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第21話 料理長のアマンダさん

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side:リネット


「ねぇねぇリネット様、そろそろ良いんじゃないですか?」

「確認してみようか、パカッと、、、」

「「「「「おおっ!」」」」」


フライパンの蓋を開けただけなのに皆大袈裟なリアクションだなぁ(笑)


私は今、庭の隅っこでパンケーキを作っている。

泡立て器を使い、気合いでひたすら空気を含ませた卵に小麦粉を混ぜて、底の深いフライパンに入れて蒸すようにして焼いている。

前回作ったパンケーキが思いのほか人気だった為に、ジュリアさんや屋敷を警備している皆さん(屋外担当)から、また食べたいという要望に応えて作っている。

元々は孤児院の皆で食べられるように、卵に空気を含ませて嵩増しして、とにかく見た目の量を増やす事だけを考えて作った節約フワフワパンケーキだから

侯爵家の料理人さんに頼んでもっと美味しいパンケーキを作って貰えば良いのに、と思っていたけれど

厨房では毎日の食事を作るのが精一杯で、パンケーキのようなおやつを作る余裕は無いらしい。

言われてみれば今この場に居る人だけでも10人は居るし、夜間警備担当の人達とは未だに会った事すら無い。

侯爵家で働いている人達の正確な人数は分からないけど、50人以上は居るのかもしれない。

とは言え

パンケーキを作るようになってから、警備担当の人達と話をする機会も増えたし、気軽に話しかけられるようにもなったから、少しくらい腕がパンパンになって翌日筋肉痛になる程度は何の問題も無い。


「リネット様こんにちは、タイミング良くパンケーキが完成した所かねぇ?」


背後から声がしたので振り返ると、料理長のアマンダさんだった。

アマンダさんはグレゴリオさんの奥さんで、身長190㎝を越える恰幅の良い女性だ。

グレゴリオさんとアマンダさんが並んで歩いていると、もはや壁にしか見えないんだけど

仲の良い夫婦の見本としては最高の2人かもしれない。


「アマンダさんこんにちは、もしかしてパンケーキを食べに来たんですか?」

「あぁ、リネット様が旨い菓子を作ったって騒いでる輩が多くて気になってたからね。私にもひとつ良いかい?」

「勿論です。どうぞ」

「では、ありがたく頂くとしよう。あんっ、もぐもぐ、、ふむふむ、菓子と聞いていたけど砂糖は使ってないんだね。素材の甘さだけで充分美味しいから無くてもいいか。
それと、このフワフワ食感は凄いけど、ちょいとフワフワ過ぎる気がする」

「元々が空気を含ませて見た目の量を増やす事を目的に作ってましたから」

「リネット様の出身は確か孤児、、、いや、いいか。そういう目的なら完成度は100点に近いだろうね。
パンを焼くより短時間で作れるから、忙しい朝には良いかもしれん。甘さ控え目だから卵やベーコンを挟んでも旨いだろうね」

「「「「「やったぁー!」」」」」


えぇっ?!

そっ、そんなに喜ぶ事なのかな?


「あんたらもうちょっと静かに喜びな!リネット様が驚いちまってるじゃないか」

「「「「「すいませんでしたっ!」」」」」

「だっ、大丈夫です。気にしてませんから(汗)」

「朝食のメニューは、『パン・スープ・ベーコン・スクランブルエッグ』でほぼ固定だから、さすがに飽きてるんだろうねぇ。
ちなみに、クラウス様はあんな見た目でも菓子が好きだから、他にも菓子を作れるなら、夜食に持って行けばきっと優しくしてくれるよ♪」

「は?、、えっ、ちょっ、アマンダさん?!」

「あははは、久しぶりにウブな反応が見れて楽しいねぇ♪
アタシは面倒だから作って無かったけど、ホイップクリームとカスタードクリームの作り方を教えるから、さっそく今夜クラウス様に持って行っておいで!
クラウス様に味の感想を聞くのを忘れないようにね♪」


ひぃぃっ(照)

どうしてここで働いてる人達って、何でもかんでも包み隠さず言うのかなぁ?

そういうの嫌いじゃ無いけど、場所はもうちょっと考えて欲しい。

だがしかし

ホイップクリームとカスタードクリームを教えて貰えるのは素直に嬉しい♪

どういう物なのかは全然分からないんだけどね(笑)

アマンダさんの話し方から甘いソースのような物だろう。

今夜に向けて頑張るぞぉー!





つづく。
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