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2章 令嬢たちは嫉妬する
2-16 花びら舞う王子様11
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「まったく、サイは、、、」
サイとソニア嬢の会話は聞こえないが、何を言っているのか予想はついた。
サイはオルレアと俺とをごっちゃにして話している。
オルレアに扮しているのが俺だから、勘違いするのも無理からぬ話ではあるのだが。。。
バレるからしっかり区別してくれ。
ソニア嬢はオルレアの手助けをしたいと思っているだけだ。
俺ではない。
将来、最強の盾となる俺の何を手助けできるというのだろう。
ソニア嬢では無理だ、という話はわかるのだが。
ここにいるのがオルトだと知らないソニア嬢に察しろというのが無理な話だ。
「嫉妬かしら?あのサイ・モルトが感情を表すなんて珍しいわね。周囲に対する冷たい態度というのも面倒だから演技しているだけなんでしょう。本当に冷たい態度をする子じゃないのに」
「、、、」
さすがはマイア様。どこからそんな正確な情報を得ているんですかね。
今は二人でダンスをしている最中だ。
「ねえ、オルレア。さっきネオはデートでも誘いに来たの?」
「いいえ、乗馬に誘われました」
踊りながらマイア様は首を傾げる。
「それはデートの誘いじゃないの?」
「ネオ王子殿下は婚約者がいる身です。何かしらの意図はあると思いますが、そういう関係を望んでいるわけではないかと」
「、、、あら、あの子も不憫ねえ。あの子の目には熱があったわよ」
「熱、ですか?」
「王子三人とも抑圧されてきたから、すべてを卒なくこなす代わりに、これといった熱もない。ネオがああいう目を他人に向けるなんて珍しいわよ」
「、、、熱を向けるのなら、ソフィア嬢こそふさわしい相手なのでは?」
「オルレアも知っているのね。公表はされていないだけでネオの相手を」
マイア様は一瞬ネオ王子を視界に入れてから、俺に戻した。
「ソフィア嬢を小屋の崩壊から助けたときに」
「そう、すべてが無難だからこそ選ばれた相手よ。王太子に仇なすことのないように。この国は王太子になれない王子も臣下に下らないから慎重に相手が選定される」
この国には領地がすでにないとも言える。
公爵家にするにはそれなりの領地が必要だ。
他の貴族から奪い取ったら、不平不満が王族に積もるだけだ。
王族直轄地が広いのだから分け与えればという意見もあることにはある。だが、それが数世代も続けば、王族直轄地が小さくなり、求心力が弱くなってしまう。国は他の領地からも税金が入るから大丈夫だ、というわけではない。
この国で公爵家ができていたのはかなり昔の話で、今の王族は王族としてまとめて王族直轄地で面倒をみている。
だからといって、王子をこの周辺の他国に婿入りさせるのは人質にするも同義だ。
この国の周辺は、今は我が国とただ戦争していないだけの敵対国が多い。隙あらばと狙われている。跡継ぎ争いなどしたら、この国はひとたまりもない。
友好国でもいつ何時態度が変わるのかは読めない。
マイア様もこの国に戻って来ているように。
「ならば、クオ王子にはどのような相手が用意されているのでしょうね」
「第三王子だから選ばれた令嬢の中なら選択できる。あの子には多少の自由が許されているわ」
それは自由なのだろうか。
確か王太子以外の王子は気に入れば子爵、男爵の娘でも嫁として迎えることができると聞いた。けれど、ソレはお伽噺の世界だったのか。
この国のパワーバランスを崩さないよう、王子たちは細心の注意を払いながら生きている。
「、、、そこにバーレイ侯爵家が入っていることが不思議ですが」
「そうね。貴方はそう思うわよね」
見透かしている目がそこにはあった。
マイア様は一緒に踊っているのが誰か、という確信があるのだろう。
俺は細いが、密着していれば性別はわかってしまう可能性はあった。
しかも、相手は年若い令嬢ではなく、結婚していて子供もいるマイア様だ。男女の違いなど百も承知している。
「もし王家に女児が産まれていたら、間違いなく貴方と結婚させていたでしょう。けれど、ソレは内乱の火種になる」
王族とバーレイ侯爵家がつながったら。
他の貴族が黙っていない。
「それでも、この国を守るためにはそうせざる得ないところまで来ている。許されることなら、クオが自分の意志で貴方を選ぶことを私たちは切に願うわ」
「ん?」
頷きそうになったが、、、俺を?
あれ?オルレアじゃなくて?
この国は同性同士でも結婚できるけど、何で?
会話の流れから、完全に俺の話で間違いないよな。サイのように混乱しているわけでもなさそうだ。
一旦、整理してみようか。
この国の法律的にはクオ王子と俺は結婚可能だ。
子供が産まれない結婚というのはこの国の貴族間では家同士の繋がりが欲しいときに必要だからだ。
いくら白い結婚であったとしても、それは男女であれば、何かの拍子に一線を越えてしまうことは多々ある。現最強の盾のバーレイ伯爵のように。
マイア様の口振りだと、王族とバーレイ侯爵家の関係を密にしなければならないほど、他国との関係が悪化していると言ってもいいことを示している。
それは、オルレアがクオ王子の婚約者候補なのだからオルレアでもいいはずなのだが、バーレイ侯爵家というより、最強の剣か、最強の盾を王族に引き込まなければならないほどのことのようだ。
しかし、最強の剣を王子とは結婚させられない。
それは子供が産まれなければ、最強の剣も最強の盾もその代で途絶えてしまうからだ。
それは国を守るためには本末転倒。
もし王女がいたとしても、王家の子供が最強の剣、最強の盾となってしまう。
それは限りないリスクを背負うことになる。
とすれば、王族に引き込むのは最強の盾の方であり、子供を産めない同性での結婚は他の貴族としても妥協できる範囲である。逆に、子供が産めるオルレアよりも男の俺の方が彼らは頷くだろう。王族への影響は一代限りで済む。
「混乱させてしまったかしら。けれど、貴方に内緒で彼らが裏で動くのを私は認めない。外堀を埋めまくって、貴方が逃げられないようにするのは都合が良すぎるわ。貴方がこの結婚に嫌だったら、私が貴方を連れて国外に逃げてあげるからアテにしてくれていいのよ」
男前です、マイア様。
彼らとボカしたけれど、王族とバーレイ侯爵家以外に誰かいるのだろうか。
他の貴族は妥協はしても、大反対するだろうし。
うーん、オルレアが第三王子の婚約者候補だと思っていたのだが。
バーレイ侯爵家とどういう約束をしたのだろうか。
もしかすると、ボカした表現にしていないだろうか?バーレイ侯爵が王子の婚約者候補は娘のオルレアだけだと勘違いするように。
それならば、王族の一部が俺の正体を知っていてもなお、俺を王城にいさせる意味もわかる。
俺もクオ王子の婚約者候補の一人だったのならば。
俺、オルレアの演技下手だったのかなあ?
けっこうな人数にバレてない?
まあ、王族に対しても騙そうとするバーレイ侯爵の方が不敬だけどね、どう考えても。
単独での短慮な行動として、俺を切り捨てる気なのだろうか。あの父ならあり得る。
さて、王族の誰にバレているのだろう。
王妹のマイア様が知っているのだから、国王夫妻は手堅いところか。国王だけが知っている可能性も高い。
王子の方は、、、王太子は知っているのかもしれないが、第二王子、第三王子はどうだろう。
俺を乗馬へ誘った第二王子はもしかしたら知っているかもしれない。
、、、あれ?そうすると、マイア様が言う熱のこもった目というのに説明がつかなくなるな。
それはオルレアに向けるべき熱だろう。
「貴方が納得する答えが出るまで考えなさい。まだ猶予はあるのだから」
俺が考えるのも期限があることを示唆している。
逃げたいのなら逃げられるうちに判断しろということだ。
この国のすべてを捨てて。
この国にとって最強の盾は重要だが、最強の剣ほどではない。
最強の剣である兄が結婚して二人の息子が産まれれば、最強の盾の力はその息子に引き継がれる。
ある意味で、最強の盾はこの国を守るための使い潰される道具でしかない。
それがわかっていながら、それでもなおこの国に未練があるとしたら、兄と友人たちだろう。
踊り終わって、マイア様に礼をする。
「この後は余興よ。北部地方の伝統舞踊よ。興味がない方にとっては休憩時間ね」
「、、、それは剣舞なのですか?」
「え?」
マイア様の表情で、その問いは否定されたことを知る。
サイとソニア嬢の会話は聞こえないが、何を言っているのか予想はついた。
サイはオルレアと俺とをごっちゃにして話している。
オルレアに扮しているのが俺だから、勘違いするのも無理からぬ話ではあるのだが。。。
バレるからしっかり区別してくれ。
ソニア嬢はオルレアの手助けをしたいと思っているだけだ。
俺ではない。
将来、最強の盾となる俺の何を手助けできるというのだろう。
ソニア嬢では無理だ、という話はわかるのだが。
ここにいるのがオルトだと知らないソニア嬢に察しろというのが無理な話だ。
「嫉妬かしら?あのサイ・モルトが感情を表すなんて珍しいわね。周囲に対する冷たい態度というのも面倒だから演技しているだけなんでしょう。本当に冷たい態度をする子じゃないのに」
「、、、」
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今は二人でダンスをしている最中だ。
「ねえ、オルレア。さっきネオはデートでも誘いに来たの?」
「いいえ、乗馬に誘われました」
踊りながらマイア様は首を傾げる。
「それはデートの誘いじゃないの?」
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「熱、ですか?」
「王子三人とも抑圧されてきたから、すべてを卒なくこなす代わりに、これといった熱もない。ネオがああいう目を他人に向けるなんて珍しいわよ」
「、、、熱を向けるのなら、ソフィア嬢こそふさわしい相手なのでは?」
「オルレアも知っているのね。公表はされていないだけでネオの相手を」
マイア様は一瞬ネオ王子を視界に入れてから、俺に戻した。
「ソフィア嬢を小屋の崩壊から助けたときに」
「そう、すべてが無難だからこそ選ばれた相手よ。王太子に仇なすことのないように。この国は王太子になれない王子も臣下に下らないから慎重に相手が選定される」
この国には領地がすでにないとも言える。
公爵家にするにはそれなりの領地が必要だ。
他の貴族から奪い取ったら、不平不満が王族に積もるだけだ。
王族直轄地が広いのだから分け与えればという意見もあることにはある。だが、それが数世代も続けば、王族直轄地が小さくなり、求心力が弱くなってしまう。国は他の領地からも税金が入るから大丈夫だ、というわけではない。
この国で公爵家ができていたのはかなり昔の話で、今の王族は王族としてまとめて王族直轄地で面倒をみている。
だからといって、王子をこの周辺の他国に婿入りさせるのは人質にするも同義だ。
この国の周辺は、今は我が国とただ戦争していないだけの敵対国が多い。隙あらばと狙われている。跡継ぎ争いなどしたら、この国はひとたまりもない。
友好国でもいつ何時態度が変わるのかは読めない。
マイア様もこの国に戻って来ているように。
「ならば、クオ王子にはどのような相手が用意されているのでしょうね」
「第三王子だから選ばれた令嬢の中なら選択できる。あの子には多少の自由が許されているわ」
それは自由なのだろうか。
確か王太子以外の王子は気に入れば子爵、男爵の娘でも嫁として迎えることができると聞いた。けれど、ソレはお伽噺の世界だったのか。
この国のパワーバランスを崩さないよう、王子たちは細心の注意を払いながら生きている。
「、、、そこにバーレイ侯爵家が入っていることが不思議ですが」
「そうね。貴方はそう思うわよね」
見透かしている目がそこにはあった。
マイア様は一緒に踊っているのが誰か、という確信があるのだろう。
俺は細いが、密着していれば性別はわかってしまう可能性はあった。
しかも、相手は年若い令嬢ではなく、結婚していて子供もいるマイア様だ。男女の違いなど百も承知している。
「もし王家に女児が産まれていたら、間違いなく貴方と結婚させていたでしょう。けれど、ソレは内乱の火種になる」
王族とバーレイ侯爵家がつながったら。
他の貴族が黙っていない。
「それでも、この国を守るためにはそうせざる得ないところまで来ている。許されることなら、クオが自分の意志で貴方を選ぶことを私たちは切に願うわ」
「ん?」
頷きそうになったが、、、俺を?
あれ?オルレアじゃなくて?
この国は同性同士でも結婚できるけど、何で?
会話の流れから、完全に俺の話で間違いないよな。サイのように混乱しているわけでもなさそうだ。
一旦、整理してみようか。
この国の法律的にはクオ王子と俺は結婚可能だ。
子供が産まれない結婚というのはこの国の貴族間では家同士の繋がりが欲しいときに必要だからだ。
いくら白い結婚であったとしても、それは男女であれば、何かの拍子に一線を越えてしまうことは多々ある。現最強の盾のバーレイ伯爵のように。
マイア様の口振りだと、王族とバーレイ侯爵家の関係を密にしなければならないほど、他国との関係が悪化していると言ってもいいことを示している。
それは、オルレアがクオ王子の婚約者候補なのだからオルレアでもいいはずなのだが、バーレイ侯爵家というより、最強の剣か、最強の盾を王族に引き込まなければならないほどのことのようだ。
しかし、最強の剣を王子とは結婚させられない。
それは子供が産まれなければ、最強の剣も最強の盾もその代で途絶えてしまうからだ。
それは国を守るためには本末転倒。
もし王女がいたとしても、王家の子供が最強の剣、最強の盾となってしまう。
それは限りないリスクを背負うことになる。
とすれば、王族に引き込むのは最強の盾の方であり、子供を産めない同性での結婚は他の貴族としても妥協できる範囲である。逆に、子供が産めるオルレアよりも男の俺の方が彼らは頷くだろう。王族への影響は一代限りで済む。
「混乱させてしまったかしら。けれど、貴方に内緒で彼らが裏で動くのを私は認めない。外堀を埋めまくって、貴方が逃げられないようにするのは都合が良すぎるわ。貴方がこの結婚に嫌だったら、私が貴方を連れて国外に逃げてあげるからアテにしてくれていいのよ」
男前です、マイア様。
彼らとボカしたけれど、王族とバーレイ侯爵家以外に誰かいるのだろうか。
他の貴族は妥協はしても、大反対するだろうし。
うーん、オルレアが第三王子の婚約者候補だと思っていたのだが。
バーレイ侯爵家とどういう約束をしたのだろうか。
もしかすると、ボカした表現にしていないだろうか?バーレイ侯爵が王子の婚約者候補は娘のオルレアだけだと勘違いするように。
それならば、王族の一部が俺の正体を知っていてもなお、俺を王城にいさせる意味もわかる。
俺もクオ王子の婚約者候補の一人だったのならば。
俺、オルレアの演技下手だったのかなあ?
けっこうな人数にバレてない?
まあ、王族に対しても騙そうとするバーレイ侯爵の方が不敬だけどね、どう考えても。
単独での短慮な行動として、俺を切り捨てる気なのだろうか。あの父ならあり得る。
さて、王族の誰にバレているのだろう。
王妹のマイア様が知っているのだから、国王夫妻は手堅いところか。国王だけが知っている可能性も高い。
王子の方は、、、王太子は知っているのかもしれないが、第二王子、第三王子はどうだろう。
俺を乗馬へ誘った第二王子はもしかしたら知っているかもしれない。
、、、あれ?そうすると、マイア様が言う熱のこもった目というのに説明がつかなくなるな。
それはオルレアに向けるべき熱だろう。
「貴方が納得する答えが出るまで考えなさい。まだ猶予はあるのだから」
俺が考えるのも期限があることを示唆している。
逃げたいのなら逃げられるうちに判断しろということだ。
この国のすべてを捨てて。
この国にとって最強の盾は重要だが、最強の剣ほどではない。
最強の剣である兄が結婚して二人の息子が産まれれば、最強の盾の力はその息子に引き継がれる。
ある意味で、最強の盾はこの国を守るための使い潰される道具でしかない。
それがわかっていながら、それでもなおこの国に未練があるとしたら、兄と友人たちだろう。
踊り終わって、マイア様に礼をする。
「この後は余興よ。北部地方の伝統舞踊よ。興味がない方にとっては休憩時間ね」
「、、、それは剣舞なのですか?」
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