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7章 貴方に縋る
7-17 国境にて
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銀髪だとバレバレだが、黒い布が取れても金髪なら特に誰も注目したりしない。
今までの街では金髪のカツラをつけていた。
国境の街、ウィト王国内での最後の宿で、朝の身支度時に銀髪のつけ毛をつけた。
金髪のカツラはまたいつか使うかもしれないので、魔法の盾に保管しておいてもらおう。
いや、ソイ王国内でも金髪で行動していた方が追跡を撒けるか?
さて、俺は今日、冒険者カードの名前にしたオルレア・バーレイに徹しなければ。
宿屋での朝食後、出発である。
宿屋の玄関で荷物を持って再集合。
「なあ、兄ちゃん、いつもよりキラキラしてねえ?俺の目がおかしいのか?」
「化粧もしているからな。ナチュラルメイクって実は厚化粧なんだぞ」
自然に見える、だけの化粧術だ。
俺に施すナチュラルメイクというのは、決してささやかな自然な化粧ではない。
オルレアと俺は双子だから似ているが、まったく同じではない。
女性と男性の違いも、肌の焼け方等も見比べてしまうとかなり存在する。
それをオルレアそっくりにカバーする。
毎朝、侍女たちがするのを見て覚えてしまった。
何事も覚えていて損はない。
「、、、それを俺が聞いてどうするんだ?」
「化粧が上手い女性に騙されるなってことだよ。頭領も人の上辺だけ見るんじゃないぞ」
「うっ」
グジが胸を押さえた。
この頃、十三人が同じ症状を訴えるなあ。
伝染病か?俺は感染していないようだから違うか。
けど、もし病気なら医師に診てもらっておいた方がよくないか?ウィト王国にいる間に。
と提案したら十三人全員に否定された。病気ではないと。
ソイ王国特有の動作なのかなあ。
「貴族には男でも化粧する者が多いと聞いていたが、この破壊力とは」
破壊力?
「男装の麗人を装わなければいけないからなあ」
「男装?兄ちゃんは男じゃねえか」
彼らは俺の上半身をしっかり見てますからねえ。
アレを見て女だと思うヤツはいない。
「まあ、気にするな。お前たちは役人に聞かれたら、何も知りませんでした、利用されましたと答えておけばいい」
「事情を深く知らない方がお互い幸せだってヤツか。冒険者として俺たちを利用できるところは利用してくれ」
「ははっ、ありがとな」
「この笑顔っ」
笑顔を向けると、胸を押さえる者の他、拝む者が出てきた。。。
一体どうした、お前たち?
俺を拝んでも、治療魔法は出て来ないぞ。
「出入国管理事務所に行くか」
「おうっ、忘れ物はないかっ。あっても取りに来れないぞっ」
「冒険者カードとお金があれば何とかなるっ」
「それは街中だけだ。何とかなるのはソイ王国側でも国境の街までだからな。買い忘れとかないようになっ」
「食料はほどほどに買っているが、水はソイ王国側で買い足していこうぜ」
「そうだな。念には念を入れよう。食料も向こうでもう一度見直そう。食生活で兄ちゃんに決して不自由な思いはさせるなっ」
「おうっ」
宿屋の玄関で大声での掛け声。
早く出ていってくれないかな、と宿屋の親父さんの顔が言っている。。。
俺、そんなにひもじそうに見えていたのかな?
皆がくれる食べ物はすべてもらっていたからなあ。
鍛えているわりには細く見えるとか?貧弱に見えていたら嫌だなあ。
「おはようございます」
キラキラっ、オルレアスマイル発動っ。
出入国管理事務所にて。
「お、おはようございます」
窓口のお姉さんが戸惑っちゃった。
「出国の手続きで伺ったのですが」
「は、はい、書類はこちらです。ええっと、人数は」
後ろのグジたちを見た。
「全部で十四人です」
「で、では十四枚、お一人一枚ずつご記入ください。書き終わりましたら、あちらの通路の受付にお渡しください。そのまま出国の審査に入ります」
「ありがとう」
書類を受け取ると、女性が頬を赤らめる。
うんうん、この感じは久しぶり、って言うほど日数は経っていないか。
他の客もいるが、後は商人らしき人物ばかりだ。
積み荷の検査もあるらしく、書類を書くと違う場所に行ってしまう。
馬車で来ているのなら、別の通路があるのだろう。
「書類は皆、書けたかー?」
「と、頭領、ちょっと待て」
数人が難儀しているようだ。
こういう書類は記載例があったとしても、書き慣れてないと時間がかかるよな。
俺も手伝うが、反対に文字をブレッブレにさせてしまったようだ。やはり同じ国の人同士の方が説明はわかりやすいのか?
「じゃあ、行くぞ」
ウィト王国の場合、一人一人が国の審査を受ける場では、集団の中で一番身分が高い者が先頭になる。
つまり、世話役等の使用人が先に行くと、貴族だと教育を受けていないように見られる。ま、何でも使用人任せにする貴族は二流三流の扱いがされるだけだ。
ま、集団としての頭領はグジなのだが、別行動をしているわけでもない。オルレアに従者や侍女の使用人が一人もついていないわけがない。反対に一人で行動している方が怪しまれる。
この国の貴族としては俺しかいないので、俺が一番初めに書類を受付に渡す方が間違いがない。
「お願いします」
「はい、では順番にあちらの審査員の方へお願い致します」
職員が書類に抜けがないかを確認して戻してくれた。受け取って、歩を進めようとしたが、グジたちを振り返る。
「ここの出国手続きが済んだら、私は先に入国の手続きに行っている。お前たちの入国手続きはソイ王国の者だから時間はかからないだろうから、ゆっくりと来い」
「はいっ」
皆、元気良いな。
全員を待っていると時間がかかる。
ソイ王国に入国する直前に、ちょっとーと引き止められても面倒だ。
勘のいい者が職員にいないとも限らない。
こっちの都合で悪いが、早々にソイ王国側に行っておくに限る。
審査員に書類と冒険者カードを渡す。
すると、審査員が立ち上がってゆっくりと深い礼をした。
「オルレア・バーレイ様、おはようございます。出国の審査を担当させていただきます」
「おはようございます。お願いします」
ささやかな微笑みで返す。
オルレアスマイルだと場違いな気がする。男性職員だし。
「バーレイ様、冒険者カードを魔道具で真偽判定してもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
ここで嫌だと言ったらどうするのだろうか?
審査員が魔道具らしい小さな黒い台の上に冒険者カードを置く。
「はい、ありがとうございます。カードをお返し致します」
じっと俺が魔道具を見ている視線に気づいたのだろうか。
「真偽判定をお許しいただけない場合は出国できない決まりとなっております」
だったら、それって聞く意味あるの?
「まあ、いろいろございます故」
「ご親切に説明してくれてありがとうございます」
いろいろねえ。
「ところで、バーレイ様は騎士学校にお戻りですか?」
「はい、途中寄るところがありますが」
審査員は後ろの集団を見る。
「そうですか。バーレイ様の我が国へのお戻りの記録がないようなのですが」
来たか。
一応聞かれると思っていた。
ここがザルな出入国管理事務所でもなければ。
慌てず、騒がず。
「ええ、家の都合で兄が迎えに来てくれましたので」
コレは本当のことだ。
兄の従者が言っていたことだ。
詳細は審査員には伝えない。言い訳に聞こえるから。
それに、オルレア・バーレイの兄と聞けば、この国の者なら最強の剣と誰でもわかる。入国の記録のない戻り方など他人が容易に推測できる。
「できれば、そのような戻り方をなされた場合は、今後は後日王都でもよろしいので、お戻りの届をご提出していただけると助かります」
「ああ、そうなのですね。今後は気をつけます」
「審査は終了です。ソイ王国の入国審査にお進みください」
「はい、ありがとうございます」
ホッと一息つく間もなかった。
「あ、」
審査員の、あ、ほど恐ろしいものはない。
「バーレイ様は以前、紙の旅券で出国したようですが、本日はお持ちではないのですか?」
そうでしたけど。
記録がここまで早く出て来るとは。
今までの街では金髪のカツラをつけていた。
国境の街、ウィト王国内での最後の宿で、朝の身支度時に銀髪のつけ毛をつけた。
金髪のカツラはまたいつか使うかもしれないので、魔法の盾に保管しておいてもらおう。
いや、ソイ王国内でも金髪で行動していた方が追跡を撒けるか?
さて、俺は今日、冒険者カードの名前にしたオルレア・バーレイに徹しなければ。
宿屋での朝食後、出発である。
宿屋の玄関で荷物を持って再集合。
「なあ、兄ちゃん、いつもよりキラキラしてねえ?俺の目がおかしいのか?」
「化粧もしているからな。ナチュラルメイクって実は厚化粧なんだぞ」
自然に見える、だけの化粧術だ。
俺に施すナチュラルメイクというのは、決してささやかな自然な化粧ではない。
オルレアと俺は双子だから似ているが、まったく同じではない。
女性と男性の違いも、肌の焼け方等も見比べてしまうとかなり存在する。
それをオルレアそっくりにカバーする。
毎朝、侍女たちがするのを見て覚えてしまった。
何事も覚えていて損はない。
「、、、それを俺が聞いてどうするんだ?」
「化粧が上手い女性に騙されるなってことだよ。頭領も人の上辺だけ見るんじゃないぞ」
「うっ」
グジが胸を押さえた。
この頃、十三人が同じ症状を訴えるなあ。
伝染病か?俺は感染していないようだから違うか。
けど、もし病気なら医師に診てもらっておいた方がよくないか?ウィト王国にいる間に。
と提案したら十三人全員に否定された。病気ではないと。
ソイ王国特有の動作なのかなあ。
「貴族には男でも化粧する者が多いと聞いていたが、この破壊力とは」
破壊力?
「男装の麗人を装わなければいけないからなあ」
「男装?兄ちゃんは男じゃねえか」
彼らは俺の上半身をしっかり見てますからねえ。
アレを見て女だと思うヤツはいない。
「まあ、気にするな。お前たちは役人に聞かれたら、何も知りませんでした、利用されましたと答えておけばいい」
「事情を深く知らない方がお互い幸せだってヤツか。冒険者として俺たちを利用できるところは利用してくれ」
「ははっ、ありがとな」
「この笑顔っ」
笑顔を向けると、胸を押さえる者の他、拝む者が出てきた。。。
一体どうした、お前たち?
俺を拝んでも、治療魔法は出て来ないぞ。
「出入国管理事務所に行くか」
「おうっ、忘れ物はないかっ。あっても取りに来れないぞっ」
「冒険者カードとお金があれば何とかなるっ」
「それは街中だけだ。何とかなるのはソイ王国側でも国境の街までだからな。買い忘れとかないようになっ」
「食料はほどほどに買っているが、水はソイ王国側で買い足していこうぜ」
「そうだな。念には念を入れよう。食料も向こうでもう一度見直そう。食生活で兄ちゃんに決して不自由な思いはさせるなっ」
「おうっ」
宿屋の玄関で大声での掛け声。
早く出ていってくれないかな、と宿屋の親父さんの顔が言っている。。。
俺、そんなにひもじそうに見えていたのかな?
皆がくれる食べ物はすべてもらっていたからなあ。
鍛えているわりには細く見えるとか?貧弱に見えていたら嫌だなあ。
「おはようございます」
キラキラっ、オルレアスマイル発動っ。
出入国管理事務所にて。
「お、おはようございます」
窓口のお姉さんが戸惑っちゃった。
「出国の手続きで伺ったのですが」
「は、はい、書類はこちらです。ええっと、人数は」
後ろのグジたちを見た。
「全部で十四人です」
「で、では十四枚、お一人一枚ずつご記入ください。書き終わりましたら、あちらの通路の受付にお渡しください。そのまま出国の審査に入ります」
「ありがとう」
書類を受け取ると、女性が頬を赤らめる。
うんうん、この感じは久しぶり、って言うほど日数は経っていないか。
他の客もいるが、後は商人らしき人物ばかりだ。
積み荷の検査もあるらしく、書類を書くと違う場所に行ってしまう。
馬車で来ているのなら、別の通路があるのだろう。
「書類は皆、書けたかー?」
「と、頭領、ちょっと待て」
数人が難儀しているようだ。
こういう書類は記載例があったとしても、書き慣れてないと時間がかかるよな。
俺も手伝うが、反対に文字をブレッブレにさせてしまったようだ。やはり同じ国の人同士の方が説明はわかりやすいのか?
「じゃあ、行くぞ」
ウィト王国の場合、一人一人が国の審査を受ける場では、集団の中で一番身分が高い者が先頭になる。
つまり、世話役等の使用人が先に行くと、貴族だと教育を受けていないように見られる。ま、何でも使用人任せにする貴族は二流三流の扱いがされるだけだ。
ま、集団としての頭領はグジなのだが、別行動をしているわけでもない。オルレアに従者や侍女の使用人が一人もついていないわけがない。反対に一人で行動している方が怪しまれる。
この国の貴族としては俺しかいないので、俺が一番初めに書類を受付に渡す方が間違いがない。
「お願いします」
「はい、では順番にあちらの審査員の方へお願い致します」
職員が書類に抜けがないかを確認して戻してくれた。受け取って、歩を進めようとしたが、グジたちを振り返る。
「ここの出国手続きが済んだら、私は先に入国の手続きに行っている。お前たちの入国手続きはソイ王国の者だから時間はかからないだろうから、ゆっくりと来い」
「はいっ」
皆、元気良いな。
全員を待っていると時間がかかる。
ソイ王国に入国する直前に、ちょっとーと引き止められても面倒だ。
勘のいい者が職員にいないとも限らない。
こっちの都合で悪いが、早々にソイ王国側に行っておくに限る。
審査員に書類と冒険者カードを渡す。
すると、審査員が立ち上がってゆっくりと深い礼をした。
「オルレア・バーレイ様、おはようございます。出国の審査を担当させていただきます」
「おはようございます。お願いします」
ささやかな微笑みで返す。
オルレアスマイルだと場違いな気がする。男性職員だし。
「バーレイ様、冒険者カードを魔道具で真偽判定してもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
ここで嫌だと言ったらどうするのだろうか?
審査員が魔道具らしい小さな黒い台の上に冒険者カードを置く。
「はい、ありがとうございます。カードをお返し致します」
じっと俺が魔道具を見ている視線に気づいたのだろうか。
「真偽判定をお許しいただけない場合は出国できない決まりとなっております」
だったら、それって聞く意味あるの?
「まあ、いろいろございます故」
「ご親切に説明してくれてありがとうございます」
いろいろねえ。
「ところで、バーレイ様は騎士学校にお戻りですか?」
「はい、途中寄るところがありますが」
審査員は後ろの集団を見る。
「そうですか。バーレイ様の我が国へのお戻りの記録がないようなのですが」
来たか。
一応聞かれると思っていた。
ここがザルな出入国管理事務所でもなければ。
慌てず、騒がず。
「ええ、家の都合で兄が迎えに来てくれましたので」
コレは本当のことだ。
兄の従者が言っていたことだ。
詳細は審査員には伝えない。言い訳に聞こえるから。
それに、オルレア・バーレイの兄と聞けば、この国の者なら最強の剣と誰でもわかる。入国の記録のない戻り方など他人が容易に推測できる。
「できれば、そのような戻り方をなされた場合は、今後は後日王都でもよろしいので、お戻りの届をご提出していただけると助かります」
「ああ、そうなのですね。今後は気をつけます」
「審査は終了です。ソイ王国の入国審査にお進みください」
「はい、ありがとうございます」
ホッと一息つく間もなかった。
「あ、」
審査員の、あ、ほど恐ろしいものはない。
「バーレイ様は以前、紙の旅券で出国したようですが、本日はお持ちではないのですか?」
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