男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

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1章 双子の姉の失踪

1-14 実際のツンデレ令嬢は対処に困る3

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 せっかく王城にいるのだから、訓練場を回ってみたい。
 小規模なものから大規模なものまで、各親衛隊の訓練場から騎士団の訓練場まで備わっている。

 まずは騎士団の訓練場に行った。
 ここは王城の敷地に入場した者なら、受付で記名するだけで見学が可能。

「うわっ、広っ」

 訓練場というよりは闘技場並みの広さを誇る。
 かなり広いはずなのだが、訓練する騎士団の団員は多く、埋め尽くされているかのように見えてしまう。
 見学席にまで熱気が伝わって来る。

 今の時間、勤務中の団員も多いはずなのに。


 ちなみに、各親衛隊の方は機密訓練をする場合があるので事前申請が必要。
 教えてもらった途端に、オルレアの名で申請しておく。
 王城での拘束期間もわからないので、気晴らしにとしても見せてもらえるのではなかろうか?

 現在、親衛隊は国王夫妻、王太子、第二王子、第三王子の四部隊。
 実は隠れた部隊も存在するという噂があるが、そちらの方は表立って見せてもらえないだろう。
 そして、王城を守る騎士団が王城のこの訓練場を使っている。
 王都や別の主要都市、そして国境を守るのも騎士団の仕事だ。
 それぞれに拠点を持っている。 


 うちのバーレイ侯爵家というのは国防の一族である。
 現在の最強の剣と呼ばれるのが、うちの兄クリスト・バーレイ。
 その前の最強の剣は父である。
 現在の最強の盾は叔父、つまり父の弟である。

 俺が成人すると最強の盾は俺に移る。

 詳しく説明すると、産まれる瞬間から兄は最強の剣としての才能を持って産まれる。そして、兄が成長するにつれ、力が備わって来るにつれ、父である最強の剣の力は衰えていく。父の力はゼロにはならないが、子供ができるとその力が受け継がれていく、といった感じだ。
 学校を卒業して、成人する頃には最強の剣、最強の盾の役目を果たせる段階になったということで、その役目を引き継ぐ。

 この国ではこの国を守る者として、最強の剣と最強の盾は必要だ。
 だからこそ、バーレイ侯爵家は国防の要と言われる。
 他の貴族からやっかまれる。
 王族とつながることを強固に反対される。

 本当なら第三とはいえ王子のクオ様とオルレアとの婚約話は持ち上がるだけで他の貴族に潰される案件だ。

 だが、オルレアは男装で学校に通い、令嬢が趣味とする趣味をせず、剣を振るったり乗馬をしたりする。
 もし婚約者になったとしても、婚約破棄に持っていけると考えてのことだろう。

 そして、父も溺愛の娘には気に入った者と結婚してほしいと考えている。
 ゆえに、今のところこの道も潰していない。オルレアがクオ王子を好きになってしまう可能性を残しているからだ。
 俺には縁談話一つも持って来ないのに、オルレアには婚約者候補が数多くいる。
 父にとってはクオ王子に選ばれる側ではなく、オルレアが選ぶ側なのだ。


「今の時間は第三隊から第五隊と第三十から三十五隊あたりの訓練だよ」

 後ろから声が聞こえた。
 振り返るとクオ王子の親衛隊隊長キュジオがいた。

「親衛隊隊長がこんなところに来ていて良いんですか?」

「平民出の隊長は王城では肩身が狭くてねー。ここだとクオ王子の護衛当番の奪い合いが始まるから、ブラつくことができるのさ」

「、、、それは王子の安全上大丈夫なんですか?」

 キュジオ隊長が二ッと笑う。

「自分の出世を閉ざし、家の没落を願う貴族は数少ない。親衛隊の隊員数も多いから有効活用しないといけないところもあるんだ。ところでさー、王城で用意した護衛はどうしたんだ?バーレイ侯爵家の護衛も近くに見えないんだが?」

 キュジオ隊長の指摘に自分の周囲を見回す。
 この区画の見学席には俺しかいないなあ。
 あ、侍女も置いてきてしまった。オルレアの筆頭侍女のセイラが部屋で怒っていることだろう。
 けれど、オルレアも俺と同じ行動すると思わないか?

「お花を摘みにでも行っているのでは?」

「はは、王城の護衛がトイレかー。下剤でも入れられたかなー」

「、、、対象を一か所に集めるのは一番危険なのでは?」

 話を変えよう。
 この人は鋭い。何から俺がオルレアに扮しているオルトだとバレるかわからん。

「守りを固めるのは一番楽だが、犯人が内部にいる場合は危険かもなあ」

 内部犯。
 あり得る話だ。
 王城で働く者は身元が確かな者が多く、出入りの業者も選ばれたところを使用している、はずだ。
 けれど、これだけ数がいれば、成りすまされてもわからないし、国外からの客に関しては、連れて来る使用人の調査などできるはずもない。

「王城には自分の家が安全ではない令嬢だけを集めるべきだったのでは?」

「王家だってそうしたいと思っていたんじゃないか。けれど、そうなると集まるのは伯爵家令嬢が中心になる。噂が広がったとき、ヤッカミが集中しやすい」

 本当に貴族というのはいろいろと面倒だ。
 だからこそ、オルレアはこの位置におさまっているのだろう。
 貴族の令嬢が男装の麗人であれば、多少おかしなことをしても咎められない。もうすでにおかしなことをしているのだから。
 オルレアが男装を続けられるのは、バーレイ侯爵家だからだ。

 バーレイ侯爵家なら、最強の剣、最強の盾に憧れているのなら仕方ないかー、と周囲が諦めてくれる。
 家族に最強の剣、最強の盾がいるなら、自分もそうなりたいと。

 他の侯爵家や伯爵家以下なら、男装する令嬢など婚約の話がなくなるほどの話で、完全な奇行である。
 バーレイ侯爵家に憧れているんですっ、と主張して、責任転嫁するなと窘められるだけならまだマシ。
 その家も体調不良等を言い訳にして令嬢を一生表に出さず、閉じ込めてしまう案件になる。

 女性騎士は男装と言えるのかわからないが、男性と同じ制服だ。
 男性でも髪の長い者もいれば、女性でも髪が短い者もいる。男性と見紛う女性騎士も多々いる。

 だからといって、騎士になった女性も学生時代に男性の制服を着ていたかというとそんなわけがない。


「あらあら、クオ王子の親衛隊隊長と二人きりですか?男女が二人きりなんて、如何なものでしょう。オルレア様は侍女か護衛をつけるべきでは?」

 侍女を大勢引き連れて訓練場に現れたのはマーガレットだった。
 彼女に王家がつけた護衛は見えないところに隠れている。
 訓練場の周囲にある見学席はどこも空いているのだから、他の区域に行けばいいのにと思ってしまうのだが?こんなに広いのに。

「隊長にも苦言を呈されていたところです。護衛はどこにいるのかと」

 認めるところは認めないと。
 しかし、この青空、下には訓練している騎士たちが大勢いるのに、二人きりと言われてもピンとこないな。俺が男だからかなあ。女性目線で見ると、コレでも二人きりなのかな?
 いつも一人で行動していたから護衛とともに行動する習慣がないが、王城にいる間くらい一緒に歩いてもらわないといけないか。

 俺は守る側になる人間であり、自分が守られる立場になることは一生ありえない。
 それが最強の盾と呼ばれる者の役割。

 それでも、俺は今、オルレアの身代わりなのだから、護衛が常時いなければ怪しまれる。必要なくとも。

「本当にオルレア様は甘いですわっ。王城でも確実に安全とは言い切れませんのに」

「その通りですね。今もその話をしていたところです」

 マーガレットの言葉は耳に痛い。
 派手な貴族令嬢でも危険を感じているのならば、オルレアにも護衛がいないとおかしい。

「ほうほう、護衛が必要なのはオルレアも理解しているんだな」

「ああ、はい」

 キュジオ隊長が少し演技臭くなったぞ。

「ならば、王城にいる間は俺が直々に護衛してやろう」

「はああああー?」

 貴族令嬢にはあるまじき返事をしたのは、マーガレットだった。
 、、、何で?
 侍女か護衛が必要だって言ってたのは貴方では?

「何を言っているんですの?貴方はクオ王子の親衛隊隊長じゃないのっ」

「クオ王子も警備が厳重なこの王城に戻ったら、俺がつきまとわなくても平気なんで。執務室で書類と睨めっこしている殿下の後ろに突っ立っているだけなんて、暇で暇で俺じゃなくてもできますから」

 マーガレットは持っていた扇子をパチンとならす。

「、、、確かに貴方は動いていた方が能力を発揮できるようですわね」

 おお、さすがモルト公爵家。
 調べることはきちんと調べているようだ。

「で、す、が、オルレア様の護衛をなさりたいんでしたら、オルレア様に勝ってからにしてくださる?オルレア様より弱い方はお呼びでないですわっ」

 マーガレットが高らかに発言した。
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