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第3話 クラウス・シュナウザー侯爵

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side:クラウス・シュナウザー侯爵


「坊ちゃんお帰りなさい。バーナード子爵の娘はいかがでした?まさか初対面で嫌われたりしてませんよね?」

「お前は俺の事を悪魔か何かだとでも思っているのか?それと坊ちゃんは止めろ!」

「悪魔は良いですな♪
敵さんからすりゃあ坊ちゃんの強さはまさしく悪魔のような存在でしたからなぁ、がははははは!」


はぁ

目の前で豪快に笑う大男を見ていると思わずため息が出てしまった。


私は今、ルゼッツ公国のゴブルス・バーナード子爵の屋敷からロウレシア帝国に帰る馬車の中に居る。

バーナード子爵の娘を嫁に貰う事になったから挨拶に来た帰りだ。

目の前に座っているグレゴリオは、長年私の護衛をしている信頼出来る奴なのだが、未だに豪快に笑っているせいで馬車の中の気温が上がってすこぶる不快だ。

今すぐ笑うのを止めろ!

と言いたい所だが、グレゴリオは身長2m体重120㎏の巨漢だ。

下手に動かれると馬車のバランスが崩れて転倒の恐れがある。命を危険に晒すよりは我慢する方が、、、

いや、待てよ

馬車の転倒とストレスを溜め込むのとでは、果たしてどちらの方が命を縮める事に繋がるのだろうか?


「それで、バーナード子爵の娘さんはどうだったんです?」

「父親に似ず地味な娘だったな。どうせ孤児院か何処かで見付けて来た娘だろうよ」

「良かったじゃないですか、政略結婚なんざ下心満載の御令嬢が嫁いで来たって文句は言えんのですから。
その娘もバーナード子爵から何かしら指示を受けてるかもしれませんが、こっちには知られて困るような事も無いですしね。
孤児院出身なら適当に働かせて飯を食わせておけば問題は無いでしょう。」

「我が家秘伝の堆肥の作り方を盗まれるのは容認出来んぞ」

「バーナード子爵が土いじりに興味があるとは思えませんな。野菜なんて種を土に植えて水をやれば勝手に実がなると思ってそうです。
それよりも、嫁を貰うんですから子作り頑張って下さいよ♪我がロウレシア帝国も働き盛りの若者が減って大変なんですから」

「お前はバーナード子爵の送り込んだ刺客かもしれん女と子作りしろと言うのか?」

「坊ちゃんなら心配要らんでしょう。暗殺者が坊ちゃんをナイフで刺そうとしたら、ナイフの方が折れたってのは有名な話ですぜ♪」

「あれは服の下に隠してあったナイフにたまたま当たっただけだ。暗殺者に気付かなかった護衛である貴様の失態で死にかけただろうが!」

「それについちゃあ言い訳のしようがありません。俺の首を差し出すので他の護衛は許して頂きたい。」

「貴様の罪は首1つで許される事では無い。死ぬまで護衛として安月給でこき使ってやるから覚悟しろ!」

「へへっ、坊ちゃんには一生付いて行きやすぜ♪あっ?!安月給ってどれくらいですか?俺にも家族が居るんで養っていけないくらい安いのはちょっと(汗)」

「心配要らん、お前の嫁さん、アマンダは優秀だから養って貰え」

「ええっ?!いや、妻が優秀なのは認めますがね。夫としての体裁っつうもんがあるでしょう?」

「残念ながら、俺は夫になった事が無いからさっぱり分からん」

「坊ちゃんそりゃ無いっすよぉ~(泣)」


まったく、デカい図体をしてメソメソするんじゃねぇよ、暑苦しい奴め。

グレゴリオの嫁さんのアマンダは、シュナウザー侯爵家の料理長だから、仮にグレゴリオが引退したとしても充分に暮らして行けるだろう。

なんにしてもロウレシア帝国に帰るまでグレゴリオがこの調子では俺の精神が保たん。

せっかくルゼッツ公国まで来たんだ、名物料理でも食って帰るか。

肉料理があれば良いんだが、、、バーナード子爵に聞いて来るんだったな

いや、あいつに聞いたら自国民も嫌がる癖の強い郷土料理を教えられそうだな

グレゴリオなら何の肉でも喜んで食べるだろうから、適当に屋台の料理でも探すか。




つづく。
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