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第2章 隣の席のあの子

第2章 第10話 修学旅行 ~1日目~ 後編

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俺たちが乗っている飛行機が、傾きだした。
離陸の時もそうだが、とても耳が痛くなる。
高度で重力が変わるとかなんたらこうたらって山崎が自慢気に言っていた気がする。
とうとう飛行機が着陸するので、俺は耳を押さえながら、飴を舐めた。
パイナップルの味が痛みを少し和らげてくれる。

それから、俺は半放心状態になりながら、飛行機を降りた。
無事に長崎に着いたのだ。
久しぶりの外は、夏に近づいてるからか、気温が高く感じた。
暑い。
俺たちは飛行機を降り、同乗していた学年主任の引率により、空港を出て、バス停に着いた。
そのバス停は土産店と一体化にしていて、時間潰しには十分だった。
20分ぐらい、山崎と花園さんとこのお土産どうするだの、カステラもいいねだの、色々言い合って、買わないが、楽しんだ。
俺は山崎に最初の飴を食べられたので、500円だけ使って、イチゴミルク飴と、カステラ味のキャラメルを買った。
俺が買い終わったぐらいに、他の飛行機で来た我が校の生徒達と合流し、売店のおばちゃんに皆でお礼を言ってから、バスに乗り込んだ。
席は1度目同様、山崎が隣だった。
俺が彼に送った一言目は、「お前やってくれたな」だった。
こいつに飴を食べられたから。
山崎はメンゴーと言い、軽いノリで謝った。
まぁ、慣れているからいいけどさ。
その後は、山崎が横1列を巻き込み、ババ抜きをしたり、バス内でのカラオケで、俺は好きな歌を熱唱した。
三島スゲー歌うまいなと皆から口々に言われ、俺は少し喜んだ。
花園さんはまるで、花のような歌い方をして、とてもキレイな声だなと少しドキッとした。
オオー!とバス内に歓声が響きわたる。
今日で、花園さんの取り柄を2個見つけた。
彼女は真剣と、キレイな声が出せることだろう。
俺は花園さんの照れている姿を見ながら、楽しみが隠せなくなって、ふふふと笑ってしまった。
山崎はすかさず、
「おーおーおー!三島君青春してんなぁ!」
と大声で言ってきたので、うるせぇ!と言って、彼の肩を殴る。
今のは、入った!と言い、涙を浮かべた彼。
バス内を一層、笑いの雰囲気にしてくれるのは山崎は一番の取り柄だろう。
俺は改めて、良い親友を持ったなと思った。
心から感謝しよう。
バスが止まる。
俺たちはあれから、雲仙地獄や、原爆資料館に行き、湯けむりに蒸せたり、祈りを捧げたり、してかなり、長崎を堪能した。
それから、今日泊まる旅館に着いた。
高本荘は旅行雑誌で見たよりも、外装はいかにも歴史を感じる落ち着いた感じだった。
内装もこじんまりしていて、いかにも、日本らしい和室畳の部屋だった。
また、学年主任の長々と話す諸注意を聞き流して、部屋の鍵を受けとると、山崎が跳び跳ねながら、「おい!楓早くこい!」と俺たちの先導をしてくれる。
めちゃくちゃテンションが上がっているようだ。
鍵を開け、俺と、山崎と、クラスメイトが口をそろえて、『おおー!』と言った。
見事にシンクロした。
部屋にはいり、鞄を置いて、寝転がり、サービスのお菓子を皆で分けあい、とても、時間が過ぎて、晩御飯の時間が来た。
とても、日本らしい和食で、とても、美味しかった。
サービスで、チャンポンを頂いた。
これもまた、美味しかった。
そして、大浴場に浸かりながら、今日1日あったことを頭の中で整理する。

朝、友人と一緒に来たこと。花園さん達はとても、楽しそうにしていたこと。
バス内でキャラメルをもらったこと。
お返しに飴をあげたこと。
友人に飴を全部食べられたこと。
飛行機での花園さんの横顔がちょっと可愛いと思ってしまったこと。そして、飴をあげたこと。
カラオケで皆から歓声をもらったこと。
花園さんの歌声にドキッとしてしまったこと。
楽しそうにしている、君がいつまでもその笑顔でいてほしいと思ったこと。
そして、旅行に着いて、友人と同様に、はしゃいでいる彼女。
・・・これが、これぐらいだろうか。
これはいいんじゃないか!と頭の中で勝手に盛り上がっていると、親友から、水をかけられた。
「冷ったぁい!!」
皆は俺を笑い、バス内での、山崎と一緒になってしまった。
いい意味で笑われるのも、いいなと思った。
風呂から出て、レクリエーションの時間になった。
マジックをしたり、一発芸を披露したり、中には、2人組でギターを演奏している子も居た。
音楽というのは人をこんなに興奮させるのかと感心しながら、レクリエーションを楽しんだ。
そろそろ寝る時間が近づき、山崎と部屋に戻ろうとしたときだ。
クラスの女子が山崎を呼んでいた。
俺はなんだろと思ったが、よくよく考えれば、修学旅行というたった一回のイベント。
このときに、告白という、イベントが起きるのは当たり前の事だ。
山崎の返事は分からないが、気が合う子だったらいいなぁと親友の幸福を祈りつつ、部屋に戻る。
レクリエーションの会場を出て、まもなく、花園さんがこちらにやって来た。
花園「三島君お疲れ様」
彼女にしては、中々気が合う言葉だなと思いながら、「花園さんもお疲れ様」と言った。
俺たちは人通りが少ない通路を歩きながら、色々な感想を言い合った。
そして、2階、俺たちの部屋の階に着くと、「俺、部屋ここだから。」と言って、「花園さんお休み。また明日」と言った。
花園「うん、三島君もお休みなさい」と今日のカラオケの時みたいな声で言った。
可愛いなと思いながらふふふと笑いながら、部屋に戻った。
部屋にはいると、もう一人のクラスメイトがスナック菓子を広げて、炭酸飲料を買ってくれていた。
俺は、飲み物代を彼に渡して、山崎を待っていた。
すると、すぐに彼は帰ってきて、いつも以上にヘラヘラとした顔をしていた。
彼は帰ってきたなり、俺告白されたわーと言った。
俺は広めるなんて人が悪いことはしないが、もう一人のクラスメイトは分からない。
まぁ、知った所で俺にはどうでもいいが。
よかったなといい、祝福の言葉をかけてあげた。
お菓子を食べ、ジュースを飲み、パシリに使われたが、全然不快に思えず、むしろ楽しかった。
そして、就寝の時間ギリギリまで、俺たちは楽しんだ。
就寝時、俺たちは明日も楽しもうと言って、俺は睡魔に身を寄せた。
疲れが自動的に溶けていった。

今日、人生の中で一番楽しかったかも。
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