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過去篇・終わりと始まり。 前編

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皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんは、勇者の水野優一です。



自分で勇者などと言うのは凄く抵抗があるのですけどね、魔王を倒す為に『勇者召喚』されて日本から異世界に来てしまった以上

勇者である事が私の存在意義ですから仕方ありません。


私を勇者召喚したのはコックローチ帝国という国の王様で名前は

『ブラウン・wing・コックローチ3世』さんです。

目的としては私に魔王を倒して欲しいという事ですけれど、もしかしてこの世界には魔界があるのでしょうか?

とても興味があるので1度お会いしたいですね♪


魔王さんにはそのうち会いに行くとして、私がこの世界に来てから毎日午前中は剣と魔法の実戦訓練、午後からこの世界の一般常識やら歴史やらを学んでいたら

あっという間に1ヶ月が経っていました。


そしてこの1ヶ月でどうやら私は、コックローチ帝国の偉い方々に『ハズレ勇者』と思われています。

そりゃそうです、1人で国を滅ぼせる力があるとか言われてる勇者なのに、1ヶ月も訓練して一般兵士より少し強い程度なんですから(笑)

でも大丈夫!

私は『あほ』かもしれませんけれど『馬鹿』ではありません。王様から「魔王を倒して下さい!」と言われた瞬間から情報収集をしつつ色々と探っていたのです。

逃げられないように私に魔法で呪いのような物がかけられていますが、ポンコツ勇者だと思われた私には

優秀な教師が付けられ魔法を勉強させて頂いたお陰で、自分で呪いを解呪出来るほどに魔法に詳しくなりました。

実力を隠してポンコツの振りをして良かったです。魔王を倒せると判断されたら即戦場送りですよ

勇者は例外無く様々な能力が高いと言うのは嘘では無かったようで、冷静な判断能力も桁違いに上がってますからね。

日本に居た時の私の判断能力なら今ごろは騎士団長を叩きのめし、お山の大将となって天狗になっていた事でしょう。

あははははは♪



「ミズノ様、そろそろお昼ご飯の時間ですが」

「では、いつものお店に行きましょうか?」

「喜んで♪」


私は声をかけて来た勇者専属メイドのミシェルさんと一緒に、城下町にあるお食事処に向かいます。

私が未だに呑気にコックローチ帝国に居る理由は、はっきり言ってメイドのミシェルさんが原因です。


この国に召喚された日から、私のお世話係として付けられたメイドのミシェルさんですが、目的は私の監視でしょう。

その証拠に1日中私から目を離す事はありませんし、涼しい顔でトイレまで付いて来ますからね

さすがにトイレの個室にまで一緒に入ろうとするのは止めて頂きました。同時にミシェルさんがトイレに行く時に、私を一緒に連れて行こうとするのも止めて頂きました。


トイレは無事に1人で行く事を許されたのですが、交換条件としてミシェルさんが私から離れる時は、私は指定された場所から動かない事を約束させられました。

勇者の力があれば気にせず動けば良いと思われるかもしれませんけれど、それは絶対に駄目です!

勇者の力が目覚めてからというもの、ミシェルさんの機嫌を損ねる言動をしようとしただけで

私の中の危機察知能力が警報を鳴らしっぱなしなんですから(汗)


たぶんですけど、ミシェルさんの攻撃は神話級の超レアスキル『物理攻撃完全無効化』でも無ければ防げないでしょう。

そして私は簡単に串刺しになる未来が見えます。

ミシェルさんが居る限り逃げる事は不可能なのです!


もはや私を訓練して強くするより、ミシェルさんが魔王を倒せば、、、

おっと、危ない(汗)

以前、安易にそんな事を考えてミシェルさんに睨まれたのを思い出しましたよ

勇者の精神防御を簡単に突破してくるミシェルさんに逆らう勇気など、私にはありません!


「ミズノ様、急がないとお店が混んでしまいます!」

「分かりまし、、、」

「どうしました?」

「いえ、あそこのお店にあるのって米ですよね?もしかしたらライスとか白麦という名前かもしれませんけれど」

「あれは家畜の餌として一般的な穀物ですね、『餌麦』や『家畜麦』と呼ばれています。」


この世界に来て約1ヶ月、ついに米を見付けましたよ♪

小麦があるなら米もあるという確信はあったのですが、王城の料理人に米の事を聞いても知ってる人が居なかったので

この国には米は無いと思っていたら、まさかの家畜の餌でしたか。

『餌』であるなら食用として一般販売はしてませんからね、これは盲点でした。


「ミシェルさん、私ちょっと餌麦を買って来ますね」

「ミズノ様が欲するという事はあれは異世界の料理の材料なのですか?」
 
「私の世界ではパンのように主食として食べていましたね」

「では買って参ります!ミズノ様はここでお待ちを」

「えっ?!ちょっ、ミシェルさん?」






『ドンッ!』

「お待たせしました、これくらいで足りるでしょうか?」

「足りますけど買い過ぎではないでしょうか?」

「ミズノ様の無限収納に入れておけば問題ありません。」

「そうですね(汗)」


ミシェルさんがあっという間に100キロほど米を買って戻って来たのですが、100キロの米を小石のごとく軽々と持ち運ぶのはどうなのでしょう?

まぁミシェルさんの身体能力だから可能な事ですけど、日々のトレーニングは偉大ですね♪


ミシェルさんがこれほど大量の米を買って来たのは、単純に日本の料理に興味を示があって食べたかっただけでしょう。

ミシェルさんとは一緒に居る時間が長いと言いますか、1日の99%を一緒に過ごしているので

意味の無い雑談やら日本の事やら様々な事を話してますから。

とりあえず米を持っていつものお店に行きますか

今から行くお店の店長なら米に合う料理も作ってくれそうです♪





つづく。

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