天才侍、異世界に!!

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012 殺戮の予兆

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何時もと変わらぬ授業の風景
否、教員は異常と思っているだろう
規格外のアビスと、それに密着するメアリーが居るのだから

入学から3日、それだけで2人は有名だった 学校中で
家柄、容姿、実力 3点が最高峰であるメアリー
それに付き添う 否、付き添われていると言うべきか不明だが 護衛の少年
その実力はメアリーを抜き去り学年1位を取っている

多くの男子は、メアリーに惚れた
だが、その前にはアビスという番犬が睨みを効かせている
メアリーも態々、アビスとの仲を悪くしてまで他の異性と絡もうとも思わない
アビスだけ居れば充分なのだから、当然だ

だが、1つ意外な事がある
執拗いようだが、アビスを見た異性は彼に好意を持ってしまう
そうだ、女子達が近付くのだ

「ねぇ、話し掛けて良い?」

当然アビスにそれを言った だが、アビスは好意には疎い
メアリーに視線を向け、許可を仰いだ
彼女は嬉しかった、彼女達ではなく自分を気にしてくれたと
アビスは自分が、話し掛けられているのに 私に話をしに来たと考えているのだ
アビスがメアリーにしか興味が無いように感じられて嬉しかった
自然と口角が上がってしまう、それは微笑みに見えた
アビスはその笑みを、了承と取った

「良いぞ、但し俺は容赦なく斬る」

そう言って席を立ち、メアリーを譲るように移動した
そして、彼女らの一挙動も見逃さない程に研がれた警戒の刃が話し掛けて来た3人に添えられる
3人も自覚した、少しでも怪しい行動を取れば殺されると
アビスは見てはいない、その目線は周囲を警戒している
だが、3人は猛獣にでも睨まれている感覚に陥った

「あぁ、違うの アビス君、君に話し掛けに来たの」

「…何者だ?」

「え?」

「気功の色が人間と違うが、貴様は何者だ?」

アビスの目でさえ、欺いてしまうような変装
そこまで完璧な変装は、彼女の誇りでもあった
だが、不審に思ったアビスは見るを変えたのだ

眼に魔力を込めれば魔力が見える、彼女の変装は魔力さえも変質する
能力を使えば神の眼になる、それも生物として自体を騙る彼女の変装は暴けない
神さえ騙す完全無欠、そう彼女も思っていた

だが、アビスはもう1つ眼を持つ
大地にも流れ巡る生命の根源、その力
人はそれを、気功と言った

魔力同様、眼に込めれば相手の気功が可視化出来る
気功は言わば生物自身の生命エネルギー、同じ人間でも波長が大きく異なる
種族が違うともなれば、気功覚えたてだろうと分かるほどに

アビスは気付いたのだ、微細な違和感から
3人の内、2人はアビスの警戒の刃で萎縮したのだ
だが、彼女だけは平然と話し掛けて来た
順位は32位、その程度の実力で耐えられる物では無かった

「よく分かったわね、私は」

言い切れない、理由は簡単だ
黒い煙へとなったら、言い切れる筈もないだろう
彼の能力は進化を遂げているのだ、最初さえ手で触れなければならない物を
遠距離ならば魔力に纏わせなければならない物を、死神となった事で
触れずとも纏わせずとも、殺せるのだ 神でさえも
正体は毛頭聞く気など無いのだ、変装を少しでも弱めれば神眼で見えるのだから

「立て」

直後、アビスは席に座るメアリーを立たせる
立ったメアリーを、突如抱き寄せた
メアリーの眼前に胸板が来る、メアリーは自分の体温が上昇するのを自覚した

「離れるなよ」

そう言われた途端、メアリーは大層嬉しそうにアビスに抱き着いた
まるで甘える子供のように、遠慮無く

刹那、2人の姿は教室から消える
校庭に居た、筆記問題に出た転移術式 それだ

「貴様らだな、洞窟の奥に魔物を置いたのは」

校庭には、魔道士らしき人々が大量に居た
見事な隠密術式で学園の結界を突破、侵入しアビスの居た教室へ攻撃を加えようとしていたのだ
アビスは、メアリーを抱き寄せていない右手を上へ上げた

「これくらい防いでみろ」

そして、下へ降ろした
膨大な魔法が魔道士に降り掛かる、その数 計り知れず
雷炎、水氷、岩風、光闇
尋常じゃない魔力の衝突と、背反した属性の反発力
それは、見事に爆発した

普通なら、学園さえも更地になっていただろう
障壁が現れる、それは爆発のエネルギーを全て中に押し込んだ
暫時の後、障壁の中は土煙が充満していた

消える障壁、風に吹かれて彼方へ翔ぶ土煙
煙の晴れたそこには、無惨な光景が広がっているのだ
火傷、凍傷、切傷、裂傷 それで収まる筈もない
原型さえも留めていない、もはや人さえも分からない

アビスは刃で、皮膚を裂き肉を斬り骨を断ち血を浴びる
この行為の虜だった、だが今は無残に黒煙へ変えられていく
若しくは、原型を留めないほどに滅茶苦茶にするのに虜にされていた

多くの生徒は、教員含め恐慄いた事だろう 2人を除いて
メアリーと学園長だ

メアリーは、「流石です!!」と上へ縋るように顔を近付けたアビスを褒めた
学園で散々とアビスに陶酔した彼女は、もはや羞恥する感受性が変わっていた
男子なら大抵が卒倒しそうな仕草や行動を余裕でアビスに行っていた
今も、アビスが下を向けば上目遣いの顔と制服の隙間から谷間でも見えた事だろう
否、見えなくとも彼の体には現在進行形で彼女の双丘によるフィジカルアタックが炸裂しているのだが
もはや幾ら鈍感でも気付きそうなものだが、アビスは未だ気付かない メアリーの好意には

片や学園長は、驚いていた
自身も気付かなかった敵に気付き、それほどの強者の集団を一撃の上で殺戮したのだ
アビスへの畏怖と共に、自身の慢心を自覚したのだ
気付かせてくれたアビスに、感謝に似たものを覚えながら

「殺戮の厄災」

アビスは鼻で短く嘲笑う

「笑わせる、本当の殺戮を見せてやろう」

獰猛な笑みを浮かべながら、アビスは呟いた
まるで仇敵の首に鎌を掛けたかのように嬉しそうな表情をして
それが見えた者はメアリーだけ、彼女も又 アビスと同じ殺戮好きになっていた
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