どんな世界でもやっぱり俺は嫌われている

かがみもち

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最終章 卒業

最終章 最終話 卒業

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もう、朝だ。
全く寝れなかった。
今日は、卒業式だ。
最後の中学生活。
俺は、とても充実した。
だから、最後、花園さんに、想いを。
俺が素直になる事を。
頑張るんだ。
俺は、君が好きだから。
卒業式は、もう目の前に来ていた。
学校までは、山崎と、行き、卒業おめでとうと、言い合って来た。
花園さんと、会って、普段通りにしながら、卒業式にふさわしい会話をした。
山崎は、彼女との時間を過ごしている。
いいなぁ。
「もうすぐ、式だね。三島君。あのね...」
「ん?」
花園さんは、頬を赤くしながら、こっちを見ていた。
「ううん。やっぱり、何でもない。特待生で合格、卒業おめでとう。」
「花園さんこそ、特待生合格、そして、卒業おめでとう。」
俺は、そう言って、講堂前に、集まる。
もうすでに、泣いている人がいる。
よっぽど卒業が悲しいのだろう。
3年生入場のアナウンスが流れ、一歩を俺は、踏み出した。
卒業式会場は、緊張感溢れる独特の雰囲気が流れている。
俺は、もう、圧倒されない。
保護者の顔は、皆喜びに溢れているようだ。
全員が会場に揃うまで、かなり時間がかかる。
人数が多いと、大変だ。
だが、一時も頬と気持ちを緩ませる事を許されないのが、卒業式。
『これから、第35回、豊桜中学校の卒業式を始めます。』
『礼。』
で、皆一礼をする。
『校歌斉唱。』
学校の校歌を歌う。
ちょっと、ダサい校歌だ。
『来賓の紹介。』
この声で、来賓の方々の紹介が始まる。
正直、今日寝れていないので、寝たい。
と、言うか、これを飛ばしたい。
が、そうならないのが、現実だ。
あくびをかみ殺して、背筋を伸ばす。
数十分後、やっと、来賓の紹介が、終わる。
『卒業証書授与。』
やっと、動ける。
俺は、後半だから、キツイ。
次々に、生徒が、校長から、卒業証書を受け取り、親への感謝を伝える。
なにを言おう?
決めてなかった。
『花園杏さん。』
と、アナウンスが流れた。
俺は、前を向く。
『はい。』
と、可愛らしく、彼女なりの精一杯が俺には、感じられた。
花園さんが、卒業証書を受け取り、正面を向く。
「お父さん、お母さん、私を15年間、立派に育ててくれて、ありがとう。
これからも、おっとりした、性格で迷惑をかけるかも知れないけど、よろしくお願いします。」
拍手が鳴る。
他にも、拍手は、あったが、彼女だけのは、一層大きく聞こえた。
そして、俺の番がとうとう来た。
『三島楓君。』
「はい。」
俺は、長椅子から立ち上がり、校長がいる舞台前に移動する。
今、心臓が跳び跳ねて、宇宙に飛んでいきそうなぐらい緊張している。
校長が、笑って、
「卒業おめでとう。」
と、言っていた。
ので、
「ありがとうございます。」
と、言い、卒業証書を受け取った。
そして、必然的に、正面を向く。
「お母さん、お父さん、僕をここまで、育ててくれて、ありがとうございます。 おかげさまで、立派になりました。ありがとう。」
自分の席に向かった。
良かった。
ちゃんと、噛まずに言えた。
まもなくして、山崎が卒業証書を受け取り、こうして、卒業証書授与は、終わった。
『別れの言葉。』
ここで、俺達は、歌を1年、2年生に披露する。
と、言っても、卒業式の定番、
『旅立ちの日に』だ。
ピアノの華麗な伴奏にあわせて、歌う。
もう、泣いている人もちらほらといる。
俺は、泣かなかった。
本当は、泣けるはずだ。
何かが邪魔をして、泣けない。
1年、2年生の歌を聞き、俺達の精神状態は、いつでも、泣ける状態になっていた。
女子は、皆号泣している。
花園さんも、少し涙を流している。
こうして、別れの挨拶は、済み、卒業式が終わった。
『これで、第35回、豊桜中学校の卒業式を終わります。』
俺達は、最後、花道をくぐって、グラウンドにでて、皆で写真を撮って、帰る。
スマホを持って、まず、山崎と、写真を撮った。
山崎は、涙で顔をぐちゃぐちゃにしていた。
「お、お前、そんな泣くなよ。俺と高校一緒だろ?」
「だ、だっで。ぢゅうがっごうの、楓がいなぐなるもん。」
「ごめん、なんて言ってるか全然わかんねぇ。」
そういいながら、山崎とのツーショットを撮る。
そして、花園さんが近寄って来た。
「ね、ねぇ、三島君。写真一緒に撮ってくれない?」
山崎は、いつもなら、ニヤニヤしているが、今は、涙で気持ちが溢れている。
「うん。全然いいよ。」
花園さんがスマホを、構える。
必然的に、顔が近寄る。
意識しないように、試みる。
「カシャッ!」
「ありがとう。三島君。良い思い出になったよ。」
「うん。俺も。ありがとう。」
「...ところでさ、私三島君に、話があるんだ。」
「うん。何?」
「私、三島君の事が...」
「ちょっと待って!」
花園さんが、驚いた顔をしている。
そりゃそうだ。
結構な声量で、叫んだ。
「俺に言わして。」
「俺、花園さんの事が好きです。だから、付き合ってください。」
ありふれた言葉。
だけど、これは、二人の最高の言葉だ。
「はい。私も、三島君の事が好きです。よろしくお願いします。」

  ーそして、少しの時が経ったー

「もぉ、三島君!遅いよ。学校遅れたらどうするの?」
花園さんに、怒られた。
遅刻なんて、ほとんどしないはずなのにな。
「ごめん、まさか、寝坊するとは。」
「しょうがないなぁ。はい。お弁当。」
「ありがとう。あ。」
花園さんが、キョトンとした目で俺を見ている。
背は、春休みの間に、伸びて、俺は、身長を抜かされた。
高校の制服姿も可愛いな。
高校に着いて、第一声は、これだった。
「よぉ、楓。花園!オオッ!サマになってるなぁ。良いカップルじゃん!」
「テメーは一言多いんだよ。山崎!」
花園さんは、横で苦笑いをしている。
山崎は、髪の毛を前より、短くしている。
「ごめん、ごめん。で、楓、小説の方はどうよ?」
「あぁ、あれ?凄いよ。めっちゃ、読まれているし、書籍化もされたよ。」
「タイトルは、なんていうの?」
「それはね...」
二人がこちらを見る。
俺は、二人の最高の仲間がいる。
一人は、最高の親友。
もう一人は、最高の彼女。
俺は、嫌われてなんていない。
もう、陰キャラでも、ない。
二人に会えて、良かった。
「タイトルは、どんな世界でもやっぱり俺は嫌われている。」
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