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第17話 アリスさんとお出掛け

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side:フィオナ


「さぁさぁフィオナ様何処へ行きます?珍しい調味料を扱うお店でも良いですし、それとも国中の珍味を扱うお店に行きますか?」

「調味料は気になるけど普通のお店で良いからね」


私は今、メイドのアリスさんに案内を頼んで街に買い物に来ている。

ただアリスさんの案内しようとする場所が、料理に必要な物を扱ってるお店に偏ってるのは、私の作る料理を気に入ってくれてる証という事で良いよね?


「ねぇアリスさん、乾物を取り扱ってるお店ってあるかな?干し肉以外の物があれば欲しいんだけど」

「干し肉以外の乾物となると薬屋さんにしか無いですけど構いませんか?」


あぁ~、やっぱりそうなっちゃうのかぁ

キャラメリゼ王国でも乾燥させて保存性を高めた食べ物は沢山あるけれど、乾燥させると何故か薬という扱いになるのよね

キノコ類も食材として普通に売られているのに、乾燥させると薬屋さんしか取り扱わないという謎。


「是非薬屋さんに案内して下さい。」

「かしこまりました。」



アリスさんの案内で薬屋さんにやって来た。

おっ!

さっそく見慣れた物を発見、唐辛子を乾燥させた『鷹の爪』だ。

説明書きには血行促進の薬とあるけど、まぁそのまんまだよね。

うーん

鷹の爪も料理のアクセントに使いたいけど、唐辛子は刺激物だからもう少し皆の好みを把握してからにしようかな。

他に料理に使えそうな物は何か、、、

あっ?!


「この黒っぽい板状のやつって昆布だよね?」

「確かに昆布ですね。小さく切ってから口の中で舐めてると美味しい味が出て来るので、お金が無い冒険者が空腹を誤魔化す為によく買ってますよ」

「へぇ~、そういう使い方もあるんだ。昆布があるならカツオ節も欲しいんだけど」

「了解です。すいませーん店長さーん」


アリスさんが大声で店長さんを呼ぶと、お店の奥から年配の女性が出て来た。


「そんなに大声で呼ばなくても聞こえてるよ。何か探し物かい?」

「カツオ節を探しているんですけどありますか?」

「カツオ節だって?!お嬢さんが探しているのは、カッチカチで石みたいな物の事で間違いない?」

「ええ、間違い無いと思います。」

「まさかあんな物を欲しがる人が居るとはねぇ。削ったカツオ節は良い香りがして絶対貴族に売れるから!って知り合いに頼まれて仕入れてみたものの、見た目が悪いのか全然売れなくて困ってたんだよ。持って来るからちょっと待ってておくれ」

「分かりました。」


確かに削ったカツオ節は良い香りだけど、それは料理に使ってこそだからなぁ

貴族に売れるって言った知り合いの人は多分だけど、茶道や華道のように香りを楽しむ『香道』に使う事を想定してたんじゃないかな?

『香道』を嗜むような人達にカツオ節を売るには、御用商人に頼む必要があるから薬屋に置いているだけでは売れる事は無いだろう。

お陰で私はカツオ節を買えるから良いんだけど。


「お待たせ。コレがお嬢さんが探しているカツオ節で間違い無いかい?」


おおっ!

店長さんが手に持って来た物は間違い無くカツオ節だ。

しかも私の前世の記憶が正しければ、カツオ節の表面には凄く綺麗にカビが生えていて、『本枯節』と呼ばれる高級カツオ節なのでは?

まぁ『本枯節』なんて高級過ぎて買えないから、ネットショップで写真を眺めるだけだったけど


「私が探しているカツオ節で間違いありません。お幾らですか?」

「1本銀貨5枚だよ」

「っ?!」


作るのに手間隙がかかるだけあって、カツオ節はこの国では高級品だったか(悲)


「ふふっ、その表情だと予想より値段が高かったようだね。だが、こっちとしても売れ残って在庫になるのは困る、そこで取り引きをしないか?」

「私は取り引き出来るよう物は持っていませんけど」

「大丈夫だよ、私が欲しいのはカツオ節の利用法だから。それを教えてくれるならカツオ節1本で銀貨1枚にしようじゃないか、どうだい?」

「それはとてもありがたい提案ですが、金額に見合うかどうか、、、」

「さっきも言ったけど、このままだと売れ残って倉庫の肥やしになるだけなんだし、なによりもカツオ節を作った奴がタダ働きになる。人助けだと思って頼むよ。」

「そこまで仰るのなら、使い方は凄く簡単です。お湯に削ったカツオ節を入れると旨味が出ます。そのままだと物足りないので塩や醤油等で味を整えれば、それだけでスープとして充分かと思います。
勿論野菜やキノコを入れた方が美味しいですけど」

「ほぉほぉ、お湯にねぇ、、、ちょっと待ってな!」


言うが早いか店長さんはお店の奥に行ってしまった。

チラッと見えた店長さんの表情が、とても不敵に見えたのは私の見間違いであって欲しい(汗)





つづく。
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