男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

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4章 貴方に捧げる我がまま

4-5 貴方に捧げる騒動

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「なーんで、俺たちが帝国の者を守らなければいけないんだ?」

「一応、皇子三人は客人扱いになっているから」

 スレイの問いに俺は答える。
 俺もルイジィに似た質問をしたなあ。

 スレイ、シン、サイにも今日は動いてもらうつもりだ。

 結局、いろいろな理由はある。
 皇子が殺されたという報復で、帝国にこの国を攻める口実を与えてはならない。
 帝国の人間によって帝国の皇子が殺されたら、自作自演でしょ、と言わざる得ないが、世の中の正論が通じないのが帝国。
 ウィト王国の警備が杜撰だったから殺されたのだ、と言ってのける。

 皇帝は第一皇子を大切に思っているようだから。
 事務作業をせっせとやってくれる貴重な存在として。

 ここで第一皇子を奴隷にして事務作業をやらせればいいじゃん、と思ってはいけない。
 彼は奴隷にならずに生き残るためのアピールをした。
 それを無下にしたら、どれほどの報復を彼から受けることになるか。

 想像は難くない。
 だから、聡い皇帝はそれをしない。
 家臣団からどれだけリスクがあるかを説明を受けても。
 リスクがあるのは跡継ぎである第六皇子だけどね。


 晴れ渡る空。
 雲一つない。
 何の憂いもなさそうな空だ。

 今回の帝国の一団は、皇子に衣装、生活品等必要な物を届けるという名目で来ているので、ウィト王国の王城に挨拶にはいかない。帝国のお偉いさんはついて来てないので。
 直接、皇子たちがいる学校に来て物品を渡し、王都に数日滞在した後に帝国に戻る。
 普通に考えれば、ただの運送業なのだが、荷物の中に殺傷能力の高いものが入り込んでいるかもしれない危険性もある。

 帝国の一団が学校に着くと、門番による受付が終了した後に警備員に彼らを引き継いだ。
 三台もの荷馬車と、騎兵が周囲を取り囲んでいる。
 騎兵は学校内に入ると、全員が馬から降りたまま手綱を引いていたが。

 警備員の後ろに俺もついて行く。
 一団が皇子三人と会うのはそれぞれ別の場所である。
 一応、第一皇子にはスレイ、第六皇子にはシン、第八皇子にはサイがついている。
 第八皇子がサイなのは、一人か二人でも皇帝の影が来てしまえば第八皇子はあっさり殺されてしまうので、防御に適した配置にした。サイなら一人でも対応できるだろう。


 最初に一団は警備員に従って第六皇子に会いに行く。
 それは順当な順番である。
 アルティ皇子は皇帝の跡継ぎだから。

 校舎とは別の倉庫に一時預かりするため、そこでアルティ皇子と会う。
 荷物をすぐさま宿舎や寮に入れないのは、品物の安全をウィト王国側で確認するためである。
 そのまま受け取っていいと言えるほど、帝国とウィト王国の間では信頼がないのである。

 各皇子、別々の場所で一時保管するのは、品物が混ざらないようにするためだ。
 皇子間で責任のなすりつけができないように配慮されている。

 アルティ皇子の前で帝国の一団全員が臣下の礼をとる。

「皆の者、ご苦労であった。楽にしてくれていい」

 この堂々とした態度は皇子の器と思えるのだが、なぜ普段は残念なのだろう。

「アルティ第六皇子殿下、お荷物を運んで参りました。こちらが目録です」

 一団の一番前にいた男性が立ち上がり、そのファイルをアルティ皇子の前に差し出す。
 受取時にいちいち中身を確認してサインするということはやらない。

「兄上や弟にも持って来ているのだろう」

「はい、お持ちしております」

「ならば、この倉庫に荷物を入れたら、彼らに」

 アルティ皇子が後ろを見せた途端、目録を渡した男が剣を抜く。
 普通の剣であるが。

 武器の所持を全面的に禁止することは難しい。貴族学校ゆえに、貴族の子弟を守る護衛たちは丸腰ではない。
 すべての武器を没収するならば、そういう護衛たちの武器も没収せざる得ない。
 そんなことは不可能である。

 敵国とはいえそんな場所で丸腰になれ、と言うのは難しいと考えてしまうのが、優しいウィト王国である。
 たいていの国は無理難題を平然と言ってのける。

 それでも、身につけられるのは通常の武器の範囲ということで、入国時に学校に入るときには魔剣や魔道具等の特殊な武器なら門の受付で預かることになるということは伝えていた。それは荷物のなかであっても、身につけていても同じことである。

「第六皇子っ、お命頂戴いたしますっ」

 一人が剣を抜いたら、その場にいた全員が剣を抜いた。

「はあっ?第六皇子が一番安全だったんじゃないのかっ」

 シンもまた剣を抜いた。
 アルティ皇子は怠慢なのか、特別講師の延長線上なのか、帯剣すらしてない。。。
 自分が狙われるとは露ほどに思っていなかったのか。それとも、魔法でなんとかしようと考えていたのか。

「、、、アルティ皇子殿下、こんなにも恨まれていたんですか?」

 俺はアルティ皇子に聞いてしまった。

 決意した目がそこらにあった。

 しかも、この者たちは横の連携は取っていない。
 コレはお互いに示し合わせたわけでない。
 会話や他の方法で連絡を取り合ってコレを決行したわけではないのは、魔法で監視していた俺がよくわかっている。
 全員が、個々でアルティ皇子を狙っていたということである。

 何をしたのだろう。
 皇帝の跡継ぎを殺害しようとするなんて、よほどのことである。
 この後の自分の身の安全などまったく考えていない行為だ。

 婚約者の女性を奪ったとか?
 家族を殺したとか?
 さもありなん。

「いや、初対面のはずだぞ。皇帝の影がいたとしても、会ったことのない者が多い」

「いやいや、コレ、全員が皇帝の影でしょ。跡継ぎじゃない第一皇子を殺害するならともかく、跡継ぎ争いで跡継ぎに決まった第六皇子を皇子のときに殺害しようと企てただけでも処刑ものでしょ。何やったんですか」

 ルイジィの予想がまったくの逆だったじゃないか。
 なぜ第六皇子が狙われる?

「、、、何でだ?」

 素で俺に聞くな。
 帝国内のことなんかわかるか。

「アルティ皇子殿下が精神操作できないのなら、彼らの原動力は怒りではないのでしょう」

「その通り、私は怒りで第六皇子を殺害しようとしているわけではない。帝国の皇帝にふさわしい者を皇帝にしようとしているだけだ」

 一人の発言に、周囲がうんうん頷いている。

「帝国の皇帝にふさわしい者、、、」

 俺はアルティ皇子を見る。
 理想の皇帝は一声で民衆を従えるんだっけ。

「確かに威厳はまだないなあ」

「そりゃそうだろ。十八歳の人間にそんな威厳がある方が怖いわ。それに父だって跡継ぎが決まったからと言ってすぐに譲位するわけでもない」

 そう、帝国では跡継ぎが決まってから跡継ぎ教育が行われる。多少のことはそれぞれやっていても、本格的なものは決まってからだ。そう、決まってからアルティ皇子はルイジィに日夜いじめられている。

「、、、ところで、皇帝にふさわしい者って、誰?」

 つい聞いてしまった。
 第六皇子以外なら第一か、第八皇子なのだが。
 成長を期待しての第八皇子なのか?

「何を言っているっ、オルレア・バーレイっ。第一皇子イーティ様だっ」

「へっ?」

 俺は首を傾げてしまった。
 皇帝にふさわしくないからと皇帝の跡継ぎの座を降りたのに、コイツらはイーティを皇帝にふさわしいと言う。
 おそらく、イーティは血の繋がりが皇帝とあったとしても、ふさわしくないと自分で判断していただろう。

 ちなみに、アルティ皇子とシンはこの間ずっと剣の攻撃を防ぎ続けている。
 俺は少し離れて話しているだけだが。

「あー、皇帝の影が一枚岩じゃないって話、こんなところにつながるのか」

「呆れたように言うなっ、お嬢ちゃんっ」

「頭痛いよー。何で跡継ぎ決定した上に唯一皇帝と血のつながった第六皇子の人望がここまでないんだよ。皇帝の影に一人も第六皇子を守ろうって人間がいない、、、」

 何で一人もいないんだ?
 ルイジィが二人残していた皇帝の影はどこに?

「って、何で一団側で参戦しているんだっ」

 二人も剣で第六皇子を襲っている。

「私はこんな機会を待っていたっ」

「俺もルイジィが第六皇子のそばを離れる機会を窺っていたっ」

 そもそもルイジィ以外に皇帝の影には第六皇子の味方がいなかったの?
 第一、第八皇子を奴隷にしないで生かしておく方が危険って思想の者はいないの?
 じゃあさあ、第一皇子が跡継ぎで良かったんじゃないのー?

「俺の質問に答えてくれる人いないかなあ?誰かさあ、アルティ皇子を殺したいほど、イーティが皇帝にふさわしいと思った理由を教えてくれない?」

 答えを得ぬまま、攻防が続行中。
 さすがに答えてくれないかー。
 親切丁寧にベラベラと詳細に説明してくれる敵は普通は存在しない。
 シンが剣、アルティ皇子が魔法で、皇帝の影たちに対抗している。

「オルっ、お前、何を傍観しているんだよ」

 押さえるのが辛くなってきたシンが俺に叫ぶ。
 だが、俺もそれどころじゃなくなった。

「あのクソ野郎、本性を現しやがったな」

 俺は憎々し気に言い放った。
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