男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

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7章 貴方に縋る

7-19 さて、おさらいだ ◆ソイファ視点◆

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◆ソイファ視点◆

「なあ、最強の盾はどこにいるんだ?」

 俺は疑問を最強の剣クリストにぶつける。

 ウィト王国のバーレイ侯爵邸の当主の執務室にて。すでに壁も机も直っている。
 現在、侯爵代理のクリストがこの席に座っていて、本物のバーレイ侯爵は自室に閉じ込められている。
 面白がって事の顛末を見に来た俺だが、ウィト王国の結界が元に戻った今、帰れない状態となっている。
 だが、もうそろそろ行先を突きとめた部下たちがやって来るのも時間の問題だ。
 俺の空間転移の魔法は俺限定。
 他人を運べないので、オルレアをソイ王国に連れ帰るためには部下たちが馬車でやって来るのを待っているのが一番なのだが。

 すでに血塗れのシャツ、切られた銀髪が発見されて一週間が過ぎ去った。
 コイツも雑務に追われ過ぎて、なかなか動けないのはわかるが、弟のことが心配じゃないのか?

 ウィト王国の結界が無事だから、最強の盾も無事って言われてもね。。。

「国外には出られないから、国内にいるだろう。帝国ならば婚約がまだ解消されていないのだから、オルトを連れ去るリスクまで背負う必要はない。だとしたら、他の国々の線が強いが、どれも可能性が高過ぎて一つに絞れない」

 国外には出られないと言うが、いざとなったらコイツのように空間転移の魔法を使うんじゃねえの?
 コイツのせいで、ウィト王国の結界に綻びができた。
 弟のこと可愛い可愛いと口では言うけど、行動が伴っていねえんだよな。
 言葉と行動が違うヤツって、どうやっても信頼されないと思うが。

 特に、弟に。

「ひどい目に遭わされていると思わないのか?髪を切られた上に、怪我を負わされたんだよねえ。それだけの使い手がウィト王国内にいるってことだよ」

「オルトなら治療魔法も使えるし、一瞬後れを取ったところで挽回できる」

「俺はそういうことが聞きたいんじゃねえんだけど。賊も最強の盾もいまだ見つかっていないところに問題があるんだが、お前こそ大丈夫か?」

 俺もあの最強の盾をどうにかできる団体様がいれば見てみたいものだが。個人で対抗できるのはイーティ・ランサスだけじゃないかな?もちろん最強の盾の得意分野で競うわけではない。

 それに無事なら、侯爵家に一報ぐらい入れるんじゃねえか?
 それがいまだなされていないところみると、侯爵家全員嫌われているんじゃねえのかなあ。
 好き嫌いと言う前に、信頼されていない。

 この兄への感情は他の家族とは多少違うと思っていたが、最強の盾にしてみれば扱いは変わらないようだ。
 コイツは必要なときに弟を守らなかった。
 どんなに言い繕っても。最善がどのような策であったとしても。

「何がだ?」

 質問で返されたっ?
 問題を問題として認識していないところが問題だと、なぜ気づかない。

「はーやく部下たちが来ないかなー。動く駒がいないとどうにもならなーい」

 残念ながら、ここは他国の侯爵家。
 俺の権力は及ばない。
 お金で動かせる者は動くが、それだけだ。
 それに他国の王太子を一人でうろつかせるほど、この最強の剣は甘くない。ので、おとなしくしていたのだが。。。

 暇。
 超ヒマ人と化している。




 有能な部下たちの一部が来ても、情報がさほど集まらなかった。
 最強の盾がどこにもいない。
 姿をくらませている。

 そのおかげで、ウィト王国の王城の会議は混迷極まりない混沌と化しているようだ。
 それでも、部下たちが正装を持って来てくれてしまったので、王城に挨拶に行かざる得なかった。
 ソイ王国の王太子が無断で入国したのだからねえ。。。
 空間転移魔法を使うにも、友好国同士では取り決めがあるのである。でも、最初に破ったのはそちらの最強の剣ですからね。うちの国に空間転移魔法による無断侵入してきたのは。

 俺が王城へ挨拶に行って、お互い様で終了することにした。
 ついでに、オルレアとの婚約を報告する。

 ま、国王への挨拶は一瞬で終わった。
 恐ろしいほどやつれた顔。
 吊るし上げ具合がよくわかる。
 現在王城は立て込んでいるので、滞在しているバーレイ侯爵家でごゆるりと、と言われてしまった。
 オルレアとの婚約報告をしに来ただけだと思われているのだろう。

 第三王子が愕然とした顔をしていたのは見ものだった。
 お前が惚れたのは、オルレアに扮していたオルト・バーレイの方だろう。
 自分の気持ちにまだ整理がついていないらしい。

 それとも、オルトがダメなら、オルレアに結婚を申し込もうとでも思っていたのか。




 さて、最強の盾のまわりの、特に男性の人間関係を整理しておこう。

 最強の盾は自分をオルトと見抜けない愚鈍は大嫌いなようだ。
 オルレアに扮するオルトに惚れながら、それをオルレアだと思っていたのは、

 ウィト王国の第三王子クオ
 キノア帝国の皇太子アルティ

 筆頭はこの二人である。
 ヒントは山ほどそこら辺に転がっていたのに、見抜けないのが不思議なくらいだと俺も思う。

 実際は貴族学校の女子生徒たちも見抜けなかったのだが、オルレアは女性。侯爵家の身分からもオルレアの結婚相手は男性でなければならないので、彼女たちには特に何の感情も抱かなかったようだ。

 ウィト王国王妹マイアの息子レオもまた、お姉様と言っていたが、彼はまだ幼いし、年齢差が開いているため特になし。


 で。

 オルレアに扮していたオルトをオルトと認識していた者たち。
 オルトの友人、サイ・モルト、シン・オーツ、スレイ・フラワーの三人。
 最強の盾を支える者たちであり、闘技大会で正体がバレたオルトのために自分の親、親戚、知人等に協力を求めた。
 彼らが協力を求めた先というのは基本的に貴族。
 王城での吊るし上げ会議が長引いているわけだ。
 あの会場にいた者だけでなく、事情を知る者が多くなってしまった。

 ただ、オルトが助けてほしかったことって、権力側のことだけではない。
 だから、行方不明になってしまうのだ。
 貴族学校の女子寮に彼が戻れないのは、考えれば誰だってわかることなのに。

 なんかウィト王国の皆さんって、いつも目の前の問題を放置するよね。
 まずそちらを解決してあげなよ、と俺は思ってしまうんだけど。
 たった一人でもオルトのそばにいてあげれば、今、違った未来に俺たちは立っていたはずだ。

 冒険者ギルドで金策して、どこかに行こうと考えなかったよ、きっと。


 んで。

 ウィト王国第三王子の親衛隊隊長キュジオ。
 最強の盾が憧れ、剣の模擬戦を希望していたキュジオ隊長である。
 最強の剣クリストと一緒に訓練をしていたし、クリストの所有の印である最強の剣のピアスをつけているが、本人はクリストと仲が良いとは思っていない。主従関係とさえ思っている。
 クリストはそんな風には絶対に思っていない上に、キュジオに好まれていると思っているから世も末だ。

 本当にクリストは人間関係の構築を学び直した方がいい。

 キュジオはオルトのことが好きなようだ。
 見守っていると言えば聞こえはいいが、本当に見守っていただけだ。
 ただ、オルトが本当に逃げたいと言えば、他国に逃がす覚悟を持っていたように見受けられる。

 だからこその、平民。
 余計なしがらみを増やさないし、クリストでさえ捨てていけるし、剣を交えることも辞さないのではないか。
 たとえ自分が敗北しても、オルトが逃げる時間稼ぎとなるならば、と。

 ま、オルトには伝わっていないけどねー。そんな覚悟ー。


 ああ、カーツ・バーレイという男もいたなあ。
 バーレイ侯爵の弟、バーレイ伯爵の息子。
 本来なら最強の盾は結婚もしないし、子供も儲けない。
 伯爵位を次の最強の盾に譲るからだ。

 ウィト王国が小国も小国であるからこその悩みである。
 臣下に分け与える土地が少ない。王族だって昔々に弟たちに公爵位として領地を分け与えることができなくなってしまったくらいだ。
 他の国に侵略行為をしないから土地が増えない。
 最強の剣と最強の盾を守りに使った代償である。
 ただし、侵略戦争をしていれば、どこかで最強の剣は跡継ぎを儲けず亡くなっていた可能性が高い。
 それを考えると、それはそれでアリな作戦だった気もする。

 話が逸れたが、最強の盾はカーツを避けている。
 事情が事情だから致し方ないが、本来自分が譲られるべき伯爵位を譲られる人物に対して、何の感情も抱かないという人がいたら俺が教えてほしいくらいだ。


 そして、最強の盾の理想の王子様、イーティ・ランサス。

 帝国の第一皇子だったのに、母親の不貞が発覚して、皇子ではなく皇族になった。
 そもそも、皇帝にとってもなくてはならない息子なので、殺せない。それは、アルティ皇太子にとっても。
 帝国の仕事はこの人なしには動かないのである。。。
 マジか。
 帝国は大国なので、仕事は山のようにある。
 その上、全世界に支店を持つイー商会の仕事も山のようにある。
 この人の仕事処理能力半端ねえ。一国に一人欲しいくらいの人材だ。

 最強の盾にとっては自分を劣悪なウィト王国から救い出してくれる理想の王子様。
 ある意味、ギャップ萌えだと思うけどね。
 最初の出会いは剣も魔法も弱いバカ皇子、けれど話してみれば。
 そりゃ、前からイー商会のことを知っていた最強の盾も疑問に思っただろう。馬鹿なわけがあるまいと。

 武力は最強の盾が持っているので、イーティはそのまま剣の腕も体術も魔法も進化しないでください。
 そのままでも、補い合えば最強の二人組である。


 残念ながら、姫や女王では最強の盾を救えない。
 守られる側の人物はお呼びでない。
 最強の盾にはヒーローが必要だった。

 彼を利用するのではなく、守れる人物がこの世に存在したのが、奇跡だ。
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