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第4話 出発

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side:リネット


ロウレシア帝国のクラウス・シュナウザー侯爵との顔合わせの挨拶をしてから十日が経った。

私は今、バーナード子爵が用意した豪華な馬車でロウレシア帝国のクラウス・シュナウザー侯爵の屋敷に向かっている。

バーナード子爵家からシュナウザー侯爵の屋敷までは馬車で3日程度、さほど遠い訳では無いし狭い馬車で長時間の移動も苦にはならない

野営時に用意された天幕も、すきま風の入らない立派な物だったから、孤児院で寝泊まりするよりも快適なくらいだ。

ただし、慣れない土地での野営は思いのほか緊張をしていたようで、馬車の揺れも相まって昼間はずっとウトウトしていた。

まぁずっと座っているだけでする事も無く退屈だった事も多分にあるだろうけど。


バーナード子爵邸を出発してから3日目の夕方、小高い丘を越えた所で城壁に囲まれた立派な街が見えた。

所々城壁が崩れているのを見ると、この地でも紛争の時に激しい戦闘があった事を伺わせる。

ただし

城壁の外には見渡す限り黄金色の麦畑が広がっていて、今も多くの人達が笑顔で収穫作業をしている真っ最中だ。

この光景を見るだけでもシュナウザー侯爵が優れた領主である事は、いかに世間知らずの私でも分かる。


小麦畑を見ながら馬車で城門をくぐるとそこには、綺麗な石畳の道が広がる街だった。

人の足くらいの大きさの石を敷き詰めた道を馬車で通ると、細かな振動がお尻伝わって来るけれど、全く不快な感じは無く、むしろ心地好い振動で眠けが襲って今にも寝てしまいそうだ。

この石畳の道ひとつでもロウレシア帝国の技術の高さが伺える。


心地好い振動に身を委ねていると、商店が集まる地区に来たのか人々の声がより一層大きくなった。

馬車の窓から見る街の人達は皆一様に明るい表情で、お店の商品を物色していたり、屋台の料理を片手に持ちながら器用に人混みをすり抜ける人など様々だ。

紛争の影響が少なかったバーナード子爵領の街と比べても、この街の方が何倍も活気があり

馬車の中から眺めているだけでも胸が弾んでウキウキして来る♪


しばらくして馬車は大きな屋敷の前に停車した。

ここがクラウス・シュナウザー侯爵の屋敷なのだろう。

馬車の到着に気付いたのか屋敷の中から人が出て来た。

背が高くガッチリした体型の大柄な男性と、短剣を腰のベルトに差した小柄な女性

いや、隣に居る男性が大き過ぎるだけで女性の身長も180㎝くらいはありそうだ。

となると大柄な男性の身長は2mくらいはあるかもしれない。

他にはメイド服を着た女性が3人、こちらは皆身長が160㎝程度だから小柄な女性と言って差しつかえ無いだろう。


馬車を降りると大柄な男性が近付いて来た。


「ようこそおいで下さいました。バーナード子爵令嬢のリネット様で間違いありませんね?」

「はい、私がゴブルス・バーナード子爵の娘リネットです。」

「私はシュナウザー侯爵の護衛をしているグレゴリオと申します。隣に居るのがリネット様の専属護衛で名をジュリアと言います。ジュリア挨拶を」

「はっ!シュナウザー侯爵からリネット様の専属護衛を拝命したジュリアです。案内役も兼ねておりますので、質問等があれば気軽に声をおかけ下さい。」

「あっ、はい。グレゴリオさんとジュリアさんですね、これからよろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。
申し訳ありませんが坊ちゃ、、、いえ、クラウス様は仕事の最中で手が離せません。夕食には顔を出すでしょうから、リネット様はそれまで部屋でゆっくりしていて下さい。
ジュリア、案内は頼んだぞ」

「お任せあれ!リネット様こちらです。」

「はい」




 
つづく。
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