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7月17日 二周年記念SS
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「……えーと、なんで、ここに皆来ているんですか」
とあるカフェの店内に呼び出された高野悠真──彼は困惑していた。
「俺たちなりのサプライズだー。おめでとうよー」
親友の大川蓮生ことレイがドヤ顔で話すのを聞きながら悠真は集まってくれた六人の人物を見た。
悠真の隣のテーブルに座っている三人組の男子でツンツンとした特徴的な髪のよく関わりのある先輩がいた。
彼の名前は高橋敦志。悠真が通う高校のひとつ上の先輩である。その友人である超ハイスペックイケメンの山内裕太と三石遼太郎がいた。それに加えて、悠真の隣の席に座っている少女と楽しそうに話す見慣れた女性の姿もあった。神谷心結という敦志や悠真たちの知り合いの大学生である。
元々は少数ばかりの集まり─レイとその少女に悠真が公募した執筆が賞を獲得したお祝い─だと思っていのに、レイや少女が悠真のためにひそかに敦志たちを呼んでいたらしく、こうして、皆で祝うこととなったのだ。
「高野くん、その、おめでとう。夢が叶ってよかったね」
悠真の隣に座るセミロングの少女が笑顔で彼を祝福した。彼女の名前は上野菜実。悠真のクラスメイトで友人、そして密かに片想いをしている相手である。
「……ありがとう。上野さん。うん、本当に嬉しいよ」
悠真としては信じられないくらいの嬉しさである。睡眠時間を削り、ひと夏を犠牲にしてまで書いた作品が、正式にこの世に送り出される。もっと、たくさんの人に読んでもらえる。自分が感じた思いをたくさんの人に受け取ってもらえる。そう思うととても嬉しく、楽しい気持ちになる。
「悠真は普段、小説よく読んでたもんな。やっぱ、書いてると楽しいか?」
「……そうですね。一時期ちょっとしんどかった時期もありましたけど、それでも、取り戻してこうして出来てよかったです」
「あら、小説好きなの? 私も好きよ。どんなジャンルの作品が好きかしら?」
心結がその問いかけに悠真は、
「えぇ。好きですよ。僕は青春恋愛モノとミステリーが好きですね」
と早口に言った。こうなってしまうのは理由がある。悠真は過去の経験から女性と関わる際は細心の注意を払っている。それは誰も傷つけないという信念から来ているものだが、どうしても、彼をぎこちなくさせてしまう障害にもなりうる。菜実のような慣れている異性ならば大丈夫だが、それでも菜実と出会った当初も、悠真は敬語で早口だった。
「悠真やっぱすげぇよなー。尊敬もんだー」
「……ありがとうな、レイ」
褒められ慣れていない悠真は素直にありがとうと言うくらいしか出来ない。あとはかなり照れることが多い。
こうして、たくさんの人に祝ってもらえることはとても嬉しいことだ。悠真はようやく、手にした実績は本当に名誉なものなのだと再び実感した。中学の頃は学校でもかなり浮いていた。問題児を蔑むような視線にも耐え、己と心を知った。
悠真の青春は中学からではなく、高校からだった。
それも全部知ったのは「今」があるからだ。
蓮生や菜実といるこの日常がとても楽しく、悠真を成長させている。
もう二度と、失いたくない彼の青春。ゆっくりと丁寧に生きていこうと悠真は再び決意した。
ちらりと悠真は菜実の横顔を見る。心結とガールズトークをしている菜実は、とても可愛らしい。
好きな人の笑顔を見るだけで悠真は幸せな気分になれる。この幸せを噛み締めていこうと悠真はゆっくり、カフェオレに口をつけた。
とあるカフェの店内に呼び出された高野悠真──彼は困惑していた。
「俺たちなりのサプライズだー。おめでとうよー」
親友の大川蓮生ことレイがドヤ顔で話すのを聞きながら悠真は集まってくれた六人の人物を見た。
悠真の隣のテーブルに座っている三人組の男子でツンツンとした特徴的な髪のよく関わりのある先輩がいた。
彼の名前は高橋敦志。悠真が通う高校のひとつ上の先輩である。その友人である超ハイスペックイケメンの山内裕太と三石遼太郎がいた。それに加えて、悠真の隣の席に座っている少女と楽しそうに話す見慣れた女性の姿もあった。神谷心結という敦志や悠真たちの知り合いの大学生である。
元々は少数ばかりの集まり─レイとその少女に悠真が公募した執筆が賞を獲得したお祝い─だと思っていのに、レイや少女が悠真のためにひそかに敦志たちを呼んでいたらしく、こうして、皆で祝うこととなったのだ。
「高野くん、その、おめでとう。夢が叶ってよかったね」
悠真の隣に座るセミロングの少女が笑顔で彼を祝福した。彼女の名前は上野菜実。悠真のクラスメイトで友人、そして密かに片想いをしている相手である。
「……ありがとう。上野さん。うん、本当に嬉しいよ」
悠真としては信じられないくらいの嬉しさである。睡眠時間を削り、ひと夏を犠牲にしてまで書いた作品が、正式にこの世に送り出される。もっと、たくさんの人に読んでもらえる。自分が感じた思いをたくさんの人に受け取ってもらえる。そう思うととても嬉しく、楽しい気持ちになる。
「悠真は普段、小説よく読んでたもんな。やっぱ、書いてると楽しいか?」
「……そうですね。一時期ちょっとしんどかった時期もありましたけど、それでも、取り戻してこうして出来てよかったです」
「あら、小説好きなの? 私も好きよ。どんなジャンルの作品が好きかしら?」
心結がその問いかけに悠真は、
「えぇ。好きですよ。僕は青春恋愛モノとミステリーが好きですね」
と早口に言った。こうなってしまうのは理由がある。悠真は過去の経験から女性と関わる際は細心の注意を払っている。それは誰も傷つけないという信念から来ているものだが、どうしても、彼をぎこちなくさせてしまう障害にもなりうる。菜実のような慣れている異性ならば大丈夫だが、それでも菜実と出会った当初も、悠真は敬語で早口だった。
「悠真やっぱすげぇよなー。尊敬もんだー」
「……ありがとうな、レイ」
褒められ慣れていない悠真は素直にありがとうと言うくらいしか出来ない。あとはかなり照れることが多い。
こうして、たくさんの人に祝ってもらえることはとても嬉しいことだ。悠真はようやく、手にした実績は本当に名誉なものなのだと再び実感した。中学の頃は学校でもかなり浮いていた。問題児を蔑むような視線にも耐え、己と心を知った。
悠真の青春は中学からではなく、高校からだった。
それも全部知ったのは「今」があるからだ。
蓮生や菜実といるこの日常がとても楽しく、悠真を成長させている。
もう二度と、失いたくない彼の青春。ゆっくりと丁寧に生きていこうと悠真は再び決意した。
ちらりと悠真は菜実の横顔を見る。心結とガールズトークをしている菜実は、とても可愛らしい。
好きな人の笑顔を見るだけで悠真は幸せな気分になれる。この幸せを噛み締めていこうと悠真はゆっくり、カフェオレに口をつけた。
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