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第2章 胎動
第27話 それは蝶の羽ばたきのように
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朝、目が覚めるとそこは
もう充分に見慣れた板張りの部屋だった。
今でも時々思うんだ、異世界に来たのは夢だったんじゃないかって
もしこれが夢で目が覚めたとしたら、多分俺は泣いてしまうかもしれん
それぐらいこの世界の生活が俺にとって大事な物になってるんだと思う。
『コンコン』
ん?
まだ夜明け前なのにドアをノックするとか何かあったのかな?
「主様、起きておられますか?」
とても小さくささやくように、それでいてはっきりと聞こえる声でニィナが呼びかけてきた
俺はドアを開けてニィナを部屋に入れてやる
「こんな時間にどうした?」
「はっ!なにやら街が騒がしゅうございます故、万が一に備え御知らせに参った次第です。」
騒がしい?
俺には何も聞こえないんだが、窓の隙間からそっと街を見てみるけど変わりは無いように見える。見えると言っても隣近所の建物しか見えんけど
「詳しく分からないか?」
「申し訳御座いません。私の気配察知では無理で御座います。ケイト殿も何かを感じるのが精一杯の御様子。」
「ケイトとニィナで無理なら諦めよう。警戒しつつ様子見だな」
「はっ、仰せのままに」
「そうだ、ニィナにこれやるよ」
俺は20㎝程の黒い棒をニィナに渡す。
「主様からの御下賜品、不肖ニィナ幸せの極みに御座います。」
「大袈裟だなぁ、とりあえず棒の出っ張りを押しながら下に向けて振ってみて」
「出っ張りで御座いますか? 」
カチッ、シュッ カシャン!
「おっ?!おお!!
主様、こっ、これは何で御座いますか?棒が一瞬で、一瞬で棒が伸びました!」
俺があげたのは伸縮型の特殊警棒だ。
相手を無力化するならこれで充分だろう。
しかし思いの外喜んでくれて良かったよ、目をキラキラさせながら何度も縮めては伸ばしてを繰り返すニィナを見て、ちょっとほっこりする。
「それは相手を殺さず無力化する時に使う非殺傷武器だよ。特殊な金属製だから鉄製の刃物なら叩き折れるんじゃないかな?」
「ふふふふふ、これで主様に仇なす者には生きたまま地獄の苦しみを、、、」
ニィナが笑顔で恐ろしいことをブツブツ言い出したけれど、俺に出来ることはおバカさんが来ないことを祈るだけだ。
そんなことをしていると外が明るくなってきた。
「主様、気配が無くなりました」
「そうか、何事も無くて良かったが何だったんだろうな」
朝食を食べた俺達は早速みんなで情報収集の為に街に繰り出した。
いつもと変わらないように見えるが、、、
「あっ?!」
「「「あっ?!」」」
俺達は見事にそろって間抜けな声を出してしまった、だがそれは仕方ないというものだろう
何故なら俺達の目の前には、半壊した冒険者ギルドがあるのだから
ギルドは既に無人みたいだけど、これはどうみても襲撃された後だよな?
「ダンナ、ちょっとここで待っててよ、何か知ってそうな奴に聞いてくるから」
そう言ってケイトは周りにいる冒険者に声をかけている
「ダンナァー、少しだけど分かったよ。どうやら副ギルマスが捕まったらしいんだ」
「副ギルマスっていえば、黒い噂があるっていう奴だろ?」
「そうそう、それと門を第五騎士団が封鎖してるって」
「第五騎士団?ここの領主はそんなに沢山騎士団を持ってるのか?」
「ダンナ知らないのか?領主は騎士団なんか持ってないよ、今居るのは『王都第五騎士団』重装甲の拠点防衛部隊。
奴等が門を封鎖してるならゴブリン1匹この街から出られないよ」
「てことは国が動いたって事か?!あの野郎マジで何したんだよ!」
「主様、国が動くのは戦争か王族に危機が迫っているかのどちらかだと思われます。」
「おにいちゃん」
「メリル、心配するなとは言えない、だけど何があっても独りにはしないから、一緒に商売を大きくするんだろ?
むしろメリルが居ないと困るのは俺なんだけどな」
「お嬢ぉ~、あたしも居るの忘れないでよぉ~、もう独りでオーガの巣に行くのは嫌だよぉ~(泣)」
いやいやいや、メリルをオーガの巣には行かせないからね!
むしろ何故ケイトは独りでオーガの巣に行ってんだよ、しかもオーガって結構強い魔物じゃね?
「ケイト殿、お嬢様は私が御守りしますので、遠慮なくオーガの巣でもミノタウロスの巣でもお独りでどうぞ」
「ニィナ~仲間なんだからみんなで行こうよぉ~(泣)」
「お断りします。」
「ふふっ、あはははははは」
「「「はははははははは」」」
メリルに笑顔が戻って良かった♪
もし戦争なんて事になってもみんなと一緒なら、なんとかなる気がするぜ!
それに創造神様がなんとかしてくれるのではないかと勝手に思ってる
(対価はシュー・ア・ラ・クレームのお供えで構いませんよ)
突然俺の頭の中に聞き覚えのある女性の声が聞こえた。
この声の主は、、、創造神様だ!
俺がこっちの世界に来る時に聞いたのと同じで、スゲェー軽い感じの明るい声は間違い無い。
この世界の創造神様ってこんな感じなんだなぁ。
凄くありがたいから、きちんとお供えはしますけどね。
そんな俺達の心配をよそに、日没と同時に街の封鎖は解除され騎士団は王都に帰って行った。
捕まったという冒険者ギルドの副ギルドマスターと一緒に、相当な人数も王都に連行されるらしい
何事も無くて良かったが、本当は歴史に残る事件だったのではないか?
戦争の前触れだったりしないのか?
こんな感じのよく分からん異世界テンプレは小説でも無かったから対応に困る。
「ダンナァ~、お腹空いたよぉ~」
「おにいちゃん、私はだし巻き玉子が食べたいな」
「主様、わたしは野菜たっぷりの食事を所望します。」
「分かったよ、直ぐ作るから手伝ってくれよー」
「「「はーい」」」
いつ起こるか分からない戦より今は飯だ!
腹が減ってはなんとやらだからな♪
つづく。
もう充分に見慣れた板張りの部屋だった。
今でも時々思うんだ、異世界に来たのは夢だったんじゃないかって
もしこれが夢で目が覚めたとしたら、多分俺は泣いてしまうかもしれん
それぐらいこの世界の生活が俺にとって大事な物になってるんだと思う。
『コンコン』
ん?
まだ夜明け前なのにドアをノックするとか何かあったのかな?
「主様、起きておられますか?」
とても小さくささやくように、それでいてはっきりと聞こえる声でニィナが呼びかけてきた
俺はドアを開けてニィナを部屋に入れてやる
「こんな時間にどうした?」
「はっ!なにやら街が騒がしゅうございます故、万が一に備え御知らせに参った次第です。」
騒がしい?
俺には何も聞こえないんだが、窓の隙間からそっと街を見てみるけど変わりは無いように見える。見えると言っても隣近所の建物しか見えんけど
「詳しく分からないか?」
「申し訳御座いません。私の気配察知では無理で御座います。ケイト殿も何かを感じるのが精一杯の御様子。」
「ケイトとニィナで無理なら諦めよう。警戒しつつ様子見だな」
「はっ、仰せのままに」
「そうだ、ニィナにこれやるよ」
俺は20㎝程の黒い棒をニィナに渡す。
「主様からの御下賜品、不肖ニィナ幸せの極みに御座います。」
「大袈裟だなぁ、とりあえず棒の出っ張りを押しながら下に向けて振ってみて」
「出っ張りで御座いますか? 」
カチッ、シュッ カシャン!
「おっ?!おお!!
主様、こっ、これは何で御座いますか?棒が一瞬で、一瞬で棒が伸びました!」
俺があげたのは伸縮型の特殊警棒だ。
相手を無力化するならこれで充分だろう。
しかし思いの外喜んでくれて良かったよ、目をキラキラさせながら何度も縮めては伸ばしてを繰り返すニィナを見て、ちょっとほっこりする。
「それは相手を殺さず無力化する時に使う非殺傷武器だよ。特殊な金属製だから鉄製の刃物なら叩き折れるんじゃないかな?」
「ふふふふふ、これで主様に仇なす者には生きたまま地獄の苦しみを、、、」
ニィナが笑顔で恐ろしいことをブツブツ言い出したけれど、俺に出来ることはおバカさんが来ないことを祈るだけだ。
そんなことをしていると外が明るくなってきた。
「主様、気配が無くなりました」
「そうか、何事も無くて良かったが何だったんだろうな」
朝食を食べた俺達は早速みんなで情報収集の為に街に繰り出した。
いつもと変わらないように見えるが、、、
「あっ?!」
「「「あっ?!」」」
俺達は見事にそろって間抜けな声を出してしまった、だがそれは仕方ないというものだろう
何故なら俺達の目の前には、半壊した冒険者ギルドがあるのだから
ギルドは既に無人みたいだけど、これはどうみても襲撃された後だよな?
「ダンナ、ちょっとここで待っててよ、何か知ってそうな奴に聞いてくるから」
そう言ってケイトは周りにいる冒険者に声をかけている
「ダンナァー、少しだけど分かったよ。どうやら副ギルマスが捕まったらしいんだ」
「副ギルマスっていえば、黒い噂があるっていう奴だろ?」
「そうそう、それと門を第五騎士団が封鎖してるって」
「第五騎士団?ここの領主はそんなに沢山騎士団を持ってるのか?」
「ダンナ知らないのか?領主は騎士団なんか持ってないよ、今居るのは『王都第五騎士団』重装甲の拠点防衛部隊。
奴等が門を封鎖してるならゴブリン1匹この街から出られないよ」
「てことは国が動いたって事か?!あの野郎マジで何したんだよ!」
「主様、国が動くのは戦争か王族に危機が迫っているかのどちらかだと思われます。」
「おにいちゃん」
「メリル、心配するなとは言えない、だけど何があっても独りにはしないから、一緒に商売を大きくするんだろ?
むしろメリルが居ないと困るのは俺なんだけどな」
「お嬢ぉ~、あたしも居るの忘れないでよぉ~、もう独りでオーガの巣に行くのは嫌だよぉ~(泣)」
いやいやいや、メリルをオーガの巣には行かせないからね!
むしろ何故ケイトは独りでオーガの巣に行ってんだよ、しかもオーガって結構強い魔物じゃね?
「ケイト殿、お嬢様は私が御守りしますので、遠慮なくオーガの巣でもミノタウロスの巣でもお独りでどうぞ」
「ニィナ~仲間なんだからみんなで行こうよぉ~(泣)」
「お断りします。」
「ふふっ、あはははははは」
「「「はははははははは」」」
メリルに笑顔が戻って良かった♪
もし戦争なんて事になってもみんなと一緒なら、なんとかなる気がするぜ!
それに創造神様がなんとかしてくれるのではないかと勝手に思ってる
(対価はシュー・ア・ラ・クレームのお供えで構いませんよ)
突然俺の頭の中に聞き覚えのある女性の声が聞こえた。
この声の主は、、、創造神様だ!
俺がこっちの世界に来る時に聞いたのと同じで、スゲェー軽い感じの明るい声は間違い無い。
この世界の創造神様ってこんな感じなんだなぁ。
凄くありがたいから、きちんとお供えはしますけどね。
そんな俺達の心配をよそに、日没と同時に街の封鎖は解除され騎士団は王都に帰って行った。
捕まったという冒険者ギルドの副ギルドマスターと一緒に、相当な人数も王都に連行されるらしい
何事も無くて良かったが、本当は歴史に残る事件だったのではないか?
戦争の前触れだったりしないのか?
こんな感じのよく分からん異世界テンプレは小説でも無かったから対応に困る。
「ダンナァ~、お腹空いたよぉ~」
「おにいちゃん、私はだし巻き玉子が食べたいな」
「主様、わたしは野菜たっぷりの食事を所望します。」
「分かったよ、直ぐ作るから手伝ってくれよー」
「「「はーい」」」
いつ起こるか分からない戦より今は飯だ!
腹が減ってはなんとやらだからな♪
つづく。
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