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第1章 転生
第10話 トマトの価値
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朝、目が覚めると見覚えのない部屋にいた・・・
おっとっと!
昨日宿の女将さんに言われて、メリルと一緒の2人部屋に移ったのをすっかり忘れていた。
部屋の反対側にあるベッドを見ると既に布団が畳まれていてメリルはいなかった。
トイレかな?
探しに行こうか思案していると水をいれた桶を抱えてメリルが部屋に戻って来た。
「おにいちゃんおはよう、お水汲んで来たから早く顔洗って服も脱いで、背中拭いてあげるから」
「身体は自分で拭くから大丈夫だよ」
「男の子はみんなそう言ってやらないんだから、早く服脱いで!」
「あっ、はい、お願いします。」
顔を洗いながら背中をメリルに拭いて貰う、これが噂の世話焼き女子というやつでしょうか?
それとも尻に敷かれてるやつなのでしょうか?
「ねぇおにいちゃん、午前中はどうするの?干し芋の仕込みとか仕入れするの?」
うーむ、これから一緒にいるとなると収納のスキルは直ぐにバレるかもしれない。
秘密にして後々バレるのも色々と面倒だから、これくらいは教えても良いかな?
「干し芋の準備は出来てるから大丈夫だよ、収納のスキルがあるから仕入れもしばらく必要はないかな」
「へぇー、おにいちゃんスキル持ちなんだ、商人にはぴったりのスキルだね♪」
スキルの事を話しても驚かないな
スキルを持ってるのは一般的なのだろうか?
でもスキルの「店」の方はもう少し様子をみてからにしよう。
「メリルは何かスキル持ってないの?」
「持ってたらスラムで暮らしてないよ。大きな商会は常に商売に役立つスキル持ちを募集してるけど、おにいちゃんはそういう所で働かないの?」
「俺は自由に商売がしたいから今のままで構わないかな。それと今日は朝食を食べたら女将さんに料理を教える約束なんだ」
どうやらスキル持ちは珍しいがそれなりに居る存在って感じか?
だがスキルの事はあまり話さない方が良いだろうな、異世界テンプレだと貴族に無理矢理働かされる事になるからな
さて朝食はどうするか?
俺はメリルに背を向けながらこっそりとスキルの「店」からハムサンドとジュースを購入し、収納から出したようにして渡してやる
「ありがとうおにいちゃん、えっ?!これ白パン?白パンって凄く高いんでしょ?おにいちゃんはたくさん稼いでるから買えるのかもしれないけど、稼いでるからこそちゃんと将来の事を考えてお金を使わなきゃだめだよ!」
なっ、なんとメリルさんが俺より凄くしっかりした考えをお持ちでいらっしゃる!
「しょ、将来の事を考えるのは大切だよね(汗)そのパンは特別に安く仕入れられたから大丈夫だよ」
「それならいいけど、無駄遣いはだめだからね!」
「気をつけます、、、それより早く食べて女将さんに料理を教えなきゃ!」
俺達は宿の1階にやって来た。
「女将さん約束の料理を教えにきましたよ」
「待ってたよ!厨房に食材を揃えておいたから好きに使っておくれ」
そう言われて食材を見ていく、、、よし!必要な食材は全部ある。
今から俺が作ろうとしているのはオムレツとトマトソースだ。
卵料理は焼き方、具材、ソースを変えれば簡単にアレンジ出来るし、トマトソースも様々な料理に使えるから宿で使うには丁度良いだろう。
まずは窓際に置いてある鉢植えのトマトを手に取る。
「観賞用のトマトなんかどうするんだい?毒があって食べられないけど」
なんだと!
この世界ではトマトは食べられていないのか?!
なんて勿体無い事を!!
そういえば元世界でも数百年前はトマトには毒があると思われていて観賞用だったらしい
実際トマトの実には毒が含まれているらしいけど、極微量で普通に食べる量なら何の問題も無い
毒は主に葉と茎にあるらしいからな
おそらく数十キロのトマトを1人で全部食べないと毒の影響は出ないだろう。
たとえ少量でも毒が含まれているなら食べられていないのも仕方無いか
「トマトの茎や葉には多量の毒がありますが、完熟した実を食べるのは問題ありませんよ」
「そっ、そうなのかい?!あんたが言うなら本当なんだろうけどトマトが食べれるなんて初めて聞いたよ」
「それじゃあ早速トマトソースを作りますね、まずトマトの皮を剥きます、後は鍋に入れて潰しながら煮詰めれば完成です。
本当は種も取り除いた方がいいんですけど、面倒なんでどうするかは女将さんにまかせます。お好みで塩を少し加えても良いです。さぁ味見してください」
「どれどれ、あーんっと、、美味しい!簡単なのにこんなに美味しいなんて・・・」
なんだか女将さんがカルチャーショックを受けているみたいだけど、俺は構わずオムレツを作っていく
「女将さんオムレツ出来ましたよ、トマトソースをかけて食べてみてください、メリルの分もあるから食べて感想を聞かせてよ」
「もう出来たのかい?どれどれ・・・ふぁ~美味しい♪でも何でこんなに卵が柔らかいんだい?!このソースとの相性も最高じゃないか!」
「ほんとだ!卵が凄く柔らかいよ♪」
おそらく卵は食中毒防止の為に焼き目が付くぐらいよく焼いた物しか無いのだろう
俺が作ったオムレツもきちんと火を通しているけど焼き過ぎないようにしている
この街を少し見ただけだが、料理は基本的に食材を焼くか煮るだけで、余熱で火を通すなんてのも無さそうだもんなぁ
これから女将さんには食文化発展の為に頑張って貰いたい。
つづく。
おっとっと!
昨日宿の女将さんに言われて、メリルと一緒の2人部屋に移ったのをすっかり忘れていた。
部屋の反対側にあるベッドを見ると既に布団が畳まれていてメリルはいなかった。
トイレかな?
探しに行こうか思案していると水をいれた桶を抱えてメリルが部屋に戻って来た。
「おにいちゃんおはよう、お水汲んで来たから早く顔洗って服も脱いで、背中拭いてあげるから」
「身体は自分で拭くから大丈夫だよ」
「男の子はみんなそう言ってやらないんだから、早く服脱いで!」
「あっ、はい、お願いします。」
顔を洗いながら背中をメリルに拭いて貰う、これが噂の世話焼き女子というやつでしょうか?
それとも尻に敷かれてるやつなのでしょうか?
「ねぇおにいちゃん、午前中はどうするの?干し芋の仕込みとか仕入れするの?」
うーむ、これから一緒にいるとなると収納のスキルは直ぐにバレるかもしれない。
秘密にして後々バレるのも色々と面倒だから、これくらいは教えても良いかな?
「干し芋の準備は出来てるから大丈夫だよ、収納のスキルがあるから仕入れもしばらく必要はないかな」
「へぇー、おにいちゃんスキル持ちなんだ、商人にはぴったりのスキルだね♪」
スキルの事を話しても驚かないな
スキルを持ってるのは一般的なのだろうか?
でもスキルの「店」の方はもう少し様子をみてからにしよう。
「メリルは何かスキル持ってないの?」
「持ってたらスラムで暮らしてないよ。大きな商会は常に商売に役立つスキル持ちを募集してるけど、おにいちゃんはそういう所で働かないの?」
「俺は自由に商売がしたいから今のままで構わないかな。それと今日は朝食を食べたら女将さんに料理を教える約束なんだ」
どうやらスキル持ちは珍しいがそれなりに居る存在って感じか?
だがスキルの事はあまり話さない方が良いだろうな、異世界テンプレだと貴族に無理矢理働かされる事になるからな
さて朝食はどうするか?
俺はメリルに背を向けながらこっそりとスキルの「店」からハムサンドとジュースを購入し、収納から出したようにして渡してやる
「ありがとうおにいちゃん、えっ?!これ白パン?白パンって凄く高いんでしょ?おにいちゃんはたくさん稼いでるから買えるのかもしれないけど、稼いでるからこそちゃんと将来の事を考えてお金を使わなきゃだめだよ!」
なっ、なんとメリルさんが俺より凄くしっかりした考えをお持ちでいらっしゃる!
「しょ、将来の事を考えるのは大切だよね(汗)そのパンは特別に安く仕入れられたから大丈夫だよ」
「それならいいけど、無駄遣いはだめだからね!」
「気をつけます、、、それより早く食べて女将さんに料理を教えなきゃ!」
俺達は宿の1階にやって来た。
「女将さん約束の料理を教えにきましたよ」
「待ってたよ!厨房に食材を揃えておいたから好きに使っておくれ」
そう言われて食材を見ていく、、、よし!必要な食材は全部ある。
今から俺が作ろうとしているのはオムレツとトマトソースだ。
卵料理は焼き方、具材、ソースを変えれば簡単にアレンジ出来るし、トマトソースも様々な料理に使えるから宿で使うには丁度良いだろう。
まずは窓際に置いてある鉢植えのトマトを手に取る。
「観賞用のトマトなんかどうするんだい?毒があって食べられないけど」
なんだと!
この世界ではトマトは食べられていないのか?!
なんて勿体無い事を!!
そういえば元世界でも数百年前はトマトには毒があると思われていて観賞用だったらしい
実際トマトの実には毒が含まれているらしいけど、極微量で普通に食べる量なら何の問題も無い
毒は主に葉と茎にあるらしいからな
おそらく数十キロのトマトを1人で全部食べないと毒の影響は出ないだろう。
たとえ少量でも毒が含まれているなら食べられていないのも仕方無いか
「トマトの茎や葉には多量の毒がありますが、完熟した実を食べるのは問題ありませんよ」
「そっ、そうなのかい?!あんたが言うなら本当なんだろうけどトマトが食べれるなんて初めて聞いたよ」
「それじゃあ早速トマトソースを作りますね、まずトマトの皮を剥きます、後は鍋に入れて潰しながら煮詰めれば完成です。
本当は種も取り除いた方がいいんですけど、面倒なんでどうするかは女将さんにまかせます。お好みで塩を少し加えても良いです。さぁ味見してください」
「どれどれ、あーんっと、、美味しい!簡単なのにこんなに美味しいなんて・・・」
なんだか女将さんがカルチャーショックを受けているみたいだけど、俺は構わずオムレツを作っていく
「女将さんオムレツ出来ましたよ、トマトソースをかけて食べてみてください、メリルの分もあるから食べて感想を聞かせてよ」
「もう出来たのかい?どれどれ・・・ふぁ~美味しい♪でも何でこんなに卵が柔らかいんだい?!このソースとの相性も最高じゃないか!」
「ほんとだ!卵が凄く柔らかいよ♪」
おそらく卵は食中毒防止の為に焼き目が付くぐらいよく焼いた物しか無いのだろう
俺が作ったオムレツもきちんと火を通しているけど焼き過ぎないようにしている
この街を少し見ただけだが、料理は基本的に食材を焼くか煮るだけで、余熱で火を通すなんてのも無さそうだもんなぁ
これから女将さんには食文化発展の為に頑張って貰いたい。
つづく。
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