テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織

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第3章 羽ばたきの先にあるもの

第39話 アメジスト商会

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ドワーフの親方さんがいる工房で、無事にパスタマシンの製作依頼を終えた俺とニィナは、工房を後にして帰ろうとしたのだが、、、


「お待ちしておりました。シン様ですね?」


工房を出たところで身なりの良い40歳くらいの男に声をかけられた。


「そういうあなたは?」

「わたくし、アメジスト商会会長、インポース・T・アメジスト様より、シン様をお連れするよう仰せつかったスミスと申します。
一緒にアメジスト商会まで来て頂けますか?」


アメジスト商会と言えば、メリルもスラム街にいたとき下働きをした事があるって言ってた商会だな。


「アメジスト商会のように立派な商会が、ただの露店商の俺に何の用ですか?」

「わたくしはシン様をお連れするよう言われただけですので、詳しくは会長に直接お聞きになって下さい」


面倒だけど行くしか無いかぁ、断らせない雰囲気を出しまくりだしな。

チラッとニィナを見たら

『何かあれば相手を抹殺します!』って顔をして恐いわ!

護衛対象をビビらせないで欲しい。


「分かりました、会長さんにお会いしますよ」


俺とニィナはアメジスト商会の店名入りの馬車に乗せられ、程なくして立派な店の前に到着した。

流石はこの街1番と言われる商会だけあってスゲェー店だ、俺なんかほぼチートで儲けてるようなもんだからな


そして俺達はスミスさんに案内され会長室の前にやって来た。

コンコン


「スミスです。シン様をお連れしました」

「入れ」

ガチャッ

「失礼致します」

「うむ、ようやく来たか、まずは座って自己紹介でもしようかの、ワシがアメジスト商会会長のインポースだ」


インポースと名乗ったのは、金のネックレスや指輪をじゃらじゃら付けた、成金趣致満載のセンスの悪い太った50歳くらいの男だった。


「初めまして、私はシンと申します。隣は護衛のニィナです。」

「うむ、ダークエルフとはまた珍しいのを連れておるな」

「たまたま出逢っただけですので、運が良かったです」

「そのダークエルフ、ワシに売らんか?」


は?

このジジイは何を言ってるんだ。初対面でいきなりする話じゃ無いだろう。


「申し訳ありませんが、ニィナは売り物ではありませんので」

「金貨100枚出すが、どうだ?」


スゲェー金額だな、以前にニィナがダークエルフは高値で売れるって言ってたけど本当なのか?

まぁ幾ら金を積まれても売らんがな!

だが断るにしても丸く納めないと後々面倒が起きるよなぁ、でも一応こういう時の対策はあるんだ。



「あははははは、会長さんも人が悪いなぁ、ここで許可なく売れば犯罪になってしまいますよ。
まだまだ駆け出し商人の私にその事を教えようとしてくれたのでしょう?
もう少しで引っ掛かる所でしたよ、会長さんの御心遣い痛み入ります!」


「なっ?!、、、おっおう、若いのによう気付いた。伊達に商人の間で話題になっておるわけではないな」


ふっふっふっ

まさか俺が断るとは思わなかったんだろう、動揺が隠せてない。

確かに一般人の奴隷売買は禁止されているが

それは売った後で奴隷商で譲渡手続きをすれば何も問題無いっていうザルな決まりしかない

だがあんな風に言われては流石にこれ以上俺にニィナを売れとは言えんだろう。

ここで無理に売れと言えば、若造から無理矢理奴隷を取り上げる大人げないヤツって事になる

その事が分かってるからあのジジイも動揺したんだろうし、今なら商人として威厳を保てるからな。


「それで会長さんが私を呼ばれた理由は何でしょうか?」

「本題はそっちであったな、お主をワシの商会で雇ってやろうと思ってな、報酬はとりあえず月に金貨5枚でどうだ?他にも必要な物があれば用意するぞ」


この世界だと当たり前だけど、凄い上からの物言いだな。まぁ商会で働くなんて一流企業に就職するみたいなものだから断るやつもいないんだろう。


「申し訳ありませんがお断りいたします」

「若造がぁ!舐めた口聞いてんじゃねぇぞ!!」

「止めろ、スミス!
貴様、ワシの申し出を断るという事がどういう事か理解しとるのか?」

「勿論ですよ、あなたの商会への誘いを断った。ただそれだけの事ですよ」

「ふん、所詮はただの小僧という事か、後悔するぞ」

「若い時の後悔は買ってでもしろってね♪
いや、苦労だったかな?まぁどっちも若いうちに経験しときたいですよね、年をとるとどっちもしんどそうですから
お話は以上のようですので俺達は失礼させてもらいますよ」


帰り際、アメジスト商会の若い衆が俺達を待ち伏せしてボコボコに、、、

なんて事はなく無事にアメジスト商会を後にする事が出来た。


「主様、よかったのですか?アメジスト商会のように大きな商会で働ければ、人手不足の問題は容易に解決出来ると具申致しますが」

「まあそうかもしれんけど、俺は自由に商売したいからな。
それにこの街に来てそれほど経ってないけど、アメジスト商会の噂はよく聞くんだ。
わざわざスラム街の子供を雇って下働きさせてるから、慈悲深いって周りの評判は良いよ」

「それは良いことでは無いのですか?」

「良いことだと思うよ、周囲に対してのパフォーマンスの意味合いが強いだろうけどな。
それで助かってる奴もいるだろうから素直に尊敬するよ。
でも俺は自分の評判を上げる為であっても、他人に何かをしてやるなんて出来ない器の小さい男だからな
こんな立派な商会とは合わないよ」

「ふふっ、主様の器は小さくても絶対壊れないアダマンタイト製でございましょう?」

「それは褒めてるのか分かり難いんだが、まあいいや
早く帰って夕食作らないと、みんな腹減らして待ってるだろうから」

「主様、本日の夕食はどのような物なのですか?」

「そうだな、肉屋のロンから貰った鶏ガラスープがあるから鍋にしようか」

「それは特製の食べれる鍋なのでしょうか?」


ん?、、、ニィナが凄く不安そうな顔で聞いてくるんだが

あぁ~そうだよなぁ、鍋って聞いて分かる訳ないよ


「鍋って言うのは鍋で煮て作った料理の事で、肉と野菜が沢山食べられる料理だよ」

「そうなのですね、それに野菜が沢山、、、主様早く帰りましょう!」


ニィナが野菜好きなのは知ってるし、俺の腕を掴んでグイグイ歩くのも構わないんだけど

腕を掴む力が強くてとても痛いです。


痛みに耐えながら俺は想う、これはきっと・・・

うん

なんかいい感じにまとめようと思ったけど痛みで思考が停止したよ。

俺は肉体を強化する魔法がないか本気で調べようと誓った、秋晴れの爽やかな午後の出来事だったとさ。





つづく。
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