親友がリア充でモテまくりです。非リアの俺には気持ちが分からない

かがみもち

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第3章 選択の文化祭とすれ違う思惑 ~友のために、自分のために~

33時間目 彼らの想い

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「あ、宮浦さん・・・」
俺は呟いてしまった。
山内が今日一番驚いた顔で、宮浦さんは親の仇を目の当たりにしたような顔をして、俺を見た。
「・・・何かな?」
彼女の顔は笑顔だ。
しかし、オーラというか彼女の周りの空気がひどい怒りを表すかのようにメラメラと燃えている。
俺、そうとう嫌われているな・・・。
しかし、ここで黙りをするわけにも行かず、俺は口を開く。
「あ、の・・・、元気すか?」
宮浦さんは、俺が山内に関して何か言うと思っていたのだろう。
俺のこの一言で、そのオーラが一瞬で消えた。
そして、
「ん~? なぁに? どうしたの? 心配してくれてるの? ありがと! 私は元気だよー!」
態度も一瞬で替わった。
彼女は、さっきとは一変、モジモジと恋する乙女のように、気恥ずかしそうに言った。
なるほど。
俺は、ひとつ確かな証拠をつかんだ。
彼女は、宮浦さんは、自身を心配してくれる人に媚びる。
俺はよしっ、と心の中でガッツポーズをした。
しかし、これは誤算だった。
今思えば、この誤算があんな事になったのかもしれない。

          ー

「んじゃ、今後の方針も固まったことだし、今日はこの辺りで終わろうか」
山内が俺達をまとめ、かつ、皆の意見を取り入れたということは言うまでもない。
俺達の班がやるのは、俺と三石と山内による演奏、つまり、バンドを結成することの他にメイドカフェである。
メイドは、女子+三石で、俺はチョビヒゲ丸眼鏡のオーナー、山内はイケメンカフェ店員だ。
俺だけ、慣れない役させやがって。
真っ先にこの役を押し付けた三石、お前絶対許さん。
その時は、山内が想像したのだろう。
笑いを凄く堪えていた。
そんなわけで、俺達は文化祭の準備を進めていくのだった。

その前に、まずはやらなければいけないことがある。
夏休み明けと言えば何があるだろうか。
成績の良い人物ならスラーと何もないかのように過ごせるだろうか。
夏休み明け、そこには大抵の中学高校からは「夏休み明けテスト」がある。
名称は学校によって違えど、そこで夏休みに勉強をしなかった者、夏休みで遊びまくっていた者は、数日間、苦痛の日々を送ることになる。
もちろん、俺もその【夏休みに遊びまくっていた者】だ。
というか、夏休みの間はバイトか、遊ぶかしかしていなかった。
宿題は前日のまだ太陽も昇ってない時間帯に終わらしたからね。
なんて、事はどうでもいい。
まず、恨みたいのは、なんで朝、特に文化祭の準備とか出し物を考える1時間目にそれを言ってくれなかったのか。
遅いよ。
つーか、なんで明日なの?
全然勉強してないじゃん。
学校の宿題だけで勉強になるわけないじゃん。
と食堂に向かいながら、愚痴を吐きまくった。
「しょうがないよ。 敦志、あ、勿論だけど僕はちゃーーんと勉強してるよ」
「俺もだよー! 言うの忘れてた・・・。 ごめん!」
「知ってたのかよ!! じゃあ言ってくれよ!」
俺は人脈が狭すぎる事に後悔する。
くっそ。
俺はため息を言葉に混ぜながら、
「っはぁ・・・。 なんで、山内があんなにモテまくりで、俺は全然モテないんだろうな」
「・・・」
返事が返ってこない。
もしかして、俺、不味いこと言った?
そろりと山内の方を見てみると、プルプル俯いてと震えていた。
怒ってるのか? それとも笑っているのか?
体育大会の時もそうだった。
俺は似たような事を言った。
その時、どこか悲しい顔をしていた。
なぁ、山内。
何があったんだ。
イケメンで、モテまくりで、なんでも出来るお前が、あの事件の被害者じゃないんじゃないかって、思ってしまう。

イケメンだからこそ、モテまくりだからこそ、なんでも出来るからこそ、どこかで誰かに恨まれたんじゃないか。
覚えてないだけで。
なんて、これは俺の憶測にすぎない。
ただ、やっぱり気になるのはー

「ブフッ!!」
「「え?」」
俺と、たぶん三石の声が、情けない声になって、混ざった。
「いやぁ、ごめんごめん・・・。 フフッ・・・」
「僕、最近思っているんだけど、敦志さ、僕の事をどう思ってるの? 嘘は良いよ。 焼肉屋で話したときみたいにさ、言ってみてよ」
俺は一瞬、怒られると思ったが、そうじゃなかった。
だが、これも答えようによっては、怒られる。
慎重に、でも、思っていることを答えよう。
「え、えーと、イケメンで、勉強も出来て、要領も良いし、何より、優しい・・・かな」
山内は、俺の言った事を呟くと、フッと笑って、
「そっ・・・か。 じゃ、この際だから言わしてもらうよ。 僕は確かに容姿も良い方かもしれないし、勉強もそれなりには出来るかもしれない。 でも、要領は良いか分からないし、なんせ僕はドジだし、それにこれは言っておくよ、僕は優しくなんてないよ。 むしろ、優しいのは敦志の方だと思うけど?」
「え? 俺?」
山内は頷くと、
「だってさ、森山さんは、君に会ってからずっと笑顔だったんだよ。 それは君が優しいからじゃないのかな? 後、僕も三石も君が居なかったらもし、こんな高校生活を送れてなかったからさ。 僕は君にとても感謝してるし、本当にそういうところは優しいと思っている」
「はぁ? 何言ってんのかちょっと分からない。 俺が優しい?」
「え? 嘘でしょ? だめだこりゃー。 罰として、僕らの事を下の名前で呼ぶことね!」
「えぇ!! いいけど・・・。 と、とりあえずメシ食おうぜ! 裕太! 三石!」
「なんで、俺の事下の名前で呼んでくれないんだよぉー!」
「いや、呼びやすいから」
「なんだよっ! 呼べよぉー! りょーたろーって呼べよぉー!」
「分かったよ。 んじゃ、メシ食いにいくか・・・。 裕太! 遼太郎!」
「うん! 今日はなんだろね」
「おー! やっぱり、秋刀魚かな? 合ってたら100円なー!」
「お前秋刀魚好きすぎだろ・・・」
俺達は食堂に向かう。
親友の気持ちを新たに聞けて良かった。
俺はこの日、裕太が言っていた事は今も分からない。
けど、周りの反応を見ると、俺は優しいのかと思う。
ちなみに、食堂のメニューは秋刀魚定食で、遼太郎に100円を奪われた事は言うまでもない。
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