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7章 貴方に縋る
7-24 門番と謎の噂
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グジたちが住む街に着いた。
小さい街だと言っていたが、街を囲う外壁は立派なものだ。
「グジじゃないか。おっ、お前ら、帰ってきたのか」
イスに座っていた門番のおっちゃんがグジ一行を笑顔で迎える。
街ぐるみで、家族のように親しい間柄、というのもあながち間違いではないのかもしれない。
「いやあ、良かった良かった。隣国へと治療魔導士に依頼しに行くって言っていたが、、、彼がそうかい?」
やはり俺は男の格好をしていたら、男にしか見えないよな。
門番のおっちゃんにじっと見られる。
不躾な視線で。
諸手を挙げて迎えろというわけではないが、コレは完全に部外者には優しくない街と見ていいだろう。
「おっちゃんっ、せっかく来てくれた兄ちゃんに失礼な態度をするなっ」
「そうだっ、たとえおっちゃんでも許さねえ」
「兄ちゃんが帰っちまったらどうするんだっ」
グジ一行が門番のおっちゃんに文句を言う。
、、、キミたちもおっちゃんって言うんだね。おっちゃんって顔しているけどさ。
いや、俺が帰ってもグジに薬を渡しているから平気なんだけど。
「兄ちゃん、すまんっ。忘れていたが、この街は少し排他的なところがあるんだ」
「いや、別に、治療が済んだら、俺はこの街に長居しないし」
「兄ちゃんっ、そんなこと言わずに、しばらく滞在していってくれ。険しい山道を来たんだ、疲れているだろっ、少しはカラダを休めていってくれっ」
「そうだ、兄ちゃん、俺のアクセサリー店にも来てくれると約束してくれたじゃないか」
約束したけど、そんなの十分もあれば見れるんじゃないか?
「まさか、お前ら、道なき道の直線で国境まで行って帰ってきたのかっ。って、ことは」
驚愕の声でおっちゃんがグジに聞いている。
街道や普通の道を使うと遠回りになるけど、小道とか獣道とかあったよね、わりと近くに。
門番のおっちゃんが俺を見た。
目が変わっている。
「、、、すまない。コイツら馬鹿なんだ。十三人もいるのに全員が全員、直線が一番早く着くと信じているんだ。何度も何度も道順は説明したんだが。治療魔導士というのは高給取りだろ。本来なら高級馬車で送迎しなければ来てくれないほどの。それなのに歩きであんな道を付き合わされて」
このおっちゃん、治療魔導士の待遇わかっていたようで何より。
そして、この十三人の行動も良く知っているようで。家族ぐるみの仲だな、ホント。
「あ、そだ、この兄ちゃん、S級冒険者なんだ。身元保証も完璧だ」
グジの言葉に、門番のおっちゃんが地面に平伏した。
「、、、どうしたんだ。このおっちゃん具合でも悪いのか?」
急にどうしたのかわからないからグジに聞く。急にお腹を痛めたとか。。。
「この街にS級冒険者が来たの初めてだからさあ、きっと」
「緊張しちゃっているんじゃないの?」
「い、いや、違う、S級冒険者を街中で見かけたらひれ伏さなければならないと」
「そんなルールあったっけ?」
何それ。
聞いたことないなあ。
この街には噂話が変に伝わってきているのか?
「王都ではS級冒険者に会ったら、平民は平伏しないといけない決まりがあると聞いている。そもそもS級冒険者は基本的に王都か戦場にしかいない」
「ソイ王国ではそんなことしてるのか?」
「いや、そんな話は冒険者ギルドで聞いたこともないんだが」
グジたちも知らないようだが。
「平伏してない平民は剣で切られても文句が言えないと、、、」
「ひたすら迷惑この上ないが、本当のことなのか?」
通行の邪魔にならないか?
王都は人も多いだろう?
「この街の冒険者ギルドにでも聞いてみた方がいいのかもなあ。俺たちは王都には行ったことがないから」
「少なくともウィト王国の冒険者にはそのルールは当てはまらないから、立ってくれ」
俺はおっちゃんに言う。
門番に平伏されたままいられるのも微妙だ。
ウィト王国でもそんな対応されたことはないのに。
おっちゃんがおずおずと立ち上がる。
「そ、そうか?その立派な剣で切らない?」
「兄ちゃんの魔剣でおっちゃんなんか切ったらもったいない」
「そうだぞ、俺が切ってもらいたいくらいなのに」
「兄ちゃんの魔剣で吹き飛ばされたときはヤバかった」
「羨ましい」
何が?
おっちゃんが一歩どころか五歩遠退いたぞ。
「、、、ソイ王国の冒険者事情は冒険者ギルドで聞く。お前たちは謎の性癖を暴露するのはよせ」
俺は自分の冒険者カードを門番に見せる。
ソイ王国では外壁で守られている街に入るのは、たいていの場合、身分証明書が必要になる。なければ、金銭である。金額は街によっても、門番によっても違うと言われている。
ウィト王国は基本平和なので、王都や大都市や閉鎖的な街以外では街の入場時に身分証の提示までは特に必要ない。
「き、金色」
おっちゃん、手を合わせて拝むな。
見せるだけでいいだろ。
まだ拝んでいるが、門の中に入る。
小さい広場はこじんまりとしているが、馬車が通れる綺麗に舗装された道路もあるし、田舎という雰囲気ではない。
小さいが街は街である。
「で、頭領、さっさと目的を果たしたいんだが、妹さんは自宅か、病院か?」
「この街には長期入院できる病院はないんだ。診療所でベッド数も僅かだから、容体が急変でもしない限りうちにいる」
「じゃあ、グジの家に向かおう」
歩こうとすると。
「今日はどこに泊まる?グジの家じゃあ、母親は妹の看病で疲れている。ろくなおもてなしもできないだろうから、俺のうちに」
「それなら俺のうちの方が客間が広い」
「だったらうちの母ちゃんの食事の方がうまい」
「うちは風呂が広いぞ」
「じゃあ、うちは、、、」
家自慢か?
十三人が俺の周囲でわちゃわちゃするな。
「とにかく、俺はグジの家に行く。お前たちはまず家族に帰省の挨拶でもして来い」
「はいっ」
グジ以外は綺麗に去っていった。
アクセサリー店以外は特に約束はしていないからなあ。
ここでお別れである。
グジと街を歩く。
「お前の妹の治療が済んだら、依頼は終了だ。お前たちが冒険者を続けるのか、家業を再開するのかは知らないが、この街でお別れだ」
「兄ちゃん、、、そんなこと言うなよ」
グジが俯いてしまった。
と言っても、コレは送迎込みの依頼じゃないからね。
反対にウィト王国まで帰されちゃっても困るからね、俺。
この街でグジたちとはお別れ。
この街からイーティのところまで空間転移魔法を使ってもいいんだけど、グジたちが疑われても忍びない。
多少ソイ王国をうろついてから、この国から消えた方が良さそうだ。
その方がグジたちを利用した感が残るだろう。
となると、ソイ王国の王都にでも向かった方が良さそうだ。
何もなくとも、周囲が勝手に理由を探してくれる気がする。
十分ほど歩いた。
小さい庭のあるこじんまりとした家があった。
「ここが俺のうちだ」
グジが扉を開ける。
中は暗い。どこの窓にもカーテンが重くかかっているようだ。
「母ちゃん?誰もいないのか?買い物でも行ったか?とりあえず、こっちだ」
グジがいくつかの扉を開けて確認したが、いなかったようなので、俺を家の中に案内する。
「ここが妹の部屋だ。俺だ、入るぞ」
グジがノックをしたが、返事はない。
妹がベッドで寝ていた。
病状がかなり進行しているようだ。
おそらく寝たきりで一人では動けない。
母親も一度寝てしまえばしばらくは起きないことを知っていて、席を外したのだろう。
家事を何もしないわけにはいかないのだから。
「ど、どうだ、兄ちゃん、治りそうか?」
グジ、キミは今までの俺の話、ちゃんと聞いてた?
薬を飲めば、治らない病気じゃないって説明したよね。
はっ、コレが地図が読めないという現象と同じなのかっ?
何度説明しても、理解してくれないという。
ま、いいか。
さっさと治そう。
治すように依頼されているんだし。
寝ている妹の布団を少し避けて、彼女の首と胸の間に手を置く。
魔力の流れを感じるとともに、詰まりを解消していく。
淀みなく。
滞りなく。
綺麗に。
流れるように。
魔力よ、全身を巡れ。
小さい街だと言っていたが、街を囲う外壁は立派なものだ。
「グジじゃないか。おっ、お前ら、帰ってきたのか」
イスに座っていた門番のおっちゃんがグジ一行を笑顔で迎える。
街ぐるみで、家族のように親しい間柄、というのもあながち間違いではないのかもしれない。
「いやあ、良かった良かった。隣国へと治療魔導士に依頼しに行くって言っていたが、、、彼がそうかい?」
やはり俺は男の格好をしていたら、男にしか見えないよな。
門番のおっちゃんにじっと見られる。
不躾な視線で。
諸手を挙げて迎えろというわけではないが、コレは完全に部外者には優しくない街と見ていいだろう。
「おっちゃんっ、せっかく来てくれた兄ちゃんに失礼な態度をするなっ」
「そうだっ、たとえおっちゃんでも許さねえ」
「兄ちゃんが帰っちまったらどうするんだっ」
グジ一行が門番のおっちゃんに文句を言う。
、、、キミたちもおっちゃんって言うんだね。おっちゃんって顔しているけどさ。
いや、俺が帰ってもグジに薬を渡しているから平気なんだけど。
「兄ちゃん、すまんっ。忘れていたが、この街は少し排他的なところがあるんだ」
「いや、別に、治療が済んだら、俺はこの街に長居しないし」
「兄ちゃんっ、そんなこと言わずに、しばらく滞在していってくれ。険しい山道を来たんだ、疲れているだろっ、少しはカラダを休めていってくれっ」
「そうだ、兄ちゃん、俺のアクセサリー店にも来てくれると約束してくれたじゃないか」
約束したけど、そんなの十分もあれば見れるんじゃないか?
「まさか、お前ら、道なき道の直線で国境まで行って帰ってきたのかっ。って、ことは」
驚愕の声でおっちゃんがグジに聞いている。
街道や普通の道を使うと遠回りになるけど、小道とか獣道とかあったよね、わりと近くに。
門番のおっちゃんが俺を見た。
目が変わっている。
「、、、すまない。コイツら馬鹿なんだ。十三人もいるのに全員が全員、直線が一番早く着くと信じているんだ。何度も何度も道順は説明したんだが。治療魔導士というのは高給取りだろ。本来なら高級馬車で送迎しなければ来てくれないほどの。それなのに歩きであんな道を付き合わされて」
このおっちゃん、治療魔導士の待遇わかっていたようで何より。
そして、この十三人の行動も良く知っているようで。家族ぐるみの仲だな、ホント。
「あ、そだ、この兄ちゃん、S級冒険者なんだ。身元保証も完璧だ」
グジの言葉に、門番のおっちゃんが地面に平伏した。
「、、、どうしたんだ。このおっちゃん具合でも悪いのか?」
急にどうしたのかわからないからグジに聞く。急にお腹を痛めたとか。。。
「この街にS級冒険者が来たの初めてだからさあ、きっと」
「緊張しちゃっているんじゃないの?」
「い、いや、違う、S級冒険者を街中で見かけたらひれ伏さなければならないと」
「そんなルールあったっけ?」
何それ。
聞いたことないなあ。
この街には噂話が変に伝わってきているのか?
「王都ではS級冒険者に会ったら、平民は平伏しないといけない決まりがあると聞いている。そもそもS級冒険者は基本的に王都か戦場にしかいない」
「ソイ王国ではそんなことしてるのか?」
「いや、そんな話は冒険者ギルドで聞いたこともないんだが」
グジたちも知らないようだが。
「平伏してない平民は剣で切られても文句が言えないと、、、」
「ひたすら迷惑この上ないが、本当のことなのか?」
通行の邪魔にならないか?
王都は人も多いだろう?
「この街の冒険者ギルドにでも聞いてみた方がいいのかもなあ。俺たちは王都には行ったことがないから」
「少なくともウィト王国の冒険者にはそのルールは当てはまらないから、立ってくれ」
俺はおっちゃんに言う。
門番に平伏されたままいられるのも微妙だ。
ウィト王国でもそんな対応されたことはないのに。
おっちゃんがおずおずと立ち上がる。
「そ、そうか?その立派な剣で切らない?」
「兄ちゃんの魔剣でおっちゃんなんか切ったらもったいない」
「そうだぞ、俺が切ってもらいたいくらいなのに」
「兄ちゃんの魔剣で吹き飛ばされたときはヤバかった」
「羨ましい」
何が?
おっちゃんが一歩どころか五歩遠退いたぞ。
「、、、ソイ王国の冒険者事情は冒険者ギルドで聞く。お前たちは謎の性癖を暴露するのはよせ」
俺は自分の冒険者カードを門番に見せる。
ソイ王国では外壁で守られている街に入るのは、たいていの場合、身分証明書が必要になる。なければ、金銭である。金額は街によっても、門番によっても違うと言われている。
ウィト王国は基本平和なので、王都や大都市や閉鎖的な街以外では街の入場時に身分証の提示までは特に必要ない。
「き、金色」
おっちゃん、手を合わせて拝むな。
見せるだけでいいだろ。
まだ拝んでいるが、門の中に入る。
小さい広場はこじんまりとしているが、馬車が通れる綺麗に舗装された道路もあるし、田舎という雰囲気ではない。
小さいが街は街である。
「で、頭領、さっさと目的を果たしたいんだが、妹さんは自宅か、病院か?」
「この街には長期入院できる病院はないんだ。診療所でベッド数も僅かだから、容体が急変でもしない限りうちにいる」
「じゃあ、グジの家に向かおう」
歩こうとすると。
「今日はどこに泊まる?グジの家じゃあ、母親は妹の看病で疲れている。ろくなおもてなしもできないだろうから、俺のうちに」
「それなら俺のうちの方が客間が広い」
「だったらうちの母ちゃんの食事の方がうまい」
「うちは風呂が広いぞ」
「じゃあ、うちは、、、」
家自慢か?
十三人が俺の周囲でわちゃわちゃするな。
「とにかく、俺はグジの家に行く。お前たちはまず家族に帰省の挨拶でもして来い」
「はいっ」
グジ以外は綺麗に去っていった。
アクセサリー店以外は特に約束はしていないからなあ。
ここでお別れである。
グジと街を歩く。
「お前の妹の治療が済んだら、依頼は終了だ。お前たちが冒険者を続けるのか、家業を再開するのかは知らないが、この街でお別れだ」
「兄ちゃん、、、そんなこと言うなよ」
グジが俯いてしまった。
と言っても、コレは送迎込みの依頼じゃないからね。
反対にウィト王国まで帰されちゃっても困るからね、俺。
この街でグジたちとはお別れ。
この街からイーティのところまで空間転移魔法を使ってもいいんだけど、グジたちが疑われても忍びない。
多少ソイ王国をうろついてから、この国から消えた方が良さそうだ。
その方がグジたちを利用した感が残るだろう。
となると、ソイ王国の王都にでも向かった方が良さそうだ。
何もなくとも、周囲が勝手に理由を探してくれる気がする。
十分ほど歩いた。
小さい庭のあるこじんまりとした家があった。
「ここが俺のうちだ」
グジが扉を開ける。
中は暗い。どこの窓にもカーテンが重くかかっているようだ。
「母ちゃん?誰もいないのか?買い物でも行ったか?とりあえず、こっちだ」
グジがいくつかの扉を開けて確認したが、いなかったようなので、俺を家の中に案内する。
「ここが妹の部屋だ。俺だ、入るぞ」
グジがノックをしたが、返事はない。
妹がベッドで寝ていた。
病状がかなり進行しているようだ。
おそらく寝たきりで一人では動けない。
母親も一度寝てしまえばしばらくは起きないことを知っていて、席を外したのだろう。
家事を何もしないわけにはいかないのだから。
「ど、どうだ、兄ちゃん、治りそうか?」
グジ、キミは今までの俺の話、ちゃんと聞いてた?
薬を飲めば、治らない病気じゃないって説明したよね。
はっ、コレが地図が読めないという現象と同じなのかっ?
何度説明しても、理解してくれないという。
ま、いいか。
さっさと治そう。
治すように依頼されているんだし。
寝ている妹の布団を少し避けて、彼女の首と胸の間に手を置く。
魔力の流れを感じるとともに、詰まりを解消していく。
淀みなく。
滞りなく。
綺麗に。
流れるように。
魔力よ、全身を巡れ。
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