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第36話 護衛のお仕事

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side:フィオナ


「はぁ、落ち着かない」

「フィオナ様ってこういう場所苦手っぽいですよねぇ。でも心配無用です。フィオナ様に物理的にも精神的にも危害を加えようとする者が居れば、私が物理的に排除します!」

「えっと、ここに居るのはそれなりの身分の人か、その人に仕えているメイドとか護衛だから、物理的に排除するのは問題が、、、」

「大丈夫ですよぉ、ルーファウス様も『遠慮は要らん』って言ってましたから♪」


アリスさん、それは全然大丈夫ではないです(汗)


私はアリスさんとチュニーと一緒に王宮から少し離れた王妃様が住む離宮に来ている。

ちなみにチュニーは周辺警戒をしてくると言ってここには居ない。

通常なら田舎の貧乏貴族の娘である私が王妃様の住む離宮に来る事は無いのだけど、今回は王妃様から招待状が届いたので私に断るという選択肢は無い。


王妃様から届いた招待状の名目は『茶会』となっていたけれど、離宮に来て私は招待状の本当の目的を理解した。

それは

王妃様が新作のドレスをお披露目したかっただけだろう。

王妃様は今も招待客を捕まえては、お互いのドレスについて話をしているみたいだけど、王妃様のドレスを褒める以外は出来るはずもない。

新作のドレスを披露する為だけにわざわざ呼び出されるのはどうかと思うけど、王宮で盛大にお披露目パーティーを開催しないだけ、我が国の王妃様は分別があると言えるだろう。

王族の皆様はお世辞にも質素な生活をしているとは言えないけれど、国民に重税を課して贅沢三昧の生活をしても居ないし

贅の限りを尽くした王宮や離宮を造って生活しても居ない、いわゆる『まとも』な人達ではある。

ただし

本日王妃様から招待状を貰って離宮にやって来たのは、私を含めて地味な見た目のご婦人や令嬢ばかりだ。

ようするに王妃様を引き立たせる為だけの人選って事だろう。

それに今の私は名門ブルーム公爵家当主のルーファウス様と婚約している身だから、招待客の箔付けとして手頃な人材とも言える。


我が国の王妃様は至極『まとも』な御方ではあるけれど、毎年1回くらいはこうして人を集めてチヤホヤされないと、やってられないらしい。

王妃という立場は自由に散歩にも行けないし、食事も誰かが毒味をした後の冷めきった料理を食べる事になるから

この程度の我が儘を言うくらいはこちらとしても許容範囲内だ。


「アリスさん、ただいま戻りました。」

「お疲れチュニー、どうだった?」

「王妃様の住む離宮ですから、問題を起こしそうな人はそもそも呼ばれませんよ。」

「呼ばれた人の中に、問題とならない程度の問題を起こしそうな人は居るのね?」

「えーーっと、フィオナ様の前で報告するような事では無いかなぁって思います(汗)」


周辺警戒からチュニーが戻って来たけれど、何か隠し事をしているっぽい。


「大丈夫よチュニー、私の安全に関わる事だものきちんと情報は共有しましょう。」

「フィオナ様もこう言ってるし、報告しなさいチュニー」

「はい。招待客の中にフォルティエス公爵家のルティーナ様が居ました。」


あぁ~

ルティーナお姉様も呼ばれてたのか。

そりゃあフォルティエス公爵家から、二女である私だけを招待する訳には行かないよねぇ

たいした力は無くとも我が家は公爵家、ぞんざいに扱って良い理由は無い。

しかもアリスさんとチュニーの反応を見る限り、ルティーナお姉様の浅慮な言動によって、過去に些細なやらかしをしてるのは知ってるっぽいなぁ。


「王妃様に挨拶したら隅で大人しくしておきましょう。さすがのルティーナお姉様も離宮で浅慮な言動はしない、、、と神様に祈っておくわ」

「そうですね、私もお祈りしておきます。ルティーナ様が何かやらかすとフィオナ様に飛び火しないとも限りませんし」

「えっと、事前にこっそり排除するのは駄目でしょうか?証拠なんて残さず平和的にきっちりやりますよ?」

「離宮でそういうのは止めとこうかチュニー」

「フィオナ様がそう仰るなら従います。」


うーむ

初対面の時よりチュニーの性格が過激になっている気が、、、(汗)

いや、こっちが素なのかな?

アリスさんもチュニーも本職はメイドじゃなくて護衛だからなぁ

とにかく

物理的にも精神的にも、私が危険な目に合わなければ護衛の出番は無いんだから、さっさと王妃様に挨拶して目立たぬように大人しくしておこう!





つづく。
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