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12章 蛇足なのか、後始末なのか
12-12 神域での役目 ◆クトフ視点◆
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◆クトフ視点◆
ゾーイがなかなか復活しないとしても、リアムが慰めていれば容易に元気になるのは目に見えている。
その一方は放置しておいて平気だろう。
「まあな、シロは元来独占欲の塊だ。お前らが許されているのは、シロのリアムに対する負い目だ」
「負い目?」
砦の守護獣様が?
「アイツはリアムが辛いときに放置しただろう。だから、リアムのシロに対する信頼度は低い。クロよりも低い」
あれ?クロ様より低いって相当なもんじゃないのか?
リアムはシロ様が好きなのに、シロ様に頼らないのはそういうことか。
リアムはどうでもよくないことは根に持つ。本人にとってどうでもいいことはあっさり忘れてくれるけど。
「リアムが辛いときって、リーメルさんが亡くなったときですか」
「ああ、リアムの考え方もおかしいっちゃおかしいが、シロが守れるのに母親を守らなかったというよりも、シロが自分のそばにいなかったことを恨みに思うってのも微妙だよな」
「その辺りは神獣様たちの方が人に近い考え方をお持ちかと。ただ、リアムの中ではしっかりと線引きされているんでしょうね。そばにいるとリアムに約束したシロ様が、本当にそばにいて欲しいときにいなかったのだから」
「それが人間らしくない。何でもかんでもすべてを恨むのが筋ってもんだ。だから、この大陸は黒く染まるんだけどな。リアムのように割り切ってくれていたら、そこまで魔物が蔓延らなかっただろうに」
カイは未来が見えているかのように話す。
実際、見えているのだろう、どうにもならない未来が。
そうでなければ、こんな辺境の地にまで宗教国の神獣が来るはずもない。
「しっかし、この地のシロとクロの眷属は全員生きているとは。S級以上の魔物に身を落としても、奥地でじっと耐え、シロとクロのために食料を作って砦に寄越しているとは健気なものだ」
「、、、それってレッドラインから向こうにいるS級以上の魔物は本来魔物ではなかったと?」
「ははっ、その通り。昔々は我々の眷属だった者たちだ。魔の海原の方は徐々に狂ってすでに大騒ぎした者が多い。我々に従っていた者を手にかけるのは忍びないが、牙を向けるなら致し方ない」
あー、それを神域化しなければならないのか、リアムは。
大変だなー。
おや、カイの目が俺を見た。
「神域化して眷属に戻るならば、彼らは役に立ってくれるはずだ。魔の大平原では家は建たないからな」
、、、その辺りは魔の大平原の原則のままなのか。
物を落としたら一日で消えてなくなる。
移動できない物もしかり。罠とかも一日で消え去る。
「ということは農産物も育たないと?」
神域化したら、魔物もいなくなる。
食料がなければ、人が暮らしていける環境じゃないな。
「だから、眷属が役に立ってくれる。それぞれ能力も違うから、神域化したら聞いて回れ」
おやーん?その役目、俺に回って来るんですかね?
D級冒険者の俺に奥地を回れと?
「神域化してからだ。今のアイツらじゃ話も聞かずに食うぞ」
でしょうね。
「お前がこの砦の食事係だからな。けど、そこら辺でちょろちょろしているお前の分身がいれば、今でもレッドライン辺り行っても平気だろうが」
「分身、」
リアムが作った俺のマスコットのことでしょうね。
小さい包丁の装備で魔物を倒して来るんだから尋常じゃない。
デカい魔物をズルズル引き摺って帰って来るよ。美味しい食材だよー、と言って。
冒険者たちには俺が変な目で見られているよ。
リアムがマスコット用のちっちゃい肩掛けの収納鞄を作った。
表情が変わらないのにマスコットが喜んでいた気がした。
コレで一匹ずつ持って帰らなくても済む、と。
あの小ささで大きい魔物五頭くらいは入るらしい。
俺が持っている収納鞄も空間魔法をかけ直してもらえたよ。
俺は孤児なので、自分の正確な誕生日がわからない。
なので、砦に入所した日が仮の誕生日になっている。
その誕生日プレゼントとして、リアムから包丁をもらったことがあるのだが。。。
まさかね?
「あの人形の小さい包丁であの威力だぞ。お前の包丁なら魔物をスパスパ切れるんじゃないか」
「魔物肉ならスパスパ切って料理してますけどね」
武器じゃないんですけどー。
切れ味抜群なんですけどー。
「いつかこの地は逆転する。街の方に魔物が溢れて、魔の大平原に魔物がいなくなる。冒険者は砦から街に向かって魔物を狩りに行くことになる」
「砦が拠点であることには変わらないんですね」
となると、今後は街側の方も壁を強固にしておかなければならないのか。
窓は鉄格子などで守られてはいない。
「街側の防御も充分だろ。冒険者ギルドの細目野郎がキッチリ対策していっている。この砦の窓ガラスは透明なだけで鉄よりも硬い。割れることはないし、割れても自動修復する。壁等もしかり」
あの人、砦に何をしていったんだか。
あの国の技術者や作業員の他にも連れて来ているとは思っていたよ。
リアムも知っていたんだろうな。ラーメン屋で釣られたんだから。
「俺たちはリィンが男爵位を息子に譲る頃にでも、この地に来る。俺たちについて来たいという宗教国の人間は連れて来る。魔の海原の周辺で俺が面倒見るが、海産物だけで生きていけるもんじゃない。塩や海産物等で物々交換していこうぜ」
「王族の者たちも来るんですか?」
「来たい者は来るだろう。けれど、リィツが正式な誓約者になったのだから、他の生贄はもういらない。こちらに移動するとともにあの国の王族も解散だ」
「ふむ、カイ様は一生リィツの尻に引かれる生活が待っているんですね」
「ふっ、ああ、その通りだ。それもまた楽しい生活だ」
カイは衣を翻して、バルコニーから去ろうとした。
「おおっと、これだけは言っておく。ゾーイはリアムとの約束を違えないから、リアムはシロ以上に執着する。お前とは違うんだから、妬くんじゃないぞー」
「、、、違う、ねえ。リアムが俺を必要とした理由はいったい何でしょうね」
ゾーイとシロ様がいれば充分な気がしなくもない。
カイは笑った。
「それは俺が言うことじゃないだろう」
それもそうですね。
「浮気?」
ヒンヤリとした空気が漂った。
壁から覗いているのは、リアムであった。
「はあっ?」
カイが不思議そうな声を上げる。
「楽しそうな声が聞こえたと思ったら、カイはクトフにまで手を出そうとしているのか?」
壁から半分出たリアムのジトーとした半目がカイを見ている。
「お前はけっこう話を聞いていただろっ。どう聞いたら、そんな疑いを持つんだっ」
おやおや、リアムはいつから聞いていたんだろう。
「俺にはテッキトーな説明しかしないのに、クトフには懇切丁寧な解説を」
「そりゃ、食が人間には一番大切な要素だからだ。俺についてくる国民を飢え死にや栄養失調にさせるわけにもいかねえだろ」
「そうやってクトフを口説き落としていくのかっ。お前にはクトフはやらんっ」
「お前の思考回路は本当にどうなっているんだ」
ため息を吐きながら、カイがバルコニーから去っていった。
「カイと二人だけで会ったら危険だよー。カイと会うときは誰か第三者でも、クトフマスコットでも良いからついて来てもらいなよー」
カイの何を危険視しているんだろう。カイにはリィツがいるんじゃないのか?
バルコニーの手すりからにゅっと小さい包丁が現れた。
「おっ、クトフマスコットいたのかー。カイがクトフに手を出そうとしたらブスッといっちゃってー」
「物騒な」
手すりに上がったマスコットも包丁を上にあげてリアムに賛成するな。
ゾーイがなかなか復活しないとしても、リアムが慰めていれば容易に元気になるのは目に見えている。
その一方は放置しておいて平気だろう。
「まあな、シロは元来独占欲の塊だ。お前らが許されているのは、シロのリアムに対する負い目だ」
「負い目?」
砦の守護獣様が?
「アイツはリアムが辛いときに放置しただろう。だから、リアムのシロに対する信頼度は低い。クロよりも低い」
あれ?クロ様より低いって相当なもんじゃないのか?
リアムはシロ様が好きなのに、シロ様に頼らないのはそういうことか。
リアムはどうでもよくないことは根に持つ。本人にとってどうでもいいことはあっさり忘れてくれるけど。
「リアムが辛いときって、リーメルさんが亡くなったときですか」
「ああ、リアムの考え方もおかしいっちゃおかしいが、シロが守れるのに母親を守らなかったというよりも、シロが自分のそばにいなかったことを恨みに思うってのも微妙だよな」
「その辺りは神獣様たちの方が人に近い考え方をお持ちかと。ただ、リアムの中ではしっかりと線引きされているんでしょうね。そばにいるとリアムに約束したシロ様が、本当にそばにいて欲しいときにいなかったのだから」
「それが人間らしくない。何でもかんでもすべてを恨むのが筋ってもんだ。だから、この大陸は黒く染まるんだけどな。リアムのように割り切ってくれていたら、そこまで魔物が蔓延らなかっただろうに」
カイは未来が見えているかのように話す。
実際、見えているのだろう、どうにもならない未来が。
そうでなければ、こんな辺境の地にまで宗教国の神獣が来るはずもない。
「しっかし、この地のシロとクロの眷属は全員生きているとは。S級以上の魔物に身を落としても、奥地でじっと耐え、シロとクロのために食料を作って砦に寄越しているとは健気なものだ」
「、、、それってレッドラインから向こうにいるS級以上の魔物は本来魔物ではなかったと?」
「ははっ、その通り。昔々は我々の眷属だった者たちだ。魔の海原の方は徐々に狂ってすでに大騒ぎした者が多い。我々に従っていた者を手にかけるのは忍びないが、牙を向けるなら致し方ない」
あー、それを神域化しなければならないのか、リアムは。
大変だなー。
おや、カイの目が俺を見た。
「神域化して眷属に戻るならば、彼らは役に立ってくれるはずだ。魔の大平原では家は建たないからな」
、、、その辺りは魔の大平原の原則のままなのか。
物を落としたら一日で消えてなくなる。
移動できない物もしかり。罠とかも一日で消え去る。
「ということは農産物も育たないと?」
神域化したら、魔物もいなくなる。
食料がなければ、人が暮らしていける環境じゃないな。
「だから、眷属が役に立ってくれる。それぞれ能力も違うから、神域化したら聞いて回れ」
おやーん?その役目、俺に回って来るんですかね?
D級冒険者の俺に奥地を回れと?
「神域化してからだ。今のアイツらじゃ話も聞かずに食うぞ」
でしょうね。
「お前がこの砦の食事係だからな。けど、そこら辺でちょろちょろしているお前の分身がいれば、今でもレッドライン辺り行っても平気だろうが」
「分身、」
リアムが作った俺のマスコットのことでしょうね。
小さい包丁の装備で魔物を倒して来るんだから尋常じゃない。
デカい魔物をズルズル引き摺って帰って来るよ。美味しい食材だよー、と言って。
冒険者たちには俺が変な目で見られているよ。
リアムがマスコット用のちっちゃい肩掛けの収納鞄を作った。
表情が変わらないのにマスコットが喜んでいた気がした。
コレで一匹ずつ持って帰らなくても済む、と。
あの小ささで大きい魔物五頭くらいは入るらしい。
俺が持っている収納鞄も空間魔法をかけ直してもらえたよ。
俺は孤児なので、自分の正確な誕生日がわからない。
なので、砦に入所した日が仮の誕生日になっている。
その誕生日プレゼントとして、リアムから包丁をもらったことがあるのだが。。。
まさかね?
「あの人形の小さい包丁であの威力だぞ。お前の包丁なら魔物をスパスパ切れるんじゃないか」
「魔物肉ならスパスパ切って料理してますけどね」
武器じゃないんですけどー。
切れ味抜群なんですけどー。
「いつかこの地は逆転する。街の方に魔物が溢れて、魔の大平原に魔物がいなくなる。冒険者は砦から街に向かって魔物を狩りに行くことになる」
「砦が拠点であることには変わらないんですね」
となると、今後は街側の方も壁を強固にしておかなければならないのか。
窓は鉄格子などで守られてはいない。
「街側の防御も充分だろ。冒険者ギルドの細目野郎がキッチリ対策していっている。この砦の窓ガラスは透明なだけで鉄よりも硬い。割れることはないし、割れても自動修復する。壁等もしかり」
あの人、砦に何をしていったんだか。
あの国の技術者や作業員の他にも連れて来ているとは思っていたよ。
リアムも知っていたんだろうな。ラーメン屋で釣られたんだから。
「俺たちはリィンが男爵位を息子に譲る頃にでも、この地に来る。俺たちについて来たいという宗教国の人間は連れて来る。魔の海原の周辺で俺が面倒見るが、海産物だけで生きていけるもんじゃない。塩や海産物等で物々交換していこうぜ」
「王族の者たちも来るんですか?」
「来たい者は来るだろう。けれど、リィツが正式な誓約者になったのだから、他の生贄はもういらない。こちらに移動するとともにあの国の王族も解散だ」
「ふむ、カイ様は一生リィツの尻に引かれる生活が待っているんですね」
「ふっ、ああ、その通りだ。それもまた楽しい生活だ」
カイは衣を翻して、バルコニーから去ろうとした。
「おおっと、これだけは言っておく。ゾーイはリアムとの約束を違えないから、リアムはシロ以上に執着する。お前とは違うんだから、妬くんじゃないぞー」
「、、、違う、ねえ。リアムが俺を必要とした理由はいったい何でしょうね」
ゾーイとシロ様がいれば充分な気がしなくもない。
カイは笑った。
「それは俺が言うことじゃないだろう」
それもそうですね。
「浮気?」
ヒンヤリとした空気が漂った。
壁から覗いているのは、リアムであった。
「はあっ?」
カイが不思議そうな声を上げる。
「楽しそうな声が聞こえたと思ったら、カイはクトフにまで手を出そうとしているのか?」
壁から半分出たリアムのジトーとした半目がカイを見ている。
「お前はけっこう話を聞いていただろっ。どう聞いたら、そんな疑いを持つんだっ」
おやおや、リアムはいつから聞いていたんだろう。
「俺にはテッキトーな説明しかしないのに、クトフには懇切丁寧な解説を」
「そりゃ、食が人間には一番大切な要素だからだ。俺についてくる国民を飢え死にや栄養失調にさせるわけにもいかねえだろ」
「そうやってクトフを口説き落としていくのかっ。お前にはクトフはやらんっ」
「お前の思考回路は本当にどうなっているんだ」
ため息を吐きながら、カイがバルコニーから去っていった。
「カイと二人だけで会ったら危険だよー。カイと会うときは誰か第三者でも、クトフマスコットでも良いからついて来てもらいなよー」
カイの何を危険視しているんだろう。カイにはリィツがいるんじゃないのか?
バルコニーの手すりからにゅっと小さい包丁が現れた。
「おっ、クトフマスコットいたのかー。カイがクトフに手を出そうとしたらブスッといっちゃってー」
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