられない。
そして裕太が言っていた『かなり重たいところ』。
マジでストーカーとかなりそうで怖い。
もし親友の身になにかあったら・・・。
考えるだけで怖くなる。
「実はさ、カナは母子家庭で、母親が仕事で居なかったからよく遊んでて、本当の兄妹のようにいたからね・・・。 おかしくなったのは中学の頃かな・・・。 僕一時期彼女が居た時期があって、その子とは全然仲良くなかったな・・・」
裕太、やっぱり彼女居たんだな。
でも、今は居ないって事は・・・。
「まぁ、結局行く高校が違うから別れちゃったけどね。 カナは僕の高校を割りと何回も聞いてきたし・・・。 一時期はストーカーかなって思ったけど・・・。 やっぱり信じてあげたいよね」
フゥと溜め息をついて裕太は、窓を見た。
反射した夕日の光がやけに悲しさを物語っているようにも見えた。
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