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4章 貴方に捧げる我がまま
4-2 貴方に捧げる情報 ◆ルイジィ視点◆
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◆ルイジィ視点◆
「坊ちゃん、キノア帝国から一団が参ります」
宿舎の部屋でアルティ皇子にものすごくボカした表現をした。
「一団、、、」
「はい」
「それだけで何もかもわかるのは兄上くらいだぞ」
「その通りなんですが、おわかりになりませんでしたか」
「嫌味か、それは」
アルティ皇子が仏頂面に変わる。
深意がわからないと顔で言われてしまった。
そう、キノア帝国から一団。
第一皇子と第八皇子にも同じ報告をしている。
第八皇子は、頼んでいた物が届くかなあ、と。
第一皇子は、教えてくれてありがとう、と。
、、、にこやか表情からして、第一皇子はすでに情報を握っていた。
自分の商会からの情報だろう。
あの情報網は、皇帝の影よりも高い精度を持つことがある。
もし第一皇子がもう少し後の時代に生まれていたならば、皇帝としてふさわしいのは彼だった。
賢帝として名高い皇帝となっていたはずだ。
今はまだ過渡期だ。
まだまだ強い皇帝が望まれる。
強いというのは文字通り武力。
搦め手を使う皇帝を望む声は少ない。
帝国を発展させるのは、今でもそちらの皇帝だとしても。
本当に惜しいと思ってしまう。
せめて私が皇帝の影をまとめあげていれば。
個々が自由に皇帝のために動くこともまた帝国の利益になっていたので、この体制を放置してきたが仇となった。
帝国のために、と言いながら、跡継ぎ争いでようやくままならない事態だと気づいた。
次代の皇帝として民衆から望まれる器は第六皇子である。
それを知っていたからこその叡智。
考えつくだけならいくらでもいる。実際に行動してしまえるのが非凡なのである。
自分を生かすための行動を。
帝国がそれを失ってしまえば、他の国々の後手に回る。
「ルイジィは兄上を皇帝にしたかったんじゃないのか?」
「第一皇子を皇帝にしてしまうと私の心労が絶えません」
アルティ皇子は不思議そうな顔で私を見る。
「兄上の方が皇帝の仕事をできるんだろう?」
「ええ、今の時点で坊ちゃんが第一皇子の十分の一でも処理できれば、皇帝も多少は考えたでしょうに」
跡継ぎ以外の皇子の行く末は決まっている。死か、奴隷か。
ただし、第一皇子の望みは死にたくないし、奴隷にもなりたくないというものだ。奴隷になるくらいなら死を選んでしまう可能性もある。
彼は奴隷にならないために相当な努力を重ねてきたのだから。
そして、その交渉のカードは絶大なものだ。
血のせいなのか、皇帝もアルティ皇子もソックリだ。
裏方の仕事がやりたくないし、できない。
地味な事務作業も皇帝の仕事として大変重要な部分だ。
今の皇帝は戦っていればそれで良いというわけではない。
彼らにとって第一皇子は必要な人材だということを示した。
「十分の一、、、この量でそれ以下なのか?」
机に置かれる書類の量を見て、アルティ皇子はため息を吐く。
皇帝が匙を投げて、跡継ぎに決定したアルティ皇子に振ってみたのだが。。。
第一皇子がまだ大丈夫なのー?と心配して私に尋ねて来るくらいだ。
十分の一でも処理できれば、と言ったじゃないですか。
「十分の一にも全然届いておりません」
「さっさと皇帝の代行印を兄上に戻せば?」
「皇帝と跡継ぎだけでは仕事が滞るという証拠が、この世には必要なことなのです」
現在の帝国では皇帝が処理しなければならない仕事が恐ろしく増えている。
それを代行していたのが、第一皇子。
表舞台に立っていたのが、皇帝。
華々しいところだけイイトコドリ。
この実態を見てそう思わないような人物なら、帝国のためと言いながら、自分に酔い痴れて行動している人物だ。始末できる。
皇帝からも第一皇子を始末するような動きを見せる影がいたなら抹殺していい、と言われている。
元から第一皇子の重要性に気づいていた皇帝だが、第一皇子から代行印を返上させてしまっている今、余計にそのありがたみに気づいたようだ。
皇帝から第一皇子への手紙には要約すると、もうそろそろ仕事する準備しておいてね、という言葉が綴られている。本当はすぐにでも帝国に戻って来てほしいーーーっ、という強い希望も。。。
奥様方とご実家を整理整頓するまでは、どの皇子も帰れないんですけどね。
本国での事務方がキレそうになっている。
もうそろそろキレる。
爆発する。
代行印が第一皇子に戻って来る日が近づいている。
「ルイジィは積極的な第六皇子推進派じゃないんだねー」
ウィト王国の最強の盾でありながら、現在オルレア・バーレイに扮するオルト・バーレイが聞いてきた。
学校の授業の休憩中、アルティ皇子が学長に呼ばれている最中に、バッタリ会った。
この御仁も自分の正体がバレている相手に対しては態度が変わる。
おそらく、コレが素なのだろう。
信用しているしていないに関わらず。
「皇帝の跡継ぎは第六皇子がふさわしいと思っていますよ」
「うんうん、普通なら他の皇子を殺しちゃうからね、皇帝の影はー」
困ったことに、方法は魔法によるが、最強の盾の情報の精度は第一皇子よりも高い。
ウィト王国の現在の最強の盾はバーレイ伯爵なのだが、ウィト王国以外の国家においてそう思っている者はいない。名目上の最強の盾など頭にない。
現在の最強の盾はオルト・バーレイであると、ボケていない国々では認識している。
んで、この最強の盾と第一皇子はお似合いだ。
お互いに補い合える。
アルティ皇子はこの最強の盾を双子の姉のオルレアと思っている時点で、勝負に負けている。
この最強の盾は自分の正体がわからなければ最後、自分とは関わり合っていないとさえ思っているフシがある。オルレアの代理を務め上げる気だ。
この学校の貴族令嬢ならともかく、アルティ皇子にはヒントが山ほど提示されている。
しかも、最強の盾と剣で打ち合って、魔法の盾まで体内に入れられているのに、なぜわからない???
オルレアは一般人を超える実力を持たないと調査書を上げているのに。
育て方、間違ったかな?
補い合うのは第一皇子と第六皇子も同じ。
だが、こちらは高いリスクを伴う。奴隷にしない皇子を生かすことは。
「ふむふむ、何がおっしゃりたいのですかな?」
「何で帝国の後始末を俺がしなければならないのかな?」
氷点下に急降下。。。
笑顔なのに、目が笑っていない。
皇帝の影って、交渉の矢面に立つ部署じゃないんですけど。
さすが、最強の盾。冷気が半端ないです。
「それは大変申し訳なく思っております」
真摯に謝るしかないけどね、コレは。
「帝国の一団ってことで正規ルートで入国させてしまっているけど、何人か事故に見せかけて始末していい?いや、いっそ落石に巻き込まれて全滅とか」
「できれば穏便に解決してもらうとありがたいのですが」
「皇帝の命令に従わない影なんて、今の時代には厄介なだけだ。皇帝もこうなるとわかっていたからウィト王国を選択したのだろう。跡継ぎ争いが終わったのだから、さっさと正妃たちをどうにかしろ」
「皇帝も善処しておりますゆえ、もう少々お待ちください」
「もう少々、ねえ?それで、ウィト王国は何を得る?」
「それは一介の世話役の爺に聞かれてもお答えできかねます」
最強の盾は沈黙で返してきた。冷たい目のままで。
ここはツッコミを入れてもらいたいところだったのだが。
誰か他にいれば違う対応も期待できたが、二人のときはこの距離だということか。
「ルイジィ、待たせたな。おっ、お嬢ちゃんもいたのか」
アルティ皇子が戻って来てしまった。
最強の盾との会話はこれまでだろう。
「帝国の補給部隊が来るそうだな」
最強の盾がアルティ皇子に聞いた。
視線が冷たいままなのだが、アルティ皇子が嬉しそうなのは解せない。
「補給部隊と言えばそういうものかもしれないが、一応軍ではないぞ」
「、、、帝国の役人はもれなく軍人じゃないか」
「、、、そうとも言う」
冷たい視線がまた私に戻って来た。
「お前はわざとそう育てたんだな」
ザラリとした言葉を残して、最強の盾はこの場を去っていった。
「坊ちゃん、キノア帝国から一団が参ります」
宿舎の部屋でアルティ皇子にものすごくボカした表現をした。
「一団、、、」
「はい」
「それだけで何もかもわかるのは兄上くらいだぞ」
「その通りなんですが、おわかりになりませんでしたか」
「嫌味か、それは」
アルティ皇子が仏頂面に変わる。
深意がわからないと顔で言われてしまった。
そう、キノア帝国から一団。
第一皇子と第八皇子にも同じ報告をしている。
第八皇子は、頼んでいた物が届くかなあ、と。
第一皇子は、教えてくれてありがとう、と。
、、、にこやか表情からして、第一皇子はすでに情報を握っていた。
自分の商会からの情報だろう。
あの情報網は、皇帝の影よりも高い精度を持つことがある。
もし第一皇子がもう少し後の時代に生まれていたならば、皇帝としてふさわしいのは彼だった。
賢帝として名高い皇帝となっていたはずだ。
今はまだ過渡期だ。
まだまだ強い皇帝が望まれる。
強いというのは文字通り武力。
搦め手を使う皇帝を望む声は少ない。
帝国を発展させるのは、今でもそちらの皇帝だとしても。
本当に惜しいと思ってしまう。
せめて私が皇帝の影をまとめあげていれば。
個々が自由に皇帝のために動くこともまた帝国の利益になっていたので、この体制を放置してきたが仇となった。
帝国のために、と言いながら、跡継ぎ争いでようやくままならない事態だと気づいた。
次代の皇帝として民衆から望まれる器は第六皇子である。
それを知っていたからこその叡智。
考えつくだけならいくらでもいる。実際に行動してしまえるのが非凡なのである。
自分を生かすための行動を。
帝国がそれを失ってしまえば、他の国々の後手に回る。
「ルイジィは兄上を皇帝にしたかったんじゃないのか?」
「第一皇子を皇帝にしてしまうと私の心労が絶えません」
アルティ皇子は不思議そうな顔で私を見る。
「兄上の方が皇帝の仕事をできるんだろう?」
「ええ、今の時点で坊ちゃんが第一皇子の十分の一でも処理できれば、皇帝も多少は考えたでしょうに」
跡継ぎ以外の皇子の行く末は決まっている。死か、奴隷か。
ただし、第一皇子の望みは死にたくないし、奴隷にもなりたくないというものだ。奴隷になるくらいなら死を選んでしまう可能性もある。
彼は奴隷にならないために相当な努力を重ねてきたのだから。
そして、その交渉のカードは絶大なものだ。
血のせいなのか、皇帝もアルティ皇子もソックリだ。
裏方の仕事がやりたくないし、できない。
地味な事務作業も皇帝の仕事として大変重要な部分だ。
今の皇帝は戦っていればそれで良いというわけではない。
彼らにとって第一皇子は必要な人材だということを示した。
「十分の一、、、この量でそれ以下なのか?」
机に置かれる書類の量を見て、アルティ皇子はため息を吐く。
皇帝が匙を投げて、跡継ぎに決定したアルティ皇子に振ってみたのだが。。。
第一皇子がまだ大丈夫なのー?と心配して私に尋ねて来るくらいだ。
十分の一でも処理できれば、と言ったじゃないですか。
「十分の一にも全然届いておりません」
「さっさと皇帝の代行印を兄上に戻せば?」
「皇帝と跡継ぎだけでは仕事が滞るという証拠が、この世には必要なことなのです」
現在の帝国では皇帝が処理しなければならない仕事が恐ろしく増えている。
それを代行していたのが、第一皇子。
表舞台に立っていたのが、皇帝。
華々しいところだけイイトコドリ。
この実態を見てそう思わないような人物なら、帝国のためと言いながら、自分に酔い痴れて行動している人物だ。始末できる。
皇帝からも第一皇子を始末するような動きを見せる影がいたなら抹殺していい、と言われている。
元から第一皇子の重要性に気づいていた皇帝だが、第一皇子から代行印を返上させてしまっている今、余計にそのありがたみに気づいたようだ。
皇帝から第一皇子への手紙には要約すると、もうそろそろ仕事する準備しておいてね、という言葉が綴られている。本当はすぐにでも帝国に戻って来てほしいーーーっ、という強い希望も。。。
奥様方とご実家を整理整頓するまでは、どの皇子も帰れないんですけどね。
本国での事務方がキレそうになっている。
もうそろそろキレる。
爆発する。
代行印が第一皇子に戻って来る日が近づいている。
「ルイジィは積極的な第六皇子推進派じゃないんだねー」
ウィト王国の最強の盾でありながら、現在オルレア・バーレイに扮するオルト・バーレイが聞いてきた。
学校の授業の休憩中、アルティ皇子が学長に呼ばれている最中に、バッタリ会った。
この御仁も自分の正体がバレている相手に対しては態度が変わる。
おそらく、コレが素なのだろう。
信用しているしていないに関わらず。
「皇帝の跡継ぎは第六皇子がふさわしいと思っていますよ」
「うんうん、普通なら他の皇子を殺しちゃうからね、皇帝の影はー」
困ったことに、方法は魔法によるが、最強の盾の情報の精度は第一皇子よりも高い。
ウィト王国の現在の最強の盾はバーレイ伯爵なのだが、ウィト王国以外の国家においてそう思っている者はいない。名目上の最強の盾など頭にない。
現在の最強の盾はオルト・バーレイであると、ボケていない国々では認識している。
んで、この最強の盾と第一皇子はお似合いだ。
お互いに補い合える。
アルティ皇子はこの最強の盾を双子の姉のオルレアと思っている時点で、勝負に負けている。
この最強の盾は自分の正体がわからなければ最後、自分とは関わり合っていないとさえ思っているフシがある。オルレアの代理を務め上げる気だ。
この学校の貴族令嬢ならともかく、アルティ皇子にはヒントが山ほど提示されている。
しかも、最強の盾と剣で打ち合って、魔法の盾まで体内に入れられているのに、なぜわからない???
オルレアは一般人を超える実力を持たないと調査書を上げているのに。
育て方、間違ったかな?
補い合うのは第一皇子と第六皇子も同じ。
だが、こちらは高いリスクを伴う。奴隷にしない皇子を生かすことは。
「ふむふむ、何がおっしゃりたいのですかな?」
「何で帝国の後始末を俺がしなければならないのかな?」
氷点下に急降下。。。
笑顔なのに、目が笑っていない。
皇帝の影って、交渉の矢面に立つ部署じゃないんですけど。
さすが、最強の盾。冷気が半端ないです。
「それは大変申し訳なく思っております」
真摯に謝るしかないけどね、コレは。
「帝国の一団ってことで正規ルートで入国させてしまっているけど、何人か事故に見せかけて始末していい?いや、いっそ落石に巻き込まれて全滅とか」
「できれば穏便に解決してもらうとありがたいのですが」
「皇帝の命令に従わない影なんて、今の時代には厄介なだけだ。皇帝もこうなるとわかっていたからウィト王国を選択したのだろう。跡継ぎ争いが終わったのだから、さっさと正妃たちをどうにかしろ」
「皇帝も善処しておりますゆえ、もう少々お待ちください」
「もう少々、ねえ?それで、ウィト王国は何を得る?」
「それは一介の世話役の爺に聞かれてもお答えできかねます」
最強の盾は沈黙で返してきた。冷たい目のままで。
ここはツッコミを入れてもらいたいところだったのだが。
誰か他にいれば違う対応も期待できたが、二人のときはこの距離だということか。
「ルイジィ、待たせたな。おっ、お嬢ちゃんもいたのか」
アルティ皇子が戻って来てしまった。
最強の盾との会話はこれまでだろう。
「帝国の補給部隊が来るそうだな」
最強の盾がアルティ皇子に聞いた。
視線が冷たいままなのだが、アルティ皇子が嬉しそうなのは解せない。
「補給部隊と言えばそういうものかもしれないが、一応軍ではないぞ」
「、、、帝国の役人はもれなく軍人じゃないか」
「、、、そうとも言う」
冷たい視線がまた私に戻って来た。
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