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9章 理想と現実と、嫌がらせ
9-19 嫌がらせ、我が人生5
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「おい、グジ、時計塔の中に戻るぞ」
時計塔先端部分にしがみついているグジに近寄って声をかける。
「ぼ、亡霊たちは?」
「最初にいた数体しかここには残ってないぞ」
亡霊さんたちも気を使って遠巻きにグジを見ている。
恐る恐るグジが目を開ける。
「ううっ」
数体でも辛そうだ。
亡霊さんたちの方が気配りして、グジには近づかない。
彼らは自分たちの姿を認識しているから。
、、、で、一般人の反応ってそうなの?
俺も麻痺していたかな。
フリント女王は何百体もの亡霊を引き連れていたけど。あの凄惨な姿の亡霊を。
となると。
あの姿の彼らが恨み辛み嘆きをデント王国の皆様に正確に伝えるのは難しい話なのか?
驚きと恐怖で、亡霊の話なんか聞いてられない?
せめて黒いモヤのままだったら良かったか。
黒いモヤは単なる失敗なだけなので、この魔法陣では再現しようがなかったが。
彼らの姿は、平和ボケしている者たちは酷ければ気絶してしまうほどなのか?
「、、、三日三晩ぐらいこの状況を放置しようとしてたけど」
「兄ちゃん、鬼っ」
グジに鬼と言われてしまったよ。
そこまでなのか?
当初、一週間ぐらいを計画していたのだが。
だって、数百年以上の恨み辛み嘆きを一週間でも晴らせるかなあと思っていたくらいなのだが。
一週間でも短い?でも、我慢してね、って思っていたのに。
「んー?一晩ぐらいでいいって?それぐらいで皆の気も晴れるだろうと?」
亡霊さんたちから伝えてきた。
あまり長い時間を取るのも問題か。
成仏も勢いでやるようなところがある。
考える時間を与えてはいけないのかもしれない。
ふとした瞬間に正気に戻られてもいけない。
夜明けとともに成仏か。
今の状況ならば、グジにも亡霊さんたちの声が届く。
「ううっ、姿は怖いが兄ちゃんよりも話をわかってくれる」
グジさんや、その言葉しっかり覚えておくぞ。
「つまり、貴方がやりたかったことは、この国の亡霊たちがやりたかったデント王国の皆に恨み辛み嘆きを訴えさせて成仏させるってことなのね」
フリント女王が屋根の縁の近くに足を抱え込んで座っている。
たっかいドレスが汚れているなあ。暗闇だからわかりにくいけど。
後で従者くんに怒られません?
「少し違うぞ」
「そうなの?」
「俺がやりたかったのは、ただの嫌がらせだ」
笑顔で答えてやる。
誰に対しての。
フリント女王に。
ソニア嬢ことリーフ王女に。
王弟であったホップ公爵に。
デント王国の皆様に。
そして、最大は娘が追いつめられてもわからなかった女王の両親に。
コレは俺が解決することではない。
そして、彼らが知らずに済ますことではない。
「女王を騙った私は断罪されるべきだと思うけど」
「何を言っているんだ?紛れもなく女王として認められたのはお前の努力のおかげだろう。自分の血がデント王国の王族の血を引き継いでいないのが負い目だと考えるのなら、リーフの子を養子縁組して王にすれば良いだけの話だ」
フリント女王は俺を見た。
教育を受けて、女王として立っているのは彼女である。
女王として跡継ぎに据えたのは、その資格があるから彼女の両親も認めたのである。
「ああ、そういう考え方もあるのね。けれど、本当のことを私は皆に言うべきだわ」
「、、、言いたいのなら、とめないけど」
本当に言う気かな?
それが彼女の判断なら仕方ないが。
大変申し訳ないが、オチが見えているのだが。
だって、想像以上の阿鼻叫喚の図だよ。この国。
今は戦争国家ではないとしても、女王の粛清とか、魔物退治とか、盗賊退治とかで、けっこう血には慣れていると思っていたが。。。
女王の粛清が始まる前は、興行でもリアルなお化け屋敷とか楽しんでいる国みたいだったのに。
グジさんが時計塔の先端から貼りついて離れない。
仕方ないので襟ぐりの後ろを引っ張り、ずるずると連れて行く。
屋根の一部にある扉を開けて、屋根裏部屋に入ろうとすると。
「、、、この騒ぎは一晩で本当に収まるの?」
「夜明けとともに」
それが一番良い幕切れだ。
亡霊と言っても、今までこの国の亡霊は昼夜問わずそばにいたけど。
「ま、国境封鎖しているとはいえ、宗教国家の聖騎士に助けを求められても面倒だ」
「それは言えてるわね」
フリント女王は自分の頬を両手で叩いた。
パンッと音が響く。
「じゃあ、私はもう一仕事してくるわ」
すくっと立ち上がって魔剣を抱えて王城に颯爽と飛んでいく。
うん、だからね。
そういうところだよ。
真実を話したところで。
彼女の敵はすでにほとんどが粛清されているのだから。
俺は彼女の後ろ姿を見送ってから、グジを引き摺る。
「ううっ」
屋根裏部屋に来ても、グジが唸っている。
「何で彼らは女王についていかないんだ」
「ああ、元々俺についてきた亡霊さんたちだからなあ。彼なんて、俺がデント王国に入国したときから、ずっとついて来てくれていたよ」
刀傷がバッサリとある彼は文官だったそうな。
だから、テオシント王国の時代からデント王国にかけて、いろいろと詳しい。
彼は寝る間を惜しんで語ってくれた。俺は寝ていたけど。魔法の盾がうんうん聞いていたようだが。
「っそ、そうなのか。ずっと??」
グジが思い出そうとしても、姿は見えなかっただろうけど。
俺たちは長い階段を使って階下に下りていく。
「恨み辛み嘆く亡霊は俺にはついてこない。成仏する前に語っておきたいことがあるからこそ、俺のところに来ていたようだ」
うんうん頷く亡霊さんたち。
亡霊さんたちは俺たちのかなり後ろから階段を下りて来る。
こまめにメモする魔法の盾。たまに飽きて落書きしているのは見逃してやってくれ。
「恨み辛み嘆く亡霊は女王の方に行っていたと。。。」
「適材適所だ。というより、女王しかいなかっただけだ、話が聞ける者が」
「一晩で憂さ晴らししてくれるかな」
「ははは、彼らだってもうここにはいたくないさ」
縛られていたから、この地にいただけだ。
解放されたいと願っている者たちは多い。
彼らは自分から望んで死霊になったわけではない。
「おう、兄ちゃん、頭領、、、他に客人がいたのか、、、客人?」
時計塔階段挑戦者三人が階段で座っていた。
薄暗いとはいえ見えたのであろう。
俺たちの後ろで視線が固まっている。
事情を知らなくても、今は彼らにも見えるだろう。
「この国の魔法陣を改変して、この国にいる亡霊さんたちを皆に見えるようにした」
「、、、兄ちゃんなら可能、、、なのか?」
「兄ちゃんに害のある存在じゃなければ、まあいいか?」
「兄ちゃんが無事なら?」
皆、疑問形で話すなあ。
この団体のなかで一番グジが怖がりなのか?
彼らはとりあえず害がなければ騒がないようだ。
階段途中で挫折した他の者たちも拾って一階に戻る。
先に一階に戻っていた者もいて、ギルの食事の準備を手伝っていた。
時計塔には使われてはいなかったようだが厨房も食堂も備わっている。
「兄ちゃん、外が騒がしいが何かあったのか?」
そりゃ、上でも聞こえるくらいなのだから一階にいれば騒がしいよな。
時計塔の扉にはしっかりと鍵がかかっているし、必要ないと思うがついでに机などの重そうな家具で押さえられている。
開けてくれーーーっ、と外で騒ぐ者がいるようだが、一晩だけは彼らに付き合ってあげてくれ。
「ああ、亡霊さんたちがこの国の者たちに恨み辛み嘆きを訴えている。今晩はとりあえずここで休むか」
「そうか。それなら外に出るのは危険だな。兄ちゃんも無事に戻ってきたし、遅いが夕食にしよう」
ギルが大きなテーブルに皿を並べ始めた。
グジ以外はそこまで亡霊に騒がないね。
少々離れた場所に佇んでいるのに。
さすがは冒険者。
ま、宗教国家でもなければ、死霊豊富なダンジョンなんて存在しないので、経験したことはないと思うが。
「美味しそうなニオイが上にまで漂っていたよ。んで、ルイジィの姿が見えないようだけど?」
「ああ、騒ぎが始まる前に外へ出ていった。一応軽食は持たせたから、何とかなるんじゃないか」
「ルイジィだから、まあ平気かあ。何をしに外に出たかは気になるけど、まずは夕食ー」
ギルはテーブルの皿を多く並べていた。
亡霊さんは食べられないが、亡霊さんのそばにいた魔法の盾は嬉しそうに一緒に待っていた。
時計塔先端部分にしがみついているグジに近寄って声をかける。
「ぼ、亡霊たちは?」
「最初にいた数体しかここには残ってないぞ」
亡霊さんたちも気を使って遠巻きにグジを見ている。
恐る恐るグジが目を開ける。
「ううっ」
数体でも辛そうだ。
亡霊さんたちの方が気配りして、グジには近づかない。
彼らは自分たちの姿を認識しているから。
、、、で、一般人の反応ってそうなの?
俺も麻痺していたかな。
フリント女王は何百体もの亡霊を引き連れていたけど。あの凄惨な姿の亡霊を。
となると。
あの姿の彼らが恨み辛み嘆きをデント王国の皆様に正確に伝えるのは難しい話なのか?
驚きと恐怖で、亡霊の話なんか聞いてられない?
せめて黒いモヤのままだったら良かったか。
黒いモヤは単なる失敗なだけなので、この魔法陣では再現しようがなかったが。
彼らの姿は、平和ボケしている者たちは酷ければ気絶してしまうほどなのか?
「、、、三日三晩ぐらいこの状況を放置しようとしてたけど」
「兄ちゃん、鬼っ」
グジに鬼と言われてしまったよ。
そこまでなのか?
当初、一週間ぐらいを計画していたのだが。
だって、数百年以上の恨み辛み嘆きを一週間でも晴らせるかなあと思っていたくらいなのだが。
一週間でも短い?でも、我慢してね、って思っていたのに。
「んー?一晩ぐらいでいいって?それぐらいで皆の気も晴れるだろうと?」
亡霊さんたちから伝えてきた。
あまり長い時間を取るのも問題か。
成仏も勢いでやるようなところがある。
考える時間を与えてはいけないのかもしれない。
ふとした瞬間に正気に戻られてもいけない。
夜明けとともに成仏か。
今の状況ならば、グジにも亡霊さんたちの声が届く。
「ううっ、姿は怖いが兄ちゃんよりも話をわかってくれる」
グジさんや、その言葉しっかり覚えておくぞ。
「つまり、貴方がやりたかったことは、この国の亡霊たちがやりたかったデント王国の皆に恨み辛み嘆きを訴えさせて成仏させるってことなのね」
フリント女王が屋根の縁の近くに足を抱え込んで座っている。
たっかいドレスが汚れているなあ。暗闇だからわかりにくいけど。
後で従者くんに怒られません?
「少し違うぞ」
「そうなの?」
「俺がやりたかったのは、ただの嫌がらせだ」
笑顔で答えてやる。
誰に対しての。
フリント女王に。
ソニア嬢ことリーフ王女に。
王弟であったホップ公爵に。
デント王国の皆様に。
そして、最大は娘が追いつめられてもわからなかった女王の両親に。
コレは俺が解決することではない。
そして、彼らが知らずに済ますことではない。
「女王を騙った私は断罪されるべきだと思うけど」
「何を言っているんだ?紛れもなく女王として認められたのはお前の努力のおかげだろう。自分の血がデント王国の王族の血を引き継いでいないのが負い目だと考えるのなら、リーフの子を養子縁組して王にすれば良いだけの話だ」
フリント女王は俺を見た。
教育を受けて、女王として立っているのは彼女である。
女王として跡継ぎに据えたのは、その資格があるから彼女の両親も認めたのである。
「ああ、そういう考え方もあるのね。けれど、本当のことを私は皆に言うべきだわ」
「、、、言いたいのなら、とめないけど」
本当に言う気かな?
それが彼女の判断なら仕方ないが。
大変申し訳ないが、オチが見えているのだが。
だって、想像以上の阿鼻叫喚の図だよ。この国。
今は戦争国家ではないとしても、女王の粛清とか、魔物退治とか、盗賊退治とかで、けっこう血には慣れていると思っていたが。。。
女王の粛清が始まる前は、興行でもリアルなお化け屋敷とか楽しんでいる国みたいだったのに。
グジさんが時計塔の先端から貼りついて離れない。
仕方ないので襟ぐりの後ろを引っ張り、ずるずると連れて行く。
屋根の一部にある扉を開けて、屋根裏部屋に入ろうとすると。
「、、、この騒ぎは一晩で本当に収まるの?」
「夜明けとともに」
それが一番良い幕切れだ。
亡霊と言っても、今までこの国の亡霊は昼夜問わずそばにいたけど。
「ま、国境封鎖しているとはいえ、宗教国家の聖騎士に助けを求められても面倒だ」
「それは言えてるわね」
フリント女王は自分の頬を両手で叩いた。
パンッと音が響く。
「じゃあ、私はもう一仕事してくるわ」
すくっと立ち上がって魔剣を抱えて王城に颯爽と飛んでいく。
うん、だからね。
そういうところだよ。
真実を話したところで。
彼女の敵はすでにほとんどが粛清されているのだから。
俺は彼女の後ろ姿を見送ってから、グジを引き摺る。
「ううっ」
屋根裏部屋に来ても、グジが唸っている。
「何で彼らは女王についていかないんだ」
「ああ、元々俺についてきた亡霊さんたちだからなあ。彼なんて、俺がデント王国に入国したときから、ずっとついて来てくれていたよ」
刀傷がバッサリとある彼は文官だったそうな。
だから、テオシント王国の時代からデント王国にかけて、いろいろと詳しい。
彼は寝る間を惜しんで語ってくれた。俺は寝ていたけど。魔法の盾がうんうん聞いていたようだが。
「っそ、そうなのか。ずっと??」
グジが思い出そうとしても、姿は見えなかっただろうけど。
俺たちは長い階段を使って階下に下りていく。
「恨み辛み嘆く亡霊は俺にはついてこない。成仏する前に語っておきたいことがあるからこそ、俺のところに来ていたようだ」
うんうん頷く亡霊さんたち。
亡霊さんたちは俺たちのかなり後ろから階段を下りて来る。
こまめにメモする魔法の盾。たまに飽きて落書きしているのは見逃してやってくれ。
「恨み辛み嘆く亡霊は女王の方に行っていたと。。。」
「適材適所だ。というより、女王しかいなかっただけだ、話が聞ける者が」
「一晩で憂さ晴らししてくれるかな」
「ははは、彼らだってもうここにはいたくないさ」
縛られていたから、この地にいただけだ。
解放されたいと願っている者たちは多い。
彼らは自分から望んで死霊になったわけではない。
「おう、兄ちゃん、頭領、、、他に客人がいたのか、、、客人?」
時計塔階段挑戦者三人が階段で座っていた。
薄暗いとはいえ見えたのであろう。
俺たちの後ろで視線が固まっている。
事情を知らなくても、今は彼らにも見えるだろう。
「この国の魔法陣を改変して、この国にいる亡霊さんたちを皆に見えるようにした」
「、、、兄ちゃんなら可能、、、なのか?」
「兄ちゃんに害のある存在じゃなければ、まあいいか?」
「兄ちゃんが無事なら?」
皆、疑問形で話すなあ。
この団体のなかで一番グジが怖がりなのか?
彼らはとりあえず害がなければ騒がないようだ。
階段途中で挫折した他の者たちも拾って一階に戻る。
先に一階に戻っていた者もいて、ギルの食事の準備を手伝っていた。
時計塔には使われてはいなかったようだが厨房も食堂も備わっている。
「兄ちゃん、外が騒がしいが何かあったのか?」
そりゃ、上でも聞こえるくらいなのだから一階にいれば騒がしいよな。
時計塔の扉にはしっかりと鍵がかかっているし、必要ないと思うがついでに机などの重そうな家具で押さえられている。
開けてくれーーーっ、と外で騒ぐ者がいるようだが、一晩だけは彼らに付き合ってあげてくれ。
「ああ、亡霊さんたちがこの国の者たちに恨み辛み嘆きを訴えている。今晩はとりあえずここで休むか」
「そうか。それなら外に出るのは危険だな。兄ちゃんも無事に戻ってきたし、遅いが夕食にしよう」
ギルが大きなテーブルに皿を並べ始めた。
グジ以外はそこまで亡霊に騒がないね。
少々離れた場所に佇んでいるのに。
さすがは冒険者。
ま、宗教国家でもなければ、死霊豊富なダンジョンなんて存在しないので、経験したことはないと思うが。
「美味しそうなニオイが上にまで漂っていたよ。んで、ルイジィの姿が見えないようだけど?」
「ああ、騒ぎが始まる前に外へ出ていった。一応軽食は持たせたから、何とかなるんじゃないか」
「ルイジィだから、まあ平気かあ。何をしに外に出たかは気になるけど、まずは夕食ー」
ギルはテーブルの皿を多く並べていた。
亡霊さんは食べられないが、亡霊さんのそばにいた魔法の盾は嬉しそうに一緒に待っていた。
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