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9章 理想と現実と、嫌がらせ
9-21 日は昇る ◆キュジオ視点◆
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◆キュジオ視点◆
デント王国の王城を彷徨う。
断じて迷子になっているわけではない。
実はデント王国の王城は、テオシント王国の王城が土台になっている部分がある。
大部分は壊され、潰されたテオシントの城だが、デント王国の者には崩せない部分があった。
王城に眠るテオシント王国の地下部分は、デント王国の者には絶対不可侵。負の遺産を隠すために、デント王国はその上に立派な城を造ったとも言える。
長年使えない場所は忘れられた空間になった。
今や、デント王国の王族にさえ忘れ去られた存在である。
王女でさえ、そんな場所ありましたか?という反応だった。
来てみたら、思っていた以上に広かったが。
オルトの魔法の盾に導かれ、いや、適当な道案内のために広大な建物内をウロウロするハメになっている。
赤い魔法の盾は方向はわかるようだが、道順がわからない。行き止まりで通路を戻ることもしばしば。
わかりにくい出入口にはテオシントの人間しか入れないような結界が張られているようだが、厳重も厳重で、中に入っても部外者が目的地に辿り着けないよう迷路になっている。
最強の盾や最強の剣なら、この赤い魔法の盾の案内でも強固で分厚い壁を打ち抜いて直線で進んでいくのだろうが、案内を受けているのはこの俺だ。
常識人の範疇である俺に、そんな芸当できるわけがない。
今、何時だ、と思うほどの長い時間をかけて、目的地に辿り着く。
途中で何度も休憩を入れてようやくだ。
別に金銀財宝が眠る宝物庫が残っているというわけでもない。
あるのは、ただ広いだけの空間。
そして、一番奥に一段高くなったところに存在する玉座とわかる立派な椅子。
ここがテオシント王国の者だけが入れる玉座の間。
表向きの玉座の間は王城の地上部分にもあったらしいが、この玉座の間はテオシント王国の正式な儀式のときだけに使われるものだったらしい。
赤い魔法の盾が勧めたため、その玉座に座る。
椅子に座って、自分がどれだけ疲れていたかを自覚する。
控室で食事をしておいて良かった。
そうでなければ、こんな長い時間歩いていられなかった。
ふと思い出す。
ソニア嬢ことリーフ王女は無事だろうか。
女王に殺されていないだろうか。
彼女は彼女の信念でこの国に戻ったのだから、俺に女王から守ってもらおうとは露ほども思っていないだろう。
そもそも、デント王国の女王の方が強いようだし。
俺が戦うよりオルトが来ることを願っていた方が、まだ現実味があるくらいだ。
数分もしない内に違和感に気づいた。
暗い空間。
暗闇に目が慣れているとは言っても、人の目では限界がある。
火を灯す台はあるようなのだが。
チラリと隅の方に視線をやると。
赤い魔法の盾がピョンピョンと跳ねて、明かりを灯し始めた。
俺は玉座に座ったままだったが、広場に黒い影が蹲っているように見える。黒い塊が増えていっているように見える。
俺が来たときには何もなかったはずの空間だ。
赤い魔法の盾が広い部屋を一周まわりながら台に火を入れていき、最後に玉座の横の台に火をつける。
彼らは臣下の礼を俺に向かってしている。
火が仄かに周りを照らしても、ここは地下。薄暗くて姿ははっきりとは見えないが、少し離れたところから徐々に増えていく。
王族の末裔。
おそらくテオシント王国が残っていたとしたら、国王にはなりえない傍系も傍系だろう。
本来なら大昔に臣下へと下り、王族の血を引いていることすら忘れ去られていそうな。
それでも、テオシント王国の王族の生き残りがこの玉座に座っている。それこそが彼らにとっては重要なのだろう。
この玉座の間にあるのは、ただただ沈黙。
俺が動くときの音しか聞こえない。
赤い魔法の盾も俺の襟に戻り、スヤスヤと寝息をたて、、、たてるな、起きろ。
俺が玉座に座って二、三時間は過ぎただろうか。
この玉座の間は満員御礼、黒い塊の密集地になっていた。
もうそろそろ日が昇ってもいいくらいの時間になったのではないだろうか。
そう考えていると。
一筋の光が、後ろから射し込んできた。
あ。
朝日が昇るのか。
この建物は日の光が地下にあるこの玉座の間に入るように設計されているようだ。
玉座にいる国王から、後光が差しているように皆には見えるのだろう。
それは玉座を見ている者たちには非常に神秘的に映るのかもしれない。
臣下の礼を取っていた者たちが、顔を上げて泣いている。
このとき、俺にもハッキリと彼らの姿が見えた。
俺は玉座から立ち上がる。
「テオシントの民たちよ。長い間ご苦労であった」
啜り泣く声、嗚咽が聞こえた。
そして、二人の影が扉からゆっくりと歩いてきた。
一人は俺のように赤い髪の初老の男性、寄り添うは同じくらいの年齢の上品な女性。
おそらく服装からすると。
「私はテオシント王国の最後の国王だ。我々を見送るために来てくれて礼を言う」
生前の姿だろう。
国王として堂々としたふさわしい姿で玉座の前まで歩いてきた。
俺は玉座を譲ろうとした。
彼がここにいる皆を先導した方が良い。
だが、首を小さく横に振られた。
「もうテオシント王国は存在しない。だが、どんな形でも血が続いていることを嬉しく思う。其方らに惜しみない祝福を」
「祝福を」
後ろにいる者たちも国王に言葉を続けた。
大きな声が部屋に響くと、辺りが眩い光で満ちる。
非常に眩しいが、俺は背筋を伸ばした後、彼らに向かって姿勢正しく深い礼を静かにする。
数分後にはこの空間から光が去った。
先程までいた人影が嘘のように消え去った。
まるで、最初から誰もいなかったかのように。
「さて、戻るか」
独り言のように赤い魔法の盾に言う。
コレで俺がこの国でやるべきことはすべて終わった。
赤い魔剣はテオシント王国の象徴。国王が所持していた魔剣。
俺の手元に来たのは、偶然だったのか。それとも。
玉座の背面に小さく刺繍された赤い魔剣が描かれている国章が目に入る。
行きと同じく、帰りも時間がかかると思いきや、建物から自動で排出されたかのように十分もしない内にデント王国の王城の敷地に戻った。
入りにくく、出やすい構造なのか。
外は明るい。
目を細める。
一睡もしていない。
このまま寝てしまいたい。
王城は広い。
どこかの部屋でこっそり寝ていてもバレないのではないかとも考える。
それもまた見つかったら面倒なので、王城を抜け出し、宿でも取った方が良い。
「スレイと合流できるか?」
女王と会わなければ、俺はこのままこの国から逃げ出すことは可能だ。
ソニア嬢は、、、幸運を祈ろう。
と思っていたら。
「フリント女王陛下っ」
大きな声で女王を呼ぶ声が聞こえる。
ヤバイ。この城で一番会ってはいけない人物だ。
建物の影から覗くと、わらわらと人がいる。
衣装からすると昨日の舞踏会の豪華さでいる者たちと警備やら使用人やらが大勢いる。
空からやってきた女王はフラフラと地面に降り立つ。
一晩中走り回っていたのか、魔力が乏しいのは見て取れる。
今ならば、と思う者も少なくないのでは?
ストレートの長い髪が俺よりも鮮やかな赤に見える。
「フリントっ」
「お姉様っ」
あ、ソニア嬢、ご無事で何より。
あの姿ならリーフ王女でいいのか。リーフ王女の顔にも疲労の色が見える。
ここにいる者たちも一晩中何かしていたのか。
「出迎えてくれるなんて思ってもみなかったわ。でも、そうね」
彼女は微笑んだが、何もかも諦めたような目をした。
「一晩中飛び続けて、私の魔力はカラカラよ。今なら私を倒せるわよ」
「お姉様っ、お疲れ様ですっ。今日はもう食事をとってお風呂に入って休みましょう」
「そうだ、話は後だ。一晩中話を聞いて疲れたよ。私も若くないから、宴は夜からにしよう」
「そうですね、叔父様っ。いま宴を開いても寝てしまいますっ」
女王の言葉なんてまるで聞いていなかったかのように、二人は言葉を重ねてしまった。
ホップ公爵の提案に、リーフ王女だけでなくその場にいた他の者も頷いて同意した。
「王城で勤務している者は最低限動ける者は動いてもらうが、一晩中稼働していた者は順次休憩をとってくれ」
ホップ公爵は疲れていると言うが、テキパキと指示を始めた。
女王の疲労の方が色濃く見えるからだ。
髪の毛はボサボサ、衣装も少々乱れている。
それでも、気高い印象は残っているが。
アレが血のつながった妹なのかと感慨深く思ったが、話しかけないでこの場から消えることにする。
それが一番良い。
後ろを向いて立ち去ろうとした。
「あっ、キュジオ隊長ーっ、ご無事でしたかーっ」
ソニアーーーーっ、大声で呼ぶなーーーーっ。
お前、寝不足で頭が死んでるだろっ。
デント王国の王城を彷徨う。
断じて迷子になっているわけではない。
実はデント王国の王城は、テオシント王国の王城が土台になっている部分がある。
大部分は壊され、潰されたテオシントの城だが、デント王国の者には崩せない部分があった。
王城に眠るテオシント王国の地下部分は、デント王国の者には絶対不可侵。負の遺産を隠すために、デント王国はその上に立派な城を造ったとも言える。
長年使えない場所は忘れられた空間になった。
今や、デント王国の王族にさえ忘れ去られた存在である。
王女でさえ、そんな場所ありましたか?という反応だった。
来てみたら、思っていた以上に広かったが。
オルトの魔法の盾に導かれ、いや、適当な道案内のために広大な建物内をウロウロするハメになっている。
赤い魔法の盾は方向はわかるようだが、道順がわからない。行き止まりで通路を戻ることもしばしば。
わかりにくい出入口にはテオシントの人間しか入れないような結界が張られているようだが、厳重も厳重で、中に入っても部外者が目的地に辿り着けないよう迷路になっている。
最強の盾や最強の剣なら、この赤い魔法の盾の案内でも強固で分厚い壁を打ち抜いて直線で進んでいくのだろうが、案内を受けているのはこの俺だ。
常識人の範疇である俺に、そんな芸当できるわけがない。
今、何時だ、と思うほどの長い時間をかけて、目的地に辿り着く。
途中で何度も休憩を入れてようやくだ。
別に金銀財宝が眠る宝物庫が残っているというわけでもない。
あるのは、ただ広いだけの空間。
そして、一番奥に一段高くなったところに存在する玉座とわかる立派な椅子。
ここがテオシント王国の者だけが入れる玉座の間。
表向きの玉座の間は王城の地上部分にもあったらしいが、この玉座の間はテオシント王国の正式な儀式のときだけに使われるものだったらしい。
赤い魔法の盾が勧めたため、その玉座に座る。
椅子に座って、自分がどれだけ疲れていたかを自覚する。
控室で食事をしておいて良かった。
そうでなければ、こんな長い時間歩いていられなかった。
ふと思い出す。
ソニア嬢ことリーフ王女は無事だろうか。
女王に殺されていないだろうか。
彼女は彼女の信念でこの国に戻ったのだから、俺に女王から守ってもらおうとは露ほども思っていないだろう。
そもそも、デント王国の女王の方が強いようだし。
俺が戦うよりオルトが来ることを願っていた方が、まだ現実味があるくらいだ。
数分もしない内に違和感に気づいた。
暗い空間。
暗闇に目が慣れているとは言っても、人の目では限界がある。
火を灯す台はあるようなのだが。
チラリと隅の方に視線をやると。
赤い魔法の盾がピョンピョンと跳ねて、明かりを灯し始めた。
俺は玉座に座ったままだったが、広場に黒い影が蹲っているように見える。黒い塊が増えていっているように見える。
俺が来たときには何もなかったはずの空間だ。
赤い魔法の盾が広い部屋を一周まわりながら台に火を入れていき、最後に玉座の横の台に火をつける。
彼らは臣下の礼を俺に向かってしている。
火が仄かに周りを照らしても、ここは地下。薄暗くて姿ははっきりとは見えないが、少し離れたところから徐々に増えていく。
王族の末裔。
おそらくテオシント王国が残っていたとしたら、国王にはなりえない傍系も傍系だろう。
本来なら大昔に臣下へと下り、王族の血を引いていることすら忘れ去られていそうな。
それでも、テオシント王国の王族の生き残りがこの玉座に座っている。それこそが彼らにとっては重要なのだろう。
この玉座の間にあるのは、ただただ沈黙。
俺が動くときの音しか聞こえない。
赤い魔法の盾も俺の襟に戻り、スヤスヤと寝息をたて、、、たてるな、起きろ。
俺が玉座に座って二、三時間は過ぎただろうか。
この玉座の間は満員御礼、黒い塊の密集地になっていた。
もうそろそろ日が昇ってもいいくらいの時間になったのではないだろうか。
そう考えていると。
一筋の光が、後ろから射し込んできた。
あ。
朝日が昇るのか。
この建物は日の光が地下にあるこの玉座の間に入るように設計されているようだ。
玉座にいる国王から、後光が差しているように皆には見えるのだろう。
それは玉座を見ている者たちには非常に神秘的に映るのかもしれない。
臣下の礼を取っていた者たちが、顔を上げて泣いている。
このとき、俺にもハッキリと彼らの姿が見えた。
俺は玉座から立ち上がる。
「テオシントの民たちよ。長い間ご苦労であった」
啜り泣く声、嗚咽が聞こえた。
そして、二人の影が扉からゆっくりと歩いてきた。
一人は俺のように赤い髪の初老の男性、寄り添うは同じくらいの年齢の上品な女性。
おそらく服装からすると。
「私はテオシント王国の最後の国王だ。我々を見送るために来てくれて礼を言う」
生前の姿だろう。
国王として堂々としたふさわしい姿で玉座の前まで歩いてきた。
俺は玉座を譲ろうとした。
彼がここにいる皆を先導した方が良い。
だが、首を小さく横に振られた。
「もうテオシント王国は存在しない。だが、どんな形でも血が続いていることを嬉しく思う。其方らに惜しみない祝福を」
「祝福を」
後ろにいる者たちも国王に言葉を続けた。
大きな声が部屋に響くと、辺りが眩い光で満ちる。
非常に眩しいが、俺は背筋を伸ばした後、彼らに向かって姿勢正しく深い礼を静かにする。
数分後にはこの空間から光が去った。
先程までいた人影が嘘のように消え去った。
まるで、最初から誰もいなかったかのように。
「さて、戻るか」
独り言のように赤い魔法の盾に言う。
コレで俺がこの国でやるべきことはすべて終わった。
赤い魔剣はテオシント王国の象徴。国王が所持していた魔剣。
俺の手元に来たのは、偶然だったのか。それとも。
玉座の背面に小さく刺繍された赤い魔剣が描かれている国章が目に入る。
行きと同じく、帰りも時間がかかると思いきや、建物から自動で排出されたかのように十分もしない内にデント王国の王城の敷地に戻った。
入りにくく、出やすい構造なのか。
外は明るい。
目を細める。
一睡もしていない。
このまま寝てしまいたい。
王城は広い。
どこかの部屋でこっそり寝ていてもバレないのではないかとも考える。
それもまた見つかったら面倒なので、王城を抜け出し、宿でも取った方が良い。
「スレイと合流できるか?」
女王と会わなければ、俺はこのままこの国から逃げ出すことは可能だ。
ソニア嬢は、、、幸運を祈ろう。
と思っていたら。
「フリント女王陛下っ」
大きな声で女王を呼ぶ声が聞こえる。
ヤバイ。この城で一番会ってはいけない人物だ。
建物の影から覗くと、わらわらと人がいる。
衣装からすると昨日の舞踏会の豪華さでいる者たちと警備やら使用人やらが大勢いる。
空からやってきた女王はフラフラと地面に降り立つ。
一晩中走り回っていたのか、魔力が乏しいのは見て取れる。
今ならば、と思う者も少なくないのでは?
ストレートの長い髪が俺よりも鮮やかな赤に見える。
「フリントっ」
「お姉様っ」
あ、ソニア嬢、ご無事で何より。
あの姿ならリーフ王女でいいのか。リーフ王女の顔にも疲労の色が見える。
ここにいる者たちも一晩中何かしていたのか。
「出迎えてくれるなんて思ってもみなかったわ。でも、そうね」
彼女は微笑んだが、何もかも諦めたような目をした。
「一晩中飛び続けて、私の魔力はカラカラよ。今なら私を倒せるわよ」
「お姉様っ、お疲れ様ですっ。今日はもう食事をとってお風呂に入って休みましょう」
「そうだ、話は後だ。一晩中話を聞いて疲れたよ。私も若くないから、宴は夜からにしよう」
「そうですね、叔父様っ。いま宴を開いても寝てしまいますっ」
女王の言葉なんてまるで聞いていなかったかのように、二人は言葉を重ねてしまった。
ホップ公爵の提案に、リーフ王女だけでなくその場にいた他の者も頷いて同意した。
「王城で勤務している者は最低限動ける者は動いてもらうが、一晩中稼働していた者は順次休憩をとってくれ」
ホップ公爵は疲れていると言うが、テキパキと指示を始めた。
女王の疲労の方が色濃く見えるからだ。
髪の毛はボサボサ、衣装も少々乱れている。
それでも、気高い印象は残っているが。
アレが血のつながった妹なのかと感慨深く思ったが、話しかけないでこの場から消えることにする。
それが一番良い。
後ろを向いて立ち去ろうとした。
「あっ、キュジオ隊長ーっ、ご無事でしたかーっ」
ソニアーーーーっ、大声で呼ぶなーーーーっ。
お前、寝不足で頭が死んでるだろっ。
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