キミという花びらを僕は摘む

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第3章 激動の

3-1 世界を救う英雄 ◆ティフィ視点◆

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◆ティフィ視点◆

 魔王様は離してくれなかった。

 今夜も居酒屋の個室に連れて行かれて、魔王様に隅々まで抱かれる。
 過激な愛撫は肉体に刻み込まれる。
 コレは自分自身の本当のカラダではないはずなのに。
 本当のカラダは寝ているはずなのに。

 ズィーの姿でもないのに、魔王様は私を抱き続ける。

「んあっ、はあっ、魔王様っ」

 彼のモノは大きく、今までに出会った者のなかでダントツに大きい。
 彼を何度も受け入れて私のカラダは大きく跳ねる。

 魔王様の禍々しく荒々しい魔力も体内で駆け巡る。
 何度も何度もヤられてその激しさに慣れてくると、もう猛々しい魔力がないと物足りなくなるのが不思議だ。

 腰を強く打ちつけられた。

「んんっ」

 私は大きくのけぞり、強くシーツを握った。

 快楽の余韻を味わいながら、二人で荒々しい息を整える。
 居酒屋の個室にあるベッドはそこまで大きいものではない。
 だが、密着するには好都合な狭さである。
 行為が一段落した今もまだ魔王様に強く抱かれている。

 この街には居酒屋はこの一店舗だけであり、個室にベッドまであるのはそういう役割も果たしているのだとようやく知る。
 意外と奥にほどほどな数の個室が並んでいた。
 酒を飲むための普通の個室もあるようだが、密談でもない限り酒目的では使われないようだ。

 最近は前竜王も落ち着いてきたようだが、ズィーも度々連れ込まれている。

「魔王様。毎晩、私を抱いてますけど、ズィーのことは良いんですか?」

 魔王様はズィーのことが好きだったはず。
 一、二週間ほどは魔王様に抱かれるままだったが、ようやく思考できるようになってきた。
 夜の間ずっと魔王様に抱かれて、目が覚めたらトワイト魔法王国のズィーに戻っている日々の繰り返しが続いていたが、ようやく質問ができた。

 魔王様は私の額に口づけを落とす。

「ズィーのことも好きだが、自分のカラダを捧げて私の機嫌を取ろうとする意志を無下にするほど私は落ちぶれてないぞ」

 おおう、魔王様の笑顔が甘い。
 なぜこんなことになったのか、私も記憶がない。
 ズィーに提案された後に休憩室を出て、気づいたら魔王様に抱かれていた。
 酒も飲んでいなかったし、ズィーにも洗脳魔法なんて使ってないと言われてしまった。

「魔王様に対してそういう方々は非常に多かったと思いますけど」

 権力者にはつきものだろう。
 自分や自分の娘のカラダを捧げる者というのは。

「庇護を受けていた者はその権力者を失うと立場を失い、どうにもならなくなることが多い。魔族領では私は妻以外には手を出していない。魔族は魔王に権力が集中する。魔王の妻であっても、魔王がいなくなれば権力を維持するのは難しい」

「、、、なら、今の魔族領は混沌としているんですか」

 中心となる魔王様が封印されているならば。

「いや、我が妻によって平穏は維持されている。あの人は元々私がいなくとも統治者たる女性だ」

「今もまだ奥さんを好きなんですか」

「まだ愛している」

「ズィーよりも?」

 魔王様が私の髪を愛でた。
 柔らかく撫でている。

「愛情の深さに順位はつけられない。今、彼らに抱いている感情はそれぞれ別のものだ。そして、それはお前に対しても」

 カラダだけの関係だと思うが、魔王様が私に触れる手は優しい。
 彼の指が、また私のカラダの奥へと侵入してくる。

「あ、、、」

「まだ全然足りない」

 まるで噛みつかれるように、カラダ中を甘噛みをされる。
 そして、二回目が始まる。




「ティフィが選ぶ男の条件は、結局は絶倫なんだろ?」

 ズィーがベッド脇に現れた。
 私はあられもない姿をズィーに見せていた。
 シーツで隠したい欲求に駆られるが、シーツはすでにベッドの下に落ちている。
 服なんて床に脱ぎ散らかしたままだ。
 隠せる物が手元に何もない。
 すでに何度も抱かれた後だ。

 魔王様は体液まみれでも、私を抱いていても絵になるのはなぜだろう。
 魔法で綺麗にしてくれないのはわざとである。

「愛の営みの最中に現れるのは無粋の極みだと思うが」

「ヴィッター、今日はティフィが来る前に言ったよね。ティフィと話す時間をくれと。思いっ切り時間制限が近づいているじゃないか。一応コレでも行為が一段落した後に来ているんだ」

 ズィーはにこやかに笑っているが、目が死ねと言っている、魔王様に。
 魔王様にそんな目を向けられるのはズィーだけだ。
 こんな場に足を踏み入れたくないのはこっちだともいう目も。

「そうだったか?じゃあ、話している間その代わりにズィーが私の相手をしてくれるのか」

「、、、魔王様、ティフィに手を出したのだから、最後まで責任を取ろう」

 ズィーの圧が魔王様より怖くなった。
 笑顔なのがさらに怖い。
 顔を両手で隠したいが、魔王様にぎゅむむーと抱かれているので腕が動かせない。

 私は魔王様に抱き枕にされたままベッドに横たわった状態で、ズィーに対応している。
 私と話すために来たズィーなのに、魔王様の相手もしろと言われたらキレ気味になるよね。
 ちなみに、一言も発生してないがニヤニヤ顔の前竜王も部屋に侵入してきている。

「、、、時間がないのなら、早く話し始めたらどうだ」

 魔王様が私を抱き枕にしたまま提案した。
 私、抱き枕のまま話を聞かなきゃいけないの?
 新手の拷問かな?
 魔王様が私を逃がす気がないように、抱いている腕が微動だにしない。

 それもそうかと頷いて、ズィーが私に言葉を紡ぐ。

「ティフィ、世界を救う英雄になる気はないか」

「はい?」

 いきなり言われたら、私の反応が正しいと思う。
 それ以上の反応ができるわけもない。

「ふむ、はいだから肯定と受け取っていいよな。じゃ、そゆことで」

 言質はとったとばかりに、ズィーは部屋をさっさと後にする。
 事情を判断して反論される前に。
 前竜王も後を追い、しっかりと扉を閉めていった。

 魔王様にがっしりと抱き枕にされているので、手すら扉の方へと伸ばせない。
 後の祭りであるが。

「え?」

「ズィーはお前が疑問符をつけたのをわざと無視したぞ」

「英雄?」

「お前の肉体で何かやらかす気なんだろうなあ」

 魔王様により強く抱きしめられ、首筋を噛まれる。

「ふぅっ」

「邪魔されたのだから、お前の時間制限までとことん付き合ってもらうぞ」

 手はすでにカラダの奥をまさぐっている。
 敏感な部分は刺激をされて興奮する。

「、、、ああっ」

 もう魔王様なしでは生きてはいられない肉体にされそうだ。
 されそうではなく、すでにされたが正しいか。

 ルアを失ったとき、ルアがいなければ生きてはいけないとさえ思ったはずなのに。
 この肉体は都合がよくできている。










「この頃、より敏感になってきたな」

 シークが朝食後に触れてきた。
 ほんの少し安心している自分がいる。
 安心して抱かれている。
 シークもグフタ国王もズィーのことが好きなのだから。
 ズィーが元に戻れば、彼らはズィー相手にこういう行為はできなくなるかもしれないが、それはそれで納得するだろうと。

 私がいなくなっても何とも、、、世話する者がいなくなって良かったぐらいは思うかもしれないが、特に私に対しては感情が動かないはずだ。
 こんなに抱き合っていて、それはそれで悲しい気もするが、後腐れがないと言えばその通り。

 私の想いをズィーに言ったらどう反応されるか。
 あの仮想現実に行きたいと。
 あそこで暮らしたいと。
 魔王様に何度も抱かれたら、この想いが強くなってしまった。

 薬屋が一軒しかないルメドの街を後にするのは心苦しいが、私には魔王様が必要だ。
 魔王様は私を見ていなくとも、ズィーが好きであろうとも、私を抱いてくれる。

 魔王様が欲しい。
 私の一生を捧げたい。
 とことん抱き潰してほしい。


 あまりにも己の欲望が膨らみすぎて、ズィーに言われたことをすっかり忘れていた。
 世界を救う英雄になる気はないか、という言葉を。
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