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第8章 空へ

第166話 池田屋商会presents 第1回春のお花見大会 その3

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「親方さん、オリビエさん、これがたこ焼きという料理です。熱いんで半分に割るか、小さい穴を開けて少し冷ましてから食べて下さいね」

「ほぉ、これはまた良い匂いだ、トンカツソースを使っとるが豚カツやカツサンドとは全然違うんじゃな」

「本当ね、丸いボールのようなかたちに何か秘密があるのかしら」

「「いただきます」」

「アチチッ、はふはふ、、、うんうん♪ここでビールを、んぐんぐんぐんぐ、ぷはぁー♪ワハハハハハ、これはまた抜群にビールに合うな!

こんなに酒に合う料理を次々作るのに、お前さんが何故ドワーフで無いのかが不思議で仕方ないわい」


「うふふ、上にかかってるソースが美味しいのは当然だけど、丸い方にもちゃんと味が付いていて、中のトロッとした食感が癖になりそう♪

このトロトロを閉じ込める為に丸いボールのかたちが必要なのね!シンさんが作る料理はどれもよく考えられていて、毎回驚いてばかりだわ」



親方さんとオリビエさんは似たもの夫婦だけど、こういう時の反応は全然違うんだな。

たこ焼きも口に合ったみたいだし良かったよ



「はふぅー、はふぅー、はふぅー、らんなぁ(泣)」


あちゃ~

ケイトよ

俺の話を聞いてなかったな。たこ焼きは熱いから冷ましてからって言ったのに

出来立て熱々のたこ焼きをそのまま口に放り込んで、熱さでどうにもならなくなってるじゃないか

このまま何もせず放っておいて話を聞く大切さを、たこ焼きの熱さとともに胸に刻んで欲しいけど、さすがに可哀想だな


「ほらケイト、冷えたビールを少しずつ飲んでたこ焼きを冷やすんだ」

「う゛ん!、、んぐ、、んぐ、、、はぁーーー!死ぬかと思った(泣)」

「まったく、はふはふ、ケイト殿は、はふはふ、何をしているのですか」

「ほうらよひぇいと、はふはふ、これおいひぃけど気をつひぇないと」

「だってぇ、料理は熱々が美味しいじゃんかぁ~」


ニィナもメリルも俺の話をちゃんと聞いていたようで、熱々ながらも食べられる温度に冷ましたたこ焼きを、はふはふしながら食べている。


ニィナはぽん酢をかけた『ネギぽん』、メリルは『餅チーズ』にタラコマヨソースが気に入ったか

ニィナに至っては日本酒を持ってきて飲みながら食べてる、たしかに『ネギぽん』なら日本酒が会うか


ニィナが日本酒を飲んでるのを見て他にもたこ焼きに合いそうな酒をスキルの「店」で探していると

いつの間にか本店の従業員達も匂いにつられて集まってきていた。

本店にも犬耳の獣人が居るから匂いには敏感なんだよ、でもこれだけの人数にたこ焼きを焼くのはちょっとなぁ(汗)



「ご主人様、向こうは私にお任せ下さい!」


俺が本店の従業員達を見て困った顔をしていたからだろうか、カスミが気合いの入った顔で俺を見ている

ありがたいねぇ、ありがたいけど花見の時くらいゆっくりしてて欲しいんだよな。

我が家のみんなは基本的に常に何かしていたい性格みたいで、ほっといたらずっと仕事してるありがたいけど困った性格なんだよ

でも、自主性は尊重したい


「それじゃあカスミ頼んだで」

「はい!」


俺の役に立てる事が嬉しいのか、カスミは耳をピコピコ動かしながら本店の従業員達にたこ焼きを焼き始めた

何回か焼く所を見せれば誰かに交代しても大丈夫だろう。


カスミにはあとでご褒美にイチゴ大福をあげるとして、俺は日本酒をスキルの「店」から購入、ポチッとな


「オリビエさん、新しいお酒試してみませんか?」

「喜んで!!」


凄い良い笑顔で返事をしてくれたけど、さっきらニィナが飲んでる日本酒が気になるのかチラチラ見てたからな(笑)

ちなみにスキルの「店」に売ってた日本酒は春の新酒らしいが、誰が造っているかなんて気にしてはいけない

夜にでも創造神様にお供えをして感謝をするだけだ。



「新しいお酒って言いましたけど、以前におでん屋で出してた酒と同じ種類なんですけどね、『トクトクトクトク』どうぞ」


俺は富士山が彫刻された薩摩切子のグラスに日本酒を注いでオリビエさんに渡す。

グラスの色は透明で、彫刻して削られた部分だけが白くなっていて、注いだ酒の色に富士山が染まるっていうお洒落なやつだ


おでん屋でも日本酒は出してたけど、あれは安物の日本酒におでんの出汁を入れて出汁割り酒にしてたから、ちゃんと日本酒を味わうのはこれが初めてになる

ドワーフには酒精が弱いかもしれんけどどうかな?


「まあ♪なんて綺麗な器なの、これは山かしら?太陽にかざすと日の出みたい♪

でもシンさんだもの最早これくらいは想定済みだから驚かないわよ♪」


どうだ参ったか!みたいな顔をされてもリアクションに困る


「おっ、おーい」

「ああ、親方さんの分もありますから遠慮なく飲んで下さいね」

「ひゃっほぉー♪そうこなくっちゃよ!」


オリビエさんの後ろから親方さんが不安そうに声をかけて来たのだけど、自分も酒が飲めるのか心配だったのか(笑)


「それじゃあ」

「「いただきます」」

「んぐんぐ、ほぉ、酒精もそこそこあるし鼻に抜ける香りが良い酒じゃな、こういうのを繊細な味と言うんじゃろうなぁ」

「ええ、あなたの言う通りね、このお酒を飲むと火酒が酷く雑に造られた酒だったと認めざるを得ないわね」


ありゃ?

なんかしんみりしちゃったよ、どーすんのこの空気


「あっ!、、、親方さんやりましたね♪」

「なんじゃ突然」

「ほら、グラスに花びらが入ってますよ♪そこに酒を注げば『トクトクトク』ピンクの花びらが浮かんで綺麗でしょ?」

「ほぉ♪、、、んぐんぐんぐ、くぅー!ワハハハハハ!

そうか、これが花見か!

お前さんがわざわざ花を見に行くと言った時は意味が分からなかったが、花を愛でながら飲む酒がこれほど旨いとは知らんかったぞ

その事を人族のお前さんに教えられるとは、こりゃ1本とられたわい!

ガハハハハハハハハ♪」


なんかよく分からんけど、花見の楽しさは伝わったという事で良いのかな?


「ねぇシンさん!花びらは落ちてるのを拾って入れては駄目なのかしら?」

「え?、、、落ちてるのは汚れてますし、たまたま入ったらラッキー、って感じの事なんで、、、」 


うーむ、これはどうしたら

こっそり風魔法を使って花びらの落ちる量を増やすか?

だって、他のドワーフの皆さんも上を向いて花びらが落ちて来るのを待ってるんだもの(汗)

ただなぁ、他の皆さんは木製のジョッキだからそこに花びらを入れても、あんまり綺麗に見えないんだけど、、、

言えないよね


とりあえず全員のジョッキやグラスに花びらが入るまで付き合うしかない!


その前に


リリー!

こっそり風魔法を使って花びらを落としてくれぇーーー(泣)





つづく。
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