108 / 207
6章 いらないなら、捨てればいいのに
6-20 売られた喧嘩は買うもの ◆ソニア視点◆
しおりを挟む
◆ソニア視点◆
「ああっ、オルレア様、格好良いっ」
さすがはマイア様。オルレア様の長くて美しい銀髪によく似合う青銀の衣装を作られる。かなりの小物や刺繍で飾られているが、派手ではなく上品な仕上がりだ。
長く床につきそうな青いマントもまたオルレア様に似合う。
「本当に美しいわ」
「ああ、映像に残したい。宮廷魔導士がいるのなら、魔法で撮っておいてくれればいいのに」
イザベルが言ったが、宮廷魔導士はそんなことのためにいるわけではない。
警備とかのためだろう。
国王夫妻もいることだし。
クオ王子も舞台に上がると、国王から言葉があった。
さすがに息子には一言かけるのか、と思ったら。
オルレア様に対して。
「我が息子、クオの胸を借りて、善戦するよう努めなさい」
何を考えとるんじゃっ、この馬鹿国王っ。
ふざけるなっ。
クオ王子が最強の盾の胸を借りるんじゃろがっ。
がおおーーーっ。火を噴くぞーーーっ。ふざけるなーーーっ。
オルレア様を軽んじる発言に国王といえども近くにいる令嬢たちとともに、私は怒りでぎゃあぎゃあ吠えていた。
私が座る観覧席からでは何を言っても、歓声と同化してしまうと気づいたのはかなり後のことだが。
「そういうセリフはクオに勝てるようになって、いや、善戦できるようになってから言いたまえ」
国王は肘置きに体重をかけて、オルレア様を見下すかのように言った。
天誅ーーーーっ。
国王にあるまじき、人を見下す態度っ。
何を考えているんだっ、奴はっ。
バーレイ侯爵家を軽んじた態度を見せれば、この国では国王ですら危ういというのに。
「こ、これから戦うお二人に、国王陛下から激励の言葉をいただきました。では、準決勝を」
司会者が慌てて準決勝を始めようとしたが。
オルレア様の目が怖かった。
一瞬、すべてが沈黙した。
歓声もなく、何かの物音すらしなかった。
オルレア様は笑顔を浮かべた。
余裕の笑みとかではなく、オルレア様の演技を続行したのだ。
コレはもう身代わりの鏡のような御方だ。
「クオ王子殿下、」
オルレア様が口を開いた。
剣帯から外した鞘に入ったままの剣を手に持っている。
「私がこの魔剣を置いて戦うのなら、クオ王子殿下もその魔剣を置いてはいただけませんか」
オルレア様の申し出は尊いものだ。
お互い魔剣がなければ実力での戦いとなる。
「はっ、オルレア・バーレイ、そんな魔剣が王子の魔剣と同等と思うな。実力の差があるからと言って無駄なあがきを」
それを言ったのは国王だった。
オルレア様から笑顔が消えた瞬間だった。
最強の盾は感情も押し殺し、魔力も押し殺しているが、かなりキレている。
目が据わってしまった。
ああ、本当に国王はオルレア様に扮しているのが最強の盾だということを知らなかったのだなあ。
知っていたら、煽ることは言わないはずだ。
せっかく最強の盾がオルレア様として提案してくれたのに。
この場を穏便に済ませる方法を。
「なるほど。国王陛下はクオ王子殿下の自由に決定する意志を無視すると」
最強の盾がクオ王子を見た。
クオ王子の手は魔剣の柄に触れている。
「馬鹿な父親を恨め」
「それは」
会話を続けようとした舞台上の二人だが、司会者が断ち切った。
「それでは準決勝第二試合っ、開始っ」
国王がこの場は不問とすると言いながらも、もはや司会者も会話を続ける危険性を悟ったのだろう。
「暴食の魔剣が私の魔剣より優れている事実はどこにもない」
オルレア様は魔剣の柄を握っているが、鞘から抜かなかった。
「え?」
え?と言ったのはこの場にいるすべての者か。
一瞬で勝敗がついた。
場外の壁に、クオ王子が叩きつけられていた。
爆音とともに。
オルレア様が舞台で魔剣を振り回したらしき姿勢をとっていたことから、状況がわかるのだ。
それを肉眼で何が起こったかしっかり見えた者はいたのだろうか。
一瞬の静寂。
「審判、」
魔剣を剣帯に戻したオルレア様が促したことで、正気に戻る者たち。
「オルレア・バーレイ勝利っ」
大歓声が起こった。
だが、すぐに。
「宮廷魔導士っ、暴食の魔剣を回収しろ。法令に基づき王城でしかるべき厳重な管理をしろ」
オルレア様が舞台上から指示を出した。
暴食の魔剣。
それはこの国では一度王城の管理下に入ったら、表に出てはいけない魔剣の種類ではなかったのか。
暴食と悪食の魔剣は世に出れば国を滅ぼす。
それは持ち主だけの責任では済まされない。
持ち主の魔力や生命力で足りないこれらの魔剣は周囲の人間にも手を伸ばす。
それでも足りなければ、辺り一面を焦土のような土地と化してしまう。
何もかも食らい尽くし、小国なら一瞬にしてすべてを食べ尽くされる危険性を持つ。
だから、国の管理が必要な魔剣なのである。
もし国王の勝手な王命によって、国民を危険に晒していた事実が世に出れば。
「本当に暴食の魔剣を王子に持たせていたのか」
「国王陛下が何てことを」
魔剣事情を知っている者が生徒の親族関係にいるらしい。
彼らの声は小さいながらも伝わってくる。
実際、貴族で高位の者、高齢の者や武器に詳しい者なら、この国での魔剣の主な管理先は王城か、バーレイ侯爵家なのだということを知っている。
そして、王城が管理するのはバーレイ侯爵家にとって持っていても何のうまみもない魔剣の類なのである。
管理するのは大変で、表に出すことができない代物。
国家の安寧を脅かす魔剣。
だからこそ、税金で管理することにしたにもかかわらず、こんなことを国王自ら仕出かすとは。
さざ波のように国王陛下を怪しむ声が聞こえ始める。
そんななか、オルレア様は深い礼を国王夫妻にした後に舞台から降りた。
一瞬、憎々し気にオルレア様を国王が見ていなかったか?
周囲のざわめきも聞こえないほどに?
自分の息子のクオ王子が担架で運ばれているというのに、安否の確認さえせずに、息子の敗北だけを気にする国王というのは。。。
オルレア様の機転で息子が死ななくて良かったとは思えないのか?
「ねえ、アニエス」
返事がまったくない。
横を見ると、、、じぃっとオルレア様を見つめ続けるアニエスの姿があった。
舞台の横にいるシン・オーツとまた話し出したらしい。同学年の男同士で話が一番合うのかもしれない。
んで、何の反応も返さないコイツこそ、誰の声も耳に入っていない。
「ねえ、イザベル、決勝戦はオルレア様とサイ・モルト様ね」
その向こうにいるイザベルに声をかけた。
一瞬で終わってしまったが、オルレア様は連戦となるのでとりあえず休憩を入れる。
「そうね。どちらが勝つかしら、オルレア様頑張って、と言いたいところだけど、サイ・モルト様が相手だと難しいのかもしれないわね」
イザベルの言う通り、オルレア様が勝つのは難しいかもしれない。
今の準決勝、最強の盾はクオ王子との対戦で魔力を一切使っていない。
完全に筋力だけで剣を振り回し、クオ王子が一撃で壁まで吹っ飛ばされただけなのだ。
だが、最強の盾がオルレア様の魔力量だけで決勝戦を戦うのは制約が重すぎる。
サイ・モルトとの戦いは魔法での応酬になるのだろうから。
休憩時間が終了して、司会の声とともに舞台にオルレア様が上がる。
「オルレア・バーレイっ」
オルレア様が笑顔で周りに手を振ると、多くの令嬢たちが顔を赤らめる。
男装の令嬢だということを知っているよね、キミたち。
オルレア様が最強の盾だということは知らないはずなのに、まさに恋愛に侵された瞳になっている。
「サイ・モルトっ」
司会が声を上げると、サイも舞台に上がった。
こちらは魔導士のローブ姿だ。今日は長い黒髪を後ろで束ねている。
二人で舞台に立っていると。
「ああっ、嫌になるほどお似合いっ」
「、、、ソニアー、夢を壊すようなことを言わないでえ。オルレア様、まだお嫁に行かないでくださいー」
あ、イザベルの目が怖いっ。
アニエスの耳が聞こえていなくて良かった気もする。
いや、二人とも男なんだけど。
うん、男なんだけどね。
皆は知らない事実なんだけどね。。。
お似合いじゃないか?
二人が国王夫妻に礼をすると、すぐに決勝戦が開始された。
サイも上級魔法を連発したり、オルレア様も魔剣でサイの魔法を叩き折るとか、二人とも楽しそうに戦っていた。
オルレア様は長いマントを翻しながら、華麗に舞っていた。
観る者も楽しめるこれぞ決勝戦という戦いなのだが、やはり制限が強い方が分が悪い。
「ああっ、オルレア様、格好良いっ」
さすがはマイア様。オルレア様の長くて美しい銀髪によく似合う青銀の衣装を作られる。かなりの小物や刺繍で飾られているが、派手ではなく上品な仕上がりだ。
長く床につきそうな青いマントもまたオルレア様に似合う。
「本当に美しいわ」
「ああ、映像に残したい。宮廷魔導士がいるのなら、魔法で撮っておいてくれればいいのに」
イザベルが言ったが、宮廷魔導士はそんなことのためにいるわけではない。
警備とかのためだろう。
国王夫妻もいることだし。
クオ王子も舞台に上がると、国王から言葉があった。
さすがに息子には一言かけるのか、と思ったら。
オルレア様に対して。
「我が息子、クオの胸を借りて、善戦するよう努めなさい」
何を考えとるんじゃっ、この馬鹿国王っ。
ふざけるなっ。
クオ王子が最強の盾の胸を借りるんじゃろがっ。
がおおーーーっ。火を噴くぞーーーっ。ふざけるなーーーっ。
オルレア様を軽んじる発言に国王といえども近くにいる令嬢たちとともに、私は怒りでぎゃあぎゃあ吠えていた。
私が座る観覧席からでは何を言っても、歓声と同化してしまうと気づいたのはかなり後のことだが。
「そういうセリフはクオに勝てるようになって、いや、善戦できるようになってから言いたまえ」
国王は肘置きに体重をかけて、オルレア様を見下すかのように言った。
天誅ーーーーっ。
国王にあるまじき、人を見下す態度っ。
何を考えているんだっ、奴はっ。
バーレイ侯爵家を軽んじた態度を見せれば、この国では国王ですら危ういというのに。
「こ、これから戦うお二人に、国王陛下から激励の言葉をいただきました。では、準決勝を」
司会者が慌てて準決勝を始めようとしたが。
オルレア様の目が怖かった。
一瞬、すべてが沈黙した。
歓声もなく、何かの物音すらしなかった。
オルレア様は笑顔を浮かべた。
余裕の笑みとかではなく、オルレア様の演技を続行したのだ。
コレはもう身代わりの鏡のような御方だ。
「クオ王子殿下、」
オルレア様が口を開いた。
剣帯から外した鞘に入ったままの剣を手に持っている。
「私がこの魔剣を置いて戦うのなら、クオ王子殿下もその魔剣を置いてはいただけませんか」
オルレア様の申し出は尊いものだ。
お互い魔剣がなければ実力での戦いとなる。
「はっ、オルレア・バーレイ、そんな魔剣が王子の魔剣と同等と思うな。実力の差があるからと言って無駄なあがきを」
それを言ったのは国王だった。
オルレア様から笑顔が消えた瞬間だった。
最強の盾は感情も押し殺し、魔力も押し殺しているが、かなりキレている。
目が据わってしまった。
ああ、本当に国王はオルレア様に扮しているのが最強の盾だということを知らなかったのだなあ。
知っていたら、煽ることは言わないはずだ。
せっかく最強の盾がオルレア様として提案してくれたのに。
この場を穏便に済ませる方法を。
「なるほど。国王陛下はクオ王子殿下の自由に決定する意志を無視すると」
最強の盾がクオ王子を見た。
クオ王子の手は魔剣の柄に触れている。
「馬鹿な父親を恨め」
「それは」
会話を続けようとした舞台上の二人だが、司会者が断ち切った。
「それでは準決勝第二試合っ、開始っ」
国王がこの場は不問とすると言いながらも、もはや司会者も会話を続ける危険性を悟ったのだろう。
「暴食の魔剣が私の魔剣より優れている事実はどこにもない」
オルレア様は魔剣の柄を握っているが、鞘から抜かなかった。
「え?」
え?と言ったのはこの場にいるすべての者か。
一瞬で勝敗がついた。
場外の壁に、クオ王子が叩きつけられていた。
爆音とともに。
オルレア様が舞台で魔剣を振り回したらしき姿勢をとっていたことから、状況がわかるのだ。
それを肉眼で何が起こったかしっかり見えた者はいたのだろうか。
一瞬の静寂。
「審判、」
魔剣を剣帯に戻したオルレア様が促したことで、正気に戻る者たち。
「オルレア・バーレイ勝利っ」
大歓声が起こった。
だが、すぐに。
「宮廷魔導士っ、暴食の魔剣を回収しろ。法令に基づき王城でしかるべき厳重な管理をしろ」
オルレア様が舞台上から指示を出した。
暴食の魔剣。
それはこの国では一度王城の管理下に入ったら、表に出てはいけない魔剣の種類ではなかったのか。
暴食と悪食の魔剣は世に出れば国を滅ぼす。
それは持ち主だけの責任では済まされない。
持ち主の魔力や生命力で足りないこれらの魔剣は周囲の人間にも手を伸ばす。
それでも足りなければ、辺り一面を焦土のような土地と化してしまう。
何もかも食らい尽くし、小国なら一瞬にしてすべてを食べ尽くされる危険性を持つ。
だから、国の管理が必要な魔剣なのである。
もし国王の勝手な王命によって、国民を危険に晒していた事実が世に出れば。
「本当に暴食の魔剣を王子に持たせていたのか」
「国王陛下が何てことを」
魔剣事情を知っている者が生徒の親族関係にいるらしい。
彼らの声は小さいながらも伝わってくる。
実際、貴族で高位の者、高齢の者や武器に詳しい者なら、この国での魔剣の主な管理先は王城か、バーレイ侯爵家なのだということを知っている。
そして、王城が管理するのはバーレイ侯爵家にとって持っていても何のうまみもない魔剣の類なのである。
管理するのは大変で、表に出すことができない代物。
国家の安寧を脅かす魔剣。
だからこそ、税金で管理することにしたにもかかわらず、こんなことを国王自ら仕出かすとは。
さざ波のように国王陛下を怪しむ声が聞こえ始める。
そんななか、オルレア様は深い礼を国王夫妻にした後に舞台から降りた。
一瞬、憎々し気にオルレア様を国王が見ていなかったか?
周囲のざわめきも聞こえないほどに?
自分の息子のクオ王子が担架で運ばれているというのに、安否の確認さえせずに、息子の敗北だけを気にする国王というのは。。。
オルレア様の機転で息子が死ななくて良かったとは思えないのか?
「ねえ、アニエス」
返事がまったくない。
横を見ると、、、じぃっとオルレア様を見つめ続けるアニエスの姿があった。
舞台の横にいるシン・オーツとまた話し出したらしい。同学年の男同士で話が一番合うのかもしれない。
んで、何の反応も返さないコイツこそ、誰の声も耳に入っていない。
「ねえ、イザベル、決勝戦はオルレア様とサイ・モルト様ね」
その向こうにいるイザベルに声をかけた。
一瞬で終わってしまったが、オルレア様は連戦となるのでとりあえず休憩を入れる。
「そうね。どちらが勝つかしら、オルレア様頑張って、と言いたいところだけど、サイ・モルト様が相手だと難しいのかもしれないわね」
イザベルの言う通り、オルレア様が勝つのは難しいかもしれない。
今の準決勝、最強の盾はクオ王子との対戦で魔力を一切使っていない。
完全に筋力だけで剣を振り回し、クオ王子が一撃で壁まで吹っ飛ばされただけなのだ。
だが、最強の盾がオルレア様の魔力量だけで決勝戦を戦うのは制約が重すぎる。
サイ・モルトとの戦いは魔法での応酬になるのだろうから。
休憩時間が終了して、司会の声とともに舞台にオルレア様が上がる。
「オルレア・バーレイっ」
オルレア様が笑顔で周りに手を振ると、多くの令嬢たちが顔を赤らめる。
男装の令嬢だということを知っているよね、キミたち。
オルレア様が最強の盾だということは知らないはずなのに、まさに恋愛に侵された瞳になっている。
「サイ・モルトっ」
司会が声を上げると、サイも舞台に上がった。
こちらは魔導士のローブ姿だ。今日は長い黒髪を後ろで束ねている。
二人で舞台に立っていると。
「ああっ、嫌になるほどお似合いっ」
「、、、ソニアー、夢を壊すようなことを言わないでえ。オルレア様、まだお嫁に行かないでくださいー」
あ、イザベルの目が怖いっ。
アニエスの耳が聞こえていなくて良かった気もする。
いや、二人とも男なんだけど。
うん、男なんだけどね。
皆は知らない事実なんだけどね。。。
お似合いじゃないか?
二人が国王夫妻に礼をすると、すぐに決勝戦が開始された。
サイも上級魔法を連発したり、オルレア様も魔剣でサイの魔法を叩き折るとか、二人とも楽しそうに戦っていた。
オルレア様は長いマントを翻しながら、華麗に舞っていた。
観る者も楽しめるこれぞ決勝戦という戦いなのだが、やはり制限が強い方が分が悪い。
4
お気に入りに追加
341
あなたにおすすめの小説
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる