テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織

文字の大きさ
上 下
176 / 303
第7章 キャラバンシティ

第157話 愛と宿命と自転車

しおりを挟む
キャラバンシティに視察目的でオフューカス子爵がやって来る。

ウェンディさんからその情報を貰った俺は、良い噂を聞かない子爵がどんな奴かを確かめるべく事前偵察する事にした。



そして現在

俺とニィナはキャラバンシティの近くにある森の中で双眼鏡を覗きながら、川の中洲でキャンプをしているオフューカス子爵御一行を観察している

わざわざ簡易的な橋までかけて中洲でキャンプするとは物好きな奴だ。

ウェンディさんによると、子爵本人が愚
民共と同じ宿には泊まれないと言ったんだとか

まぁ貴族なら警備の問題とかあるし、子爵が特別に変人って訳でも無いんだろう。

それにしても、忙しそうに動いてるメイドさんは見えるけど子爵本人は見当たらないな

むむっ?

メイドさんが慌ただしく1番豪華な天幕に集まり出したから、ついに子爵が出てくるのかな、、、

来た!

分かりやすく成金趣味の豪華な服を着てるからあれがオフューカス子爵だな、アストレア様が言ってた通り見た目もブタだしな


ビリビリビリビリ!!

ぐっ?!

これは、、、


「止めろニィナ!」

「ぐぅぅ!!、、主、、様、、、申し訳ございません」

「話は後だ、移動するぞ!」

「はっ」


俺はこの時初めて、明確な意思を持ってニィナに命令をした。

ニィナは奴隷紋の効果によって俺の命令には逆らえない、という事は聞いていたけど今まで命令をした事が無かったからどういう風になるのか知らなかった。

命令して無理矢理従わせるとニィナはとても苦しそうな表情をしていた。

あの顔を見ちゃうともう二度と命令は出来ないな


そしてさっきのニィナは危険だった、この場に俺以外の誰かが居たらニィナの殺気だけでショック死していたかもしれない

森の中を20分ほど移動した所で俺は足を止めて振り返りニィナを見る


「ニィナ、あいつか?」

「・・・」

「ニィナ、話してくれよ、俺はもうニィナに命令なんかしたくないよ」

「・・・奴の名前は、レオニード・オフューカス、主様と出会う以前に主人だった男です。」


ふぅ~

奴がニィナの復讐相手の一人だったか。

俺が商人としてもっと力を付けて準備万端にしてからと思っていたけど、まさか向こうから来るとはな

でも考えたらこの出会いは必然なのかもしれない。ニィナは奴の奴隷だった時に病にかかったのが原因で奴隷商に売られ

その後キャラバンシティに連れて来られて、死にかけてる所を俺が見つけたんだ

病にかかってるのに長距離の移動はさせないだろうから、以前の主人がキャラバンシティの近くに居るってのは考えたらすぐに分かる事だったんだ。

それにヒントはこれまでにも沢山あった

以前子爵領に行った時や、今朝もウェンディさんがオフューカスの名を口にした時に感じた背筋が氷るような感覚がそれだ

オフューカスの名前を聞いただけでもニィナは我慢出来ず殺気が漏れたんだろうな

俺がもっと早く気付かなきゃいけなかったのに、呑気に毎日を過ごして、俺は何をしてんねん!

こうなると、もう一人の事も聞かなきゃいけない


「ニィナ、もうひとつ聞きたい事がある、主君の仇でありニィナをレオニード・オフューカスに差し出した奴の名前は?」

「かつての我が主君の仇の名前はニコライ・オフューカス。ニコライはレオニード・オフューカスの弟です。」



またオフューカスかよ、ケイトの時もそうだけど俺はオフューカスに呪われてるんじゃなかろうか

だが、これで復讐する相手が分かりやすくなった、それだけはオフューカスに感謝だな



「主様、一度だけ私の願いを叶えて頂く事は可能でしょうか?」


こんな事を言う時のニィナはロクな事を考えて無いってのは短い付き合いでも分かる

まったく、普段は手がかからないのにこんな時だけ手のかかる我儘娘になりやがって


「ニィナ、その願いを叶えられるかは分からない、それでもいいなら教えてくれ」

「はっ!主様、どうか私の事は路傍の石を拾ったと思い、山にでもお捨てになって下さいますよう、伏してお願い申し上げます。」

「その願いは前にも聞いたな、その時も断ったはずだ、だからその願いを叶える事は出来ない」

「・・・左様でございますか」

「ニィナ、、、そういうのは無しやで」


俺は唇を噛み締めて血を流すニィナに回復魔法をかけて傷を治す。


「あ゛るじさまぁ゛、ひっく、、、わたしは、、、私は主様とお嬢様やみんなと共に暮らして、、、復讐の炎はとうの昔に燃え尽きたと思っていたのです。

しかし、オフューカスの名を聞く度に奴等への憎しみが抑えれなかった、復讐の炎が再び燃え上がる事に喜びさえ感じました

同時に、主君の仇が近くに居るのに奴等を討つ事が出来ない自分に怒りを感じました

私の全ては主様の為にあります。ですがこのままでは主様のご迷惑になります、だから、、、」


「ニィナ、俺と一緒に復讐しようって約束しただろ、だから復讐の炎をちゃんと燃やしといてくれてありがとう。」

「主様?!復讐など、主様を危険な目に会わせるわけにはいきません!」

「心配せんでええ、俺も危険な事は嫌やからな。俺はこれから何個も伝説を作る予定の商人やで♪

俺は安全な所に居ながら、あのブタ共にきっちり復讐するに決まってるやん、あくまでも商人としてあいつらを生きたまま地獄に落としたる!

だから、そんな顔せんといてや」

「・・・ズズー、はい」





つづく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

料理屋「○」~異世界に飛ばされたけど美味しい物を食べる事に妥協できませんでした~

斬原和菓子
ファンタジー
ここは異世界の中都市にある料理屋。日々の疲れを癒すべく店に来るお客様は様々な問題に悩まされている 酒と食事に癒される人々をさらに幸せにするべく奮闘するマスターの異世界食事情冒険譚

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

処理中です...