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7章 貴方に縋る
7-23 餌付けできるの? ◆ソイファ視点◆
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◆ソイファ視点◆
魔法の盾にクッキーをやると、面白いように食べる。
五センチくらいの半透明な五角形。多少の厚みはある。が、顔は描かれていない。
どこにも口はないのに?
どうやって食べているんだ?
部下たちもじっと観察している。
いつのまにか、菓子皿の周囲に魔法の盾が五枚いた。
うん、他にもいたのか。。。
ここにいた魔法の盾は二枚だと思っていたんだが。
我も我もと綺麗に並んだクッキーを一枚ずつ頬張っていく。
最初にいた紙を持っている魔法の盾とはその紙に書かれている文字が変わるので意志の疎通ができる。
「うまいかー?」
『超旨い』
魔法の盾が紙を上に掲げて、全身で喜びを表している、ように見える。
その解釈でいいのかなあ。
魔法の盾の感情の表現の仕方って知らないし。
「ソイファ様、最強の盾は最強の剣よりもあっさりと帰られてしまいましたね」
「確かに。最強の剣でさえ一時間は回廊をウロウロしていたのに」
それを考えると脅威的なのだが、最強の剣クリストのウロウロが面白いものと化してしまう。
最強の盾は普通に部屋の扉を開けたら、もう外だった。
俺以外が夢幻回廊内で部屋の扉を開けても、そこには永遠の廊下がつながるだけのはずなのに。
最強の剣よりおかしい、最強の盾。
勝手に来たし、勝手に帰った。
俺の固有魔法なのに、どこに俺の意志が関わっているのか?
不法侵入なのに、魔法でできた空間は訴える先がない。
普通に屋敷や王城なら不届き者だと捕まえることができるのに。
最強の剣でさえ、こちらから入れたのに。出そうとしなかっただけなのに。
「最強の盾は初対面とは言えども、前から俺を知っていたんだろ」
『それはお互い様ー』
はいはい、お互い諜報し合っていましたからねえ。
こちらのこともしっかりバレてた。
会うことがなかったから確認したことがなかっただけだ。
「うちの王城の周りにも魔法の盾いるだろ。何枚ぐらいいるんだ?」
ちょっとカマかけて見た。いるとは思っているが、確証は得られていない。
『かなりー』
「へ?」
『数えるの、面倒』
「、、、ソイファ様、プライベートはもうないものだと諦めた方がよろしいのでは?」
部下が苦い笑顔で言った。
夢幻回廊内にも魔法の盾が入り込んでしまったからねえ。
入っても良いよと許可した覚えはないのに。
事実を知らなければ、幸せでいられたことは多い。
「ところで、俺についてくる魔法の盾はどれだ?」
四枚の魔法の盾がクッキーから離れない。
『それ→』
「、、、お前を連れて行く方が意志疎通しやすいんだけど」
文字が変わる紙を持っているから。
俺が言った途端、一枚がしおしおと丸まった。
他の三枚が肩を叩くかのように、手のように見えてしまう一つの角でそれにポンポンと触れている。
そして、三枚が非難するかのように俺を見る。目はどこかわからないけど。
「人間くさっ、何この、人間らしい動作はっ」
『自分はここで旨いクッキーを食べ続けるっ』
紙を持っている魔法の盾は、クッキーが気に入ったのか。
食い意地が張ってるな、この魔法の盾。
「お前なあ」
『はい、紙』
もう一枚の紙を俺についてくる魔法の盾に渡した。
持っているならさっさと出せ。。。
『自分もここでクッキー食べ続けたいっ』
お前もかっ。
食欲が勝るのかっ?
最強の盾に命令されたことよりもっ。
「クッキーなら王城に向かう道中でも食べられるぞ」
確かに夢幻回廊なら無限に湧き出て来るが、街道沿いの街々では様々なお菓子を売っている。
夢幻回廊に出て来るお菓子というのは、特に指定されない限り、俺が好ましく思っているものだ。つまり俺の好み中心になってしまうし、俺の記憶にない物は出て来ない。それはお菓子以外でも同じ。
ウィト王国滞在中、バーレイ侯爵家の料理人にお金を渡して、オルレアが好みの物を大量に作ってもらった。
記憶にないと出て来ないからなあ。実家の味なんて食べておかなければどうしようもない。
オルレアの部屋を見ることには見たが、アレを再現しようとは思わない。
実家に帰りたいと思わせるのも面倒だ。
「お菓子以外にも街の名物もいろいろあるぞ」
『それなら行くー』
キラッキラした魔法の盾が俺の肩にのった。
『羨ましいーっ。お土産待ってるよー』
「、、、魔法の盾って餌付けできるのか?」
「さあ?これから研究なさってください」
部下に聞いても正解が返ってくるわけもない。
「オルレアをこの街の屋敷に移してから、俺たちはソイ王国に戻る。王城に戻ったら、北の塔の夢幻回廊からつなげるから、お前たちはそれまで待機っ」
俺の肩にのっている魔法の盾以外の待機組四枚に言った。
四枚ともそのまま俺の夢幻回廊に残っている気かな?一枚いれば充分なはずだけど。
『了解っ』
四枚がピシッと反応してくれた。
「魔法の盾が可愛く思えてきたのも、最強の盾の策略か」
「今度お会いしたときにでも、一枚もらえないか聞いてみたらいかがですか」
ペット扱いか?
今のところ魔法の盾の所有を確認しているのは、帝国のイーティ・ランサス、アルティ皇太子である。
イーティ・ランサスには指輪を、アルティ皇太子は体内に埋め込まれている。
指輪の魔法の盾はイーティ・ランサスを守るため、アルティ皇太子のは見張り役だ。
この五枚はオルレアがうちの王城に着いたら、最強の盾の元に帰ってしまうのだろうか?
翌日には手頃な屋敷を即金で購入して、夢幻回廊にした後にオルレアを宿から移した。
侍女や護衛等いらないのだが、訪ねてくる者がいるかもしれないので対応する最低限の人数を残して行く。
この街の準備が整ったので、さっさとウィト王国を後にする。
部下とともに出入国管理事務所に向かう。
受付の職員が一人一人をじっと見ていたが、それ以上発言することもない。
俺も何も言わない。
出国審査も恙なく終了し、ソイ王国側の入国審査に向かう。
「ソイファ王太子殿下、出入国管理事務所をお使いになるのは珍しい」
話が伝わっていたのか、事務所の所長が出てきていた。
「ああ、本当はオルレアを連れて来るために馬車で国境に来たのだが」
部下たちも出国審査が終わって、こちら側にやってきた。
「そういえば、今オルレア様はいないのですから、我々は馬車で帰りますので、ソイファ様は先にお戻りになられては?」
「そうしたいのは山々なんだが」
と言って、俺は空間転移魔法を使う。
すぐに戻ってくる。
「ああ、なるほど」
部下たちが納得する。
俺の肩にいた魔法の盾がぺちょりと地面に落ちている。
『いきなり何するのーっ』
と非難の声をあげた。紙でペチペチ足を叩かれる。痛くないが。
魔法の盾は物扱いではないらしい。
俺の場合、他人は連れて行けないが多少の物なら持ち運べる。
空間転移魔法で移動先で全裸になっていたら嫌だよね。使いたくないよね、そんな魔法。
自分だけにしか使えない人もいるようだが、完全に緊急用になるよね、それ。
『今度から空間転移魔法を使うときは言ってよねっ』
「はいはい」
『飛んでおくからっ』
「、、、」
ちょこちょこ床を歩いていたし、肩に飛び跳ねるぐらいはできていたけど。。。
飛べるんかいっ。
飛び跳ねるではなく、ふよふよ飛んで、俺の肩まで戻ってきた。
「それなら常時飛んでおけばいいんじゃないか?」
『そういう仲間もいるけどっ、お腹が減るっ』
俺の肩を紙でバンバン叩いて怒りを表している。だから、痛くないって。
キミたち、食べ物がすべてなのかい?
「あー、」
「ソイファ王太子殿下、ご所望の国境名物高級クッキーです。バラまき用の方ではありません」
所長が箱を差し出してきた。
部下が受け取る。
コレでこの街での買い物の時間は短縮できた。
「ご苦労。これで今日は宿の街まで馬車を走らせるぞ」
『クッキー、クッキー』
喜んでいただいて幸いだ。
地面に落としたことなど、もう忘れているようだ。
魔法の盾にクッキーをやると、面白いように食べる。
五センチくらいの半透明な五角形。多少の厚みはある。が、顔は描かれていない。
どこにも口はないのに?
どうやって食べているんだ?
部下たちもじっと観察している。
いつのまにか、菓子皿の周囲に魔法の盾が五枚いた。
うん、他にもいたのか。。。
ここにいた魔法の盾は二枚だと思っていたんだが。
我も我もと綺麗に並んだクッキーを一枚ずつ頬張っていく。
最初にいた紙を持っている魔法の盾とはその紙に書かれている文字が変わるので意志の疎通ができる。
「うまいかー?」
『超旨い』
魔法の盾が紙を上に掲げて、全身で喜びを表している、ように見える。
その解釈でいいのかなあ。
魔法の盾の感情の表現の仕方って知らないし。
「ソイファ様、最強の盾は最強の剣よりもあっさりと帰られてしまいましたね」
「確かに。最強の剣でさえ一時間は回廊をウロウロしていたのに」
それを考えると脅威的なのだが、最強の剣クリストのウロウロが面白いものと化してしまう。
最強の盾は普通に部屋の扉を開けたら、もう外だった。
俺以外が夢幻回廊内で部屋の扉を開けても、そこには永遠の廊下がつながるだけのはずなのに。
最強の剣よりおかしい、最強の盾。
勝手に来たし、勝手に帰った。
俺の固有魔法なのに、どこに俺の意志が関わっているのか?
不法侵入なのに、魔法でできた空間は訴える先がない。
普通に屋敷や王城なら不届き者だと捕まえることができるのに。
最強の剣でさえ、こちらから入れたのに。出そうとしなかっただけなのに。
「最強の盾は初対面とは言えども、前から俺を知っていたんだろ」
『それはお互い様ー』
はいはい、お互い諜報し合っていましたからねえ。
こちらのこともしっかりバレてた。
会うことがなかったから確認したことがなかっただけだ。
「うちの王城の周りにも魔法の盾いるだろ。何枚ぐらいいるんだ?」
ちょっとカマかけて見た。いるとは思っているが、確証は得られていない。
『かなりー』
「へ?」
『数えるの、面倒』
「、、、ソイファ様、プライベートはもうないものだと諦めた方がよろしいのでは?」
部下が苦い笑顔で言った。
夢幻回廊内にも魔法の盾が入り込んでしまったからねえ。
入っても良いよと許可した覚えはないのに。
事実を知らなければ、幸せでいられたことは多い。
「ところで、俺についてくる魔法の盾はどれだ?」
四枚の魔法の盾がクッキーから離れない。
『それ→』
「、、、お前を連れて行く方が意志疎通しやすいんだけど」
文字が変わる紙を持っているから。
俺が言った途端、一枚がしおしおと丸まった。
他の三枚が肩を叩くかのように、手のように見えてしまう一つの角でそれにポンポンと触れている。
そして、三枚が非難するかのように俺を見る。目はどこかわからないけど。
「人間くさっ、何この、人間らしい動作はっ」
『自分はここで旨いクッキーを食べ続けるっ』
紙を持っている魔法の盾は、クッキーが気に入ったのか。
食い意地が張ってるな、この魔法の盾。
「お前なあ」
『はい、紙』
もう一枚の紙を俺についてくる魔法の盾に渡した。
持っているならさっさと出せ。。。
『自分もここでクッキー食べ続けたいっ』
お前もかっ。
食欲が勝るのかっ?
最強の盾に命令されたことよりもっ。
「クッキーなら王城に向かう道中でも食べられるぞ」
確かに夢幻回廊なら無限に湧き出て来るが、街道沿いの街々では様々なお菓子を売っている。
夢幻回廊に出て来るお菓子というのは、特に指定されない限り、俺が好ましく思っているものだ。つまり俺の好み中心になってしまうし、俺の記憶にない物は出て来ない。それはお菓子以外でも同じ。
ウィト王国滞在中、バーレイ侯爵家の料理人にお金を渡して、オルレアが好みの物を大量に作ってもらった。
記憶にないと出て来ないからなあ。実家の味なんて食べておかなければどうしようもない。
オルレアの部屋を見ることには見たが、アレを再現しようとは思わない。
実家に帰りたいと思わせるのも面倒だ。
「お菓子以外にも街の名物もいろいろあるぞ」
『それなら行くー』
キラッキラした魔法の盾が俺の肩にのった。
『羨ましいーっ。お土産待ってるよー』
「、、、魔法の盾って餌付けできるのか?」
「さあ?これから研究なさってください」
部下に聞いても正解が返ってくるわけもない。
「オルレアをこの街の屋敷に移してから、俺たちはソイ王国に戻る。王城に戻ったら、北の塔の夢幻回廊からつなげるから、お前たちはそれまで待機っ」
俺の肩にのっている魔法の盾以外の待機組四枚に言った。
四枚ともそのまま俺の夢幻回廊に残っている気かな?一枚いれば充分なはずだけど。
『了解っ』
四枚がピシッと反応してくれた。
「魔法の盾が可愛く思えてきたのも、最強の盾の策略か」
「今度お会いしたときにでも、一枚もらえないか聞いてみたらいかがですか」
ペット扱いか?
今のところ魔法の盾の所有を確認しているのは、帝国のイーティ・ランサス、アルティ皇太子である。
イーティ・ランサスには指輪を、アルティ皇太子は体内に埋め込まれている。
指輪の魔法の盾はイーティ・ランサスを守るため、アルティ皇太子のは見張り役だ。
この五枚はオルレアがうちの王城に着いたら、最強の盾の元に帰ってしまうのだろうか?
翌日には手頃な屋敷を即金で購入して、夢幻回廊にした後にオルレアを宿から移した。
侍女や護衛等いらないのだが、訪ねてくる者がいるかもしれないので対応する最低限の人数を残して行く。
この街の準備が整ったので、さっさとウィト王国を後にする。
部下とともに出入国管理事務所に向かう。
受付の職員が一人一人をじっと見ていたが、それ以上発言することもない。
俺も何も言わない。
出国審査も恙なく終了し、ソイ王国側の入国審査に向かう。
「ソイファ王太子殿下、出入国管理事務所をお使いになるのは珍しい」
話が伝わっていたのか、事務所の所長が出てきていた。
「ああ、本当はオルレアを連れて来るために馬車で国境に来たのだが」
部下たちも出国審査が終わって、こちら側にやってきた。
「そういえば、今オルレア様はいないのですから、我々は馬車で帰りますので、ソイファ様は先にお戻りになられては?」
「そうしたいのは山々なんだが」
と言って、俺は空間転移魔法を使う。
すぐに戻ってくる。
「ああ、なるほど」
部下たちが納得する。
俺の肩にいた魔法の盾がぺちょりと地面に落ちている。
『いきなり何するのーっ』
と非難の声をあげた。紙でペチペチ足を叩かれる。痛くないが。
魔法の盾は物扱いではないらしい。
俺の場合、他人は連れて行けないが多少の物なら持ち運べる。
空間転移魔法で移動先で全裸になっていたら嫌だよね。使いたくないよね、そんな魔法。
自分だけにしか使えない人もいるようだが、完全に緊急用になるよね、それ。
『今度から空間転移魔法を使うときは言ってよねっ』
「はいはい」
『飛んでおくからっ』
「、、、」
ちょこちょこ床を歩いていたし、肩に飛び跳ねるぐらいはできていたけど。。。
飛べるんかいっ。
飛び跳ねるではなく、ふよふよ飛んで、俺の肩まで戻ってきた。
「それなら常時飛んでおけばいいんじゃないか?」
『そういう仲間もいるけどっ、お腹が減るっ』
俺の肩を紙でバンバン叩いて怒りを表している。だから、痛くないって。
キミたち、食べ物がすべてなのかい?
「あー、」
「ソイファ王太子殿下、ご所望の国境名物高級クッキーです。バラまき用の方ではありません」
所長が箱を差し出してきた。
部下が受け取る。
コレでこの街での買い物の時間は短縮できた。
「ご苦労。これで今日は宿の街まで馬車を走らせるぞ」
『クッキー、クッキー』
喜んでいただいて幸いだ。
地面に落としたことなど、もう忘れているようだ。
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