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第8章 空へ

第164話 池田屋商会presents 第1回春のお花見大会

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季節は春

今日は皆で花見に来ている

そう『皆』でだ

俺が『皆』と言った場合に集まる人達ってのは言葉通りに皆集まる

池田屋こども園の子供達を筆頭に、池田屋商会の従業員全員集合だ!


今日は宿も休みにしていて女将さんやイセガミさんも来ている

宿は建物の老朽化で改修工事が必要だったから今日に合わせて数日休みにした。


そして

現在俺は桜っぽい木の下にゴザ敷いてその上に毛布を敷いて寝ている

隣に居るメリルはあきれた表情をして座っているし、ニィナは手のかかる子供を見てるような感じだけれども

良いんだ、今の俺は昼前なのに疲労困憊だけどとても満足しているのだから。


午前中から花見をしにキャラバンシティの近くにある丘にやって来たのだが、ここに来たらやる事がある

ソリ滑りだ!

前に花見に来た時もやったけど、坂を滑るだけなのにどうしてこんなに楽しいんだろう♪

それで一緒に来た子供達とソリ滑りをしたのだが

何故か皆俺と一緒のソリに乗って滑りたがった為、全員と滑る事になり見事に俺の体力はゼロだ(笑)

俺が力尽きてしまったので今はリリーが子供達のソリにロープを付けて引っ張っている

リリーは神獣フェンリルなだけあって、登り坂も関係無く子供達の乗ったソリをまとめて余裕で引っ張れるからな

まさに遊園地のアトラクションみたいだ

まあ、リリーが引っ張るソリの先頭に座ってるのがケイトなのはご愛嬌かな



他の従業員の皆もそれぞれ同じ職場同士で集まって敷物を敷いて寛いだり、食事の用意をしている

ほとんどの料理は事前に作って俺の収納に入れて来たから並べるだけだし、今日は自由に好きな物を好きなだけ取るバイキングスタイルにしてみた

花見と言えば酒も忘れずたんまり用意している。

酒樽に蛇口を取り付けた物をその辺に複数置いていて、セルフサービスで飲み放題だ♪


「シンさーん!」


向こうからやって来るのは、商会の人事責任者で面倒くさい男のアルじゃないか


「やあ、アルも花見を楽しんでるか?」

「ええ、ええ、それはもう存分に楽しませて頂いてますよ♪

最初に従業員全員で花を見に行くと言われた時は、さっぱり意味が分かりませんでしたけど、こんなに楽しい催しならちゃんと教えておいて欲しかったですよ」


「最初は皆意味が分からないって言うんだよな、花を見に行くんだからそれ以外に説明しようが無いだろ」

「ふふふっ、シンさんが普通では無いと理解していたつもりでしたが、完全に私の理解の斜め上を行く事が分かりました」

「それは褒め言葉って事で良いのか?」

「その問いの答えは、否です!」

「えぇー?!違うのかよ!」


「私がシンさんに賛辞を贈るのは、王国で1番の大商会になった時と、今決めました!私はシンさんと死ぬまで一緒に居ますので安心して下さいね♪」


ひぃえぇー(汗)何だよその恋する乙女に言うようなセリフは!

俺は男女問わず、面倒くさく無い人が好きなんだが・・・


「シンさん、言い忘れてましたが、お花見大会もきっちり書類を作ってレシピ登録しますので安心して下さいね♪それでは書類作成の為にお花見大会を堪能して参ります!」


言いたい事を言うとアルは酒を片手に小走りで行ってしまった、酒を持ちながらって事は楽しんでくれてる証拠か?


しかし

お花見は『大会』では無いんだが、まあ放っておいても問題は無いか

レシピ登録しても使用料金が発生するのは領主が公式にやる時だけで、個人で花見をするのには適用されないからな

それに領主が花見大会をやるって言っても意味が分からず人が集まらないだろう。ウチの従業員でさえ首をかしげてたんだから

領民に愛されてる領主なら人も集まるかもしれんけど、盛り上がらないだろうなぁ

旨い料理と酒も無いだろうし、花見の楽しみ方も分からないから盛り上がりようが無い

レシピにはそういう注意点も書いておこう。



「おーーい、シンさーーーん♪」


凄く遠くの方で俺を呼ぶ声が聞こえたので声の主を探すと、ドワーフの集団が丘を登って来るのが見えた。

声の主は先頭に居るオリビエさんだ。隣には旦那さんのガゼル親方も居る

親方の工房には商会で使う道具を作って貰ったりしているのでとてもお世話になっている


「オリビエさんに親方さんもお久しぶりです。」

「本当にお久しぶりね、スンスン、ふふっ、やっぱりシンさんは良い匂いがするわ♪」

「それは良かったです(汗)」


以前オリビエさんには俺の身体からは酒の良い匂いがするって言われたんだよな、ドワーフにしか分からない程度の匂いらしいんだけど

俺がもしドワーフの里に行ったら大変な事になる気がするよ


「冬の間はお前さんが来んから寂しかったぞ!」

「えぇーと、冬は寒いんであんまり外に出たく無かったんですよね」

「そうか、そうか!大商会の会長も冬の寒さには勝てんか!と言うてもワシ等も里とのやり取りで忙しかったんだがな、ガハハハハハハハ♪」

バンッ!バンッ!

「ぐぇっ!親方痛いっす(泣)」

「おお、すまんすまん、だがお前さん冬の間もちゃんと酒は飲んどったんか?人族は軟弱だからな、もっと酒を飲まんといかんぞ、ワハハハハハハハハ♪」

バンバンバンバン!

「げほっ、げほっ!」


そういえば、親方とのこういうやり取りも久しぶりだな(笑)

でもマジで痛いからもうちょっと手加減して欲しいです。






つづく。
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