テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織

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第8.5章 雨季から夏のなんやかんや

閑話 キャラバンシティからの手紙 

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side:ドーベルニーオ・ダニーホワイト・モノセロス男爵


ぐぅ~

うむ、腹が減ったな。

畑の収穫が終わったばかりだというのに、早くも食料不足に悩まされるとは

我が家は子供が多いから沢山食べるとは言え、畑の収穫量が少な過ぎるのだ。


そもそも獣人というのは、主君に仕え命令を与えられてこそ能力を発揮出来るのであって

畑を耕し『収穫』という未来の為に、今何が必要なのかを考えるのは最も苦手とする分野だろう。

人族が管理している畑と比べると、我々の畑の収穫量は半分にも満たない

それでも、あと20年や30年も頑張れば人族の畑のようになるかもしれんが、それまで獣人国は存続していないだろう。


先の大戦で自由を勝ち取ったまでは良かったが、王族は軒並み戦死や病死をして王の血筋が途絶えてしまった。

仕える主君が居なくなった為、仕方なく合議制を採用して戦で荒れ果てた国内を立て直す事にしたのだが

仕える主君がいなくなり、充分な能力を発揮出来なくなった獣人など赤子同然

国内を立て直す事にあえなく失敗、滅亡に向けて歩み始めてしまい、それを止めるには既に手遅れ

最早獣人国に先は無い!

だからこそ少し早いとは思ったが、強引にポチを送り出したのは正解だった、ポチもまさか成人する前に送り出されるとは思っていなかっただろうがな(笑)



「あなた~、子供達から手紙が届きましたよ~♪」


妻がいつになく嬉しそうにやって来たから何かと思ったら、子供達から手紙が届いたのなら納得だ。

成人して家を出た子供は何人か居るが、手紙を書いて寄越すような者が俺の子供に居ただろうか?

数年前にコリーが1度だけ手紙を寄越したがそれきりだ。トラブルに巻き込まれて助けを求めるような手紙でなければ良いが


「誰から手紙が届いたんだ?」

「それが、コリー、ダックス、ポチの3人から連名の手紙です。ポチがどうしたか心配だったんですけど、コリーと一緒に居るならとりあえず安心だわ♪」

「待ちなさい母さん、ダックスとコリーが一緒なのはともかく、ポチは外国に行くと言ってただろう、それが何故3人一緒なんだ?」

「それは分からないけれど、とにかく手紙を読んで見ましょうよ」

「そうだな、どれどれ、、、」



「ねぇ、あなた、なんて書いてあったの?皆元気にしてる?仕事は?ちゃんとご飯食べてるかしら?」

「えぇーと、ダックスとコリーは働いていた商会が潰れてバルゴ王国に仕事を探しに行って、そこでポチと偶然出会ったらしい。
3人とも池田屋商会という所で働いていて、楽しく生活してるみたいだ」

「良かったわぁ~、ポチなんて成人してないのに無理矢理送り出してしまったから、私本当に心配で、でも手紙を出す余裕があるならとりあえず安心ね♪」

「本当にそうなら良いが、人族の国で獣人にまともな仕事があるとは思えんな、それも3人一緒にだ。
実は助けを求める手紙なんじゃないか?何処かにSOSのサインが隠されて、、、」

「あなた、馬鹿な事を考えてる暇があるなら、山でイノシシでも狩って来て下さいな。ついでにキノコを採るのも忘れないで下さいね、このままでは食料不足で今年の冬は越せるか分からないんですから」

「そうだな、、ん?、、、母さん!今すぐ口座の残高を確認して来てくれないか」

「残高ですって?我が家に確認するほどのお金があると思ってるんですか?」

「そういう意味じゃない!子供達からの手紙に金を振り込んだと書いてあるんだ、生活に余裕があるからとな」

「なんですって?!急いで確認して来ます!」


ダックス、コリー、ポチ、あいつらはいったいどんな生活をしているんだ?

盗んだ金をわざわざ振り込んで来たとも思えんから、仕事の報酬が良いという事なのだろうが


「あなた!はぁ、、はぁ、、、確認して来ました、これが振り込まれていた金額です」

「どれどれ、、、なっ?!ちょっと待て、間違いじゃ無いんだな?」

「はい、私もギルドで3回確認しましたから」

「獣人国とバルゴ王国では物価が違うから比較しても意味はないが、それでも半年は楽に暮らせるだけの金を振り込んで来るとは、バルゴ王国はそれだけ豊かな国という事か」

「こちらで現金収入と言えば、わずかな税収くらいですから」

「よし!母さん、今すぐ荷物を纏めて旅の準備をしなさい、俺は爵位を返上して来る」

「あっ、あなた?!」

「心配するな、獣人国では爵位など既にお飾りでしかない、それにこのままでは冬は越せん!

それなら、一か八かコリー達の居るバルゴ王国に行ってみよう。

手紙には弟や妹達が家を出て働くなら歓迎するとまで書いてある。向こうに行ってもどうなるか分からんが、少なくとも冬は越せるだろう」

「そこまで考えているなら私は付いて行くだけです。さっそく保存食を買って来ます!」

「頼んだよ」


はぁ~

まさか家から追い出すように送り出して来た子供達に頼る事になるとは

成長を喜ぶべきなのか、己の不甲斐なさを嘆くべきなのか

両方なんだろうな

3人が働いている池田屋商会で雇って貰えると良いのだが、どうなることやら

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