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9章 お人形さんで遊びましょう
9-7 不穏な昼食の誘い ◆バージ視点◆
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◆バージ視点◆
「さあって、バージくん、お腹空いたねー。お昼だよー」
あえて言うが、リアムが私を昼食に誘ってくれたことはない。
同じ教室で講義を受けているのに、今でも一緒に寮の厨房に行こうとしてくれたことはないのだ。
私はいつも置いていかれる。
私が勝手にリアムの昼食の場に押し掛けて行っている状態だと言っても過言ではない。
ニコニコと笑顔のリアム。
いや、何かあるだろ。
ない方がおかしい笑顔だ。
バッと身を翻して教室外に逃げる。
「ゾーイ、逃げたぞ」
笑顔のままのリアムが普通の声で言った。
廊下に風が舞った。
攻撃魔法ではない。この校舎では攻撃魔法は使えないことになっている。そう、攻撃魔法は。。。
柔らかい風でふんわりとカラダが持ち上がった。
「バージ、馬鹿なことをするなあ。リアムから逃げられると本気で思っているのか?」
「うう、、、リアムの手下め。講義が終わってすぐに駆けつけるとは。。。」
優しい風でゾーイの元に引き寄せられる。
ゾーイにお姫様抱っこされてしまった。
くそっ、近くで見てもやっぱりイケメンだな。
「いや、俺がお前を捕まえないと、もっとヤバいことになる気がするのは俺だけか?」
リアムが手段を選ばないとどうなるか?
私はどうやって追い詰められるのか?
確かに怖いな。
たまに魔の森の魔物が可哀想になるときがあるくらいだから。
リアムが設置する魔法での数々の罠。つまり、魔法を無効化する魔物たちの特性を存分に発揮した罠である。
例えば、切った木々を魔法で支えておく。そこに魔法を無効化する魔物たちが通るとあら不思議、大木が薙ぎ倒され魔物が下敷きになる。絶命しなくとも、かなりのダメージを与えられる。
落とし穴もまたしかり。落とし穴の上の地面を魔法で支えておく。俺たちは駆け抜けられるが、魔法を無効化してしまう魔物が通ると穴に作った槍のような棘にぐっさりと突き刺さる。
「そんなことするわけないじゃないかー。バージには健やかに育ってほしいと思っているんだからさあ」
健やかに?育ってほしい?
普通に歩いて近寄ってきた笑顔のリアムの発言がわからん。
「まあ、さっさと場所を移そう」
場所は寮の厨房。
リアムが変な笑顔を浮かべなければ、普通に来ていたに違いない場所。
「ごっはん、ごっはん、リアムのオムライスー」
すでに砦の守護獣のクロ様が待っていた。
コロコロと卵を転がしている。
「今日はスペシャル魔物肉ステーキのせオムライスだっ」
「おおーっ」
と両手を上げてクロ様が喜んでいるが、クロ様はリアムの作った食事なら何でも喜ぶのだそうな。。。
つまり、このスペシャルなオムライスが用意されたわけは。
「はい、バージの分」
にっこりと笑うリアムが怖い。
笑顔のリアムって割と珍しい。
その笑顔も悪くはないのだが、普段を知っていると裏に何かあるだろ、としか思えない。
リアムは料理も素早い。
ステーキも包丁で食べやすいサイズに切っている。
すぐに次のオムライスにとりかかる。
リアムは出来上がった分から先に食べろというが。
もちろん、クロ様はすでに食べ始めているが。
うみゃうみゃと。
クロ様の姿は見ているだけなら和む。
「はい、ゾーイ」
突っ立っているとすぐに次が出来上がる。
「バージ、とりあえず食ったらどうだ?」
ゾーイがリアムの使っていた道具を洗っている。
そう言うゾーイはリアムの分が出来上がるのを待っている。
「はい、できた。食べるぞ」
リアムが第三食堂のテーブルに移ると、ゾーイも洗い物を中断する。
魔物肉は高価だ。日常的に食卓に並ぶのは上位貴族でも選ばれた家の者だけだろう。
うちは子爵家なので、魔物肉が出るのは祝いの席ぐらいだ。
しかも、この魔物肉は現時点では入手が困難な魔の大平原の魔物肉。
以前リアムは自分が狩っていた魔物肉を使っていたらしいが、今はクロ様が魔の大平原で討伐した魔物肉を使っている。
クロ様のお口には王都の魔の森の魔物は合わないということなのだが、王都で出る魔物肉は魔の森のものだ。
私も美味しいと思って王都で食べていた。
魔物肉は美味しい。
けれど、リアムが作る食事で上には上があることを知る。
魔の大平原の魔物肉は、魔の森の物より美味しい。
そういうことを知ることができる幸運は、子爵家では少ない。
「あのー、リアムさん、視線が痛いんですけどー」
グサグサと突き刺さっている。
頼みごとをするならしてくれ。
秋休みのことか?
それとも、試験か?卒業論文か?
はたまた?
「ごちそうさまー。今日も美味しかったよー、リアムー」
クロ様が食べ終わった。小さいサイズで先に食べ始めるので早い。
いつもなら食べ終わったら、くるりんと姿を消すのだが。。。
テーブルの上に座ったままちっちゃいおめめが私を見ている。
ニヨりんっ。
「バージは魔法学園卒業後、極西の砦に来る気ある?」
「それは、旅行とかで?」
「ないのかあ、残念だな」
リアムの判断が早くない?
私はまだ行くとも行かないとも言ってないんだけど。
リアムと違って、詳細な事情も聞かない内に判断できないんだけど。
じっとリアムが私を見ている。
リアムがこういう視線を他人に向けることは珍しい。
「リアム、何が言いたいんだ?」
リアムが思案顔だ。笑顔ではなくなった。
ゾーイは、、、普通にオムライス食ってるな。いや、魔物肉が美味いのはわかるけど。
「バージは呪術と聞いてどう思う?」
「急に言われても。。。今は絶えたもので、扱える者がいない。呪いというのは、犠牲がつきまとい割に合わない、とか」
「うん、そうだな。実際のところ、お前と俺は知り合って日が浅い。信頼度も俺の方が低いというのはわかっている。この時点で俺がこの発言をすることはバージに嫌われても仕方ないというのも覚悟の上だ。それでもなおバージには自分の意志で生きていてほしいと俺が願っているのはとりあえず知っていてほしい」
「へ?」
「お前は呪術に侵されている。今すぐにどうこうというわけではないが、そのままにしておくと操り人形になる日はそう遠くない」
リアムが言った。
荒唐無稽。
と私はリアムに言いたかった。一笑したかった。
なのに。
私はオムライスを食べる手を一時中断した。
「なぜ、そんなことを?」
私が聞くと、リアムは私の目を見た。
探る目をしている。
そして、見透かされている。
「テンガラット子爵家は知らないと思っていたのだが、、、」
リアムは腕を組んで椅子の背もたれに体重をかけた。
ゾーイが肉を食べながら私を見る。
「お?そうなのか?」
「バージは心当たりがある顔をしている」
リアムの洞察力は本当に怖い。
私が何か嘘をついても、すぐにバレるような気がする。
操り人形。
その言葉に反応してしまった。
幼い頃から、彼女は彼女の姿を模した人形を持っていた。
幼い彼女が人形を抱えている姿は可愛かった。
秋休み前にこの王都に来た彼女は私を模した人形も持っていた。
私の特徴をとらえながらも、見た目は可愛らしい人形だ。
彼女の人形と一緒に抱えている姿は、微笑ましいと感じるだけのものだったのに。
それなのに、その見た目とは裏腹に、両親も私もその人形に禍々しいものを感じていた。
幼い頃からの婚約者が作った人形だが、薄ら寒いものが漂っている。
彼女の人形と私の人形は何が違うのか。
父が彼女を婚約者として紹介した伯爵家に問い合わせているが、答えはもらえていない。
「どうやら情報の擦り合わせが必要だ。どうせマックレー侯爵もすべての情報を俺に渡しているわけではないだろう。最善は何かを考えよう」
「マックレー侯爵?」
「うちの父がお前の婚約者が呪術系の一族だと知らせてくれた。その家が出している報告書ではすでに呪術を扱える者はいないということだったが、お前の婚約者は使えるようだ。テンガラット子爵家は間に伯爵家を挟んでいるが、クインザー侯爵家の傘下だ。父も表立って対立はしたくないが、クインザー侯爵の力は削いでおきたいところなのだろう」
「今の侯爵家勢力図はハーラット侯爵の次はクインザー侯爵だからなあ。貴族ってホントに面倒だな」
そう言うリアムこそ貴族なのだが。
しかも、メルクイーン男爵家はこのクジョー王国の貴族で別格に位置している。
「そして、その思惑にはすでにハーラット侯爵も一枚噛んでいる。バージと婚約解消した後はその婚約者に魔法研究所の研究員の席を用意している」
「つまり、国は呪術系の技術も研究を続けるということか」
「本当に全世界からなくなれば良いのだが、どこかでその技術が生きているとすれば、知らなければ国は対策もできない。ただ、研究にはかなりの監視がつくだろう」
魔法研究所の研究員というのは実質、管理監督しやすくするための職だということだ。
かなりの自由が制限される。
「バージ、幼い頃からのつきあいの婚約者殿に愛情を持っているのはわかる。出会って一年にも満たない俺の言葉が信じられないのもわかる。が、バージの意志がなくなるのは俺は黙って見てられない」
ほんの少し胸に温かいものが広がる。
私は友人宣言しているが、リアムはどうだろうと思っていた。
リアムが私の意志がなくなるのを阻止するために動いてくれているのがわかる。
「、、、さっきからリアムの話を聞いていると、私が婚約者を優先させるように聞こえるんだけど?」
「、、、え?」
リアムが呆けた顔になった。
確かに婚約者アンナとは長年の付き合いであるが、やはり家同士の付き合いだからだ。
恋愛感情がそこにあるかというと、同じ年齢だが可愛い妹という範囲の感情であるのは否めない。
彼女は人形をいつも抱いているし、容姿、行動ともに幼い気がしてならないのだ。
領地の屋敷では頻繁に会うが、彼女と会わなくて良い王都で過ごす冬は毎年、ほんの少しホッとしている自分がいた。
「ああ、そうか、バージが優先させるのはテンガラット子爵家か。不都合が大きければ婚約解消も検討に入れるのか」
うん、リアムには誠心誠意言葉を尽くさないと伝わらないということが良くわかった。
「さあって、バージくん、お腹空いたねー。お昼だよー」
あえて言うが、リアムが私を昼食に誘ってくれたことはない。
同じ教室で講義を受けているのに、今でも一緒に寮の厨房に行こうとしてくれたことはないのだ。
私はいつも置いていかれる。
私が勝手にリアムの昼食の場に押し掛けて行っている状態だと言っても過言ではない。
ニコニコと笑顔のリアム。
いや、何かあるだろ。
ない方がおかしい笑顔だ。
バッと身を翻して教室外に逃げる。
「ゾーイ、逃げたぞ」
笑顔のままのリアムが普通の声で言った。
廊下に風が舞った。
攻撃魔法ではない。この校舎では攻撃魔法は使えないことになっている。そう、攻撃魔法は。。。
柔らかい風でふんわりとカラダが持ち上がった。
「バージ、馬鹿なことをするなあ。リアムから逃げられると本気で思っているのか?」
「うう、、、リアムの手下め。講義が終わってすぐに駆けつけるとは。。。」
優しい風でゾーイの元に引き寄せられる。
ゾーイにお姫様抱っこされてしまった。
くそっ、近くで見てもやっぱりイケメンだな。
「いや、俺がお前を捕まえないと、もっとヤバいことになる気がするのは俺だけか?」
リアムが手段を選ばないとどうなるか?
私はどうやって追い詰められるのか?
確かに怖いな。
たまに魔の森の魔物が可哀想になるときがあるくらいだから。
リアムが設置する魔法での数々の罠。つまり、魔法を無効化する魔物たちの特性を存分に発揮した罠である。
例えば、切った木々を魔法で支えておく。そこに魔法を無効化する魔物たちが通るとあら不思議、大木が薙ぎ倒され魔物が下敷きになる。絶命しなくとも、かなりのダメージを与えられる。
落とし穴もまたしかり。落とし穴の上の地面を魔法で支えておく。俺たちは駆け抜けられるが、魔法を無効化してしまう魔物が通ると穴に作った槍のような棘にぐっさりと突き刺さる。
「そんなことするわけないじゃないかー。バージには健やかに育ってほしいと思っているんだからさあ」
健やかに?育ってほしい?
普通に歩いて近寄ってきた笑顔のリアムの発言がわからん。
「まあ、さっさと場所を移そう」
場所は寮の厨房。
リアムが変な笑顔を浮かべなければ、普通に来ていたに違いない場所。
「ごっはん、ごっはん、リアムのオムライスー」
すでに砦の守護獣のクロ様が待っていた。
コロコロと卵を転がしている。
「今日はスペシャル魔物肉ステーキのせオムライスだっ」
「おおーっ」
と両手を上げてクロ様が喜んでいるが、クロ様はリアムの作った食事なら何でも喜ぶのだそうな。。。
つまり、このスペシャルなオムライスが用意されたわけは。
「はい、バージの分」
にっこりと笑うリアムが怖い。
笑顔のリアムって割と珍しい。
その笑顔も悪くはないのだが、普段を知っていると裏に何かあるだろ、としか思えない。
リアムは料理も素早い。
ステーキも包丁で食べやすいサイズに切っている。
すぐに次のオムライスにとりかかる。
リアムは出来上がった分から先に食べろというが。
もちろん、クロ様はすでに食べ始めているが。
うみゃうみゃと。
クロ様の姿は見ているだけなら和む。
「はい、ゾーイ」
突っ立っているとすぐに次が出来上がる。
「バージ、とりあえず食ったらどうだ?」
ゾーイがリアムの使っていた道具を洗っている。
そう言うゾーイはリアムの分が出来上がるのを待っている。
「はい、できた。食べるぞ」
リアムが第三食堂のテーブルに移ると、ゾーイも洗い物を中断する。
魔物肉は高価だ。日常的に食卓に並ぶのは上位貴族でも選ばれた家の者だけだろう。
うちは子爵家なので、魔物肉が出るのは祝いの席ぐらいだ。
しかも、この魔物肉は現時点では入手が困難な魔の大平原の魔物肉。
以前リアムは自分が狩っていた魔物肉を使っていたらしいが、今はクロ様が魔の大平原で討伐した魔物肉を使っている。
クロ様のお口には王都の魔の森の魔物は合わないということなのだが、王都で出る魔物肉は魔の森のものだ。
私も美味しいと思って王都で食べていた。
魔物肉は美味しい。
けれど、リアムが作る食事で上には上があることを知る。
魔の大平原の魔物肉は、魔の森の物より美味しい。
そういうことを知ることができる幸運は、子爵家では少ない。
「あのー、リアムさん、視線が痛いんですけどー」
グサグサと突き刺さっている。
頼みごとをするならしてくれ。
秋休みのことか?
それとも、試験か?卒業論文か?
はたまた?
「ごちそうさまー。今日も美味しかったよー、リアムー」
クロ様が食べ終わった。小さいサイズで先に食べ始めるので早い。
いつもなら食べ終わったら、くるりんと姿を消すのだが。。。
テーブルの上に座ったままちっちゃいおめめが私を見ている。
ニヨりんっ。
「バージは魔法学園卒業後、極西の砦に来る気ある?」
「それは、旅行とかで?」
「ないのかあ、残念だな」
リアムの判断が早くない?
私はまだ行くとも行かないとも言ってないんだけど。
リアムと違って、詳細な事情も聞かない内に判断できないんだけど。
じっとリアムが私を見ている。
リアムがこういう視線を他人に向けることは珍しい。
「リアム、何が言いたいんだ?」
リアムが思案顔だ。笑顔ではなくなった。
ゾーイは、、、普通にオムライス食ってるな。いや、魔物肉が美味いのはわかるけど。
「バージは呪術と聞いてどう思う?」
「急に言われても。。。今は絶えたもので、扱える者がいない。呪いというのは、犠牲がつきまとい割に合わない、とか」
「うん、そうだな。実際のところ、お前と俺は知り合って日が浅い。信頼度も俺の方が低いというのはわかっている。この時点で俺がこの発言をすることはバージに嫌われても仕方ないというのも覚悟の上だ。それでもなおバージには自分の意志で生きていてほしいと俺が願っているのはとりあえず知っていてほしい」
「へ?」
「お前は呪術に侵されている。今すぐにどうこうというわけではないが、そのままにしておくと操り人形になる日はそう遠くない」
リアムが言った。
荒唐無稽。
と私はリアムに言いたかった。一笑したかった。
なのに。
私はオムライスを食べる手を一時中断した。
「なぜ、そんなことを?」
私が聞くと、リアムは私の目を見た。
探る目をしている。
そして、見透かされている。
「テンガラット子爵家は知らないと思っていたのだが、、、」
リアムは腕を組んで椅子の背もたれに体重をかけた。
ゾーイが肉を食べながら私を見る。
「お?そうなのか?」
「バージは心当たりがある顔をしている」
リアムの洞察力は本当に怖い。
私が何か嘘をついても、すぐにバレるような気がする。
操り人形。
その言葉に反応してしまった。
幼い頃から、彼女は彼女の姿を模した人形を持っていた。
幼い彼女が人形を抱えている姿は可愛かった。
秋休み前にこの王都に来た彼女は私を模した人形も持っていた。
私の特徴をとらえながらも、見た目は可愛らしい人形だ。
彼女の人形と一緒に抱えている姿は、微笑ましいと感じるだけのものだったのに。
それなのに、その見た目とは裏腹に、両親も私もその人形に禍々しいものを感じていた。
幼い頃からの婚約者が作った人形だが、薄ら寒いものが漂っている。
彼女の人形と私の人形は何が違うのか。
父が彼女を婚約者として紹介した伯爵家に問い合わせているが、答えはもらえていない。
「どうやら情報の擦り合わせが必要だ。どうせマックレー侯爵もすべての情報を俺に渡しているわけではないだろう。最善は何かを考えよう」
「マックレー侯爵?」
「うちの父がお前の婚約者が呪術系の一族だと知らせてくれた。その家が出している報告書ではすでに呪術を扱える者はいないということだったが、お前の婚約者は使えるようだ。テンガラット子爵家は間に伯爵家を挟んでいるが、クインザー侯爵家の傘下だ。父も表立って対立はしたくないが、クインザー侯爵の力は削いでおきたいところなのだろう」
「今の侯爵家勢力図はハーラット侯爵の次はクインザー侯爵だからなあ。貴族ってホントに面倒だな」
そう言うリアムこそ貴族なのだが。
しかも、メルクイーン男爵家はこのクジョー王国の貴族で別格に位置している。
「そして、その思惑にはすでにハーラット侯爵も一枚噛んでいる。バージと婚約解消した後はその婚約者に魔法研究所の研究員の席を用意している」
「つまり、国は呪術系の技術も研究を続けるということか」
「本当に全世界からなくなれば良いのだが、どこかでその技術が生きているとすれば、知らなければ国は対策もできない。ただ、研究にはかなりの監視がつくだろう」
魔法研究所の研究員というのは実質、管理監督しやすくするための職だということだ。
かなりの自由が制限される。
「バージ、幼い頃からのつきあいの婚約者殿に愛情を持っているのはわかる。出会って一年にも満たない俺の言葉が信じられないのもわかる。が、バージの意志がなくなるのは俺は黙って見てられない」
ほんの少し胸に温かいものが広がる。
私は友人宣言しているが、リアムはどうだろうと思っていた。
リアムが私の意志がなくなるのを阻止するために動いてくれているのがわかる。
「、、、さっきからリアムの話を聞いていると、私が婚約者を優先させるように聞こえるんだけど?」
「、、、え?」
リアムが呆けた顔になった。
確かに婚約者アンナとは長年の付き合いであるが、やはり家同士の付き合いだからだ。
恋愛感情がそこにあるかというと、同じ年齢だが可愛い妹という範囲の感情であるのは否めない。
彼女は人形をいつも抱いているし、容姿、行動ともに幼い気がしてならないのだ。
領地の屋敷では頻繁に会うが、彼女と会わなくて良い王都で過ごす冬は毎年、ほんの少しホッとしている自分がいた。
「ああ、そうか、バージが優先させるのはテンガラット子爵家か。不都合が大きければ婚約解消も検討に入れるのか」
うん、リアムには誠心誠意言葉を尽くさないと伝わらないということが良くわかった。
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