上 下
85 / 147
第5章 いつかの為に

第74話 魔法と科学

しおりを挟む
『カキィィーーーーーーーーン!!』


「・・・あぁ~、飛んで行ったな」

「はい、壊れずに綺麗に飛んで行きました」


俺は今、ニィナと2人でキャラバンシティの直ぐ側にある森に来ている。

そして今飛んでいったのは木のコップだ。

俺が以前ニィナにあげた伸縮型の特殊警棒でぶっ叩いて貰った結果、木のコップは壊れずに飛んで行った。

何故こんな事をしているかというと、創造神様からお供えの対価として回復魔法を貰ったからだ。

どうして突然回復魔法をくれたのかは謎だけど、あって困らないからありがたく頂戴したまでは良かった。

しかし試しに使おうとしても都合よく怪我人や病人なんているわけもなく回復魔法を持て余していた所、ふと思い付いた。

回復魔法ならゲームの定番『自動回復』が使えるのでは?

『自動回復』とは

一定時間ダメージを受ける毎に自動で回復してくれる、ゲームの終盤で大活躍する魔法だ。

早速自分に自動回復を使ってみたけど、、、効果が分からん!

わざとダメージを受けるとか嫌す過ぎるので、なんとなく持ってたコップに自動回復をかけて、ニィナに警棒でぶっ叩いて貰ったという訳だ

その結果

コップは壊れずに綺麗な放物線を描いて飛んで行った。

おそらく自動回復が発動して、目にも止まらぬ速度でダメージを回復したが

衝撃はそのままだから壊れずに飛んで行ったのだろうと推測する

物にも回復魔法が有効とは、摩訶不思議なアドベンチャーが始まりそうだよ。


これを人で検証する勇気は無いが、まあ保険としては充分かな

そしてこの結果から俺は思い付いた、アレに使えるのではと







『パシュッ、、、ガチャン、、パシュッ、、、ガチャン、、パシュッ』



飛距離は約500mが限界か、、、



俺は今、ゲパードM1対物ライフルの試射をしている

当たり前だがスキルの「店」に本物の銃は売ってない

だから俺が今持ってるのはモデルガンになる

このモデルガンは超リアルに作られてはいるけど観賞用の物だから、BB弾は飛ばせない

では何故試射が出来るのか?


それは魔法と科学が融合した結果だと俺は思っている


遡ること約1ヶ月前

その時やる事が無く暇だった俺は何気なくスキルの「店」を見てたんだ、そしたら小学生向けの科学の実験キットが沢山あったので懐かしさもあり片っ端から購入した

レモンに銅板を刺して豆電球を点灯させたり、電池にスチールウールをくっ付けて火をつけたり

水を電気分解して酸素と水素を作ったり

ひとしきり遊んで実験キットをスキルの収納に入れた時にそれはあった


『酸素×1』『水素×1』と



いつもは気体のみを収納する事は出来ない

例えば、膨らませたゴム風船を収納した場合、ゴム風船の中にある気体も一緒に収納される。

だけど、ゴム風船の中の気体だけを取り出す事は出来ない

同様に中の気体はそのままでゴム風船だけを取り出す事も無理だった。


では何故、酸素と水素は収納出来たのか?

それは魔法で作り出した気体だからだろうと推測する

水を電気分解する実験キットを使った時、俺は魔法で水を出し指先から出る雷を使って電気分解した。

指先からパチパチしてるだけの物を雷と呼べるのかは知らないが

それらを使い電気分解は成功した。その時実験キットの周辺に残っていた酸素と水素も一緒に収納したものと思われる

たしか電気分解したら酸素と水素の混合した気体が出来ると思うんだが、何故別なのかそこは謎だ。


『水素×1』というのがどれぐらいの量なのかもさっぱり分からんけど、魔法で作り出した酸素と水素は収納出来る事が分かった。


俺は以前から考えていた、命の値段が安いこの世界で生きて行くには戦う為の武器が必要だと。

一応俺も特殊警棒を持ってるし、一般向けの防犯グッズで催涙スプレー付きの透明な盾なんかも購入した。

盾で攻撃を防ぎつつ、盾の隙間から催涙スプレーを噴射出来るのだけど

ニィナやケイトが護衛でいるのに俺が盾で戦うような事態になったらそれはもう終わりだろう。

とはいえこの世界で生活していたら魔物に遭遇する事も、盗賊に襲われる事もあるかもしれない

魔物に関しては危険な奴、例えばゴブリンやオークなんかはダンジョンか森の奥地にいてそこから出てくる事は稀らしい

比較的危険の少ない牛っぽい魔物や豚っぽい魔物なんかは街の近くにもいるが、依頼を受けた冒険者が狩って肉屋に並んでいたりする


最低限戦える力が必要なので、遠距離攻撃出来る物は何かないかと探して真っ先に考えたのが『銃』

しかし、火薬も無いからどうにもならなかったけれど、回復魔法を使う事で解決した。


まずモデルガンを購入し自動回復をかける。

次にレプリカの空薬莢の先に魔法で銃の弾の形にした氷を付ける、この氷の弾にも自動回復を忘れずに使う。

そして収納にある、あらかじめ酸素を混ぜた水素を薬莢の中に出す!出す!出す!出す!

10個水素を入れた所で入らなくなった。

これを銃に装填し、薬莢の中に雷魔法を発動

『パシュッ』

水素の爆発により氷の弾は無事発射され500mほど先で消滅した。

魔法の有効範囲外かそれとも魔力切れか

しかも凄く小さな発射音しかせず

更にライフリングも何も無いのに風の影響もほぼ受けず真っ直ぐ飛んで行った。これが魔法の成せる力か。


威力は約30m先にある50㎝程の太さの木を貫通して、ヤスリをかけたように綺麗な穴が開いていた。

これだけ綺麗に貫通すると急所に当たらなければたいしたダメージは無いかもしれんが

目的は遠くにいる相手に対しての牽制とか時間稼ぎなので、まあ良いだろう。


自動回復が無ければ水素の爆発によってとんでもない事になってたと思うけど、瞬時に回復魔法が発動するお陰で銃も俺も無傷だ。

それにしても、冷静に考えたら俺はとんでもないものを作ってしまったのではないだろうか?

どうしよう(汗)










豚に真珠

猫に小判

ゴブリンに焼きたてのパン



そんな言葉が似合う男、長倉真八


これは彼が、自身の持てる力をそんなに使わず生きていく、わりと無駄の多い物語である。





第5章 完
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様に世界を見てきて欲しいと言われたので、旅に出る準備をしようと思います。

ネコヅキ
ファンタジー
 十七年の生を突然に終えて異世界へと転生をした彼女は、十歳の時に受けた『神託の儀』によって前世の記憶を取り戻し、同時に神様との約束も思い出す。  その約束とは、歴史の浅いこの世界を見歩く事。  学院に通いながら、神様との約束を果たす為に旅立つ準備を始めた彼女。しかし、人を無に帰す化け物に襲われて王都は壊滅。学ぶ場を失った彼女は偶然に出会った冒険者と共に領地へと避難をするのだが――  神様との約束を交わした少女の、旅立ちの序曲。 ・更新はゆっくりです。

真実は仮面の下に~精霊姫の加護を捨てた愚かな人々~

ともどーも
恋愛
 その昔、精霊女王の加護を賜った少女がプルメリア王国を建国した。 彼女は精霊達と対話し、その力を借りて魔物の来ない《聖域》を作り出した。  人々は『精霊姫』と彼女を尊敬し、崇めたーーーーーーーーーーープルメリア建国物語。  今では誰も信じていないおとぎ話だ。  近代では『精霊』を『見れる人』は居なくなってしまった。  そんなある日、精霊女王から神託が下った。 《エルメリーズ侯爵家の長女を精霊姫とする》  その日エルメリーズ侯爵家に双子が産まれた。  姉アンリーナは精霊姫として厳しく育てられ、妹ローズは溺愛されて育った。  貴族学園の卒業パーティーで、突然アンリーナは婚約者の王太子フレデリックに婚約破棄を言い渡された。  神託の《エルメリーズ侯爵家の長女を精霊姫とする》は《長女》ではなく《少女》だったのでないか。  現にローズに神聖力がある。  本物の精霊姫はローズだったのだとフレデリックは宣言した。  偽物扱いされたアンリーナを自ら国外に出ていこうとした、その時ーーー。  精霊姫を愚かにも追い出した王国の物語です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初心者のフワフワ設定です。 温かく見守っていただけると嬉しいです。

【完結】『それ』って愛なのかしら?

月白ヤトヒコ
恋愛
「質問なのですが、お二人の言う『それ』って愛なのかしら?」  わたくしは、目の前で肩を寄せ合って寄り添う二人へと質問をする。 「な、なにを……そ、そんなことあなたに言われる筋合いは無い!」 「きっと彼女は、あなたに愛されなかった理由を聞きたいんですよ。最後ですから、答えてあげましょうよ」 「そ、そうなのか?」 「もちろんです! わたし達は愛し合っているから、こうなったんです!」  と、わたくしの目の前で宣うお花畑バカップル。  わたくしと彼との『婚約の約束』は、一応は政略でした。  わたくしより一つ年下の彼とは政略ではあれども……互いに恋情は持てなくても、穏やかな家庭を築いて行ければいい。そんな風に思っていたことも……あったがなっ!? 「申し訳ないが、あなたとの婚約を破棄したい」 「頼むっ、俺は彼女のことを愛してしまったんだ!」 「これが政略だというのは判っている! けど、俺は彼女という存在を知って、彼女に愛され、あなたとの愛情の無い結婚生活を送ることなんてもう考えられないんだ!」 「それに、彼女のお腹には俺の子がいる。だから、婚約を破棄してほしいんだ。頼む!」 「ご、ごめんなさい! わたしが彼を愛してしまったから!」  なんて茶番を繰り広げる憐れなバカップルに、わたくしは少しばかり現実を見せてあげることにした。 ※バカップル共に、冷や水どころかブリザードな現実を突き付けて、正論でぶん殴るスタイル。 ※一部、若年女性の妊娠出産についてのセンシティブな内容が含まれます。

私のことはお構いなく、姉とどうぞお幸せに

曽根原ツタ
恋愛
公爵令嬢ペリューシアは、初恋の相手セドリックとの結婚を控え、幸せの絶頂のはず……だった。 だが、結婚式で誓いの口づけをする寸前──姉と入れ替わってしまう。 入れ替わりに全く気づかず婿入りしたセドリックの隣で、姉は不敵に微笑む。 「この人の子どもを身篭ったの。だから祝ってくれるわよね。お姉様?」 ペリューシアが掴んだはずの幸せは、バラバラと音を立てて崩壊する。 妊娠を知ったペリューシアは絶望し、ふたりの幸せを邪魔しないよう家を出た。 すると、ひとりの青年だけが入れ替わりを見抜き……?

監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されたやり直し令嬢は立派な魔女を目指します!

古森きり
ファンタジー
幼くして隣国に嫁いだ侯爵令嬢、ディーヴィア・ルージェー。 24時間片時も一人きりにならない隣国の王家文化に疲れ果て、その挙句に「王家の財産を私情で使い果たした」と濡れ衣を賭けられ処刑されてしまった。 しかし処刑の直後、ディーヴィアにやり直す機会を与えるという魔女の声。 目を開けると隣国に嫁ぐ五年前――7歳の頃の姿に若返っていた。 あんな生活二度と嫌! 私は立派な魔女になります! カクヨム、小説家になろう、アルファポリス、ベリカフェに掲載しています。

捨てられ令嬢の恋

白雪みなと
恋愛
「お前なんかいらない」と言われてしまった子爵令嬢のルーナ。途方に暮れていたところに、大嫌いな男爵家の嫡男であるグラスが声を掛けてきてーー。

【完結】竿師、娼婦に堕ちる月の夜

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 首輪をされた女が幌ぐらい部屋のベッドの上で、裸にされていた。その女を囲む上半身裸の男達。  誰が閑静な洋館の1部屋で、この様な事が行われるのか、外からは思いもよらなかった。何故なら、この女は新しくメイドとしてやって来た女だったからだ。  主人の身の回りの世話や家事等の求人情報を紹介され来ただけである。  時は大正、西洋文化に侵食され始めた恋物語―。

婚約破棄されたら、何故か同性にばかりもてるようになった。

 (笑)
恋愛
セレナは、静かに穏やかな日々を送っていたが、ある日、運命を大きく揺さぶる出来事に直面する。大切な人との関係に終止符を打ち、新たな旅路に立たされる彼女。しかし、その旅は孤独なものではなかった。セレナは、6人の個性豊かな仲間たちと出会い、彼女たちとの絆を深めながら、世界に隠された力と向き合うことになる。 冒険の中で、セレナたちは様々な試練に立ち向かいながら、自らの力と向き合い、次第にその真実へと近づいていく。友情、葛藤、そして運命の選択が絡み合う中、彼女たちはどのような未来を選び取るのか――それはまだ誰にもわからない。 ---

処理中です...