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5章 拗れて歪んだ恋心
5-5 捨てられた過去4 ◆キュジオ視点◆
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◆キュジオ視点◆
「キュジオー、オルトが超可愛いんだよー」
兄バカが一匹誕生した。
顔がデレまくっている。
俺に言うな。それを聞いた俺にどういう反応を返してもらいたいんだ、お前。
どうも両親が娘のオルレアばかりにかまうので、残された者同士で息があったようだ。
次期最強の剣と最強の盾なのだから、仲が良いことに越したことはない。
「私が小さい魔法の剣を見せたら、オルトも小っちゃいけど魔法の盾を顕現させたんだよー。まだまだベビーベッドで寝ている赤ん坊なのに凄いよねー。私でも魔法の剣を出せたのは三歳くらいだったのに」
ガキをあやすのに魔法の剣を使うな。
どちらにしても化け物なのだが。
「、、、おい、そのこと誰かに言ったのか?」
「ん?父上がその場にいたけど」
クリストが首を傾げている。
事の重要性をまだ気づいていないな。
私兵団はバーレイ侯爵家をサポートするために存在する。
もちろんバーレイ侯爵家の資料も棚に並んでいる。機密事項が書かれた物は団長室にでもあるのだろうが、ここの物は私兵団に所属している者なら訓練生でも読める。
魔法の剣、魔法の盾を出せる年齢は、歴代最強の剣と最強の盾でも様々だ。
成人してもなかなか出せない者もいたらしい。
それらは魔力量に比例して早く出せるようだ。
つまり、早ければ早いほど化け物だということだ。
ただ、彼らの場合、次の最強の剣と最強の盾となる子供が産まれたら、段々に魔力が衰えていく。子供に移っていくのではないかとも言われている。そして、成人後、学校を卒業すると役目を引き継ぐ。
オルト・バーレイは歴代トップクラスの最強の盾となるのではないか?
けれど、嫌な予感がした。
あの鬼軍曹ことバーレイ侯爵は、今の最強の盾である自分の弟を優遇している。
バーレイ伯爵に結婚を許した。
一応、白い結婚を前提にしていたものだったようだが、つい先日バーレイ侯爵夫人が妊娠していることがわかったようだ。
喜んだのは、バーレイ侯爵だけだ。
あの鬼軍曹は何か考えて生きているのかと疑問に思う。
訓練しすぎて、頭が馬鹿になっているのではないかと思うくらいだ。
子供が男の子なら、バーレイ伯爵は自分の子供に爵位を継がせるのではないか?
バーレイ伯爵が我が子に継がせたいと言ったら、弟に甘いバーレイ侯爵は了承する。
その意味は確実に、息子オルト・バーレイを不幸にする、と平民の俺でもわかるのに。
バーレイ侯爵の娘オルレアへの可愛がり方も不気味なら、自分の弟に対する対応もおかしい。
息子が可愛くないのか?
息子はどうでもいいのか?
首が座ったら、クリストはオルトをちょくちょく訓練場に抱いてきた。
オルトの乳母が慌てて追いかけてきているじゃないか。
「俺の弟、可愛いだろー」
何度見せる気だ?
訓練できないガキを連れて来ても邪魔なだけだろ。
「おい、オル、可哀想だな。お前の兄ちゃんは」
目がクリっとしてキョトンとした顔をしている。
まだ、兄ちゃんの頭が可哀想だということがわからないよなー。
指でちょんちょん触ると、笑顔でにぎにぎしてくる。
教会にいた年下のガキどもなんて可愛いとすら思ったことはないが、オルトは確かに可愛い。
「何で私が可哀想なんだよー」
不満の声が聞こえてきたが無視だ無視。
「あー」
オルトが俺の顔に手を伸ばす。顔ではなく耳?
魔法の剣のピアスか?
「オルトー、キュジオは私のものだから取っちゃダメだぞー」
何を言っているんだ、コイツ。
「う?」
「兄ちゃんの戯言に耳を貸すなー。腐るぞー」
「ひどっ」
平和だった。
平和に見えた。
クリストが貴族学校に入学するまでは。
月日が経つのは早いもので、クリストはもう十一歳、今年十二歳になる。
クリストが貴族学校に通うために様々な準備が始まった。
クリストが訓練場に来ない日も増えた。
俺はクリストと同じ訓練を受けるために訓練場にいるのだが、クリストが入学したら私兵団の仕事に移る。
クリストがいなければ鬼軍曹は訓練場にはやって来ない。
同じカリキュラムの訓練をやったところで、非常に楽である。鬼軍曹の魔法の重圧がなくなるからである。
クリストが訓練が終わった時間にやって来た。
「キュジオ、キミは養子縁組とかする気はない?」
「、、、それは貴族と、か?」
クリストの決まっているじゃないかという顔がムカつく。
確かに俺に平民の養親ができたところで、コイツにとって意味がない。
「あー、するわけねえだろ。俺としたい奴もいないだろ」
「キミほどの魔力量を持っているのなら、候補者はかなりいるよ。けれど、キミの希望を尊重したいと思ってね」
「貴族になれって言いたいのか、お前は。なら、俺は一生平民でいる」
ケッ。
「はっ?何で?騎士になれば、キュジオの実力なら騎士爵はもらえるはずだ。一代限りの爵位ももらわない気か?」
何を言っているんだ、コイツは。
このまま私兵団にいたら、騎士にはならない。
それに誰もが貴族に憧れると思うなよ。
、、、いや、コイツ、俺を騎士にさせるつもりだったのか?
クリストは貴族学校を卒業したら騎士団に入団する。歴代の最強の剣がそうであったように。
俺にお供をさせる気だったのか?
それには確かに貴族でなければ、クリストのそばにはいられない。
彼の所属はもう決まっている。
平民では彼と同じ隊には所属できない。騎士団は実力主義とか言われていようと、一番隊には貴族の子弟しかいない。
で、何で、俺がクリストのそばでお世話しなきゃならんのだ?
「俺、平民でいいやー。貴族大嫌いだしー、顔色窺って生活するなんて耐えられん」
「ぐぅっ」
何でそんなに悔しそうなんだ。
というか、貴族になったら、こんな言葉遣いできない。許されない。直すのも面倒。
俺が貴族のご機嫌取りなんかやりたくもないし、できないのも百も承知しているだろうが。
で、将来、この男は俺を第三王子の親衛隊隊長に任命しやがる。
嫌がらせか?嫌がらせだろう。嫌がらせに決まっている。
平民のまま騎士ではないものにしたんだから良いよねー、というアホなことを言いやがりながら。
騎士になるよりヤッカミがひどくなっただろうが。お前、何か考えて行動してる?
鬼軍曹と同じで、訓練に頭がおかしくなったのか。
それはまだ先の話だが。
十一歳のときに、クリストはバーレイ侯爵家の屋敷を巣立っていった。
貴族学校に入学し、寮に入ったので、もう特に関わり合うことは少ないだろうと思っていたが、魔法の剣のピアスはクリストと通信もできてしまうという呪いの道具だった。
バーレイ侯爵家の出来事をちょくちょく報告させられた。
クリストの次にバーレイ侯爵家恒例、直系男子の訓練を受けることになったのは三歳のオルトである。
バーレイ侯爵家に俺のような者を連れて来るのかと思いきや、貴族の令息たちが一人ずつ訓練場に入って来た。だが、俺のようにクリストと同じ訓練ではないので、オルトはオルト一人で鬼軍曹について訓練をすることになる。
今回、平民では訓練に耐えられるような孤児が見つからなかったのだろうか。
俺はまだまだ十一歳、大人たちより彼らに近しい年齢だ。
訓練しながら世話をしろ、ただし、手出し無用、という謎の命令を受けた。
手出し無用なら世話できないだろ、という正論はどこへやら。まあ、危なそうになったら、私兵団の上へ連絡しろってことだ。いわゆるただの監視役というところだ。
まずオルトの一歳年上である四歳のサイ・モルト公爵令息が訓練場を訪れた。
見たとき、女の子か?と思うくらい黒髪の可愛らしい子であった。オルトと同じくらいの大きさである。
この子はとことん体力がなかった。
けれど、俺の嫌な予感は当たってしまったのだ。
「キュジオー、オルトが超可愛いんだよー」
兄バカが一匹誕生した。
顔がデレまくっている。
俺に言うな。それを聞いた俺にどういう反応を返してもらいたいんだ、お前。
どうも両親が娘のオルレアばかりにかまうので、残された者同士で息があったようだ。
次期最強の剣と最強の盾なのだから、仲が良いことに越したことはない。
「私が小さい魔法の剣を見せたら、オルトも小っちゃいけど魔法の盾を顕現させたんだよー。まだまだベビーベッドで寝ている赤ん坊なのに凄いよねー。私でも魔法の剣を出せたのは三歳くらいだったのに」
ガキをあやすのに魔法の剣を使うな。
どちらにしても化け物なのだが。
「、、、おい、そのこと誰かに言ったのか?」
「ん?父上がその場にいたけど」
クリストが首を傾げている。
事の重要性をまだ気づいていないな。
私兵団はバーレイ侯爵家をサポートするために存在する。
もちろんバーレイ侯爵家の資料も棚に並んでいる。機密事項が書かれた物は団長室にでもあるのだろうが、ここの物は私兵団に所属している者なら訓練生でも読める。
魔法の剣、魔法の盾を出せる年齢は、歴代最強の剣と最強の盾でも様々だ。
成人してもなかなか出せない者もいたらしい。
それらは魔力量に比例して早く出せるようだ。
つまり、早ければ早いほど化け物だということだ。
ただ、彼らの場合、次の最強の剣と最強の盾となる子供が産まれたら、段々に魔力が衰えていく。子供に移っていくのではないかとも言われている。そして、成人後、学校を卒業すると役目を引き継ぐ。
オルト・バーレイは歴代トップクラスの最強の盾となるのではないか?
けれど、嫌な予感がした。
あの鬼軍曹ことバーレイ侯爵は、今の最強の盾である自分の弟を優遇している。
バーレイ伯爵に結婚を許した。
一応、白い結婚を前提にしていたものだったようだが、つい先日バーレイ侯爵夫人が妊娠していることがわかったようだ。
喜んだのは、バーレイ侯爵だけだ。
あの鬼軍曹は何か考えて生きているのかと疑問に思う。
訓練しすぎて、頭が馬鹿になっているのではないかと思うくらいだ。
子供が男の子なら、バーレイ伯爵は自分の子供に爵位を継がせるのではないか?
バーレイ伯爵が我が子に継がせたいと言ったら、弟に甘いバーレイ侯爵は了承する。
その意味は確実に、息子オルト・バーレイを不幸にする、と平民の俺でもわかるのに。
バーレイ侯爵の娘オルレアへの可愛がり方も不気味なら、自分の弟に対する対応もおかしい。
息子が可愛くないのか?
息子はどうでもいいのか?
首が座ったら、クリストはオルトをちょくちょく訓練場に抱いてきた。
オルトの乳母が慌てて追いかけてきているじゃないか。
「俺の弟、可愛いだろー」
何度見せる気だ?
訓練できないガキを連れて来ても邪魔なだけだろ。
「おい、オル、可哀想だな。お前の兄ちゃんは」
目がクリっとしてキョトンとした顔をしている。
まだ、兄ちゃんの頭が可哀想だということがわからないよなー。
指でちょんちょん触ると、笑顔でにぎにぎしてくる。
教会にいた年下のガキどもなんて可愛いとすら思ったことはないが、オルトは確かに可愛い。
「何で私が可哀想なんだよー」
不満の声が聞こえてきたが無視だ無視。
「あー」
オルトが俺の顔に手を伸ばす。顔ではなく耳?
魔法の剣のピアスか?
「オルトー、キュジオは私のものだから取っちゃダメだぞー」
何を言っているんだ、コイツ。
「う?」
「兄ちゃんの戯言に耳を貸すなー。腐るぞー」
「ひどっ」
平和だった。
平和に見えた。
クリストが貴族学校に入学するまでは。
月日が経つのは早いもので、クリストはもう十一歳、今年十二歳になる。
クリストが貴族学校に通うために様々な準備が始まった。
クリストが訓練場に来ない日も増えた。
俺はクリストと同じ訓練を受けるために訓練場にいるのだが、クリストが入学したら私兵団の仕事に移る。
クリストがいなければ鬼軍曹は訓練場にはやって来ない。
同じカリキュラムの訓練をやったところで、非常に楽である。鬼軍曹の魔法の重圧がなくなるからである。
クリストが訓練が終わった時間にやって来た。
「キュジオ、キミは養子縁組とかする気はない?」
「、、、それは貴族と、か?」
クリストの決まっているじゃないかという顔がムカつく。
確かに俺に平民の養親ができたところで、コイツにとって意味がない。
「あー、するわけねえだろ。俺としたい奴もいないだろ」
「キミほどの魔力量を持っているのなら、候補者はかなりいるよ。けれど、キミの希望を尊重したいと思ってね」
「貴族になれって言いたいのか、お前は。なら、俺は一生平民でいる」
ケッ。
「はっ?何で?騎士になれば、キュジオの実力なら騎士爵はもらえるはずだ。一代限りの爵位ももらわない気か?」
何を言っているんだ、コイツは。
このまま私兵団にいたら、騎士にはならない。
それに誰もが貴族に憧れると思うなよ。
、、、いや、コイツ、俺を騎士にさせるつもりだったのか?
クリストは貴族学校を卒業したら騎士団に入団する。歴代の最強の剣がそうであったように。
俺にお供をさせる気だったのか?
それには確かに貴族でなければ、クリストのそばにはいられない。
彼の所属はもう決まっている。
平民では彼と同じ隊には所属できない。騎士団は実力主義とか言われていようと、一番隊には貴族の子弟しかいない。
で、何で、俺がクリストのそばでお世話しなきゃならんのだ?
「俺、平民でいいやー。貴族大嫌いだしー、顔色窺って生活するなんて耐えられん」
「ぐぅっ」
何でそんなに悔しそうなんだ。
というか、貴族になったら、こんな言葉遣いできない。許されない。直すのも面倒。
俺が貴族のご機嫌取りなんかやりたくもないし、できないのも百も承知しているだろうが。
で、将来、この男は俺を第三王子の親衛隊隊長に任命しやがる。
嫌がらせか?嫌がらせだろう。嫌がらせに決まっている。
平民のまま騎士ではないものにしたんだから良いよねー、というアホなことを言いやがりながら。
騎士になるよりヤッカミがひどくなっただろうが。お前、何か考えて行動してる?
鬼軍曹と同じで、訓練に頭がおかしくなったのか。
それはまだ先の話だが。
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貴族学校に入学し、寮に入ったので、もう特に関わり合うことは少ないだろうと思っていたが、魔法の剣のピアスはクリストと通信もできてしまうという呪いの道具だった。
バーレイ侯爵家の出来事をちょくちょく報告させられた。
クリストの次にバーレイ侯爵家恒例、直系男子の訓練を受けることになったのは三歳のオルトである。
バーレイ侯爵家に俺のような者を連れて来るのかと思いきや、貴族の令息たちが一人ずつ訓練場に入って来た。だが、俺のようにクリストと同じ訓練ではないので、オルトはオルト一人で鬼軍曹について訓練をすることになる。
今回、平民では訓練に耐えられるような孤児が見つからなかったのだろうか。
俺はまだまだ十一歳、大人たちより彼らに近しい年齢だ。
訓練しながら世話をしろ、ただし、手出し無用、という謎の命令を受けた。
手出し無用なら世話できないだろ、という正論はどこへやら。まあ、危なそうになったら、私兵団の上へ連絡しろってことだ。いわゆるただの監視役というところだ。
まずオルトの一歳年上である四歳のサイ・モルト公爵令息が訓練場を訪れた。
見たとき、女の子か?と思うくらい黒髪の可愛らしい子であった。オルトと同じくらいの大きさである。
この子はとことん体力がなかった。
けれど、俺の嫌な予感は当たってしまったのだ。
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