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15章 冷たい風に吹かれて
15-6 魔王の誘い ※エルク教国の聖職者視点
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◆エルク教国の聖職者視点◆
その人物が現れたとき、後光が差していた。
黒髪の短髪で白銀の鎧がよく似合う。
神の使いか?とさえ思った。
神が我々の祈りを聞き届けてくれたのか。
他の聖職者も信者もいきなり現れた彼に祈りを捧げている。
だが、辺りを見回す。
この教会の扉も窓も板や家具で塞がれている。
外の状況を知るために、ほんの微かな隙間が残されている程度だ。
教会の外はすでに魔物だらけで、逃げ遅れた人がいようとも、中に入ることはできない。
後光が差す窓は存在しないし、人がこの教会に入るための扉も隙間もない。
どこからこの人間は入って来たのか?
地下にも外へと通じる道はない。
「キミたち、角ウサギになる気はないか?」
「は?」
祈りを捧げていた者たちも、彼の言葉に顔を上げた。
意味不明。
「説明を端折りすぎたな。キミたちの造る酒は素晴らしい。このままその酒が消えゆくのはもったいない。俺が提案するのは、キミたちの生存を保証する代わりに、酒を造ってもらいたいということなんだが、エルク教国が腹黒王国のため、キミたちを人のまま迎え入れると都合が悪い。角ウサギの姿になって作業してもらいたいんだ」
いや、その説明でも理解できないのだが。
「そもそも、人が角ウサギの姿になることは可能なのか」
ついつい質問が口に出てしまった。
この教会でこっそり造っている酒が美味しいのはわかる。
酒を造れば、命を助けてやろうと言っているのもわかる。
うん、それって、どう考えても人間側の提案じゃないな。
「人として受け入れると、後々厄介だからな。住まいはダンジョン内になり行動は制限されるが、命は保証する。衣食住には困らない。風景だけで良いなら、この教会の周辺を再現してやることもできる」
ダンジョン内って言っちゃったよ、、、この人。人なのかな?外見は人なのだけど。
神ではないなー、残念ながら。
神に祈って出てきたのがこの人なら、何なんだろう。なんとなく予想はついているけど。
「ええっと、角ウサギってあまりかわいくないと思うんですけど。できれば、もっとかわいい魔物が良い」
信者の女の子が手を挙げて発言した。。。子供は怖いもの知らずだ。隣の母親の方が驚愕の表情を浮かべているぞ。心労が半端ないだろうなー。
「ははは、世間一般の角ウサギは可愛くないかもな。だが、俺の角ウサギは世界一可愛いっ」
白銀の鎧の人物が丸くて白い角ウサギを見せた。どこから出した?
おおっと、我々の前に出された角ウサギはいきなりだったのか、え?という表情を浮かべた後、周囲からの視線に気づき、耳をピンと立たせて胸を張った。
「可愛いっ、それなら大丈夫っ」
「それは良かった。ただ俺が助けるのは、酒造りに協力してくれる者だけだ。他の者たちはどうする?」
と同時に、咆哮が響いた。
教会が揺れる。地響きが伝わる。
そう、あまりにもこの人が現れるのが突然で、我々は歌うのを中断してしまっていた。
結界が崩れたのだ。
教会の壁もそう持たないだろう。魔物たちが体当たりしている音が響く。
「皆の者っ、今は助かるのが先決。命が救われてこそ、先がある。神に祈って現れたのがこの方なら、これもきっと神の思し召し。角ウサギの姿で酒造りの一生になろうとも、我らには歌がある。生きていこうではないか」
「あー、ちなみに角ウサギは人語を口で話せないから、宗教音楽は楽器の演奏とかにしてもらえるかな。角ウサギ同士、意思の疎通は言葉にしなくてもできるよ」
「そ、その小さな手で楽器の演奏を、、、」
言いたいのはそういうことではないのだけど。慌てているので口に出るのはなぜかそういう言葉。
「意外と器用なんだよ。これでも」
角ウサギの小さく丸い手をフニフニ動かしている。角ウサギがなぜか得意げだ。
轟音が辺りに響いているのに、何一つ動じてない。
壁にヒビが入った。
「角ウサギになって酒造りに協力できる者は手を挙げろっ」
私は叫んだ。
ここにいるすべての者が手を挙げた。布に包まれている赤ん坊以外。。。コレは仕方がない。
聖職者も信者も生きる道を選んだ。
我々は歌を失うが、音楽は失わない。
ここで魔物に食い殺されるよりかは、はるかに。
教会の壁が崩れ、天井が崩落しようとしていた。
目を開けると、周りに大勢の角ウサギがいた。
というか、自分の手を見ると、丸いし白い毛が生えている。
自分も角ウサギになっている。耳も意識すると、動かせるようだ。
鏡を見たい。
教会の奥に一つあったはずだ。私が動くと、後ろからゾロゾロと角ウサギたちがついて来る。
すべて角ウサギで同じように見えるのだが、なぜだか誰が元だったのかはわかってしまう。
全身鏡の布を外して、姿を映す。
彼が持っていたのと同じ、丸くて白い見事な角ウサギだ。
長い耳を動かしてみると、動く。やはりこれは自分の姿だ。
少し見ていたら、他の角ウサギに横に押された。
うん、自分の姿を見てみたいのは、みんな同じ気分なんだな。
一列に順番良く並んでいるのは、角ウサギになっても礼儀正しい信者たちだ。
さて、私は聖職者なのかな?もう、元聖職者という立場かもしれない。
角ウサギたちの中にも小さい個体がいる。子供だった者だろう。赤ん坊だった者は母親の頭にさらに小さくて丸い角ウサギがのっている。すごく可愛い。
何だろう?コレが庇護愛なのかな。守ってあげたくなる可愛さだ。
知っている者は知っている。街の教会には最低限の一人の聖職者しかいないが、丘の上にあるこの教会には聖職者が四人いた。私が教会の責任者だった。街の住民でここに避難してきた者は一部だ。街にも教会があったが、そちらに避難した者たちは助からなかっただろう。最後に丘から見た街は、多くの魔物が蹂躙していたのだから。
この教会は街を囲っている外壁の外にある。
こっそり地下で酒を醸造している教会なので、一部の住民だけが懇意にしている。そんな教会に四人も聖職者がいるということは、国が酒造を認めているのである。内密にだが。
逃げるのなら、聖職者が一人でも多い教会に逃げ込んだ方が良い。一部の住民たちはそういう考えで、安全なはずの外壁に囲まれている街を捨て、ここに避難してきた。
私は教会の地下に来た。
醸造所は無事だ。造っていた酒もある。
うん、あるな。
コレで、あの魔王も満足するだろう。
あれ?教会の壁って壊されなかったっけ?さっき見た教会って、壊される前の教会だった気が。
慌てて上に戻ると、綺麗な教会だった。魔物に襲われる前の、壁や扉を塞ぐ前の姿の教会だった。
扉を開けて外に出ると、荒らされる前の丘の風景がそのままそこにはあった。
魔物たちが蹂躙する前の、街も見える。
ああ、この姿でも涙が流れるんだ。
隣に聖職者仲間だった一匹が、私の肩に触れる。うん、肩なのかな?まあ、背中かもしれない。
この選択は間違いだったと思う時が来るかもしれない。
けれど。
あのとき、この選択をしていなければ、ここにいる全員が死んでいたことは間違いないのだ。
我々は魔王に魂を売ったのかもしれない。
「いやいや、あのお方は魔王ではなく、我が王ですよー。初めましてー、我が王からこのダンジョンの説明係を仰せつかった十六号でーす。今後ともよろしくー」
一匹の新たな角ウサギが教会に現れた。意外とフレンドリーな感じだ。
ちなみにコレは口で話している言葉ではない。念話のようなものである。わかりやすいように話し言葉のように表記しているだけである。
「十六号さん、よろしくお願いします。何せ角ウサギになるのは初めての経験でして」
「そうでしょうねー。貴方の思考、ダダ漏れですもんねー。思っていることが全部ここら一体の角ウサギたちに共有化されてますからねー。私もつい最近、角ウサギになったばかりなので、ほんの少しは先輩ですけど、わかることは教えますよー。ただエルク教国は腹黒王国だと我が王から聞いておりますので、変な行動を起こしたら我々が直接粛清しますので、そのおつもりで」
うわっ、怖。。。最後の表情、超怖い。こんな可愛い角ウサギでもここまで凶悪な表情を作れるのか、という顔だった。我々をここに連れて来たのは、我々を角ウサギに変えられるくらいの力の持ち主だ。それに、ここはエルク教国のあの丘ではない。あそこはもう壊されたのだ。
「わかっているねー。そうそう、ここは我が王のダンジョン内。キミたちの教会周辺を再現した階層だと聞いている。酒とかは魔物に荒らされる前に我が王がさっさとこっちに移したらしいけど。キミたちはここの階層と、その下の酒の泉の階層の管理を任されることになっている。我が王は酒好きだから、そこまでアホなことをしなければ、このダンジョンで自由にさせてくれるよ」
「は、はい。頑張ります」
あ、本当に酒だけのために我々は生かされたんだ。
「さて、キミは最初に角ウサギの話し方から学ぼう。思考が全部丸見えだと、キミも不都合だろう。情報伝達が楽だから、ここまでは放置していたが」
だから、皆、私の後ろにゾロゾロとついてきて鏡を見たんですね。
簡単にレクチャーを受けると、周囲にいた角ウサギたちが残念という顔をしている。そんなにダダ洩れていたのか。。。他の皆の考えは聞こえてこないのに。。。
「ここは我が王のダンジョンだ。キミたちを歓迎する。ちなみに私は聖教国エルバノーンで発生した最凶級ダンジョンのダンジョンコアだ。十六番目にこのダンジョンにやってきたダンジョンコアなので十六号だ。我が王は自分で名前をつけてもいいとおっしゃってくれたが、特にコレと言った名前も思いつかなかった」
我々はこの十六号さんの周りを囲んで話を聞いている。小さい角ウサギたちも内容がわかっているようだ。
つまり、ここは最凶級のダンジョンコアを最低でも十六個も取り込んでいるダンジョンだということだ。
やはり、あの人、魔王なんじゃないんですかね。
その人物が現れたとき、後光が差していた。
黒髪の短髪で白銀の鎧がよく似合う。
神の使いか?とさえ思った。
神が我々の祈りを聞き届けてくれたのか。
他の聖職者も信者もいきなり現れた彼に祈りを捧げている。
だが、辺りを見回す。
この教会の扉も窓も板や家具で塞がれている。
外の状況を知るために、ほんの微かな隙間が残されている程度だ。
教会の外はすでに魔物だらけで、逃げ遅れた人がいようとも、中に入ることはできない。
後光が差す窓は存在しないし、人がこの教会に入るための扉も隙間もない。
どこからこの人間は入って来たのか?
地下にも外へと通じる道はない。
「キミたち、角ウサギになる気はないか?」
「は?」
祈りを捧げていた者たちも、彼の言葉に顔を上げた。
意味不明。
「説明を端折りすぎたな。キミたちの造る酒は素晴らしい。このままその酒が消えゆくのはもったいない。俺が提案するのは、キミたちの生存を保証する代わりに、酒を造ってもらいたいということなんだが、エルク教国が腹黒王国のため、キミたちを人のまま迎え入れると都合が悪い。角ウサギの姿になって作業してもらいたいんだ」
いや、その説明でも理解できないのだが。
「そもそも、人が角ウサギの姿になることは可能なのか」
ついつい質問が口に出てしまった。
この教会でこっそり造っている酒が美味しいのはわかる。
酒を造れば、命を助けてやろうと言っているのもわかる。
うん、それって、どう考えても人間側の提案じゃないな。
「人として受け入れると、後々厄介だからな。住まいはダンジョン内になり行動は制限されるが、命は保証する。衣食住には困らない。風景だけで良いなら、この教会の周辺を再現してやることもできる」
ダンジョン内って言っちゃったよ、、、この人。人なのかな?外見は人なのだけど。
神ではないなー、残念ながら。
神に祈って出てきたのがこの人なら、何なんだろう。なんとなく予想はついているけど。
「ええっと、角ウサギってあまりかわいくないと思うんですけど。できれば、もっとかわいい魔物が良い」
信者の女の子が手を挙げて発言した。。。子供は怖いもの知らずだ。隣の母親の方が驚愕の表情を浮かべているぞ。心労が半端ないだろうなー。
「ははは、世間一般の角ウサギは可愛くないかもな。だが、俺の角ウサギは世界一可愛いっ」
白銀の鎧の人物が丸くて白い角ウサギを見せた。どこから出した?
おおっと、我々の前に出された角ウサギはいきなりだったのか、え?という表情を浮かべた後、周囲からの視線に気づき、耳をピンと立たせて胸を張った。
「可愛いっ、それなら大丈夫っ」
「それは良かった。ただ俺が助けるのは、酒造りに協力してくれる者だけだ。他の者たちはどうする?」
と同時に、咆哮が響いた。
教会が揺れる。地響きが伝わる。
そう、あまりにもこの人が現れるのが突然で、我々は歌うのを中断してしまっていた。
結界が崩れたのだ。
教会の壁もそう持たないだろう。魔物たちが体当たりしている音が響く。
「皆の者っ、今は助かるのが先決。命が救われてこそ、先がある。神に祈って現れたのがこの方なら、これもきっと神の思し召し。角ウサギの姿で酒造りの一生になろうとも、我らには歌がある。生きていこうではないか」
「あー、ちなみに角ウサギは人語を口で話せないから、宗教音楽は楽器の演奏とかにしてもらえるかな。角ウサギ同士、意思の疎通は言葉にしなくてもできるよ」
「そ、その小さな手で楽器の演奏を、、、」
言いたいのはそういうことではないのだけど。慌てているので口に出るのはなぜかそういう言葉。
「意外と器用なんだよ。これでも」
角ウサギの小さく丸い手をフニフニ動かしている。角ウサギがなぜか得意げだ。
轟音が辺りに響いているのに、何一つ動じてない。
壁にヒビが入った。
「角ウサギになって酒造りに協力できる者は手を挙げろっ」
私は叫んだ。
ここにいるすべての者が手を挙げた。布に包まれている赤ん坊以外。。。コレは仕方がない。
聖職者も信者も生きる道を選んだ。
我々は歌を失うが、音楽は失わない。
ここで魔物に食い殺されるよりかは、はるかに。
教会の壁が崩れ、天井が崩落しようとしていた。
目を開けると、周りに大勢の角ウサギがいた。
というか、自分の手を見ると、丸いし白い毛が生えている。
自分も角ウサギになっている。耳も意識すると、動かせるようだ。
鏡を見たい。
教会の奥に一つあったはずだ。私が動くと、後ろからゾロゾロと角ウサギたちがついて来る。
すべて角ウサギで同じように見えるのだが、なぜだか誰が元だったのかはわかってしまう。
全身鏡の布を外して、姿を映す。
彼が持っていたのと同じ、丸くて白い見事な角ウサギだ。
長い耳を動かしてみると、動く。やはりこれは自分の姿だ。
少し見ていたら、他の角ウサギに横に押された。
うん、自分の姿を見てみたいのは、みんな同じ気分なんだな。
一列に順番良く並んでいるのは、角ウサギになっても礼儀正しい信者たちだ。
さて、私は聖職者なのかな?もう、元聖職者という立場かもしれない。
角ウサギたちの中にも小さい個体がいる。子供だった者だろう。赤ん坊だった者は母親の頭にさらに小さくて丸い角ウサギがのっている。すごく可愛い。
何だろう?コレが庇護愛なのかな。守ってあげたくなる可愛さだ。
知っている者は知っている。街の教会には最低限の一人の聖職者しかいないが、丘の上にあるこの教会には聖職者が四人いた。私が教会の責任者だった。街の住民でここに避難してきた者は一部だ。街にも教会があったが、そちらに避難した者たちは助からなかっただろう。最後に丘から見た街は、多くの魔物が蹂躙していたのだから。
この教会は街を囲っている外壁の外にある。
こっそり地下で酒を醸造している教会なので、一部の住民だけが懇意にしている。そんな教会に四人も聖職者がいるということは、国が酒造を認めているのである。内密にだが。
逃げるのなら、聖職者が一人でも多い教会に逃げ込んだ方が良い。一部の住民たちはそういう考えで、安全なはずの外壁に囲まれている街を捨て、ここに避難してきた。
私は教会の地下に来た。
醸造所は無事だ。造っていた酒もある。
うん、あるな。
コレで、あの魔王も満足するだろう。
あれ?教会の壁って壊されなかったっけ?さっき見た教会って、壊される前の教会だった気が。
慌てて上に戻ると、綺麗な教会だった。魔物に襲われる前の、壁や扉を塞ぐ前の姿の教会だった。
扉を開けて外に出ると、荒らされる前の丘の風景がそのままそこにはあった。
魔物たちが蹂躙する前の、街も見える。
ああ、この姿でも涙が流れるんだ。
隣に聖職者仲間だった一匹が、私の肩に触れる。うん、肩なのかな?まあ、背中かもしれない。
この選択は間違いだったと思う時が来るかもしれない。
けれど。
あのとき、この選択をしていなければ、ここにいる全員が死んでいたことは間違いないのだ。
我々は魔王に魂を売ったのかもしれない。
「いやいや、あのお方は魔王ではなく、我が王ですよー。初めましてー、我が王からこのダンジョンの説明係を仰せつかった十六号でーす。今後ともよろしくー」
一匹の新たな角ウサギが教会に現れた。意外とフレンドリーな感じだ。
ちなみにコレは口で話している言葉ではない。念話のようなものである。わかりやすいように話し言葉のように表記しているだけである。
「十六号さん、よろしくお願いします。何せ角ウサギになるのは初めての経験でして」
「そうでしょうねー。貴方の思考、ダダ漏れですもんねー。思っていることが全部ここら一体の角ウサギたちに共有化されてますからねー。私もつい最近、角ウサギになったばかりなので、ほんの少しは先輩ですけど、わかることは教えますよー。ただエルク教国は腹黒王国だと我が王から聞いておりますので、変な行動を起こしたら我々が直接粛清しますので、そのおつもりで」
うわっ、怖。。。最後の表情、超怖い。こんな可愛い角ウサギでもここまで凶悪な表情を作れるのか、という顔だった。我々をここに連れて来たのは、我々を角ウサギに変えられるくらいの力の持ち主だ。それに、ここはエルク教国のあの丘ではない。あそこはもう壊されたのだ。
「わかっているねー。そうそう、ここは我が王のダンジョン内。キミたちの教会周辺を再現した階層だと聞いている。酒とかは魔物に荒らされる前に我が王がさっさとこっちに移したらしいけど。キミたちはここの階層と、その下の酒の泉の階層の管理を任されることになっている。我が王は酒好きだから、そこまでアホなことをしなければ、このダンジョンで自由にさせてくれるよ」
「は、はい。頑張ります」
あ、本当に酒だけのために我々は生かされたんだ。
「さて、キミは最初に角ウサギの話し方から学ぼう。思考が全部丸見えだと、キミも不都合だろう。情報伝達が楽だから、ここまでは放置していたが」
だから、皆、私の後ろにゾロゾロとついてきて鏡を見たんですね。
簡単にレクチャーを受けると、周囲にいた角ウサギたちが残念という顔をしている。そんなにダダ洩れていたのか。。。他の皆の考えは聞こえてこないのに。。。
「ここは我が王のダンジョンだ。キミたちを歓迎する。ちなみに私は聖教国エルバノーンで発生した最凶級ダンジョンのダンジョンコアだ。十六番目にこのダンジョンにやってきたダンジョンコアなので十六号だ。我が王は自分で名前をつけてもいいとおっしゃってくれたが、特にコレと言った名前も思いつかなかった」
我々はこの十六号さんの周りを囲んで話を聞いている。小さい角ウサギたちも内容がわかっているようだ。
つまり、ここは最凶級のダンジョンコアを最低でも十六個も取り込んでいるダンジョンだということだ。
やはり、あの人、魔王なんじゃないんですかね。
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