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20章 緩やかに侵食する黒
20-1 親睦
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王子が学園に行き始めた。
ククーの愛馬がこちらに来ているので、馬車にて使用人たちの一人に御者になってもらって王子を送ってもらう。
俺が馬車で送っていっても良いんだけど、全力でとめられた。
王子は王子なのでうまくやっているようだ。あんな可愛い子をイジメる奴がいたら、、、アレか?好きな子ほどイジメてしまうって奴なのか?そいつを見てしめるなり屠るなり個別に対応しよう。
従魔の角ウサギたちはタレタ以外の三匹は、王子の護衛に行っている。わからないように学園内のどこかで見張っている。学園の庭がこの頃いつのまにかキレイになっているとの噂があるが。。。
「レン、お前、暇なのか?」
料理長の目が日増しに厳しくなってないか?
台所に居座る俺。そう見られてもおかしくない。
前の家のように、ヴィンセントと王子が家にいないからなー。料理を作らなくとも、台所が俺の憩いの場。
「ククーも今日は大神官長に呼ばれたしぃ、そういう日は勝手に聖都を出歩くなと言われているしぃ」
と言ったら、台所にいた角ウサギ三匹の目が光った。彼らはダンジョンコアの角ウサギ。面白いから、料理長に料理を教わりに来ている。だいたいはその日のメニューの作り方を教わりながら手伝っている。技術をしっかり盗んでね。
料理長も毎日来る熱心な角ウサギ一匹と、日々変わる角ウサギの多少の判別はできているようだ。
タレタは俺の横でのんびりとしている。仕事をしていないときは、台所か庭にいる。すぐそばに食料がある場所を好んでいる。
≪では、我が王、今日はダンジョンに?≫
期待を込めた目で見られる。この頃、ダンジョンコアの角ウサギたちもタレタの光の文字を覚えた。俺やククーは特に文字が出なくても意志疎通できるし、王子もなんとなく汲み取ってくれるが、他の人間はさっぱりわからないことに気づいた。メモに書いていると、時間的なロスが大きい。とりあえず、俺以外の人間がいるときは彼らも光の文字を空間に浮かべることにしたようだ。じゃないと、俺がまるで角ウサギに独り言を話しているかのように見えてしまう。。。知らない人が見たら怖いよね。
「うーん、ククーもいないし、どうしようかなー」
≪お酒の泉で飲むとか≫
「ククーいないしなー」
≪温泉に浸かるとか≫
「ククーいないしなー」
≪薬草畑でピクニックとか≫
「ククーいないしなー」
≪何もない階層で爆裂魔術の練習とか≫
「この頃は清掃の魔術しか練習してないけど?」
爆裂魔術って何だ?俺、そんな練習したことないぞ。
「お前がダンジョンに行く原動力は全部ククーかっ。どんどんしょげてくるコイツらを見て可哀想とか思わないのか。ていうか、お前のダンジョン楽しそうだなっ」
料理長が叫んだ。
タレタがほっそい目で料理長を見た。瞼を開けるのでさえ億劫なの?
≪料理長が主のダンジョンに行きたいって叫んだわよ?≫
「あー、タレタにもそう聞こえたかー」
「え?」
料理長が俺を見る。
俺がパンパンと手を叩く。
「十六号、一名様ダンジョンツアーご案内ー」
≪待ってましたーーーっ。お客様ーっ、こちらへどうぞー≫
急に台所の扉を開ける角ウサギ十六号。十六号がダンジョンの案内役に定着した。角ウサギマークが描かれている小さい旗を手に持っている。
「い、言ってない。そんなことは一言も」
「往生際が悪いなー、料理長」
ガシッ。俺が料理長を捕まえた音だ。
「昼食がまだできてないっ」
「後は煮込むだけだろー。お前たち、しっかり火を見ているんだぞ。昼食時には使用人の皆に出してやれ」
≪はいっ、我が王っ≫
角ウサギ三匹が元気な返事をした。
ヴィンセントとククーは教会だし、王子もお昼は学園だ。
「旦那様より先にレンのダンジョンに行ったと知られたら、殺されるっ」
「殺されない、殺させない。じゃあ、行こう」
ふふ、まだコイツの旦那様はノーレンさんなんだな。世の中、咄嗟のときに口に出る言葉こそ真実だ。
美味しい料理を作ってくれるうちの料理長をノーレンさんに殺させるわけもないじゃないかー。
≪いってらっしゃいませー≫
「たーすーけーてー」
ずるずるずる。
面白いことが好きなタレタもついて来る。
十六号も先程の会話を見ていたようで、酒の泉から案内していた。
料理長のダンジョンツアーの感想。
絶対に聖都の屋敷では清掃の魔術を使うな。
おや?
ノエル家から来た使用人は生活魔術を使うのが上手い。
魔力が高いというノエル家は、使用人も魔術に長けているのか。
「レン様、何か御用ですか?」
サクサクと一部屋一部屋、清掃魔術をかけている。ベッドが使用された部屋はシーツも風魔術で回収している。洗濯物も籠に回収。
見ていると俺にも使えそうな気がしてくるんだけど。
「うーん、どうやったらそんな風に清掃魔術がうまく使えるんだろうと思って、観察」
「ノエル家は兄弟姉妹が多いので、素早くやらないとカオスになるためですかね」
カオス。。。そこまで酷いの?ノエル家。兄弟姉妹が成長した今はある程度落ち着いていると。うん、反対に魔術込みの大喧嘩になった場合はさらにヤバくなったと?
「素早くね」
素早くやってみた。
風がそよそよ気持ちいいねえ。
「あ、復元」
「な、な、な、、、、レン様っ、今、三階がっ、なくなりっ、えっ」
動転させてしまった。
辺りを見回している。
復元魔法をかけたのですでに元通りなのだが。屋敷に状態保存の魔法をかけておいて良かった。復元も簡単だ。すっかり元通りー。
階下からものすごい勢いで階段を駆け上ってくる音がする。
「レンっ、今の爆音は何だっ」
料理長だった。頭にタレタがのっている。移動が面倒だからといって、人の頭を移動手段にするな。強面の料理長の顔ですら相乗効果で可愛く見えてしまう。ので、今度、料理長の頭の上にのったまま、市場への買い物に付き合ってごらん。面白いから。タレタが目で了承した。
「いやー、何も」
「何もないわけがないだろっ。清掃魔術だな?そうだな?あれだけこっちの屋敷では使うなって念押ししたのにっ」
「はははー、使うわけないだろー。何も変わってないじゃないかー」
「レン、ちゃんと目を見て話せっ。じゃあ、何でコイツはこんなに狼狽えているっ」
この屋敷も賑やかだなー。
王子が学校に行ったら静かになると思っていたのに。
ヴィンセントは毎日連れ去られていくし、ククーは外せない仕事のときは教会に行く。
あ、ククーが白い目で俺を見ているー。大神官長の仕事をしているのだから、そっちに集中しろよ。こんなところはギフトで見てなくても良いよー。
一等地の屋敷には、基本的には業者が品物を届ける。食料品なんてその最たるものだ。他の屋敷は抱えている使用人の数も多いから日々の食料だけでも相当な量になる。うちも料理長が信頼できる業者に頼んで購入しているようだが、料理長はたまに市場にも行く。
一等地の屋敷にはある程度の品質のいいものが届く。そうしないとその業者自体存続が怪しくなるからな。ただ、料理人たちは毎日ではないが市場に顔を出す。やはり良い食材は自分の目で選びたいのと、市場には新鮮なものや目新しいもの等が並ぶ。
うちの料理長も収納鞄を持たせているので、大量の食材も大量購入できてしまう。うちには八人しかいませんけど、いつもお腹を空かせている角ウサギたちがいるから。。。
「ん?何か今日はいつもよりサービスがいいな?」
「うちのサービスがいいのはいつもじゃないか」
市場の八百屋の店主がニコニコと対応する。
箱に野菜を詰めてもらうと、お金を支払う。
「そうか?」
品質がいい、必要な種類もある程度揃っており、値段がお手頃、料理人たちがそれぞれ贔屓にするお店というのは市場に通い慣れてくるとだいたい決まってくる。
料理長は箱の中を見て、やはりいつもより多い気がすると思いながらも収納鞄に入れる。
料理長は次の店に足を向ける。
タレタが料理長の頭から降り、八百屋の店主に声を掛ける。
料理長は気づいてもいない。タレタは重さを感じさせない魔法を使っており、料理長はタレタが頭にのって市場に来ていることさえ知らない。
市場の人間は皆、微笑ましく料理長とタレタを見ているのだが。
≪ねえ、ねえ、この野菜の切れ端、捨てるのー?捨てるなら頂戴ー?≫
横にヘタやら汚い葉やらをまとめた箱がある。
「お?おお、いいぞ。そんなものでいいのなら」
タレタは箱を持つとザラザラと口の中に放り込む。モッシャモシャ。良い食べっぷり。
≪ありがとー、店主さん≫
「よしっ、おまけにこのキャベツもやろう。みずみずしいぞ」
タレタが珍しく瞼を開けて、円らな瞳を見せた。キラキラー。ものすごく喜んでいる。
タレタより一回り小さいくらいのキャベツだ。普通はどこの胃袋に入るの?って思うサイズだ。
キャベツをかじりつく。五口で食べ終わったが、この新鮮でツヤツヤなキャベツを一口で丸のみにするのはもったいないから、これでもタレタは味わったのだ。
≪おいっしー、良い味してるわー。最高よー、店主さんー≫
「そうかい、ありがとよ。また来てくれ」
タレタは料理長を追いかける。
それを周囲から見守っていた客が店主に寄ってきた。
「あのキャベツを一箱くれ」
「はいよっ、って一箱っ?一個じゃなくてっ?」
「あ、うちも一箱、いや二箱だっ」
「じゃあ、こっちは」
この店からキャベツが一瞬にして消えていった。
ちなみにこの店は市場に店があるが、業者相手というより個人相手の店だ。そうそう一箱単位で買っていく客はいない。
うちのタレタの円らな瞳宣伝は恐ろしいなー。
ククーの愛馬がこちらに来ているので、馬車にて使用人たちの一人に御者になってもらって王子を送ってもらう。
俺が馬車で送っていっても良いんだけど、全力でとめられた。
王子は王子なのでうまくやっているようだ。あんな可愛い子をイジメる奴がいたら、、、アレか?好きな子ほどイジメてしまうって奴なのか?そいつを見てしめるなり屠るなり個別に対応しよう。
従魔の角ウサギたちはタレタ以外の三匹は、王子の護衛に行っている。わからないように学園内のどこかで見張っている。学園の庭がこの頃いつのまにかキレイになっているとの噂があるが。。。
「レン、お前、暇なのか?」
料理長の目が日増しに厳しくなってないか?
台所に居座る俺。そう見られてもおかしくない。
前の家のように、ヴィンセントと王子が家にいないからなー。料理を作らなくとも、台所が俺の憩いの場。
「ククーも今日は大神官長に呼ばれたしぃ、そういう日は勝手に聖都を出歩くなと言われているしぃ」
と言ったら、台所にいた角ウサギ三匹の目が光った。彼らはダンジョンコアの角ウサギ。面白いから、料理長に料理を教わりに来ている。だいたいはその日のメニューの作り方を教わりながら手伝っている。技術をしっかり盗んでね。
料理長も毎日来る熱心な角ウサギ一匹と、日々変わる角ウサギの多少の判別はできているようだ。
タレタは俺の横でのんびりとしている。仕事をしていないときは、台所か庭にいる。すぐそばに食料がある場所を好んでいる。
≪では、我が王、今日はダンジョンに?≫
期待を込めた目で見られる。この頃、ダンジョンコアの角ウサギたちもタレタの光の文字を覚えた。俺やククーは特に文字が出なくても意志疎通できるし、王子もなんとなく汲み取ってくれるが、他の人間はさっぱりわからないことに気づいた。メモに書いていると、時間的なロスが大きい。とりあえず、俺以外の人間がいるときは彼らも光の文字を空間に浮かべることにしたようだ。じゃないと、俺がまるで角ウサギに独り言を話しているかのように見えてしまう。。。知らない人が見たら怖いよね。
「うーん、ククーもいないし、どうしようかなー」
≪お酒の泉で飲むとか≫
「ククーいないしなー」
≪温泉に浸かるとか≫
「ククーいないしなー」
≪薬草畑でピクニックとか≫
「ククーいないしなー」
≪何もない階層で爆裂魔術の練習とか≫
「この頃は清掃の魔術しか練習してないけど?」
爆裂魔術って何だ?俺、そんな練習したことないぞ。
「お前がダンジョンに行く原動力は全部ククーかっ。どんどんしょげてくるコイツらを見て可哀想とか思わないのか。ていうか、お前のダンジョン楽しそうだなっ」
料理長が叫んだ。
タレタがほっそい目で料理長を見た。瞼を開けるのでさえ億劫なの?
≪料理長が主のダンジョンに行きたいって叫んだわよ?≫
「あー、タレタにもそう聞こえたかー」
「え?」
料理長が俺を見る。
俺がパンパンと手を叩く。
「十六号、一名様ダンジョンツアーご案内ー」
≪待ってましたーーーっ。お客様ーっ、こちらへどうぞー≫
急に台所の扉を開ける角ウサギ十六号。十六号がダンジョンの案内役に定着した。角ウサギマークが描かれている小さい旗を手に持っている。
「い、言ってない。そんなことは一言も」
「往生際が悪いなー、料理長」
ガシッ。俺が料理長を捕まえた音だ。
「昼食がまだできてないっ」
「後は煮込むだけだろー。お前たち、しっかり火を見ているんだぞ。昼食時には使用人の皆に出してやれ」
≪はいっ、我が王っ≫
角ウサギ三匹が元気な返事をした。
ヴィンセントとククーは教会だし、王子もお昼は学園だ。
「旦那様より先にレンのダンジョンに行ったと知られたら、殺されるっ」
「殺されない、殺させない。じゃあ、行こう」
ふふ、まだコイツの旦那様はノーレンさんなんだな。世の中、咄嗟のときに口に出る言葉こそ真実だ。
美味しい料理を作ってくれるうちの料理長をノーレンさんに殺させるわけもないじゃないかー。
≪いってらっしゃいませー≫
「たーすーけーてー」
ずるずるずる。
面白いことが好きなタレタもついて来る。
十六号も先程の会話を見ていたようで、酒の泉から案内していた。
料理長のダンジョンツアーの感想。
絶対に聖都の屋敷では清掃の魔術を使うな。
おや?
ノエル家から来た使用人は生活魔術を使うのが上手い。
魔力が高いというノエル家は、使用人も魔術に長けているのか。
「レン様、何か御用ですか?」
サクサクと一部屋一部屋、清掃魔術をかけている。ベッドが使用された部屋はシーツも風魔術で回収している。洗濯物も籠に回収。
見ていると俺にも使えそうな気がしてくるんだけど。
「うーん、どうやったらそんな風に清掃魔術がうまく使えるんだろうと思って、観察」
「ノエル家は兄弟姉妹が多いので、素早くやらないとカオスになるためですかね」
カオス。。。そこまで酷いの?ノエル家。兄弟姉妹が成長した今はある程度落ち着いていると。うん、反対に魔術込みの大喧嘩になった場合はさらにヤバくなったと?
「素早くね」
素早くやってみた。
風がそよそよ気持ちいいねえ。
「あ、復元」
「な、な、な、、、、レン様っ、今、三階がっ、なくなりっ、えっ」
動転させてしまった。
辺りを見回している。
復元魔法をかけたのですでに元通りなのだが。屋敷に状態保存の魔法をかけておいて良かった。復元も簡単だ。すっかり元通りー。
階下からものすごい勢いで階段を駆け上ってくる音がする。
「レンっ、今の爆音は何だっ」
料理長だった。頭にタレタがのっている。移動が面倒だからといって、人の頭を移動手段にするな。強面の料理長の顔ですら相乗効果で可愛く見えてしまう。ので、今度、料理長の頭の上にのったまま、市場への買い物に付き合ってごらん。面白いから。タレタが目で了承した。
「いやー、何も」
「何もないわけがないだろっ。清掃魔術だな?そうだな?あれだけこっちの屋敷では使うなって念押ししたのにっ」
「はははー、使うわけないだろー。何も変わってないじゃないかー」
「レン、ちゃんと目を見て話せっ。じゃあ、何でコイツはこんなに狼狽えているっ」
この屋敷も賑やかだなー。
王子が学校に行ったら静かになると思っていたのに。
ヴィンセントは毎日連れ去られていくし、ククーは外せない仕事のときは教会に行く。
あ、ククーが白い目で俺を見ているー。大神官長の仕事をしているのだから、そっちに集中しろよ。こんなところはギフトで見てなくても良いよー。
一等地の屋敷には、基本的には業者が品物を届ける。食料品なんてその最たるものだ。他の屋敷は抱えている使用人の数も多いから日々の食料だけでも相当な量になる。うちも料理長が信頼できる業者に頼んで購入しているようだが、料理長はたまに市場にも行く。
一等地の屋敷にはある程度の品質のいいものが届く。そうしないとその業者自体存続が怪しくなるからな。ただ、料理人たちは毎日ではないが市場に顔を出す。やはり良い食材は自分の目で選びたいのと、市場には新鮮なものや目新しいもの等が並ぶ。
うちの料理長も収納鞄を持たせているので、大量の食材も大量購入できてしまう。うちには八人しかいませんけど、いつもお腹を空かせている角ウサギたちがいるから。。。
「ん?何か今日はいつもよりサービスがいいな?」
「うちのサービスがいいのはいつもじゃないか」
市場の八百屋の店主がニコニコと対応する。
箱に野菜を詰めてもらうと、お金を支払う。
「そうか?」
品質がいい、必要な種類もある程度揃っており、値段がお手頃、料理人たちがそれぞれ贔屓にするお店というのは市場に通い慣れてくるとだいたい決まってくる。
料理長は箱の中を見て、やはりいつもより多い気がすると思いながらも収納鞄に入れる。
料理長は次の店に足を向ける。
タレタが料理長の頭から降り、八百屋の店主に声を掛ける。
料理長は気づいてもいない。タレタは重さを感じさせない魔法を使っており、料理長はタレタが頭にのって市場に来ていることさえ知らない。
市場の人間は皆、微笑ましく料理長とタレタを見ているのだが。
≪ねえ、ねえ、この野菜の切れ端、捨てるのー?捨てるなら頂戴ー?≫
横にヘタやら汚い葉やらをまとめた箱がある。
「お?おお、いいぞ。そんなものでいいのなら」
タレタは箱を持つとザラザラと口の中に放り込む。モッシャモシャ。良い食べっぷり。
≪ありがとー、店主さん≫
「よしっ、おまけにこのキャベツもやろう。みずみずしいぞ」
タレタが珍しく瞼を開けて、円らな瞳を見せた。キラキラー。ものすごく喜んでいる。
タレタより一回り小さいくらいのキャベツだ。普通はどこの胃袋に入るの?って思うサイズだ。
キャベツをかじりつく。五口で食べ終わったが、この新鮮でツヤツヤなキャベツを一口で丸のみにするのはもったいないから、これでもタレタは味わったのだ。
≪おいっしー、良い味してるわー。最高よー、店主さんー≫
「そうかい、ありがとよ。また来てくれ」
タレタは料理長を追いかける。
それを周囲から見守っていた客が店主に寄ってきた。
「あのキャベツを一箱くれ」
「はいよっ、って一箱っ?一個じゃなくてっ?」
「あ、うちも一箱、いや二箱だっ」
「じゃあ、こっちは」
この店からキャベツが一瞬にして消えていった。
ちなみにこの店は市場に店があるが、業者相手というより個人相手の店だ。そうそう一箱単位で買っていく客はいない。
うちのタレタの円らな瞳宣伝は恐ろしいなー。
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